第二十三話 私から離れて、柿崎を連れて行く 普段より大きく見える南国の太陽が、水平線の向こうに消えていこうとする時間帯の事である。 宿泊施設として立ち並ぶ水上コテージの一角。 宿泊の為ではなく、食事処として建てられた建物のテラスにて夕食であった。 これも青い海の上に建てられた建物で、波音は絶え間ない。 しかもテーブルに並べられた料理は、専用シェフが雪広の友人の為にと腕を振るった高級フランス料理だ。 水平線の見える夕日の風景、自然が織り成す小波のBGM、雪広家専属のシェフが作ったフランス料理と全てが贅沢でありながら、雰囲気だけは場違いですらあった。「ひぃ、死ぬ。笑い死ぬ。もう、先生辞めて芸人になったら良いんじゃねえのか?」「水着が波に浚われたとか、何してたかまるわかりやん」「全く、折角の料理が台無しです」「俺のせいかよ。何時間経っても笑ってるお前らのせいだろ!」 むつきの反論も、夕日以外の理由で顔が赤い為、逆効果であった。 長谷川は遠慮なくばんばんテーブルを叩いて笑い、和泉も笑いが止まらないと口を押さえているが効果はない。 言葉こそ冷静な突っ込みだが、今にも笑いそうに綾瀬の口元は引きつっている。「先生、そうムキになさらずに。この晩餐を楽しみましょう」「おい、雪広。手が震えてジュース零れてるぞ」「大丈夫です、ワインですから」「おい、酒を飲むな。お前らのそれも葡萄ジュースじゃなくてワインか。没収だ、この野郎!」 そもそも大丈夫の意味が違うが、そっちも駄目だと取り上げる。 雪広のグラスだけでなく、皆の前にあったグラスも全てだ。 付き合う切欠になったとはいえ、色々と前科がある美砂のは雪広の次に真っ先に取り上げた。 例によって長谷川だけ抵抗を見せたが、こればっかりは譲れない。 席を立って移動してでも取り上げた。「ご心配なさらずに、先生。我が家のシェフが違法となるものを飲ませるはずがありません。と言うより、先生がそういう方だと先に伝えておきました」 ノンアルコールですと最後に付け足され、それならとグラスを返していく。 改めて席に座ると、ことんと肩に誰かがもたれかかってきた。 右側だったので確認するまでもなく、美砂だとわかった。 本人はうつらうつらとしているうちに、体勢を崩しもたれかかってしまったらしい。「大人しいと思ったら、おい。飯は食べとけ。後で小腹空いたからって、コンビ二とか近くにないぞ」「んー、眠いー。先生、ベッドに連れてって」 両手を伸ばして甘えられたが、本当に少しで良いから食べて欲しい。 雪広なら夜中でも誰かに摘めるものを用意させそうだが、なんだか悪い気がする。 顎で誰かを使うような生活は、生憎送ってはいないのだ。「普通、四六時中泳いでいた大河内さんの方が疲れてそうですが。平気そうですね」「うん、慣れてるし。長時間泳いでた気がしない、あっと言う間に夕方になっちゃった」「先生と泳げて、嬉しかった事もあるやんね。アキラ、見た事ないぐらいはしゃいでた」 ぽっと頬を染め、アキラが美砂の頬を叩いていたむつきの服の裾を掴んだ。 隣の和泉がこのっと肘で突くとますます顔を赤らめる。 一度、和やかになりかけはした雰囲気だが、あえてそれを壊す者がいた。「ていうかさ、柿崎。初めての中だしどうだったよ」 もう場所とかBGM、料理と全てをひっくり返す発言であった。 だと言うのに、誰もがそれを咎めずほほうと耳をそばだてるとはどういう事か。 お前ら性的な事に興味を持ちすぎだと、むつきも呆れ果てて怒れない。 むつきのせいという事もあるが。 雪広はないだろうが、将来OLとなった時の歓迎会とか不安だ。 上司にどぎつい下ネタをふられ、平然とそれ以上の下ネタで返して場が凍りつく。 絶対、恐らく、間違いなく凍りつくと思う。「凄かった」 眠そうに目をとろんとさせながら、美砂が長谷川の問いかけに反応した。「先生がじわって、もちろん最初は乱暴に子宮を勢いよく精液で叩かれたけど。その後で先生がじわじわ中から広がって。今でも温かい」「ちょっと待て、説明するな。当時を思い出して実況するな!」 長谷川達がおおっと身を乗り出すと同時に、美砂の口を塞いだ。 だが夢うつつは継続中で、料理の匂いもあったので見事に噛まれた。 痛いと叫んで床を転げ落ちるが殆ど誰もむつきを注視してやいない。 慌ててアキラが駆け寄って抱き起こしてくれたが、意識は半分美砂の言葉に奪われている。 特に、美砂がここにじわじわと撫でているお腹に。「それから、射精が終わってからも先生。膣の中をおちんちんでぐりぐり。精液をなすりつけて、俺の女だっていうマーキングだって」「止めて、そんな目で見るな。普通だよ、男なら誰でもする事だ。美砂、死ぬ。死んじゃう、俺が精神的に!」 夢うつつな美砂は兎も角、長谷川達の視線がもう冷たい。 いや内心面白がっているかもしれないが、もうこの世のクズをみる目だ。 ピルを渡したのがそもそも雪広なのに、その彼女にまで。 まかり間違えば、今直ぐにでも友人発言を取り消されるかもしれなかった。「アキラ、次はアキラの番だね。覚悟して置いた方が良いよ。うん、先生これまですごく優しくしてくれてたのが分かる。それぐらい激しいから」「えっ……うん、実はちょっと知ってる。最初、本当に凄かったから」 美砂に振り向かれ、次にむつきと目を合わせ、小さく頷いた。 最初とはおそらく、無意識にアキラを抱こうとしたあの時の事だろう。「私もう、今日はギブアップ。寝るから、一晩先生独り占めしていいよ。じゃ、お休み」「おい、美砂……ああ、寝ちまった。雪広、悪いんだけど」「ええ、夜中に起きた時に摘めるものを用意させておきます」 しょうがないので美砂を抱え上げると、コテージの方へとつれていく。 そのむつきを冷たい視線のまま長谷川達は見送った。 そして元から遠慮はないが、唯一の男がいなくなり長谷川達は一斉に身をのりだした。 テーブルの中央に、これからそれが待ち受けるアキラを除いて。「冷たい視線でごまかしたけど、マジ凄い事されてたな。まだ緊縛とか、青姦とかプレイに凝った方が笑えたぞ。いや、青姦だったみたいだけど」「委員長、本当にピル大丈夫なん? 柿崎、あれ妊娠しちゃうやん」「その辺りはぬかりありませんが。私もいささか予想外で。殿方は本当にそのような。アレまみれのアレを、私達のアレにぐりぐりなどと」「委員長アレばかりです。気持ちは分かりますが、流石に刺激が……」 皆汗をだらだら流し、綾瀬などは上を見上げて首の後ろをとんとんしている。 そしてごくりと生唾を飲み込んで、次の生贄となるであろう少女を見た。「あの、皆……目が怖い。大丈夫、先生なら優しく」 一応弁護は試みたものの、可哀想な生贄を見る目付きは変わらなかった。 夕食後しばしの歓談の後に、皆それぞれ割り振られたコテージの鍵を渡された。 と言っても、夕食が早かった事もあり、まだ午後の八時半と寝るにはまだ早い。 長谷川達は、騒ぎ足りないと一つのコテージに揃って入っていった。 むつきとアキラが向かったのはそれとは別。 美砂を先に寝かせた、家族用に広く設計された別棟のコテージである。 コテージの玄関から入って、まず電気をつけようとしたむつきの手が止まった。「先生?」「起こしたら、可哀想だろ。星明りが結構あるし、どうせ直ぐ消す事になるしな」「そ、そうだね。あの、先生これ」 後はベッドの上で二人仲良く踊るだけだと暗に言われ、アキラが俯き加減に頬を染める。 その顔を見られないようにしてか、手に持っていたお握りの乗ったお皿を見せてきた。 美砂が夜中に起きた時用の夜食であり、飲み水は各個室の冷蔵庫に色々とあるらしい。 南国の陽気で生ものは傷みやすいが、一晩もてば十分だ。 分かり易いベッド脇のテーブルにとアキラに伝え、美砂の様子を覗き込むようにしてみる。「よし、寝汗もないしぐっすり眠ってるな」 五月後半、本土でも時折夏が感じられるが、ここでは真夏も同然。 暑苦しいそうにシーツは蹴飛ばされていたが、本人は代わらず幸せそうに眠っていた。 熱いだろうがお腹が冷えるとかわいそうなので、シーツを掛けなおして頬をつつく。 最初むず痒がっていたが、やはり空腹を感じているのか赤ん坊のように口に含んだ。 可愛いは可愛いがむしろ、少し面白い。 ただ指を離すと悲しそうな顔をする為、起きるなよと念じつつ頭をごしごし撫でた。 それで不満は少しは解消されたのか、再び穏やかな寝息と共に寝入り始める。「眠り姫の相手はここまでで、人魚姫は……あれ、アキラ?」 ベッド脇から立ち上がって振り返っても、アキラの姿が見えない。 テーブルの上にはちゃんとお握りがのった皿が置かれている。 一体何処にと思っていると、中途半端に冷やされた生温い風が部屋の中に紛れ込んできた。 風を頼りに首を向けると、テラスへと続く窓件引き戸が半分程開かれている。 大きく風に揺さぶられるレースのカーテンの向こう側、テラスにアキラがいた。 ポニーテールに纏めなおした髪と、真っ白なワンピースを同じく風にはためかせながら。「こら、あんまり海が恋しそうにばっかしてると。王子様が嫉妬するぞ」 アキラの後を追い、テラスを出て後ろから抱きしめる。 最近慣れてきた王子様という台詞を呟くも、反応が何時もより遅い。 というより反応が返ってこず、無茶苦茶恥ずかしくなってきた。「ア、アキラさん……凄く、恥ずか。アキラ?」 様子が変だと思い、少し力を入れて肩を掴んで振り返らせる。 薄い紫のような闇の中でもはっきりと見えたのは、真珠の様に光る涙であった。「ごめんなさい、なんでもない。気にしないで先生」「気にするに決まってるだろ」 胸元にアキラの頭を抱え込むようにし、少し力を込めて抱きしめる。 気にはしたし、なんでもないはずがない。 その何がなんであるか、むつきには多少の覚えがあった。 明確な答えでこそないが、涙こそなかったが昼間にも似たような表情を見せられた。 見当違いな憶測かもしれないが、そうでなければ本人に聞けば良い。 だから逃がしてたまるかと、抱きしめる腕にさらに力を込める。「美砂が、どうかしたのか?」 その名を聞いて肩が大きく震えていた。 どうやら、そう大きく間違った憶測でも無さそうだ。 アキラの返答を待ち、辺りの闇より黒いその髪を撫で付ける。「勝てない」「実はな、美砂も昼間に言ってた。アキラには敵わないって。お前らさ」「違うの、私は勝てない。そう思ってる。柿崎は私を認めてくれてる。だから敵わないって。けど私は……勝てないって。先生を、柿崎から奪う事ばかり考えてる」 一体この子は何を言っているのか、咄嗟にむつきは理解する事ができなかった。 奪うも何も、何時もアキラは控えめにそばにいるだけだ。 最初にだってお妾さんなどと、現代人の感覚から逸脱した事を言いもした。 二番で良いと、一番になれなくても良いと勝ちを度外視していたはず。 少々混乱するむつきの腕の中で、アキラが嗚咽を交えて心の奥底を吐露する。「だから得意な泳ぎで先生と柿崎を引き離した。柿崎に噛まれて倒れこんだ先生にこれ幸いと駆け寄った。けど、先生はいつも柿崎を見てる。柿崎を優先してる。私から離れて、柿崎を連れて行く」 もう自分の足では立っていられないように、むつきにすがりながらアキラが座り込んだ。「先生に嫌われたくない。こんな事を考えている子なんて、こんな汚い子だなんて。けど、先生の前で泣いて弱って気を引こうとしてる。分からない、懺悔なの。それともただの誘惑。自分の気持ちが分からない」 溜め込んだ気持ちこそ方向性は違ったが、本質は結局のところ同じである。 同級生のクラスメイト、それも友人同士で同じ人を好きになった。 普通ならばありえないが、二人同時にその人と付き合い体の関係まで。 これがまだ単純に二股をかけられ、互いにその事を知らなければまだよかった。 だが互いに納得、したかは別にして、知った上で付き合ってきた。 きっとこれが、雪広が言っていた不明のストレスなのだろう。 美砂もアキラも、これまで自覚があったかなかったかは別にして抱え込んで来たのだ。「あのなあ、天地が引っくり返っても俺がお前らを嫌うわけないだろ。俺がお前らの前で何度泣いた、弱ったところを見せた。一度や二度でナマ言ううんじゃありません」 座り込んでしまったアキラにあわせるようにしゃがみ、ゴチンと額をぶつける。「いたい」 ロマンチックの欠片もないむつきの行動に、アキラが思わず素に戻った。 ただその双眸から流れ落ちる涙は、まだ止まってはいない。「俺だって、お前らを平等に愛したい。けどさ、実際はそんな事は不可能なんだよ。交わした言葉、好きだと言った回数、それこそセックスの回数、プレイの内容。できるか、そんな事?」「で、できない……」「だろ? なら平等ってどうやって決める? 要は二人が等しく満足してるかだ。今の美砂は満足してる。けど、アキラはしてない。つまり不平等だ。ここまではいいか?」「うん、ちょとこんがらがって来たけど。いたい、いたい」 大事な事だから頑張れと、頭突きで赤くなったオデコをぴしぴし叩く。「結論、アキラに不満を抱かせた甲斐性なしの俺が悪い」「え、でも」「不要な反論は聞く耳なしだ。俺が聞きたいのは、お前の希望だ。別にいいんだよ、勝ちたいって気持ちは。勝ちたいから、何をしたい。どうしたい?」「……して欲しい」 何をだこの野郎と、むつきがオデコをくっつけぐりぐりする。 何時の間にか止まっていた涙が、別の意味で零れそうなアキラが慌てて言った。「柿崎より、一杯。好きって言って欲しい、セックスして欲しい、私で気持ちよくなって欲しい。それから、一杯、私の中に出して欲しい」「ん、よく出来ました。それがお前の希望なら、俺には叶える義務がある。まあ、どれもむしろお願いしますって頼みたいぐらいだけどさ。と言うわけで」「あっ、エッチな顔」「好きな子からセックスを頼まれたからな」 それじゃあまずと、ようやく涙が止まったアキラを立たせる。 そしてアキラの目の前で両手をあげ万歳のような、ハイタッチのような格好をとった。 狙った通り、アキラが両手の手の平を合わせようと腕を上げた瞬間、素早く下げる。 と言うよりも、下げた手で真っ白なワンピースのスカート部分の裾を手に取った。 あれっと予想外のむつきの動きにアキラが硬直し、これぞ好機とばかりに手を持ちあげた。 もちろんスカートの裾は掴んだままで、当たり前だが脱げる。 後は勢いばかりと、抵抗の間を与えず薄いワンピースを頭から、ポニーテールの髪に至るまで脱がしてしまう。「せ、先生、ここ外!」 器用に声を潜めたまま声を張り上げ、体を隠すようにアキラがしゃがみ込んだ。 ただ、外じゃなければ問題ないという言葉であったが。 薄紫色の闇に細々と落とされる星明りの元、その白い肌は淡く輝いているようにも見えた。 腕から零れ落ちそうな二つの胸も、太ももに隠れた秘部も同じく。 何故か隠すものが自分の肉体以外に何一つなく、白い明かりを提供している。「アキラ、何故にノーパン、ノーブラ? これには俺も予想外。また長谷川か、ギャップか」「亜子が……」「よりによって和泉か、痛っ。痛い痛いイタタタタ!」「委員長がカジュアルドレス脱いだ時、先生が見惚れてたからって」 普段大人しい割りに、やはり水泳部で次期エースとなり得るだけに負けん気は強い。 美砂への感情もそうだが、男としての悲しい性すら許してはくれないそうだ。 久々の痛みは、以前に学校の室内プール場でくまパンを見て以来の抓り攻撃である。 アキラの目の前にあったむつきの太ももが、捻り千切れそうであった。「ごめんなさい、甲斐性なしのくせに。何でもするから許して」「じゃあ、追加で十回好きって言って」 一瞬、レートが安くはないだろうかと思ったのは秘密である。 お安い御用ですとばかりに、むつきはまずその前に来ていたティーシャツを脱いだ。 ジーンズのハーフパンツもトランクスと一緒に脱いでおく。 二度と同じ過ちはと、着衣は全て室内へと放り込んでおいた。 それからむつきの全裸を手で隠した指の間から見ていたアキラを、横抱きに抱え上げる。 テラスから見える海に続く、降り階段へと足をかけながら言った。「好きだぞ、アキラ」「うん」「アキラの綺麗な黒髪が好き、そっと握ってくれる長い指が好き、温かい体温が好き。大っぴらに甘えたいのに美砂がいるから、控えて切なそうな瞳の感じが好き」 本人としてはあまり嬉しくない部分も含めつつ、十回を超えて好きといい続ける。 好きという言葉は留まるところを知らず、降り階段の方が先に尽きた。 抱っこはここまでと、二十幾つ目かの好きを終えて海の中にアキラを降ろす。 海といっても深さはそれ程でもない。 全裸の二人が辛うじて水面に性器を出していられる程度だ。「先生?」「アキラ、海好きだろ。ここでセックスしようぜ」 むつきの言葉に一瞬ぽかんとしたアキラが、クスクスと笑い出した。 余程おかしかったのか、それともツボに入ったのか。 珍しく笑いが止まらないとばかりにアキラが笑っていた。 もし仮にこれが屋内のベッドの上でならば、転げまわっていた事だろう。 最初から馬鹿な事だと自覚ぐらいはあったが、こうも笑われると流石に恥ずかしい。 とりあえず、誤魔化すように抱きしめ、唇を塞ごうとしたが手で頬を押さえられ止められた。「嫌だったか?」「ううん、十回目。忘れてる」 もちろん、十回など当に超えているがまだ足りないらしい。「欲張りさんめ。好きだ、アキラ。セックスしたい、中に出したい」「いいよ、先生。私で気持ちよくなって」 左手を腰に、右手を後頭部、ポニーテールの下に差し込んで固定する。 しっかりと抱き寄せては、吸い付くように唇を合わせた。 唇のみならず、互いの胸も、陰毛、性器とあらゆる場所を密着させる。 まるで体全体でキスするように、隙間一つないようしっかりと抱きしめあった。「すべすべの肌が好き」 一旦唇を離すと、右手を首のうなじから背中へとおろしすべやかな肌の上を滑らせる。 むつきが腰を抱き寄せている為、心配な程に反っている腰へ。 そこを越えると山登りだ、やや小さめのお山を足場を固めるようにぷにぷにしながら通り過ぎた。 それから足の付け根と太ももを滑るが、腕の長さがそこで限界に達した。「大きなおっぱいが好き、エッチな気分で硬くなる乳首も」「んっ、きゅぅ。先生、さっきから……エッチなぁっ」 逃げる為にか誘う為にか、むつきの腕の中でもがいたアキラを今一度抱きしめなおす。 首筋顔を埋め、左手は相変わらず腰に、背後から海に落ちていく格好のアキラの胸に右手を添えた。 波間のリズムに合わせふるふる震えるそれを大胆に掴み、絞るように頂点へ。 硬く勃起し始めた乳首を指先でコリコリとこねては、ピンッと弾く。「先生、乳首伸びちゃう。あまりいじめないで」「どうせ俺以外、誰も見ないだろ」「お風呂とか、だめっ!」 もはや体をそらしすぎて、アキラのポニーテールの半分は海の中であった。 意外と俺力あるなと頭の片隅で思いつつ、首筋に夢中だった唇の標的を変えた。 駄目といわれたらしたくなる、苛めっ子の精神で乳首を食んだ。 唇で横に回すようにこね、吸い付きながら伸ばしていく。 左乳首を伸ばしきったら次は右乳首、それを何度も繰り返していった。「はぁ、ふぁ……先生、乳首長いほうがんっ、好き?」「アキラの乳首が好き」「だったら、そんなぁっ!」 自由になった右手をアキラに気付かれないうちに、下へ下へと忍ばせていた。 やや濃い目の陰毛の草原を指先でさっと駆け抜け、とろとろと岩清水が湧き出る割れ目に辿り着く。 胸に夢中で気付くのが遅れたアキラが、ほんの少しだけ体を硬直させる。 まだ心の準備ができていなかったのだろうが、今日は元よりお互いに全裸であった。 遠慮はしないとばかりに、むつきの指先が割れ目をこじ開けた。「物欲しそうに涎を下の口から垂らすアキラが好き」「んぅ、んはぁ。んんぅっ」 反りすぎた体は自分だけでは戻せず、アキラはせめてと声を抑えようと指を噛む。 途中から気付いてはいたが、もはやむつきは好きではなく、言葉責めの為に利用しているにすぎない。 それでもどんな内容でも好きといわれる度に反応してしまう。 いやらしい、赤面して涙が滲みそうな内容でも、愛液が増すのが分かった。 こんなにいやらしくてもかと、まるでむつきを試すように、自分を晒していく。 むつきもそれに気を良くしながら、中指を膣口からつぶりと侵入させた。 もちろん、時折口で乳首を苛め続ける事も忘れない。「膣の中が温かいアキラが好き、指からでも俺の精液を搾り取ろうとするアキラが好き」「はっ、ぁぅ……嘘、それは嘘。してなぃ」 ただ心では羞恥に耐え切れなくなったのか、ついに否定された。 もちろん、それを許すむつきではない。 ゆっくり挿入を繰り返していた指の速さを早め、小波に愛液が混ざる音を付け足した。「ほら、アキラ聞こえるか。俺の精液を搾り取ろうって、愛液が凄いぞ。膣圧も奥に入るたびにキュって、限界まで。ほら、キュキュって来た」「うぅ……先生、認めるから。指足りない、もっと」 素直になったご褒美に、二本に増やしバリエーションで攻め上げる。 単純に指を二本並べての挿入から、奥から抜く時に指を開いて肉壁をひっかいたり。 手首を回転させて抉るように激しくしては、膣内を広げるように丹念に拡張もした。「先生、イク。イキそう、なの。先生も」「さすがにそれは無理だから」 アキラの乱れように完全勃起状態、太ももに擦り付けたりしてはいたがまだ高ぶりが足りない。「アキラのイク姿がエロくて好きだ。いいぞ、思い切りイって」「んぁ、わか……った。先生、ぁっ。見て、私がイクとこ」 これで見やすいとばかりに、アキラが口元に寄せていた手を胸に置いた。 むつきの唾液で汚れた胸を、自分の手で捏ね上げ、唾液を広げていく。「凄く、いやらしいぞ。もしかしたら、一緒にイケるかもな」「本当、一緒に先生」 ビクリと小さくだがアキラの体が震え、目ざとく気付いたむつきがスパートに入った。 二本指でのテクニックは投げ捨て、ただただ激しく。 奥へと突っ込み、浅く抜いてはもっと奥へ。 びしゃびしゃと飛び散る愛液を海へと垂らし、アキラを攻め上げる。「ぁっ、激しッ。先生、イク……もっと見て、先生。イクとこ、イクゥっ!」 激しくしてからそう時間は掛からず、アキラがその身を激しく暴れさせた。 咄嗟にむつきが左手に右手を追加し、その背中を支えなければ海へと一直線だった。 それから改めて、イッた直後のアキラを見下ろす。 激しい運動をした直後の様に、仰向けになって口を大きく息を吸い込んでいる。 瞳は閉じられ殆ど見えないが時折開けられた瞼の向こうに、潤んだ瞳が見えた。 纏めた髪の殆どは海の中でアキラ自身もはや半分以上、海の中であった。 海上にあるのは顔と自己主張の激しい胸、そこから続くお腹の下腹部の一部。 特に下腹部は、膣に海水が入ると危なそうなので気をつけてはいたが。「はぁ、はぁ……先生、私。本当に海が好きになっちゃった。先生が、一杯可愛がってくれたから」「そいつは良かったんだか。アキラを海に取られないようにしないとな」 水面に浮かぶアキラの下腹部、秘所の割れ目に亀頭を添えた。 両手は腰の裏までは無理なので、わき腹辺りに添えてアキラを支える。 本人も少し腹筋に力をいれて、この海でのセックスに協力してくれた。「いいか。いくぞ、アキラ」「うん、先生には私で一杯気持ちよくなって欲しい。それで、一杯ここに。私にも」「ああ、美砂より一杯出してやる。ただし、秘密な」 最後に悪戯っぽく笑いかけ、ゆっくりと慎重にアキラの中へと入っていく。 特殊な場所という事もあり、慎重にそれこそアキラが処女であるかのように。 ただそれは必ずしも、アキラにとって楽と言うわけでもなかったようだ。 ゆっくりだから、むつきが自分の中の何処にいるのかはっきりと分かる。 それだけにもどかしい、もっと奥へとと小波に揺れたのを言い訳に腰を振った。 だがむつきがしっかりとアキラを抱えている為、効果は薄い。 それどころか、大きく腰を振ると危ないとばかりに挿入が止まってしまう事もある。「先生、先生……お願い、意地悪。切ないの、早く奥まで」「段々と正直に希望を言ってくれて嬉しいが、だめ。ほら、触ってみろ。今ここだぞ」 なんとかアキラの手を一つとって、お腹の上に乗せて触らせる。 ほんの少しだが挿入により膨らんだ膣の形に沿って。「まだここ、待てない。早く、先生」「ほら、やっと半分だ」 もうアキラはこっそり小波に紛れてではなく、大段に腰を振って誘っていた。 人魚姫の名の通り、海を魚のごとく滑らかに激しく横に腰を振る。 普段控えめな女の子がここまで乱れてくれるのは、本当に男冥利につきた。 いっそここで、一気に挿入して子宮の中に出してあげたい。 処女でこそないが、まだ誰にも犯された事のない子宮を自分の精液で満たしたかった。 だがそれでも、何度も奥歯が欠けそうになるぐらい噛み締め絶える。 絶えてむつきは、ついにアキラの最奥へと到達する事ができた。 終着駅は子宮口、電車が連結作業をするようにコツンと亀頭を連結させる。「ぁっ」 アキラもまたやっとの願いが叶い、ふるりと体を震わせた。 待ちに待った到達に歓喜の感情を体全体で表現したようなものである。 それに対し、むつきの感慨もひとしおであった。 一方的にアキラを苛めているようで、結構むつきも大変だったのだ。 膣の肉壁は柔らかく愛液も申し分はないが、アキラはずっと腹筋に力を込めていた。 ただでさえ水泳で鍛えられた膣圧が、倍々、今にも搾り取られそうだった。「動くぞ、アキラ。直ぐにアキラが大好きな精液をやるからな」「うん、先生。私の中に一杯ください」 本当は今にもイキそうなのを隠し、あたかもアキラが望んだからと言い訳する。 ちっぽけな男の見栄なので、いつもの様にばれているかもしれないが。 腰を引いて尻の向こうの海水を押しのけ、叩きつけた。 パンと肌がぶつかり、波が生まれて海水がアキラに掛かってしまう。 これは超に貰った軟膏が早速役立つかもと思いつつ、とりあえず超は頭から追い出す。 そして繰り返す、亀頭で子宮口を叩き、腰で生み出した波をアキラにかける。「気持ち良い、先生。ぁぅ、ぁっ……先生、んぁ先生ぇ」「柔らかい膣で包み込んでくれるアキラが好きだ。精液を搾り取ろうときゅうきゅう締め付けてくれるアキラが好きだ」「欲しいから、ぅぁ。先生の精液、ぁぁっ。んはっ、ぁ」「本当に、いやらしいアキラが大好きだ!」 もはや我慢の限界だと、海水が邪魔だと叫びたくなるぐらい腰を素早く叩きつけた。 この時ばかりはアキラを思いやる余裕も少し失せてしまった。 自分が気持ちよくなる為に、もっと膣圧を増やす為にはと邪な事を考え思い出す。 それは美砂に手淫した時、一番膣が締まったのはどんな時か。 一心不乱に腰を振りながら、相反するように最新の注意を払って右手を自由にした。 手を伸ばした先は、海水塗れでぐっしょり濡れたアキラの陰毛。 そこを通り過ぎた先にある秘所の割れ目の始まり。 手探りでそこを探すと、早くもアキラが反応してくれた。「ぁっ、なに。凄ッ!」 周囲に触れただけで、この反応。 外気に晒せばどうなるか、どこまで締め付けてくるのか。 試さずにはいられないと、むつきは探し当てたそれの皮を一気に剥いた。「ぁっ、あぁっ。イッ!」 イクという言葉すら途中で放棄するように、アキラの体が海水の上を跳ね跳んだ。 握りつぶされるかと思うような締め付け、それを緩和するような愛液。 最高だと、もはや他に何もできないと、むつきも背筋を登る疼きに抗わず射精した。「アキラ、お望みの精液だ。好きなだけ、飲め!」 もはやアキラから反応は返ってこなかったが、構ってはいられなかった。 改めてわき腹辺りに手を沿えアキラを支え、かつ引き寄せる。 一滴も零させてなるものかと、子宮口にぴったりと亀頭の鈴口を貼り付けさせた。 体内で爆弾でも破裂したかのような衝動で、吐き出す。 兎に角中へ、孕んでも構わないとさえ一瞬は思いながら、射精し続ける。 勢いはまちまちだが、一回、二回とそれだけに留まらず。 射精の回数だけ子宮内を精液で叩き、アキラをイキ続けさせた。「やっぱ生かつ、中だしができると勢いが違うわ」 射精感に終わりが見えてくると、むつきの頭も多少は冷えてきた。 何時までも海の中だと体が冷えるので、アキラを抱えて駅弁スタイルとする。 その時自重で精液が溢れ零れてしまったが、それはまた頑張れば良い。「おーい、人魚姫大丈夫か。王子様に海から起こして貰うって違くね?」「待っ……先生、喋ら」 むつきが言葉を発する震動でさえ、敏感な状態では辛いようだ。 もたれかかって来るアキラの濡れた髪を撫でつけ、落ち着くのを待った。 その間に再び射精してしまい、時間延長が起きてもいたが。「ん、落ち着いた。けど……」「はいはい、アレね」 呼吸を整え会話が可能になりながらも、アキラが言葉なくリクエストを投げてきた。 射精後に何をして欲しいかなど、一つしかない。 食事前に美砂が夢うつつに喋った事は、むつきも悪い意味でしっかり覚えている。 抱えたアキラのお尻を持ち上げ、ゆっくりと降ろす。 快楽はもちろんあるが、目的はまた別で精液に塗れた竿で、膣内を塗りたくる。 むつきの精液が濡れた事のない場所がないように丹念に、アキラの膣を汚していく。「どうだ、満足したか?」「うん、お腹の中が温かい。私の中も全部先生で……最後は本当に凄かったけど。柿崎が幸せそうにしてたのがわかる。凄い、今幸せ」 そうかと、頭を撫でながらテラスに戻ろうと海の中を歩いていく。 歩くたびの震動は、アキラの中を染め上げるのに丁度良い。「どうする、もう一回ぐらいなら頑張れるけど」「ううん、もう十分に幸せだから。でも……」 まだ何か希望がと俯き加減となったアキラを覗き込む。「シャワー、浴びたい。先生と一緒に。柿崎みたいに、実はイチャイチャしてみたかった」「ああ、もうこの子は。今のであと二回は頑張れそう。いくらでも付き合ってやるよ」「うん、先生大好き」 アキラのキスを受け、待ちきれないとばかりにむつきは急いでテラスを目指した。 -後書き-ども、えなりんです。今回、奇数話ですがエロ話です。特別なイベント中は奇数が日常、偶数がエロという法則が乱れます。前回美砂だったので、今回はアキラの心中の吐露でした。ちょっと、腹黒いかなとも思いますが、女の子はこれぐらい普通かな?そんなもんじゃねえと仰る方もいるかもしれませんがw次回も南国での旅行話、もちろんエロ話をしてから新章です。麻帆良祭のお話ですね。準備から開催、麻帆良祭後の連休まで。三十八話までかけてやります。やるのですが……申し訳ないですが、週三更新から週二更新に戻します。まだストックは余裕あるのですが、先の執筆が進んでおりません。この三月、殆ど進んでません。四月からリアルが急がし、というか現在急がしなので。申し訳ない、水曜、土曜更新に戻します。それでは次回は水曜です。余裕できたら、また週3に戻しますんで。