第四十一話 一万やるからジュースとお菓子買ってこい そろそろ梅雨明けが見え始めた六月最後の平日の事である。 また天気予報は外れかと土砂降りの様子を見せる雨模様の日。 期末まで半年を切って、各教室は放課後にも関わらず居残り生徒が続出中だ。 特に多いのはやはり学年最下位を爆走中の二年A組であった。 ホワイトであるレイニーデイを加えた新バカレンジャーを筆頭に、成績不良者がちらほらと。 ただし勉学に励むグループは三手に別れていた。 純粋に勉強が出来ずに居残りテストを受けている神楽坂や佐々木がその例だ。 バカレンジャーのレッドとピンクを筆頭に、早乙女と長谷川、釘宮である。「しくじった、まさかこのパル様が。原稿、締め切りが」「けけけ、くそつまんねえBL本なんて落としやがれ。ゴミが減って清々する」「なんだろ、この二人と一緒にいると私とっても場違いな気が。帰りに松屋で癒されよ」 ぶつくさ言いながら追加テストを行っているが、割と三人は余裕が見える。 早乙女の言う通りちょっとしくじっただけで、頭を抱えてへたり込むレッドとピンクほどではないのだ。「こらこら、小テスト中に私語は駄目だぞ。出来たら、僕に見せてくれ。一緒に採点しながら解説しようか」「た、高畑先生と採点。放課後の教室で二人きり。あぁ、でも全然わかんない。全くできませんでしたなんていえない」「明日菜、大丈夫。私も全然わかんない」 監視監督役が高畑なので神楽坂のやる気は出たり減ったり、佐々木のフォローもあまり意味はない。 他に留学生という枠で日本語の勉強をしているレイニーデイズに古、マグダウェルあとおまけの絡繰だ。 教師役は小鈴と葉加瀬と、充実振りで言えば他に類をみない。「茶々丸、頑張って。貴方は、経験さえ積めばロジックを見直したりデータの正規化でどんどん得意になるから」「了解です、葉加瀬」「ずるい」「仕方ないネ、そういう生まれヨ」 ハッスルする葉加瀬や冷静な絡繰を見て、率直な意見をザジが述べた。 三文字の単語でありながら、そこに込められた想いは深く重い。 ただ小鈴の言葉の意味は理解しているのか、こくりと頷いて読書を再開した。 茶々丸は少し異なるが、彼女達が読んでいるのは小学校低学年用の童話や小説だ。 基本例文は色々と叩き込んだので、楽しく学習する為に本を読むのである。「凄いネ、この大きなカブ。大人数で頑張っても抜けないとは、修行にぴったりアル!」 と、このように古などは割りと楽しんで読書を進めていた。「よし、今日の課題は終了。これで日本語強化習慣も終わりだ。おい、タカミチ!」「ん、どうしたんだいエヴァ?」「ああ、なんかエヴァちゃんと高畑先生がさり気に親しげに!」 これはまずい、麻帆良祭の人気投票の影響かと神楽坂がまた頭を抱えていたが。「ほれ、今直ぐに寄越せ。若造、乙姫から預かってるんだろう。囲碁の参考書を!」「参考書って、まさかこれの事かい?」「そうだ、それ。は?」 高やけに艶やかな色の拍子を持つ本を取り出した高畑から奪い取った。 艶やかといってもデザインはシンプル。 主題の下に一巻を示す一を円で囲み、その右手には一人の子供が真剣な眼差しで立っている。 表紙の絵だけでは分かり辛いが、題名に碁とあるだけで一応主軸は分かり易い。「あっ、これ知ってる。弟がなんか読んでた」「ヒカルの碁ね。まあ、子供が囲碁に入門するには確かに参考書だね。これで随分、囲碁人口が増えたみたいだし」「アイツ、馬鹿だろ。マグダウェルの囲碁レベルを調べてからにしろよ」「ふっざけるなー!」 思わず破り捨てようとしたそれは、勿体無いと長谷川が一応の死守である。「あの若造、人をおちょくりよって」「いや、割りと真剣に考えた結果だと思うぞ。リアル系漫画なら日常会話に困らないし、マグダウェルが興味のある囲碁の話だし。結構面白いぞ、本因坊とか本格的な事もでてくる。絵が綺麗だからオタク臭くなくてとっつき易い」「本因坊、まさか本因坊秀策か?」 別に長谷川はそこまで詳しくはないので、マグダウェルの食いつき用は謎だったが。 返せと彼女が奪い取っていって教室の隅で読み始めてもやれやれと肩を竦める程度だ。 さらに最近発覚した、小学校を殆ど通っていなかった長瀬と桜咲の存在である。「今さら小学生クラスの勉強は思うところはあるでしょうが。基礎が何事も大事ですので。ここは一つ、お忍びあそばせ」「忍者ではござらんよ」「承知しておりますわ」「なんですか、その会話は。私には使命が、お嬢様をお守りする。このような事をしている場合では……」 などと雪広を教師役として、まずは基礎をと小学部の勉強を行っている。 現在この場にむつきはおらず、高畑が全体を統括して勉強を教えていた。 なんだかんだと零しても、サボタージュしないだけマグダウェルよりはましだ。 二人共それぞれ理由は異なるが、真面目にテキストに取り掛かかり始める。「これはウカウカしてられないな。本当に、真面目に教師しないと乙姫君にA組の担任をとられてしまうな、はっはっは」「高畑先生、それどういう事ですか!」「へえ、担任のお墨付きか。良いんじゃないですか、私は歓迎ですけど」「ちょっと千雨ちゃん!」 なんて事を言うのと、麻帆良祭前の派閥が勃発しかけたりしつつ。 ぎゃいぎゃいと追加テスト中とは思えぬ賑やかさで放課後の授業が進んでいく。 本人は笑っていたが危機感はあるようで、高畑も熱心に教えていった。「そうだ、乙姫先生で思い出したけど。高畑先生がいる日は顔出してくれないんですか?」「以前なら顔出してたろうけど、彼はちょっと水泳部の臨時顧問が決定してしまってね。以前の顧問の先生が、とある事情で転勤してしまってね」「顧問したからって給料増えないんだろ、ご愁傷様だな」「いや、水泳部の顧問でしょ。美少女達の水着見放題って喜んでるんじゃないの」 佐々木の疑問に、少々言い辛そうに高畑が答え、長谷川と釘宮が食いついた。 早乙女は大人しいが、小テストの裏の白紙に教師と水泳部員のいけない関係を描いていた。 ただし、生徒の方も男子であったが。 それはともかくとして、「エヴァンジェリン、どうしたネ。そんなにボロボロ泣いて」「マ、マスターまだ花粉症の季節では。まさか、腹痛生理痛では」「私が生理痛になるか、馬鹿たれ。ぐす……」「ちょっと、なんかマジ泣きしてるんだけど、この子!」 超の言葉でエヴァンジェリンの様子に気付き、絡繰がおろおろと慌てていた。 やや古風な口調で口の悪い、だが外見は可愛らしい子が泣いているのだ。 例の漫画本を片手に、泣いてないとも言いたげに何度も目元を拭っている。 高畑の事で軽い嫉妬をした神楽坂も、これにはびっくりであった。「おいおい、エヴァ。どうしたんだい、登場人物がニンニク汁だらけにされたとか貰い泣きかい?」「今は貴様の詰まらない冗談に付き合っている気分ではない。この六百年、私は一体何をしてきた。光に憧れつつ、他者を恨み何を積み重ねる事もなく」「おーい、六百年とかマグダウェルが親父ギャグに目覚めたぞ」 長谷川に百円を百万円とのたまう親父ギャグと同一視され、多少額に血管が浮き出ていたが。 感動の方が上回り、なんとか耐えられた。 むしろぶわっと涙腺が崩壊する。「千年、ただただ神の一手を極めんが為に。相手の謀略に心を痛め入水し、死して肉体が滅びようと、ただそれだけの為に。なんという気高き精神、囲碁への愛」「あちゃ、なんか琴線触れちゃったみたい。でもヒカルの碁なら、ヒカル×塔矢が主流だけど、私としては行様×佐為なんてお勧めで」「ちょっと待て、お前は余計な雑念を入れてやんな!」「待てよ、幽霊だと? 相坂、おい相坂!」 早乙女を容赦なく後ろから殴りつけて気絶させていると、突然マグダウェルが立ち上がった。 教室の隅、具体的には朝倉の席の隣にまで駆け寄り、空中に向けて喋りかける。 当然の事ながら、高畑以外はどん引きだ。 寡黙で多少口は悪いが、漫画に感動なんて意外と可愛いところがと思った直後なだけに。 そんな風に周囲に思われたとも思わず、マグダウェルは彼女だけに見える妖精さんに話しかけるのを止めなかった。「そうか、貴様も多少は囲碁が分かるか。ならば、丁度良い。貴様も際限のない生を持つ身だ。私と一緒に目指さないか、神の一手を!」「エヴァ、出来ればそのへんに……」 高畑でさえ多少の引きつりは隠す事もできず、賑やかに追加テストは続いていった。 むつきは高畑の言う通り、女子中等部の室内プール場にいた。 以前に問題を起こした顧問が急遽、転勤と言う事でならばとお鉢が回ってきたのだ。 期末後の夏休みでは三年生の最後の大会があるし、出来れば見知った先生が良いだろうと。 元々強豪部なのでしつけは行き届いており、部長が雑務をこなせる事も大きかった。 むつきが全くの素人という事も今回は推された理由でもある。 下手に知識がなければ大会直前で無理なフォーム改善等、我を通さないであろうと。 ただ一点、先生が転勤と言うのは今一信憑性が薄い。 特に新田などは、学園長による何やら隠蔽めいたものを感じるとか言っていたが。 とりあえず、急に顧問に推薦されたむつきは、それどころではなかった。 例の室内プール場のプールサイドに水着美少女を並ばせ、その視線にさらされている今は特に。「知ってると思うけど、臨時の顧問になった乙姫だ。晴天の霹靂だろうが、まあ夏の大会に向けて頑張ろうな。その前に期末あるけど」 最後の一言でキャーッと黄色い歓声が中途半端に消えていく。 水泳部内でのむつきの人気は麻帆良祭で分かっていたので、照れはしても驚きはしなかった。 ただ、水泳に詳しい顧問がいなくなった割には、誰一人として不安を感じていなさそうだ。 ちょっと不思議なので、後で部長に聞いてみるのも良いかもしれない。「へえ、先生も若い乙女の操縦方法分かってきたじゃん。やらし、生徒の一人や二人、もう食べちゃったんじゃないの。ラブハンドル使って右へ左へ」「止めて、洒落にならないからそういう弄り止めて。おい、そこで何故大河内を見る!」「違うよ、その何もないから」 部長のせいでむつきの前に並んでいた全員が示し合わせたようにアキラを見た。 興味、羨望、たまに嫉妬とその視線は様々である。 ただ当然ながら事実はどうあれ、アキラは否定するに他ない。 実はなんて言い出せば、永遠の別れは目に見えているのだから。「これが女子部のノリか。知ってたつもりやけど、やっぱ違うなぁ」「そして当然のように和泉が俺の隣にいる件について」「食ったのそっちかぁ!」「こら、部長。お前麻帆良祭で色々俺に相談してから猫被らなさすぎだ。前に顧問した時は、真面目で統率力のある完璧超人だと。雪広みたいな奴だと」 コツンと拳骨を落とし、和泉を指差していた部長を涙ながらに止める。 もちろん相談とは、セックスフレンドの件だが正直に言えるはずもなく。「雪広のお嬢と比べられても、こちとら一般庶民だし。それに先生分かってない。前は色々アキラが大変な時だったし、ふざける場合でもなかったじゃん。それに乙女はどんな男が相手でも最低一枚や二枚は猫被ってるの。あの時、十枚ぐらい被ってた」「それで今はゼロ枚と?」「さて、それはどうかな?」 ニヤリと笑われ誤魔化され、一体どれが本当でどれがプラフやら。 以前使った完璧とは意味が異なるが、小鈴よりの完璧である。「兎に角、顧問の先生が念願の乙姫先生になって超ハッピーだけど、浮かれてはしゃいで事故なんてのは勘弁ね、特にアキラを筆頭に親しい二年生」「部長、何故かさっきから苛められてる気が」 部長のお言葉にはいっと短いキビキビとした返事が返る。 ただ真面目一辺倒ではなく、弄る事は忘れずアキラの顔は真っ赤であった。 美砂のように普段誰かに惚気る事がない為、慣れていないせいだろう。「大河内は置いておいて。本当、事故のないようにな。水泳素人でこれから勉強する身だから何も出来ないけど、それだけは注意しときたいから」 はーいとやや間延びした返事が返るも、やはり少し浮かれた様子は見過ごせない。 というか、何故誰もなんでこんな素人がとか、前の顧問が良かったとか言わないのか。 やはり統率と言う面で返事からも分かる通り、ちょっと舐められているような。 歓迎されたのも扱い易い先生が来たからとか、怖い想像が脳裏を過ぎる。 この歳で生徒から苛められたら、相当なトラウマになりそうだ。「て言っても、どうせ今週も僅かで直ぐに期末休みだし。浮かれて事故起こされるよりはいいかな。折角着替えたけど、今日は練習中止。どっかの教室で乙姫先生との交流会」「部長、私のクラス一年D組だけど、一階で割りと近いし。誰か居ても私が頼めば、空けて貰えると思います」「よし、のりりんその積極性は評価します。じゃあ、一年D組の教室で歓迎会って事で。ね、先生」「仲良くしてくれるなら、多少の投資はする。ほら、麻帆良祭での賞金まだ残ってるし一万やるからジュースとお菓子買ってこい。せこいが、お釣りは返せよ。あとレシートも忘れるな」 強豪部だけあって各学年で三十人から四十人はいる。 これを一クラスに入れると狭いかもしれないが、この人数で学外の店舗とかはキツイ。 主にむつきの財布的な意味でのダメージとしても。 黄色い声の歓声も耳が痛いぐらいで、片目と片耳塞いで耐えたぐらいだ。 群がる水着美少女達が破きそうだったので一万は部長に。 それで彼女も両手を叩いて押さえつけ、まずは一年の着替えを指示した。 もちろん、買出しの為にである。 次は三年と最後に二年とし、車には気をつけてと一言忘れずにさえいた。「んじゃ、俺は戸締りを」「先生、それ後で三年がやるからこっち。ちょっと今後の方針を打ち合わせさせて。よかったらそっちの子も聞いてみる。見学的な意味で」「え、私もですか? 見学って」「よく分からないけど、行っておいで亜子。部長良い人だから」 さすがに上級生のお誘いに和泉は戸惑い、アキラに助けを求めてそういわれた。 少しだけと要領は得ないものの、むつきともどもついて行く。 監督室かと思いきや、場所は更衣室の隣にあるボイラー室であった。 水泳部は専用のシャワー室がある為なのだが、どうしてそんな場所に連れて行くのか。 顧問と部長が二人で会話するには、近いし丁度良いといえば良い。 ただ鼻歌でも歌いだしそうな部長の態度が気になり、何度か和泉と顔を見合わせながらボイラー室に入った。 着替え前なのでシャワーはフル稼働であり、ボイラーがゴウンゴウン結構煩い。 和泉は大きな音が苦手なのか軽く耳を押さえており、むつきだって耳がちょっと辛かった。 会話には不向きにも思えたが、案の定無言で部長が二人を手招きした。「急いで、交流会の為にあの子ら多分、普段と違ってカラスの行水だから。先輩を待たせないってのもあるけど」 部長が小声にも聞こえる声で呼び、壁に貼ってあったポスターを剥がした。 火気厳禁というプラスチック型の板のポスターであり何の意味があるのか。 ここここと指差され覗くと、まあ途中から予想はしていたのだが。「先輩達より先にシャワー浴びるって気分良い」「でも急がないといけないから、最後で良いからちゃんと洗いたかった」「キツイ練習もなくなって、超ラッキー。乙姫先生様々」 更衣室から直通のシャワー室から戻ってきたのは、先に着替えを命ぜられた一年生だ。「ちょっと、何先生でいきなりオナってんの」「クロッチ部分がちょっと痒いだけだよ。ソレより見て、やっと生えてきたの。これで私も大人の女の仲間入り」「処理が面倒なだけだよ。濃くなってくると毎日お風呂で。水泳部員ってそこ面倒だよね」 猫さんのパンツを履いた少女が股間を弄り、後ろから突っ込みを受けては胸を揉まれる。 しかし反論にとまたパンツを脱いではまだまだ薄い若草を自分で引っ張ったり。 やや大人びた発育具合のものは、苦笑いしつつひりひりするしと陰部を撫でていた。 当然の事だが、入れ替わり立ち代りシャワーに行っては全裸で戻ってくる。 やはり数ヶ月前までランドセルを背負っていただけに、発育具合は少々。 時折、これはという逸材もいるが、目の前は青い果実の肌色で一杯であった。「お前、これ覗き穴。だって俺は例外だけど、毎年女の先生で殆ど男子禁制で」「うわっ、被ってる猫まるでなし。うちらも一年生時はこんなんやったなぁ」 むつきに代わって覗き込んだ和泉もやや懐かしそうにする程だ。「これ、代々部長に受け継がれてるのぞき穴なの。これで各学年、個人は少し難しいけど本音を知って操縦していくと。トラブルの火種は、大きい大会前にわざと暴発させたり」 顧問初日で、何やら強豪部の闇に一気に引きずり込まれた気がした。「怖ぇ、何考えてんだ。和泉君、水泳部の顧問として生徒の本音をもう少し。ぶっちゃけそろそろ代わって。もうちょい見せて」「何言ってんのや先生。浮気したら怒るて。それに覗きはうちの領分やん」「お前こそ、なにわけわかんない事言ってんの。副担任命令です、代わりなさい」「へえ、やっぱりその反応。貴方も先生の恋人、それともセックスフレンド?」 びくりと覗き穴を争っていたむつきと和泉が体を震えさせて硬直させた。 お互い青い顔で見合っては、ぱくぱくと声がでない言葉の応酬である。 とりあえず、お互いの共通認識はこの部長怖いであった。 一体この覗き穴から他人のどんな後ろぐらい部分を見てきた事か。「お前、この前アキラのフォームが云々ってまさかここから?」「フォーム崩したのに気付いたのは本当。ただし、疑問に思っただけ。偶々アキラが一人で更衣室に入った時に覗いたら、お腹の上から子宮抑えて先生、王子様って嬉しそうに微笑むんだもん」 ちょっと気分が盛り上がったのか、そのままオナニーを始めたのは彼女の尊厳の為に黙っている優しい部長であった。「和泉ちゃんだっけ。はアキラの友達らしいし、たぶんセックスフレンドの方かな。まあ、だったら私もって言うところだけど、今回は別件。ほら、先生覗いて」「それは嬉しいが、何故ベルトを。おい、止めろ」「先生、あまり大きな声あかんて。ボイラー煩いけど聞こえんとも限らへん」「いいから、任せて。和泉ちゃんもほら、お口開けて。精液で壁を汚されると犯人ばれちゃうよ」 後ろから抱きつくようにして素早くむつきのズボンを脱がせ、取り出した一物を握る。 無理矢理振りほどけないこともないが、さすがに転ばせたりして大きな音をたてるとまずい。 壁に押さえつけられ、部長に扱かれながら穴を覗き込んだ。「和泉、すまん。これ抗えんわ。悪いんだけど」「フェラやね。ええよ、でも最近私が奉仕ばっかやし、ちゃんと奉仕してや」「週末な、五回でも十回でもイカせてやるよ。もう、マジでこれセックスフレンドだ」 目の前で自分が押し付ける形となった和泉には、口で受け止める役を頼んだ。 部長の言う通り、ボイラー室に精液の跡などあれば大問題。 覗き穴など直ぐに見つかるだろうし、犯人が誰かなんて一人しかいない。 基本的に男子禁制の場所に偶然許可が降りたのはむつきだけなのだから。 初日にどうやって穴なんてという疑問など、恐らくは小さな事だ。「なんやかんや言うて、先生。勃起しとるやん。数ヶ月前まで、ランドセル背負っとった子らやよ。夕映ちゃんの方がさらに小さいけど」「馬鹿、これは部長が」「好美、小瀬好美。先生、実は私の名前知らないでしょ。友達はよっしーって呼ぶよ」「愛称は勘弁して、前酷い目にあったから」 首筋にキスされ一物は白い手で扱かれ、亀頭部分は和泉がパクつき舌で愛撫する。 まだまだたどたどしい和泉の舌触りを補助するように、小瀬の指が竿を摩ってきた。 のみならず、出しちゃいなよとばかりに袋も丹念にぎゅっぎゅと絞ってくる。 さすがセックスフレンドを所望するだけあり、ちょっと上手かった。 頑張れ俺のセックスフレンドと、和泉の頭に手を添え少しだけ腰を動かした。「ぅっ、うぅん」「和泉ちょっと涙目で見上げるな、興奮するだろ」「先生、和泉ちゃんばっかり。ほら、はやく覗かなきゃお宝映像逃しちゃうよ」 なんだこの地獄はと思いながら、覗き穴を改めて覗いた。 部長改め、小瀬に言われたからで覗きたいから覗いたわけではないと思いたい。「それでさ、皆どう思う。乙姫先生の事。残念だけど、イケメンじゃないよね」「でもからかいがいありそうだし、気前良いし。前のアイツよりは百倍まし」「アレ、絶対サドだよね。もしくは若くて可愛い私達に嫉妬してるとか。本当、直ぐ怒鳴るし。的外れなアドバイスに先輩達ガン無視だったし」「大河内先輩が大会記録出した時も、自信満々で私が育てたってドヤ顔だったもんね。水恐怖症植えつけといて、それ治したの乙姫先生って噂だし」 小瀬が見せたかったのはこれの事であったのか。 どうやら以前の顧問は随分と嫌われていたようだ。 あの事件の時も、直接会った事はないので何処の誰なのか知らないのだが。 ただ喋りながらパンツ越しにお尻をかくのは、夢が壊れるので止めて欲しい。「先生、まだ一年生だけだけど。歓迎されてるのは本当、猫被ってるわけじゃないから。これで私をセックスフレンドにしてくれたら言う事なし」「痛ッ、和泉噛むな。噛むな、また落ち込んだら復活に時間かかるだろ」「うー、んぅふぁ」 まだ不満そうだが、機嫌は損ねつつもフェラを継続してくれた。「でも噂って言ったら、本当かな。大河内先輩と先生が付き合ってるって」「少なくともアレ惚れてるよね。先輩、隠してるつもりだけど大好きオーラ出過ぎ。もう、格好良い上に可愛いとかなに。最強?」「先輩体付きは肉食だけど、内面小動物系だもんね。告られたら、私なら食べちゃうな。うん、のりりんは残念。内面肉食だけど、外見小動物だから」「うっさい、私の目指す場所は小瀬先輩だからいいの。目指せ、次期次期部長。私の手で全国制覇。うん、でも反面教師いたからもう少し皆の意見聞くね。とりあえず、ちょっと喋り過ぎ。怒られないうちに撤収、買出し!」 小さい上にツインテールの短いちょんぼが小学生を抜け切らないが。 なかなかの統率力でのりりんと呼ばれた少女が一年生をせかした。 ただまだ未熟なせいか、少しばかりその統率力を発揮するのが遅かったようだ。 更衣室の外からごんごんっと荒っぽいノックがされてしまった。「一年、遅い。のりりん、こういう時にアンタの出番でしょ」「す、すみません。ほら、キビキビ着替える。遅い人は乙姫先生にサービスショット!」 のりりんの指示を最後に本当に急いで着替えを始め、押し合いへしあいしながら外へ。 又しても遅いと怒られながら、三年生に追い出されていく。 ああ、やっぱり子供だなと、キャンキャン喚く姿が小型犬を思い出させた。 せめてこれぐらいの成長はと、真下で頑張ってくれている和泉の頭を撫でる。 褒められたとなんとなく判ったのか、咥えながらにっこり微笑む和泉はある意味で成長のしすぎか。 そこへ入れ替わるように入ってきた三年生の発育との差も余計に感じられる。 悪く言えば寸胴型が多い一年から、ペチャパイは僅か、豊満な体を持つ者が増え出した。「先生、興奮しすぎ。一回出す? ちょっと飲んで見たいしええよ」「吐きそうだったら、私にパス。慣れてるから、楽勝」「ちょっと苦しいかもだけど、頼む」 股間から見上げてきていた和泉の頭を掴み、イマラチオで攻め立てる。 手コキが出来なくなった分、小瀬はスーツの裾から手を差し込み乳首を摘んできた。 指先でこねくり回し、顎で肩を突かれ振り返ってみれば突然のキスであった。 さすがに愛撫されっぱなしは悪いので、和泉から片手を放して後ろ手に伸ばした。 そう言えばまだ小瀬は水着だが、股間部分の布地を指の腹ですって刺激する。 少し濡れた競泳用の水着の手触りは少しゴム的なものだが、肌触りが普段中々ないものだった。「和泉、出すぞ。好きなだけ飲め」「うぐぉ、んぅんぅ」 こくこくと喉を動かしては精液を飲み下すが、量が量である。 もう無理とむつきのお尻を叩いてギブアップ、むつきもある程度出したら少しは我慢できた。 尻に力を込めて射精感を押さえ、その間に和泉が立ち上がって小瀬の隣に。 ちゅっと唇を合わせて、精液を口移ししてはまた竿を加えてちゅぅっと吸い出す。 少し面白いが笑ってしまいそうなので、視線を覗き穴に戻した。「あっ、冷たい。一年、ベンチ濡れたら拭けっていつも言ってるのに。外で着替えさせるぞ」「まあまあ、慌てて追い出したし。今日は勘弁してあげようよ。それに乙姫先生に顧問代わったから不味くない、それ」「前の顧問は寧ろ死んでて欲しいけど。今回は小瀬のお気に入りだけど、正直皆どうなの?」「水泳知識は一点、勉強するって言ってたから温情で。顔はちょい辛口で五点、お洒落三点、性格は七点、男気あるし気前良いけど時々視線がやらしいから。それがなけりゃ九点かな。あれ、絶対大河内とヤッてるよね」「そりゃそうでしょ、人魚姫と王子様だもん。大河内に告られてヤッてないとか、もはやインポだって。あの胸、あの腰つき。私が男なら速攻妊娠させる自信ある」 なんというか一年生からも三年生からも同じような評価とは。 アキラは愛されていると言うか、同性からさえエロイ目でみられている。 それもあるが、何故全員そろいもそろってヤッてる説なのか。 一年生すら大好きオーラとか、正直さっぱり気付いてなかったむつきである。 既に直接好きだと告られているので、当たり前過ぎて気付いていなかったのもあるのだろうか。 唐突に最後の射精感に襲われ、一度目は一滴残らず和泉が受け止めてくれた。 すみません、今はそのアキラの親友の口を犯してますと真下を見る。「気持ちよかったぞ、和泉」 本心からの言葉と共に撫でてやると、それはもうにっこり微笑まれた。「へへ、先生一杯出してまだ元気やん。ちょっと口臭気になるけど嬉しかったり」「思った通り、上手いだけじゃなくて絶倫系。見込んだ通りの先生だったわ」 堪りませんなとでも言いそうな小瀬が、和泉の唾液とむつきの精液で汚れた竿を丹念に手のひらでなぶり摩ってくれた。 射精後の敏感な頃合だけに、刺激が強くなり過ぎないように。 男の弄び方は、最近セックス三昧の美砂やアキラよりも上のようだ。 どうすれば男がよろこぶのか、的確に奉仕してきてくれている。「小鈴に薬で肉体改造されたからな。あと、内面ナイーブだから取り扱い注意だ、この野郎」 精液臭い口で耳元で囁くのは勘弁して欲しいが、自分が出した結果である。 多少は我慢して、秘部を包む水着を指で押しのけ谷間を探ってやった。「んっ、この指。久々にイケるかも」「あ、ええなぁ。先生、本当に週末は奉仕してな。綺麗綺麗するから」「はいはい、アキラと一緒に可愛がってやるよ。だから、今は頼む」 頭を撫でて頼み、今一度視線は覗き穴である。「ヤッたと言えば、みきたん。麻帆良祭のどさくさで彼氏とラブホ行ってきたんでしょ。どうだったのさ、処女喪失の感想は」「嫌なこと聞かないでよ、最悪。よっしーの言う事、ちゃんと聞いておけば良かった。私の彼なら大丈夫とか、前の私を殴りたい。こっちは痛いって言ってんのに、良いか気持ち良いかってガンガンついてくるし。蹴り飛ばしてやった、もちろん振った」「うわぁ、私もよっしーの言葉はちゃんと聞いとこ。時々正論にイラッとする事もあるけど、だいたい聞いておけば間違いないよね」「てわけで、乙姫先生は合格って事で。でもなんであんなに気に入ってんのかな。初体験、殆どレイプだったって本人も言っててむしろ男嫌いだよね」 その言葉に思わず和泉と同じく振り返り、小瀬を見てしまった。 どうやらこれが聞かれたのは不本意らしく、たははと笑う表情も何処か弱々しい。 今ほんの少しだが、被っていた猫の隙間が見えた気がした。 むつきを選んだ理由は不明だが、ずっとこの子は助けを求めていたのだ。 恐らくは、普段の明るく前向きで皆から慕われる完璧な姿は仮の姿。 怯えを悟られないように犬があえて果敢に吠えるように、全てを押し隠していた。 だからむつきにだけ助けを求め、方法はアレだが必死に呼んでいたのだ。「小瀬、お前」「止めて、そんな目で見ないで」 途端に、語調を強めた小瀬が背を向けるように、視線から逃げるように背を向けた。 だがそれも一瞬の事で、すっかり猫を被りなおした笑顔で頭をこつんとしながら振り返りなおす。「失敗、失敗。さて、私も皆と一緒に着替えないと。最後に覗き穴から、よっしーのストリップショー見せてあげる。けど先生、ここを使う時は私は絶対に呼んでね。見つかった時、フォローできないから」「小瀬、ちょっと待っ」 咄嗟にのばしたむつきの手をするりと、小瀬が交わしボイラー室を出て行こうとする。「待った、先輩」 逃げるように振り返った小瀬の手を掴み取ったのは、和泉であった。 フェラ中であった為、かなり強引に飛びつき、四つん這いになりながら。「和泉ちゃん?」「待った、逃げたらあかん。それじゃ、一生逃げ続けるだけや。助けて欲しかったら言わな、他人の王子様でもええやん。先生、既にお嫁さん候補四人とセックスフレンド……えっと直ぐに人数出せんぐらいおる」「さすがに、予想外の数なんだけど。マジで、先生?」「和泉、お前」 何を暴露してんだと怒りたいが、その理由がわかりきっているので怒るに怒れない。「マジだ、アキラは嫁候補の一人。しかも全員担当クラスの子だ。あっ、言ってて泣きそう。だけど頑張る、もっと泣きそうな子がいるから」 和泉が掴んだその手をむつきも掴んで、強引に引き寄せ逃がさんとばかりに抱き寄せた。 やはり動揺は隠しきれていなかったらしく、抱きしめた体は小刻みに震えている。 安心おしとばかりに頭を、そしてその震える背中をぽんぽんと叩く。 正面から抱きしめられ、むつきの肩口から顔を覗かせた小瀬は見た。 突然何かを決心したように制服の上着を脱ぎ始めた和泉をである。「先輩、傷ついた事は隠さんでええ。傷口見せるのが怖いのは分かる。ほら、私もな。よおく見えるねん。大きな傷やろ?」「嘘、女の子なのに。そんな、か」 和泉の背中の傷を見て、思わず可哀想と言い掛けた口を小瀬が無理矢理閉じた。「アキラの言った通り、ええ人や先輩」 それだけは言っては駄目だと、和泉のみならず自分の女の子の尊厳さえ掛けて。「うち、今ものすごく先輩を癒したい。一緒に先生のセックスで気持ち良くなろ。先輩の傷、心の傷を。エッチで癒そう」 和泉の言葉に倣う様にうんと頷いた小瀬の瞳からは一筋の涙が零れ落ちていた。-後書き-ども、えなりんです。今回ほど、意味のない題名もないです。さて、冒頭は珍しく高畑が教師してるシーンです。エヴァとかに喰われてますけどね。エヴァもむつきのおかげで道を踏み外し中。ヒカルの碁を知った、佐為を知った、佐為が碁をする為によくしてた事は?ちゃくちゃくと、ひかげ荘に来る理由を構築中です。後半は例の水泳部顧問に就任したむつきの話。のはずが、微妙に亜子が主役回。部長こと小瀬好美の登場で、亜子頑張った。ヒロイン頑張ると途端にむつきの影が薄まりますが。棒がないとエロできないしね、影は薄くとも意味あったよ。やったねむつき、家族(嫁)が増えるよ!そんなこんなで次回、サブヒロインとの正規エロ回。更新は水曜日です。