第五十四話 お嬢様や刹那のようなピチピチの女の子の方が 嗚呼、見たくない見たくないと思っても、現実は非情である。 着物姿の京美人が、繁華街の片隅それも電柱の足元で蹲り嘔吐する様など。 スポットライトのように照らし出してくる街灯が恨めしい。 もう深夜近いというのに、くっきりはっきりゲロまで纏めて宵闇を照らしている。 もう女性と言う名の幻想が、ガラスの様に砕けては粉雪の様に吹き飛ばされていく。 美砂達はまだ少女でありちょっと毛色が違うので大丈夫。 唯一の役得と言えば、背中をさすった時に触れるさらさらの髪だろうか。 同じ京都出身でも、近衛や桜咲の黒髪とは違う、染めたような茶髪がやや惜しいが。 髪にゲロが掛かるのは可哀想なので失礼と一言断って、勝手に纏めて持ってあげていた。「葛葉先生、少しでも歩けます? ここじゃ、タクシーも拾えないですから」「うげぇ……もう少し、さするのを止めないで。うっ」 一体どれだけ飲んだのか、本当に店の日本酒が底をついたのではないのか。 結局気分が悪くなった葛葉を連れて店を出てきたが。 斉藤と酒呑は、まだまだこれからとほろ酔い気分で二人きりの二次会へ。 まだ酔いつぶれてはいないが、気分の悪くなった人の介抱も幹事の仕事の一つと諦めるしかない。「酒呑、あいつ部下とかにもあんな飲ませ方してないだろうな。未だに、前時代的な一気飲みとかパワハラしてそうで怖い」「飲むとか、今はうっぷ。ぅっ」「もう、ここで全部吐いちゃいましょう。ねっ、タクシーの中とかクリーニング代も掛かりますし」 まだゲロゲロしている葛葉の背中を摩りながら、逆の手で携帯電話を操作する。 既に寝ている子もいるかもしれないが、一応全員にメールであった。 葛葉の名誉の為に個人名は伏せて、ゲロった人の世話で遅くなると。 続々と返信が返って来るが、見ている暇もないので携帯はそのままポケットに。 改めて背中を摩っていると、胃液が逆流する時のうっという声が途切れている。 もう全部吐いたかなと思っていると、今度は別のものを葛葉が吐いている事に気付いた。「うっ、ぅぁ……折角の、合コン。なんで、あの坊主がせめて西の」「関西出身者、喜んでたじゃないですか。逆に関東人が良かったんですか?」「違う、わよ。ぐす、既婚者の沖田を連れて来たまでは良かったのに。まさか、斉藤がプライベートではそこまで硬くないなんて。チャンスだったのに」「泣かないでくださいよ、また開きますから。他にもダチが一杯とか言いませんけど、ほらガテン系好きなら酒呑の部下とか。可愛い男だって見つかりますって」 嗚咽を漏らす葛葉に肩を貸し、若干引きずるようにして歩き出した。 ただふらふらの葛葉に翻弄され人通りの多い道で吐かれそうで、慌てて路地に連れ込んだのだ。 若干現在地が分からず、道を聞こうにも酒飲みにとってまだ夜はこれからという時間にも関わらず殆ど人影がない。 学生に大人気で有名人の葛葉を連れ出した時、多くの者がつけてきた為、観音のくれたお守りに殺されませんようにと願って首にしたのが悪かったのか。 変にお守りが効いて、本当に誰一人ゴーストタウンのように人を見ない。「怖っ、なんで誰もいないの。ちょっと、ここ何処よ」「それは……そう、そういうつもりだったのね」 観音がくれたお守りに葛葉が気付き、やけっぱちに似たひくついた笑みを見せた。 酔ってふらふらだったはずの葛葉の重みがふっと肩から消えてしまった。 やばい落としたと思った瞬間、腹部にズドムと重たく鋭い衝撃が。 以前、アキラにもあのしなやかな足で腹部を蹴られたが、愛がない分万倍痛い。「い、きが……」「合コンで人を絶望させておいて、認識障害まで使って私をこんないかがわしい場所に連れ込んで。エヴァンジェリンもその手にやられたのね。チャラ男の友人は所詮チャラ男」 腹を押さえながら葛葉を見上げて、ようやく気付いた。 ネオン輝く繁華街ではあったのだが、お泊りご休憩何円の看板がちらほら。 酔った葛葉を抱えたまま迷子かと焦っていて、本当に気付いていなかった。 ラブホ街、待ってなんか色々と誤解がと、特にマグダウェルと手を伸ばすが何もつかめず。 いや、むしろその葛葉にがっちりと腕を捕まれ、米俵のように抱え上げられた。 最近細マッチョ化し中のむつきを軽く抱え上げるとは、どういう腕力をしているのか。「いいわよ、いいわよ。幸せな奴が憎い。貴方、チャラ男のくせに可愛い彼女がいるそうね。覚悟しなさい、壊してやる奪い取ってやる。この際、チャラ男でも構わないわ」 全部吐いたけど、この人酔い過ぎと抱え上げられたむつきは混乱続き。 的確に鳩尾を打たれた事や、軽々と米俵の様に抱え上げられた事。 義兄さん助けてと神多羅木に電話をしたいが、腕も纏めて担がれポケットに手が届かない。 そのままややふらついた足で葛葉が向かうのは、目の前のラブホテルであった。「かはっ、ちょっと葛葉先生。それはまずい。誰かに見られでも、てか待ってる。家では大事な子が待ってるの。可愛い彼女が俺の事を」「寮から引っ越したとは聞いてたけど同棲とか、婚前交渉とか。羨ましくなんかないわ、むしろぶっ壊してやる。覚悟しなさい、カップルは皆不幸になれば良いのよ!」「嘘だろ、マジで。天狗、観音。ふらっと現れろ、届け親友にこの思い。あと、酒呑は大好きな酒に溺れて溺死しろ!」 そこで都合良く、ナンパに出かけたりふらっと帰った二人が現れるわけもなく。 ついでに一部、発端ともなった酒呑を呪うも、それはないだろううわばみだもの。 むつきは女性に担がれラブホテルに突撃すると言う、衝撃的体験をしてしまった。 ロビーの受付に誰も配置しないタイプらしく、そちらの助けもない。 走る葛葉が足を止めたのは部屋を選択するパネルの前でだけ。 僅かな理性で好みの部屋、和風のそれを選び取って鍵が出るなり猛ダッシュ。 エレベーターなど待っていられるかと、本当にこの人の体力はどうなっているのか。 むつきを未だ担いだままで階段を数段すっ飛ばしながら、三階へ。 壊れるほどの勢いでドアを蹴破り、むつきはそのまま布団の上に投げ出される。 もう駄目だ、葛葉に犯されると、むつきはぷるぷる捕食寸前の小動物のように震えていた。「せ、せめて優しく」 そんな覚悟なのか諦めなのか分からない台詞も呟いた直後。 ぽふりと隣に葛葉が寝転がってきた。 ちょっとドキドキ、触れた髪の質と匂いに、まだ残るゲロの匂いにうっとしつつ。 何秒、何分と経っても何もアクションがなく、ちらっと目を開けて葛葉を見た。 よく分からないが、葛葉は仰向けで若干大の字、目を瞑ってふるふる震えている。 なにこれ、どういう状況と体を起こして葛葉を改めて見つめた。「な、何をしているのですか。早くしなさい。あれですか、雑誌で見た焦らしプレイという奴ですね。さすがチャラ男、良いわよ付き合ってあげるわよ!」 あのもしもしと、ラブホテルの演出か何かで体が淡く光る葛葉に触れる。 びくりと震えた彼女はさらに光を強め、なんか凄く体が硬く、鋼鉄のようだった。 マグロはマグロでも、冷凍マグロなんて馬鹿な言葉がふっと頭を過ぎる。 挿入したら一物の皮が違う意味で剥けて、凍りつきぽっきりいきそうな程に。 ちょっとキュッと股間を股間を掴みつつ、脅えるのは止めてむつきは立ち上がった。 物理では葛葉には勝てそうにないが、どうやら男女関係では負けはなさそうだ。 特にその領域であるラブホテルで葛葉相手に脅えるのも、馬鹿らしくなってきた。 部屋は和風の畳の上に敷かれたやや大き目の布団に枕元には行灯を模した電灯。 ちょっと布団をまくってみたが、ちゃんとベッドマットがある安心設計である。 天井もエセ板張りで、お風呂場はヒノキに見せかけた別の木製風呂であった。 美砂達中学生と付き合っていると、ラブホテルを使う事もないので少し新鮮である。「あの葛葉先生がマグロとか。本当に結婚してたのか、別れた原因ってセックスレスじゃねえだろうな。まあ、過去は良いとして。吐いた後だし、温めに」 温度設定に気をつけながらお風呂にお湯を溜め込み始めた。 また若干流された気がしないではないが、ここまでされると放っておけない。 今のままではきっと何度合コンを開いてあげても同じである。 人の事は言えないが、恋愛に不器用すぎだと肩の力を抜いてやるぐらいは構うまい。 湯船が半分ぐらいまで溜まって湯加減を見てから、部屋に戻ってみると葛葉はまだ寝たままだった。「うぅ、なんですか。なんで何も、あの人と一緒。そんなに魅力ないですか」 しかしながら、きつく閉じた瞳からぽろぽろと涙を零し始めていた。 寝転がった状態は同じながら、何もされない不安から子供の様に体を丸めている。 緊張した体もカチカチに硬直しており、良い大人がと少し笑えてもきた。 むつきを良く知る人には、お前が言うなと言われるかもしれないが。 そんな葛葉の隣にしゃがみ込み、意外と可愛い人だとコンコンと拳の裏でその固い体を叩く。「葛葉先生」「んっ、乙姫……先生?」 泣き顔から一転、ぱっと少女のような笑みを一瞬見せてくれた。 だが直ぐに少し冷静にもなったようで、若干顔色が悪くもなり始める。 一応は性格的にも真面目そうなので、男をラブホテルに担ぎこんだ事を気にしているのだろう。 だから気にするなとばかりに、むつきも微笑み返して言った。「お風呂入りましょう」「えっ、お風呂ってきゃっ」 一瞬呆けた葛葉を、今度はむつきが抱え上げた。 ただむつきもこれ以上は有無を言わさず、さっさと風呂場に葛葉を連れて行く。 激しい抵抗がないのは、まだ少し酔いが残っているからか。 布団の上でと同じく、殆どマグロ状態の彼女の着物を脱がそうとしたのだが。「あっ、あれ。これどうやんの?」 以前、アキラの巫女服を脱がした事はあったが、あれはエッチ前提。 スムーズにエロに突入できるよう、およそエロには邪魔なものを排除していた。 だがお堅い葛葉がそんな目的で着物を着てきたわけでもなく、ガチである。 帯の一つの解き方もわからず、おたおたしていると葛葉の手が伸びてきた。「乙姫先生は、先に湯船に。お任せすると、着物が捨て置かれそうで。皺になってしまいます。私は遅れていきますから」「ん?」 何かおかしい、まるで葛葉が一緒に入るようなことを言っているように聞こえ小首を傾げる。 むつきの怪訝な顔を見て、葛葉もそのすれ違いに気づいたようだ。 着物の帯をほどいていた手を止めて、わたわたと言い訳を始めた。「え、だって。着物を脱がそうとするから。ここはそういう場所ですし!」「手伝った方が楽かなとは思いましたけど、全部脱がす気は……」「良いから、男がぐだぐだ言わない。一緒に入りなさい!」 もはや何を言っても手遅れで、何切れなのか葛葉が両手を上げてまくしたてた。 本当にこの人は、一度沸騰すると無茶苦茶というか、これはこれで可愛いか。 折角の葛葉の好意なので、これ以上断るのも悪いか。 断り続けたら、一緒にお風呂に入る価値もないうんたらと泣かれそうな気もする。「それじゃあ、お先に」「え、あっ……はい」 散々だった合コンの幹事として、手さえ出さなければこんな役得も構うまい。 手早く衣服を脱いで、言葉通り葛葉より先にお風呂場へと向かった。 先に体を洗おうと、スーツを脱いで浴場へと向かう。 シャワーでさっと体を流し、備え付けのシャンプー等で髪や体を洗い一足先に湯船へ。 やや温めの温度設定は、やはり夏場のお風呂では良い湯加減であった。「ふぅ、今日も一日お疲れさん。酒呑は良いとして、観音と天狗にはちょっと悪い事したな。二人共気にして無さそうだけど、メールぐらい後でいれとくか」 目を閉じたまま首を風呂桶の縁に預けて天井を見上げながら呟く。 一先ず、お風呂で酔いを醒まし、恐らく電車は間に合わないのでタクシーで葛葉を送ろう。 それからひかげ荘に戻って、起きていればお嫁さんの相手か、他の誰かの遊び相手か。 ちょっと下半身が反応してしまい、そっちの遊びじゃねえしと自分で突っ込んだり。 やがて考える内容もなくなり、まだかなっと出入り口に振り返って葛葉を待つ。 結局葛葉がその扉を開けたのは、むつきが入ってから十五分近く経ってからであった。 やはり、一度冷静になってみるとただの同僚以外の何物でもないむつきとのお風呂に戸惑ったのか。 ラブホに続き、風呂にまで入れと脅した当人とは思えない程に、おどおどしていた。 明るい場所で改めて見てみると、葛葉の髪は綺麗な直毛だがあり得ない程に白い。 染めたというよりは、髪の色を可能な限り抜いたといった方が良いだろうか。 一枚のタオルで豊かな胸元から下腹部を隠し、女性らしいラインに沿ってタオルが揺れている。 タオルの上からでも十二分に分かる大きな胸は歩く度に揺れ、それを支える下半身もまた生唾ものだ。 確実に安産型と分かる大きなお尻や、むちましい太股がまた美味しそうである。 薄いタオルに隠れた陰毛は地毛の黒が少し見えていたり、生唾ものであった。「お待たせしました。ですが、ジロジロ見ない!」「はーい」 ちょっと普段の葛葉、というか普段も全く知らないが。 何回か言葉を交わしたむつきの知るお堅い葛葉が戻り始めていた。 チラチラと、彼女が髪や体を洗う様を覗きみたりして時間を潰しつつ。 彼女が湯船に入ってきたところで、その手にそっと触れる。 ピクリと布団の上とは別種の緊張が伝わってきたが、それも直ぐにフッと消えた。 ただし、またあの布団の上での緊張感が戻り、彼女の体が金色に光り出す。 一体このラブホテルは何処に力を入れているのか、女性のみ常にライトアップとか小鈴並みの科学技術ではなかろうか。 それにしても直立でマグロ状態とか、新しすぎる。「葛葉先生、ほら落ち着いて。一緒にお風呂に入るだけですから」「はっ、別に緊張など。これぐらい当然です。処女じゃありませんから!」 我に返っても、まだガタガタと若干震えている状態で凄まれても怖くはない。 というか、何故今処女じゃないとわざわざ言ったのか。 結婚していたのだから当然だと思うが、立ち上がって葛葉の後ろに回りこんだ。 落ち着けさせるように胸などには触れないよう、肩越しに首に腕を回した。「落ち着いて、何もしません。ゆっくりとしゃがんで、お風呂入りましょう。葛葉先生」「分かりました。ただ今は、その先生を止めてください。刀子、特別にそう呼ぶ事を許可します」 改めて刀子さんと呼び、ちょっと赤くなった彼女と共に湯船の中に。 まだあのライトアップは続いており、彼女の体に触れてもコチコチであった。 ただ自分で動く分には問題ないのか、ようやく密着状態でお風呂に入れた。 長かったと、彼女の背と髪を胸で受け止め、迷った末にお腹に腕を回して抱き寄せる。 殆ど勃起状態の一物が彼女のお尻に触れないよう一応、気をつけながら。 一瞬の迷いの後で、刀子もわずかながらに背を預けてくれた。 それと密着して分かったが、時間が掛かったのは着物を脱ぐだけが理由ではなかった。 まだ吐いてから一時間以内で、口を濯いだりと身だしなみに時間が掛かったのだろう。「す、少し温いですね」「夏ですから、コレぐらいで丁度良いですよ」 耳元で囁くように言うと、キュッと刀子が体を縮め、またライトアップが強く。 元から硬いので分からないが、気持ち硬さも上がったような。 ちょっと長そうだと、気をそらす意味も込めて適当な話題を振って見た。「刀子さんは、どうして髪を染めているんですか? 元々は綺麗な黒ですよね。京美人、男からすると少し勿体無い気も」 引っかかり一つない髪を好き、さり気に綺麗だ美人だと褒めつつ尋ねる。「それは、これぐらいなら……貴方のクラスの刹那、桜咲ですが」「桜咲? 意外な、でもないか。あいつ、剣道部だし。確か近衛と同じ、京都出身。まさか三人とも同郷とか?」「私とお嬢様はそのようなもので。刹那は少々事情が。彼女が小さい頃に剣の手解きをしたのですが、一週間程の短い期間ですが。それはもう小動物のように怯え。実際小さかったですけど」「あの桜咲がですか。ピンといつも張り詰めて、臆病さの裏返しか?」 かもしれませんと、何故か刀子がむつきの腕に手を重ねてきた。「彼女には人に言えない秘密がありますから。だから、私が染めたんです。一緒だねと。周りからは散々、その……不良娘的な事を言われましたが。その反発も会って前の旦那と駆け落ち同然で関東へ。刹那ともそれっきり」 刀子は明言こそ避けたが、桜咲は元々黒髪ではなく白髪という事なのだろうか。 周りの反応もちょっと前時代的だと思ったが、年齢の事もあるので口を噤んだ。 ただなんだろう、今凄く嬉しい。 懐かしそうに微笑む刀子は、外で今まで出会ってきた彼女とは全く違う。 彼女の体を覆っていたライトアップも、今は空気を読んで収まりつつある。 緊張も程良く解け始め、コチコチだった体に女性らしい柔らかさも。「それで、こっちに来ても貴方を慕って剣道部に?」「ええ、強くなりたいと。最も、今は厳しくし過ぎて少し怖がられてもいますが。先程も言いましたが、彼女には事情があるので優しい姉でばかりいられません」「そんな事はないと思いますよ。そりゃ、厳しくされれば時には萎縮もします。けど、何時かそれこそもう分かってるかもしれませんよ。周囲の反対を押し切って髪まで染めてくれた優しいお姉ちゃんだって」「だと良いのですが」 そう呟いた微笑を最後に、こてんと刀子が背中だけでなく首も預けてくる。 頬と頬が触れそうな程に近く、凄く潤んだ瞳で見上げられた。 だが今度はこっちが緊張しそうなほどで、弱いのである。 アタナシアに引き続き、弟や妹をそっと見守るようなお姉ちゃんには。「刀子さん、ごめんなさい何もしないって約束、破りそう。凄く、刀子さんが可愛い」「かわっ、年上をからかうものでは。男の人は、それこそお嬢様や刹那のようなピチピチの女の子の方が」 現状のひかげ荘を見ると全く持って図星だが、天狗よその口の軽さを今俺にと言葉を連ねる。「彼女達のような子が好きという人は確かに居ますけど、大半は違いますよ。ただ、ありのままの姿を見せて欲しいだけ。彼女達はあっけらかんと隙だらけですから。けれど大人は、中々難しいですしね。僕も四月頃までは生徒に対して必要以上に壁を作ってました」「本当に、私が可愛いのですか?」「ええ、とても。その証拠にほら。刀子さんが魅力的過ぎて痛いぐらいです」 今までずっと触れないよう気をつけていた一物を、彼女のお尻に触れさせた。 安産型の肉厚のそれに埋もれさせるように強く押し付けもする。 またしてもピクリと体を震わせた彼女だが、何故かライトアップはなかった。 装置が壊れたのかもしれないが、正直目の前の刀子が可愛過ぎて気にもならない。「硬い、それに大きい。びくびくして」 おっかなびっくり触れた葛葉であったが、ふいに言葉を途切れさせうつむいてしまう。 やりすぎたかと焦るむつきに聞こえぬよう、葛葉はつぶやいていた。「少しだけ。そう、これはお礼……」 むつきの一物に触れていた手に少し力を込めて握り、葛葉は意を決したように振り返った。「私に、何かしてあげられる事はありますか? こういう事は不得手というか、その経験が」「そのまま優しく摩ってください。昔転んだ桜咲を宥める為に撫でたように」「こう、ですか。痛そう、もう大丈夫ですよ」「刀子さん、僕も少し失礼しますね」 正直、年上の女性に優しく撫でられ、辛抱溜まらん。 このままガンガン突いて孕ませたくてしょうがないのだが、彼女は正直初心だ。 年齢からは信じられない程なので、処女を相手取るように優しくゆっくりと。 耳元でその体に触れる事さえ許可をとって、それからそっと腕をお腹から離れさせた。 後ろ手に一物の竿を摩ってくれる刀子の豊満な胸を鷲掴んで最初は触れるだけ、順に揉み上げていく。「そんな、胸まで」 完成された女性の肌はしっとりと、若さにあかしたそれとはやはり違った。 指先の一つ一つが豊かな乳房に埋もれ、一体化していくような柔らかさである。「大きい胸、刀子さんの胸。気を付けないと、手が一生離れなくなりそうですよ」「そんな、いやらしい触り方。あかんえ……」 突然の近衛のような方言に、気を取られびっくりしてしまう。 だが和泉もそうだが、男は若干暑苦しい所もあるが、女性の方言は何故こうも可愛いのか。 もっと聞きたいと胸をもみ上げ手のひらで乳首を転がし、吐息以上に言葉を誘う。「刀子さん、ほら。如何されると気持ち良いか教えてください。こう、それともこうですか?」 大胆に手のひら全体を使って揉みしだいたり、指先のみつっと乳房の上を走らせたりあの手この手で触れ方を変えてみる。「あかん、そんな事をしたらあかんえ。うちのお胸、玩具とちゃう。けど、んぅぅぁ。気持ち……ちゃう、そんなんしたらあかんえ!」 右手でむつきの竿を摩りつつ、左手は何時の間にか声を我慢するよう口元へ。 鍵爪型にした人差し指を自分で噛み、それでも耐え切れずもっとと喘ぐ。 体の硬さなど何処へやら、むしろ普段の鬱憤を晴らすかのような乱れようだ。 うなじや肩にキスをしつつこれならと、胸だけでイカせるという夢が叶えられるかも。 もちろん、前回のアタナシアの事もあるので、あくまで刀子への気遣いは忘れずに。 乳房をこねる様に弄んでは順に乳首へ、クリクリと弄って弾いて刀子の反応を楽しみつつ。「凄く可愛い、刀子さん。もっと見せて、乱れた刀子さんを。ありのまま、いやらしいその姿を見せてください」「違う、うちそんなんや。そんなんちゃう、ちゃうのに。ぁっ、駄目。気持ちよ過ぎて、怖いの。怖いの来る。んぁっ、ぁぅ」「怖くない、俺がいるから。刀子さん、受け入れて。もっと俺を」「怖いの。ギュって、もっと強くギュってぇっ!」 胸を弄びながら抱き締め、首筋に甘噛みした事でようやく刀子はそれを受け入れた。 快楽に抗わず、むつきに誘われるまま。 お湯に濡れた髪を振り乱し、声が反響して耳に痛い程に叫び上げた。 果てた嬌声を、胸だけを弄られはしたなくも淫乱にイッてしまった事を。「はぁ、ぁぅ。怖なかった、むつきがギュってしてくれたから」「言ったでしょ、大丈夫だって。けど、まるで初めてイッたみたいな反応ですね。ちょっと騙されちゃいましたよ」「は、初めてやから。も、もちろん。エッチやなく、イッたのが」 思わぬ言葉にえっと、目が点になった。 やはりセックスレスが分かれた原因かと。「あんな、うちいつも緊張して体に力が入るんよ。それで、何時もえっちの時にはガチガチに強張って。初夜の時、あの人が入れた瞬間……体がこわばり過ぎてポキッと」 衝撃の告白に、刀子にさすって貰っていた一物がキュっと一回り縮んだ気がした。「それでそのまま……上手くいかへんくなって」「が、頑張れよ元旦那。刀子さん、こんなに可愛いのに。楽しむ前に、悦ばせてやろうよ。なに、俺って魔法使い? 何年付き合ってたか知らないけど、俺数時間なんだけど」「エヴァンジェリンの気持ち、少し分かる。むつきは、心の隙に入り込むのが上手いんや。情けないかと思うと格好良くて、それこそ人の前で泣きもして。気が付くと目の前におる」「間違えないで、それの姉のアタナシアだから。それにそれって詐欺師の才能じゃないですか、やだあ。もっと格好良い才能が良い」 言われたそばから少し泣きそうで、可愛い人だと刀子が遊ばれたばかりの胸で抱き締めていた。 むつきは柔らかな乳房に埋もれ、少々しこりのある乳首を食んで。 現金にもむつきは胸をしゃぶりながら、右手を刀子の下腹部へと伸ばしていった。 髪とは異なる黒く肌に張り付いた陰毛を少々指で弄び、更に下へ。 割れ目の先端、その先では皮が半かむりのクリトリス。 それから尿道を通り過ぎて、やはりそこだけは刀子も少し緊張を取り戻した。「刀子さん、力を抜いて」「無理、せめてお布団。普通にしてくれな、いやや」 仕方がありませんなと、その場で刀子を横抱きに。 体を拭く間も惜しんでそのままびたびたと、ベッドマットの上の布団へ。 そっと刀子を降ろして、覆いかぶさった。 彼女が望んだとおり、普通に、正常位の体位である。 だが既に受け入れる覚悟は刀子にもあるようで、マグロではなく腕を伸ばしてきた。 覆いかぶさったむつきの首に腕をまわし、濡れた肌同士を密着させるよう引き寄せる。 元々水風呂だったので表面の水滴は冷えて冷たいが、互いの肌がそれ以上に火照って熱い。 それこそ蒸発していく水滴の水蒸気さえ視認できそうな程であった。 互いの濡れた肉体を艶かしく動かし擦りつけては、求め合う。「刀子さん、キスしますよ」「うん」 まるで少女のような返答の直後、唇に吸い付いた。 もはや互いの体表面の表側の八割、九割は密着した状態であろうか。 刀子は自分の上をはいずるむつきの首に腕を巻いて離さず、足と足を絡め逃がさない。 むつきも唇はおろか口の中までも蹂躙し、風呂で弄んだ胸をまたもや揉みしだく。 だがそればかりではなく、利き腕はいずれ胸を離れお腹の上を滑る。 珠のとなる雫を指先で蹴飛ばしながら、小休憩におへそを弄っては下腹部へと。 本日二度目となる陰毛を指先に絡め、キスを中断して見詰め合う。「ええよ」 小さな刀子の呟きと頷きで、一度肌を離れた指先は直接そこへと触れた。 触感では割れ目から濡れたびらびらが顔を出しており、にちゃりとそこを開く。 乳房と同じくしっとりと吸い付くような肌触りを味わいながらその奥に触れる。 肌を覆うさらさらのお湯とは異なる、粘つく愛液に導かれ入り口から膣に指を入れた。 指先が沈む度に刀子の体が打ち震え、小さな喘ぎ声を漏らしている。「ほら、ここまで指が入った。全然、大丈夫。ほら、聞こえる?」「音たてんといて、恥ずかしいえ」「俺は嬉しいよ、刀子さんがその気になってくれた証拠だから。俺も、ほら」 太股を閉じ止めてと言った刀子の耳元で囁き、完全に勃起した一物を筆のように操りお腹をなぞる。 丁度子宮の上辺りだったのか、ピクリ、ピクリと体を反応させ愛液も増えていった。 さすがに熟れた体を持つだけあって、経験不足こそあれやわらかいものだ。 受け入れる準備は万端で、放っておいても指が飲み込まれていく。 貪欲に今が孕ませ時だからと、むつきの精液を欲してぐねぐねと膣壁が指を締め付ける。 引き抜いた指に付いた愛液を刀子の目の前で舐めて苛めたいが、それはまた今度。「入れるよ、刀子さん」「怖いの、ギュって。むつきの腕でギュってしてや」「うん、強く抱き締めるから大丈夫。刀子さん、もう一度キス」 一度足を抱え自分の膝で固定してから、前屈みに刀子を抱き締めキス。 まだあまり自分で動けない刀子の代わりに、手で入り口を開き腰の角度を改める。 今一度、刀子の目を見て行くよと呟く、とろりと愛液が滴る膣口へと亀頭を添えた。 ぐっと力を込めると処女並に狭い膣の肉壁が広がり、刀子の体へと僅かなライトアップが。 しかしじっとむつきが見つめるとそれも失せ、涙ながらに刀子が頷いた。「んくっ、行くぞ」「ぁっ、来た。大きいのが、久しぶりに。むつき、もっと抱き締めて。ひぅっ!」 恐らくは何年も使われていなかった刀子の膣を、使用頻度の高いむつきの一物で抉った。 同時に刀子の手がむつきの背中を爪で少し抉ったが、なんのこれしき。 いや実際かなり痛いが、刀子も久しぶりの感覚で苦しいのだろう。 だが同時に二人共に、快感も感じていたのだ。 特に熟れた肉体で少女のような狭さで締め付けてくる刀子の中は反則である。 少しぐらいならと、お互いびしょ濡れで普段より高く大きな音を立てて突き上げた。「刀子さん、凄く気持ち良いよ。狭くて、搾り取ってくる。気を抜くと出ちゃいそう」「お腹が一杯、こんなん。こんなにも、知らへんえ。男の人がこんなに。ぁぅ、奥コツンしたらあかん。んぁぅ、ふぅぁっ」 ぐちゃぐちゃと派手にかき回す音を立てながら、刀子を攻め立てる。 当初の硬さはもはや微塵も姿は見せず、刀子もむつきの下で乱れに乱れていた。 むつきの顔を胸で抱きとめ、まだ足りないと頭に顔を埋めすんすんと。 下腹部を貫かれ、はしたなくも開かれた足は今にもむつきの腰を抱き締めそうだ。「刀子さん、分かる。ここまで入ってる、俺のが。刀子さんの、ここまで」「お腹にむつきが、んふぁ。ぐりぐり、そんなん恥ずかしいえ。えっちな事はしたらあかん」「だって刀子さんの体、気持ちよ過ぎる。刀子さんがエロイのが悪い」「うちそんなんちゃう、むつきがぅ。んんっ、はぅっ」 もはや囁く言葉の応酬も、快楽の海に翻弄され殆ど帰っては来ない。 ただただ刀子はむつき、むつきと今夜初めて読んだ名前を繰り返すのみ。 今でこそ別れたとはいえ、一度は別の男を愛して結婚した女性が自分を呼ぶ。 言い表せない征服感、ゲスい黒い感情が背筋を上り、少しだけ親友の主義に共感できた。 もう俺のものだと、彼女を貫く一物にさらに力が、孕ます為の残弾が装填される。 たださすがに、そんな考えで一杯なのは失礼なので、数秒のことで頭から追い払う。「刀子さん、そろそろ出そう。ゴムしてないから外に」「駄目や!」 恐れていた事態、むつきが外にと言った途端に刀子が足で腰を抱き締めてきた。 慌てて抜こうとしても、信じられない程の力で再挿入を促がしてくる。 抜こうと腰を引き、また腰を進められて挿入とこの応酬でさえ危うい。「でも妊娠したら、っ。やば、足放して!」「沖田にアフターピル、用意させるから。抜かんとして、欲しいんや。むつきの子種。責任とれなんて言わへん。彼女がおるのも知っとる。だから中に、むつきの子種!」「刀子さん、くっ。もう、駄目。刀子さん、刀子ッ!」「ぁっ、あぁぅ。んぁっ熱い。熱いの、お腹の中が火傷してまう。熱いぇ!」 むつきの射精を子宮で受け止め、天井知らずの幸福を感じて刀子が暴れる。 果てを感じて体を痙攣され、子宮の壁を精液で汚されては体を弓なりにそらし。 この期に及んでもはや避妊も不可能だと、むしろむつきは刀子の腰を掴んでより多くの精液を流し込んだ。 半分、死なば諸共、毒を喰らわばの精神でありったけの精液で刀子の中を汚していった。 第一射の弾薬が打ちつくされ、むつきは力尽きたように刀子の上に倒れこんだ。 もはやお湯なのか汗なのか、一部は愛液なのか分からない飛沫を飛ばしながら。「刀子さん、ごめん。中で……」「ええの、うちが望んだ事やから」 お互いに謝り、後味が悪い事後の気だるさだけは回避しキスをする。 ちゅっちゅと、特に刀子は今まで失った時間を取り戻すように貪欲に。 その間に、実は底の方に残っていた弾丸が暴発したりもしたが。「刀子さん、俺」「ええよ、何も言わんといて。彼女がおるの知っとって誘ったのはうち。けど、今だけは。もう少しだけの間は夢みさせてや」「うん、まだしばらくは。無粋な事も言わない。だから」「次、ええよ。体力には自信あるえ。お礼に、むつきがしたいこと全部させたる」 それじゃあと、むつきは息を見出し喘ぐ刀子を挿入した状態からさらに突き上げた。 むつきは久方ぶりに刀子一人を相手に、全力を尽くす所存であった。 小鈴に肉体改造されてから初めて、たった一人に全てをつぎ込んだ。 抜かずの二回戦、刀子をひっくり返して後ろからの三回戦、続けて四回戦と五回戦。 中だけでなく、京美人である葛葉の真っ白な体を散々別種の白で汚したり。 まだまだと、一度体を洗いに風呂場へ行ってそのまま壁に押し付け、はたまた湯船の中で。 もはやどれが一回分や二回分などの回数もあやふやで、兎に角刀子を孕ませ捲くる。 全く体力が衰えぬ様子の刀子を相手に、十回それ以上を放ち、先にギブアップしたのはむつきであった。 -後書き-ども、えなりんです。というわけで、刀子回でした。次回も続くというか、エヴァ参戦。あと、すごくどうでもよい人が再登場。夏祭りのお話です。それでは次回は土曜日です。