第五十六話 結婚してくれなきゃ、死ぬ。死んでやる! 射的の他にも、大勢で屋台を回り射的屋の親父以外にもあの水風船釣りの兄ちゃんもいた。 以前に増して美女と美少女を引き連れ、貴方が神かと大歓迎されたり。 ここでハッスルしたのが、前回から密かに特訓を重ねてきた雪広であった。 釣り糸一本で十個もの水風船を釣り上げ、得意と豪語していたアキラをしょんぼりさせる事に。 妙な所で友好を築いて、是非来年にもとむつきは水風船釣りの兄ちゃんとガッチリ握手。 他にフランクフルトを皆で食べ、美砂がエロイ食い方をして皆に彼氏にしてあげたのと聞かれたりも。 そうして屋台めぐりをして八時から恒例の打ち上げ花火を皆で観賞であった。 その頃には別行動中の高畑班とも合流し、親戚筋の龍宮のコネで特別に境内の建物の窓から人ごみに押される事もなく打ち上げ花火を見ることができた。 途中で帰宅したマグダウェルは可哀想だが、せめてと土産話を手に解散である。「それじゃあ、皆気をつけて帰るようにね。決して一人で暗がりに行ったりしないように、出来れば手を繋いで。雪広君、寮まで皆を頼んだよ」「はい、この雪広あやかにお任せください。それでは皆さん、出席番号順にお並びください」 高畑にそう言われ、出席番号順に並んできちんと手を繋いだ。 特に背丈の小さい鳴滝姉妹は、二人が手を繋いでもあまり意味がないので長瀬が間に。 龍宮神社の境内前で遠足のように、寮に付くまでがお祭りですとばかりに帰って行った。 今日はひかげ荘メンバーも、興奮冷めやらぬまま寮で過ごす予定である。 ここからは大人の夏祭りだと、むつきも今から夜の打ち上げ花火に胸がわくわくだ。「決着を」「つけます」 二人の雌豹が自分の両脇で、眠れる獅子の如く目をぎらつかせたとも思わず。「そ、それじゃあ、乙姫先生僕はここで。葛葉先生と、エじゃなかった。アタナシアもこれで」 直接的ではないが、間接的に身の危険を感じた高畑がそそくさと去っていく。 とある理由で正義の味方を目指す彼らしくなく、子羊を一匹雌豹のそばに置き去りにだ。 もちろん、その子羊は自らの危機に気付く事もない。 むしろちょっと上機嫌ですらあり、二人の雌豹へとにこにこ顔で振り返った。 丁度その頃、寮に帰るまでがお祭りですと帰寮しようとする一向は。「あー、楽しかったぁ。夏祭りで散財してないのに、ここまで遊べるなんて本当天国!」「普段だったら、明日からお小遣いどうしようかとか若干思っちゃうよね」「浮いた分は、明日からの分に回すアル」「私達も、なんだかんだで高畑先生に奢って貰っちゃって。ねえ、これただの妹的な立場じゃないの。乙姫先生が皆を見てる感じだと思うんだけど」 まだまだ元気一杯と明石が飛び跳ね、続いて私が花火だとばかりに佐々木も跳ねる。 普段はここで夏のお小遣いが半分になってもおかしくはないのだが。 何しろ遊び代の殆どを奢ってもらったのだ。 例外は皆で同じものを奢って貰う時以外、個人的に喉が渇いたとかお腹が空いた時である。 それでも微々たるものであった。 唯一心配事を呟く神楽坂は、無情にも皆から視線をそらされていた。「ココネも連れてくれば良かったかな。シャークティ、あまり先生の事が好きじゃないみたいだからな。面倒見って点では良い先生じゃん」「うちらも、久しぶりで楽しかったえ。せっちゃんも一緒やから何時もよりずっと。せっちゃん、また遊ぼうな」「このちゃんがそう言ってくれるなら。それにしても刀子お姉ちゃんが、乙姫先生と何時の間にそのような関係に」「私ですら気付かなかったけど。本当、何時の間にねぇ」 良く面倒を見ている褐色半眼の妹分を思い出しながら春日が私は好きだけどと呟く。 その好きじゃない理由も、アタナシアと刀子の態度でだいたい想像がついたが。 近衛も久しぶりに幼馴染である桜咲と思い切り遊べて上機嫌であった。 これまた幼い頃の様に手を繋いで帰寮できるなど、夢のよう。 桜咲もそれは同じようで、こんな幸せを暮れた姉こそ幸せにと願わずにはいられない。 少々含みがある笑みを朝倉が一部の者と見せても、気付きはしなかった。「ところでさあ、先生これから家で打ち上げ花火すると思う?」 ここで爆弾を投じたのはアタナシアのエロさを師に仰ぎたいと願う早乙女であった。 今にも涎を流しそうな口元を手で拭い、どれだけ濃厚なと目をぎらつかせた。「あれさ、絶対に家まで持たないよね。実は、その辺で始めちゃってんじゃないの?」「ああ、あり得るかもね。葛葉先生はわかんないけど、アタナシアさんってどう考えても肉食系だし、むしろ先生が食べられてるかも」 釘宮が半分赤くなりながら呟き、美砂が違いないと苦笑い。「エッチな話は止めようよ、興味はあるけど。折角、楽しかったんだし」「ふっふっふ、無粋な事ヨ村上サン。皆がそうまでして望むなら、一科学者としてその願い叶えて進ぜよう。先生の携帯電話のGPS機能が一目で表示、先程からまだ然程に動いてないネ!」 もちろんこういう話に免疫のない者、例えば村上などはちょっと及び腰だ。 そこで皆の期待にと、自分の願望も含め携帯電話を取り出したのが小鈴であった。 個人的な目的に誘導しようという魂胆見え見えだが、一部にはバレバレである。 もちろんそれはひかげ荘メンバーだが、覗き大好きが大半を占めるので止めるはずもなく。「拙者は双子の世話があるので辞退するでござる。高畑殿にも注意されたでござるしな。他に帰寮する者があれば護衛も兼ねて引率するでござるよ」「んー、先生にはお世話になってるから気になるけど、私も帰寮かな。高畑先生に注意されたしね。暗いところへ行くなって」「私もそっちがいい。長瀬さん、寮まで連れてって。お願い」「私も遠慮しておきます。節度あるお付き合いを今後も先生とはしたいので」 双子はもとより長瀬の腕の中でうつらと寝入っており、神楽坂や村上、四葉が私もと言う。 後は覗きに行っては七月最終日のデートが台無しだと、夕映が宮崎を連れて脱落。 だが大半はまだ興奮状態でちょっといけない覗きツアーに参加する気満々であった。 その数、総勢二十一人とそれで覗きが出来るのかという怪しさでもある。「私もと言いたいが、これだけの数だ。古一人では手にあまるし、刹那がこの調子だ。こっちは任せろ、楓。うちの境内が卑猥な体液で汚されないかも不安だしな」 そういうわけで夏休みに加え、夏祭りの興奮に負けて高畑の注意もどこへやら。 帰寮チームとは分かれて、大半のメンバーがむつきの青姦目指し道を外れて藪の中へ。 がさがさわいわいと、これからの目的を忘れた賑やかさでもあった。 先導である小鈴がこっちネと携帯電話を見ながら、誘導していく。 来た道を藪の中から戻るように、打ち上げ花火を見上げた境内の建物の方に向かう。 これには龍宮がこめかみに血管を浮き上がらせたが、建物の中ではなかった。 ある程度、藪を進んだ所で、小鈴が手を挙げて覗き集団を引き止めた。「超りん、もしかしてもう見つけた? こんな事もあろうかと、赤外線カメラ買っておいたんだけど。どこよ?」「シッ、これ以上は気付かれるネ。皆も、この超包子特性のステルスマントを被るヨ。姿は消えて多少の防音効果も。それに薮蚊は乙女の天敵、人数分あるから心配いらないネ」「雨合羽のように首を通してフードを被るだけです。装着者同士は見えますので。それと後できちんと回収するので悪あがきはしないでください」「くっ、こんな便利な悪戯アイテム。仕方がないっか。ココネ、連れて来ないで正解だったかも」 以前、むつきを図書館島で尾行した時から、さらにバージョンアップを重ねた品である。 夏用に蒸れ、害虫とあらゆる状況を想定して対策を施していた。 夏休みだけに時間だけはあったので、隙のない一品でもあった。 ステルスマントを皆が見につける間も、布地が枝に触れても音は小さく、衣擦れ音もない。 何処の蛇の世界だとも突っ込みたいが、それが麻帆良最強の馬鹿の世界だ。 売るところに売れば巨万の富間違い無しなのに、覗き行為に使うとは。「くぅ、この緊張感。長谷川がはまるの分かるかも」「覗き部とかあったら作りてえ。おい、委員長はやくしろよ」「か、髪が引っかかって。装着に難ありですわ」「私も葉加瀬も、普段は纏めているから。これは盲点だったネ。その貴重な意見、ありがたく受け取っておくネ」 初めて覗く側に回った美砂や、最近は半分参加者のため、久々に覗きがと長谷川等は目じりに涙を浮かべ拳を握っている。 さらに、小鈴のステルスマントを着てみると、視界良好、まるで昼間とは言わないが明け方程度には視界が明るかった。 ナイトスコープ、見えないバイザー付きかよと長谷川や和泉辺りの覗き大好き人間が大喜び。 潜入工作員気分でこそこそと、現場へと向かう。 場所は小鈴が一度、一行を止めた場所から二百メートル程先の林の中であった。 境内の建物を出てから直ぐの場所。 恐らくは、建物を出てからこれからどうしようと相談する直前で連れ込まれたのだろう。 既にむつきとアタナシア、刀子の三人だけの打ち上げ花火は始まってしまっていた。「おお、早速始まって。フェラ、それともパイずり?!」 早速、早乙女がぐびっと食いつき、前に出すぎるなと小鈴が首根っこを掴んだ。 小鈴謹製のステルスマントだが、身につけているのが素人とあっては万全ではない。 特に現在、むつきに自慢の巨乳で奉仕している二人は並みの人物ではなかった。「アタナシア、俺はお前に」「その気持ちがあれば十分、今日は私にさせてくれ」「むつき先生の濃い匂い。このような方法で男性を悦ばせる方法があったなんて」 多少開けた林の中で、むつきは一本の松を背に持たれかかっていた。 自分の股間部分にしゃがみ込んだアタナシアと刀子に浴衣の裾を肌蹴られている。 つい癖でトランクスを履かずに来た為、ひかげ荘まで持たずに暴れ始めた一物が飛び出してしまった。 慌てて隠そうとした手は止められ、二人にガチガチに勃起したそれの匂いを嗅がれてしまう。 途端に二人が雌のまなざしとなり、はあはあと荒い息遣いのまま自分の浴衣をはだけ始めた。 零れ落ちるように現れた胸の中に、瞬く間にむつきの一物は沈み込んでいった。「どうだ、むつき。お前は私の胸が大好きだからな。こういうの、好きだろ?」「大好き。もちろん、アタナシアのことも」「ばか……」 右も左も、四方を巨乳に挟まれ、内に沿った星型の隙間から亀頭だけが見えていた。 二人が膝をあげれば巨乳に沈み、膝を屈めば亀の頭がこんにちわである。 その亀の頭を赤い舌を伸ばしたアタナシアが、可愛がるように丹念に舐め始める。「か、亀。亀さんが、刀子お姉ちゃんのお胸から亀さん。このちゃん」「昔にお風呂でお父様の見た時と全然違うえ。ほんまに亀さんや。せっちゃん、手を繋ご。怖なってきた」「私も昨日、お風呂でお父さんの見たけど。あんなに大きく、お父さんもなるのかな?」「裕奈それ危ない。娘の前で、お父さんがおっきくなったら危ないて!」 亀が亀がと桜咲が目をぐるぐる回し、意外と冷静に近衛が食い入るように見ている。 明石は若干、危ない台詞を零しつつ、和泉にソレは駄目だと怒られていた。「気持ち良いよ、二人のおっぱい。ちょっと蒸れてるせいか、程良く扱かれる。アタナシアはその調子。刀子さんは、もう少し乳首とかも使って」「何時でも出していいからな。んっ、塩味。全く、こんなに蒸らして生徒を引率しながら何を考えていた事やら。私を犯す事ばかりか、ん?」「舐め、舌で。そんな汚、むつき先生。私も、それで貴方が気持ち良くなってくれるなら」 胸の谷間鳴らぬ僅かな隙間から亀が飛び出す度に、刀子もまたアタナシアへの対抗心から舌でちろちろ舐める。 二人の胸同様に、夏の熱気で蒸れた匂いを放つ一物を舐め取った。「勉強になるわね、私の胸でもできるかしら」「君が言うと、嫌味にしか聞こえないが。私も、負けてはいないぞ。先生のライフル銃ぐらい、簡単に扱ってみせる」「余裕の表情であんな事を言ってる。アキラ、私の希望はアキラに任せた。最近、また胸大きくなったアキラならいけるから!」「う、うん……実はもう何度かしてるけど。結構、あれ難しいんだけど」 龍宮や那波の巨乳艦隊の余裕さに、多少なりとも落ち込んだ佐々木が夢を託した。 託されたアキラは、もう試したもんと自分以外に聞こえないように零していたが。「くぅ、ごめん。出そう、アタナシア。刀子さん!」「いいぞ、全部飲んでやる。遠慮なく出せ。何処で受け止めて欲しい、口か胸か?」「胸は兎も角、く……口で何て、さすがに」「口で、アタナシア。出るよ、アタナシア!」 二人に奉仕されながらも、積極的なアタナシアに軍配が上がった。 亀の口から白い白濁液が飛び出す直前、むつきはほぼ無意識に体を向けていた。 刀子の胸にも奉仕されながら、口を開けて受け入れる気まんまんのアタナシアへと。 そしてその頭の後頭部に手を当て、射精の瞬間に押し付けた。 柔らかな胸の中から弾力のある唇、そこをこじ開け膣のようにうねる口内にまで。 唇で吸いつかれ舌で鈴口を刺激され、もはや限界であった。「アタナシア!」 一ヶ月にも満たないが、久しぶりの逢瀬だと遠慮なく口の中に解き放った。 白い体液、精液をアタナシアの口の中にだ。 噴き出す勢いと量に負けず、射精中もアタナシアが鈴口を舌先で弄った。 ますます射精の勢いは強まり、むつきは耐え切れず松の幹を少しずり落ちる。 それでうっかりアタナシアの唇を亀頭が離れ、口ではなく空に打ち上げられた。 顔に胸に、後で怒られそうだが浴衣にも多少飛び散り、美女二人を汚していった。「打ち上げられたな」「打ち上げられましたわね」「打ち上げられたやんね」「ちょっ、なんでそこそんなに冷静?!」 順に長谷川から雪広、和泉とむしろ覗きが趣味ですという面々は視線が遠い。 美砂達恋人達は、自分の彼氏を改めて見て、凄いなと感心したり。 もちろんそんな感情は事情を知らぬ者には読み取られなかったが。 おかしいでしょと釘宮に突っ込まれる程度であった。「思ったより量が。うーん、やっぱ漫画だと誇張し過ぎか。顔射だと本当にどろどろなんだけど。リアルはリアル、誇張はしとこ」「ハルナもある意味で、冷静すぎや。あれ保険体育でやった赤ちゃんの種やえ? うーん、せっちゃんもアレ出えへんの? 出たら結婚できるえ?」「このちゃん、このちゃんが望むなら何処か外国で改造手術でもして!」「皆さん、先程から声が。防音機能にも限界ぁっ」 葉加瀬が止めるも少し遅かったようだ。 顔に飛び散った精液をすくっては舐めていたアタナシアが、何かに気付いたように見た。 誰もいないと一瞬顔をしかめたが、直ぐににやりと。 あろう事か、全員を眺めるように一人一人視線を合わせて笑って見せた。 一部は何故ばれたと思ったが、特に小鈴と葉加瀬はやっぱりと思った。 彼女の正体を知っているのであれば、ばれないと思うほうがおかしい。 ここまで彼女を誤魔化せた事こそが、返って表彰ものである。 ただし、そこでお前達出てこいと怒らないのもアタナシアらしかった。「むつき、こっちへ。綺麗にしてやろう。今度こそ、私の口の中に」「そ、そんなにしつこく舐らなくても。あっ、アタナシア」 自分の方へとむつきの一物を向けさせる振りをして、その実は違う。 覗き連中に見せ付けるように、むつきの一物をしゃぶる様子を事細かに見せつけた。 口を窄めて亀頭にキスし、飲み込む。 窄めた頬がその大きさに膨れる所も明確に、喉の奥まで深く受け入れた。 残り汁まで吸い尽くすように、竿に唾液の跡を残し、一つ残らず吸い尽くしてしまった。 刀子は殆どそれをあわあわ、尻もちをついてみているだけである。「流石ネ、好きで身につけたではなかろうに。勉強になるヨ」「技術、か。うーん、覗きに来て良かった。と言うか、葛葉先生。綺麗だし格好良いのにこういう場面じゃ、駄目駄目だね」「うん、完全に勝負になってない。それに、先生。アタナシアさんは呼び捨てなのに、葛葉先生はさん付け。なんだかちょっと壁があるみたい」「言われて見れば、そうやんね。もしかして、お嫁さんにする気ないんやろか?」 ちょっと回りには漏らせない批評を小鈴や美砂が行なった。 そこへ鋭い指摘を行なったのがアキラであり、和泉も続いて指摘した。 基本的にむつきは抱いた相手は名前を呼び捨てにしている。 美砂やアキラ、少し違うが夕映や小鈴もだ。 先生は二番目と本人にも言った和泉は、むつきの心情からも仕方のない事だが。 同じ年上らしきアタナシアでさえ呼び捨てているのに、刀子だけが少し壁があった。「しかし、むつき。お前は葛葉刀子をどうするつもりだ?」 まさか呟きに等しい、それもステルスマント越しに聞こえたわけではあるまいし。 今まさにアキラ達が呟いた疑問を、アタナシアがそのまま伝えた。「どうって、なにが?」「貴様が言ったのだろう、本命がいると。私は別に構わん。お前が誰と結婚しようと今の関係を今さら失くすつもりも、別れろというつもりもない。だが葛葉刀子は違う」 そう呟き、視線を向けられた刀子は縋るような視線をむつきに向けていた。 彼女はアタナシアと違い、むつきの本命が何処の誰なのか知らない。 むつきはアタナシアに教えた覚えはないが、出会ったのがひかげ荘でマグダウェルの姉だ。 今の口ぶりからも、何処の誰で何人かまでも把握しているのだろう。 そして、刀子が望んでいるのは、むつきとの結婚、それも出来るだけ早期にだ。「刀子さんとは、結婚できないよ」「え……ぁっ、ぐっ」 そこであっさり、決定的な言葉を放ったのは縋られたはずのむつきであった。 本来なら無関係であるはずの明石達や、応援できない立場の美砂達でさえ何やら怒りが。 当然当人に至れば思わず瞳に涙を浮かべ、逃げ去ろうとした刀子であったがこけた。 それはもう盛大に、緊迫した場面を破壊するには十分過ぎる威力で。 小さな女の子がバランスを崩してこてんと転んだような様ですらあった。「刀子さん、大丈夫!」「早とちりをするな馬鹿たれ、大方やり捨てられたとでも思ったのだろうが」 極一部、龍宮や桜咲ぐらいしか見えないそれは糸であった。 アタナシアの指先から伸びる不可視に近い、細いが強靭な糸が刀子の足に巻きついていた。「だって、出来ないって。あんなに愛してくれたのに、出来ないって。やだぁ、結婚してよ。結婚してくれなきゃ、死ぬ。死んでやる!」「ああ、もう。ごめん、ちょっと唐突過ぎた。泣かないでよ、刀子さん」 こけたまま起き上がりもせず、駄々っ子のように刀子が泣き喚き始めた。 抱き起こそうとしても手は払われ、近付く事もままならない。 何度か殴られ、さらには噛み付かれながら抱き起こすと、今度は抱きつかれた。 そのまま胸の中で泣かれ、これにはアタナシアも少々ばつが悪そうだ。「刀子お姉ちゃんを泣かせ、放せ龍宮。お姉ちゃんが!」「今出て行って何になる。エヴ、アタナシアも言っただろう。やり捨てるわけじゃないと。先生の考えを聞いてからでも遅くはない」「せっちゃん、龍宮さんの言う通りや。もし本当に先生がそんないい加減やったら、そん時は止めへん。好きなだけ、殴ってき」 一方、ギャラリーの方も特に桜咲が暴れ、一悶着していた。 姉妹関係が復活したばかりとはいえ、恩人という二文字も加わっているので当然か。 ただ、その怒りには一定の理解を示した近衛が、条件付きで許可を与えていた。「あのね、刀子さん。俺さ、今の彼女とはわけあって後五年は結婚できないんだ。彼女、寛容というかなんと言うか。アタナシアとの関係も認めてくれるぐらいだし。刀子さんとの事だって多分、許してくれる」 なにそれと、普通ならばここで疑問が浮かんでもおかしくはない。 実際、那波や古と言った事情を知らない者はそれは彼女かと疑問を浮かべている。 ただし、一応はアタナシアの事情も聞いているし、微妙なところだ。「けど、彼女と結婚する五年以内は絶対駄目だ。彼女も許してくれないし、俺も許せない。ねえ、刀子さん。五年も待てる? 待てないよね、俺達はもう適齢期だし」 当然、待てないと涙ながらに刀子に訴えられた。 むつきでさえ五年後は、三十歳の良い歳であり、刀子は尚更。 それ以上になると子供を生むのにも心配事が増えるばかりである。「五年も経てば、俺だってどうなるか分からない。彼女達に捨てられてる可能性もなくはないし、このままだらしない男で終わる可能性も。五年も待つだけの価値、俺にはないよ」 最後、少し言葉を濁したが、言いたいことはリスキーだという事だ。 結婚すると五年も待たされ、その間にどう互いが心変わりしている事か。 むつきが一途から恋愛にだらしなくなったように、人格ごと豹変している可能性さえ。 いざ結婚となって相手がそうなっていれば待っていた五年は無駄となる。 そうなってから刀子が今一度と思っても、その時は三十も半ばだ。 それから恋愛相手を探しても、その殆どは既に子持ちか、それこそ人として何処か問題がある人が殆どだ。 もちろん理由あって独身を貫いている人もいるだろうが、結局その人も結婚してくれないという意味では同じである。「だから俺が今、刀子さんにして上げられるのは。離婚の原因だったセックスレスを失くしてあげること。セックスは怖くないって教えてあげること。それに一度は出来たんだもん、きっとまた結婚できる。俺も協力するから」「こんなに好きなのに、好きなのむつき先生。待てる、ちゃんと五年待つから」「冷静にって言っても、無理か。アタナシア、ごめん」「まあ、元は私が原因だ。気もそがれたし、また今度だ。またな、むつき」 涙と鼻水を流し待てると言い張る刀子の顔をハンカチで拭いてやるも追いつかない。 半ば諦めて抱き締める事に従事し、アタナシアに苦笑いで謝った。 アタナシアも仕方がないと、むつきのおでこにキスして背中を向けた。 せめて今夜だけは二人きりになると良いと、着崩れた浴衣を直しつつ歩く。「おい、ガキの好奇心もそこまでだ。帰るぞ、大人は色々あるんだ。特に一部は、むつきも不安を抱く事がある事ぐらい胸に秘めておけ。良い社会勉強ぐらいにはなったろ」 途中、そう虚空に呟き、見えざる相手数名を引き連れ帰っていく。 残された二人、特に刀子はしばらくの間むつきの胸の中で泣き続けていた。 好きと言うよりは、結婚を焦りそう思いこんでいた可能性は否めない。 だがそれと同時に、あそこまで体を求め合い、気持ちよくなれたのも事実であった。 結婚していた元旦那とも辿り着けなかった場所に辿り着けた男なのだ。 だから今、むつきがどう言おうとその当人を求める以外に方法は思いつけないでいた。「むつき先生、抱いてください。私の体に夢中になって。結婚したくなるほど、結婚してって言いたくなるほど。私を滅茶苦茶にして」「滅茶苦茶にはしない。けど、抱くよ。刀子さん、大丈夫。きっと見つかるから。見つけて見せるから。刀子さんを幸せに出来るだけの、俺なんかより凄い男を」「嫌、先生が。むつき先生が良いの。早く、早く抱いて。全部、夢だって。忘れさせて!」 今は何を言っても、意固地になるだけかとむつきは説得を諦めた。 刀子を地面に寝かせ、帯を解いて浴衣を敷き布団に生まれたままの姿にさせる。 月は細く、より星明りの明るい夜空の下で、髪から肌まで真っ白な刀子を見つめた。 黒い瞳、胸の先端の乳首、それから染めていない陰毛。 白以外が見つかるのはそれぐらいのものだろうか。 刀子は裸にされても抵抗せず、むしろ私を見てと隠しもしない。 元より今日はそのつもりだったのか、下着も身につけておらず陰毛まで星明りに照らされた。 むつきも浴衣の帯紐を解きながら、覆いかぶさっていった。 直ぐに刀子が腕を伸ばしてむつきの首に抱きつき抱き寄せ、唇をふさいできた。 拒絶せずにそれを受け入れ、むつきもまた刀子を求めるように胸を揉みしだく。 求めようが良く伝わるように少し強めで、刀子が少し痛みを感じるぐらいに。「ああ、良い。むつき先生、もっと強く。私に貴方を刻み込んで」「刀子さん、綺麗だよ。白い肌が星明りで闇に浮かび上がって。髪もキラキラしてる。ほら、触って。刀子さんを見て、俺興奮してる」「凄い、カチカチに。私で、興奮して。早く、早くこの逞しいので私を貫いて!」「ちょっと早いけど、行くよ。刀子さん、入れるよ」 求めが強すぎて愛撫もままならず、まだ濡れが足りない気もしたが。 刀子の求めに応じて、むつきはびらびらがはみ出した割れ目に亀頭を添えた。 びらびら、ラビアをかき分けくちゅりと沈め、膣口へと押し進めていく。 やはりまだ濡れが足りず抵抗があったが、押し進めるうちにそれも薄れ消えていった。 刀子の早急な求めに応じて愛液が増え、むつきの一物を受け入れ始めた。「ぁっ、入って。むつき先生が、もっと奥に。そのままもっと!」「刀子さん、刀子さん。ごめん、一気にぐっ!」「入ッ、くぁはっ……ぁっ、ぁぁぅった。奥まで、子宮に」 ゴツンと一気に子宮口を叩かれ、刀子が顔を上にそらして喘いだ。 強烈な衝撃に意識を飛ばしそうになりながらも、むつきの一物を一生懸命締め付ける。 子供をと、結婚の踏ん切りをつけさせる為のファクターを欲して。 即座に逃げられないよう、むつきの腰に抱きつくように足を回して抱きとめた。 だがあえて、むつきも逃げずにさらに刀子を突き上げる。 浴衣の上でその体がずれる程に、奥へ奥へと突き上げた。「深ぃ、駄目。それ以上、壊れ。むつ、壊れ。壊して、私を壊して」「刀子さん、気持ち良いでしょ。セックスは怖くない、気持ち良いものだから。本当に愛した相手ならもっと、もっと」「もう、言わないで。今はただ、私を抱いて。私、うちを。おめこして、おめこぉ!」「分かった、刀子さん。ちょっと激しく、行くよ」 抱きとめる足から逃れるように腰を引き、次に力に抗わず奥へと刀子の穴を穿つ。 何度も何度も腰が壊れそうになるまで刀子を突き上げ、もちろんキスも忘れず。 背中に手が回されているので繋ぐことは諦め、突き上げながら胸を弄ぶ。 愛より性欲を強く押し出し、刀子が望んだようにその体を貪り食った。 勢いが強すぎて正常位から刀子の腰が上がり、やがてまん繰り返しの格好へと。「嫌、だけど嫌じゃない。むつき先生がしたいなら、どんな体位でも」「刀子さん、一回目。出すよ、中に。刀子さん、刀子さん!」「中に、出して。赤ちゃん、赤ちゃん欲しいの!」「ふぐぅ、刀子さん!」 ありったけの精液を、まさに蜜壷と化した刀子の中へと注いでいく。 あまりの量に溢れた精液は壷から噴き出しとびちり、刀子の顔にまで降り注いだ。 普通ならそこで休憩だが、今は事情が事情である。 崩れ落ちる暇も惜しんで、むつきは仰向けだった刀子を抱え上げた。 少し腰に来たがコレぐらい軽いと、刀子を抱え上げそのまま揺さぶった。 ズン、ズンッと彼女自身の自重でさらに深く一物でえぐりあげた。「ぁっ、んぅ。ふぁっ、深っ。もっと、おめこ。むつき先生。キス、キスして。んぅぁ、んふ。むつき先生、好きです。愛して」「ごめん、好きだとも愛してるとも言ってあげられない。未練になるから。だけど、これぐらいなら。綺麗だよ、刀子さん。凄く素敵だ、気持ち良いよ」「嬉しい、けど。お願い一度、一度で良いの。んぅ、ぁぅもう、我が侭言わないから。結婚してって強要しないから。ふぁっ一度で、むつき先生!」「刀子さん、ごめんね。ごめん、言えない。言ってあげられない。だから、せめて感じて。綺麗だ、可愛いよ刀子さん。刀子さん!」 二度目、もはや放ったそばからむつきの精液はあふれ出していた。 のみならず快楽に溺れすぎて、ぶしゅりと刀子も潮を吹き、ちょろちょろとお小水が漏れ出す。 むつきの股間を、足を生温かい液体が流れ落ちるも二人共気にしない。 ただ求めるままに、次は一度刀子を降ろして先程までむつきが背中をつけていた松の幹に両手を付けさせた。 まだお小水が止まらないまま、お尻を上げさせ後ろから突き上げる。 精液、愛液、お小水とあらゆる体液を飛び散らせながら、肌と肌をぶつけ合った。「刀子さんのおしっこ温かい。もっと、もっと良くなって。セックス、どう。気持ち良いですか?」「ぁっ、ぁっ……良い、気持ち良いえ。これがセックス、おめこ。こんな歳なのにおしっこ漏らして恥ずかしいえ。けど、止まらない。気持ち良過ぎて」「駄目だ、バックは密着できない。刀子さん、こっち来て!」 挿入はまだしも、触れ合えないと両太股に手を沿え持ち上げた。 かなり腰に負担はかかるが、お小水を漏らしている刀子にお似合いのスタイルだ。 全裸、それも足袋と雪駄のみの刀子を子供のように抱え上げて犯しつくす。「むつき先生、もっとうちを滅茶苦茶に。おしっこ漏らしたうちを」「そんなに気になるなら、僕がします。刀子さん、刀子さんの中に良いですか。僕もセックスでもよおしてきちゃいました」「ええよ、うちの中に。子宮の中をむつき先生が洗ってや。ぁっ、あぁ。温かい、おしっこ!」「刀子さん、出たよ。おしっこ、止まらない。刀子さん!」 お互いに夢中で、膣の中でおしっこなどむつきも初体験のプレイであった。 だがここで運が悪いと言うべきか、それとも口止めが出来てよかったのか。「ぎゃあ、夢中にスケッチし過ぎた。ぶわっ、掛かった。ぺっ、口にも。もう、最悪。折角のネタの宝庫だったのにぺっぺ」 突然虚空より上がった謎の声、思わず刀子の中にいたむつきも萎んでしまう。 咄嗟に刀子がその声の近くを蹴りぬけると、その指先に何かが引っかかり脱げた。「あっ」 やばいばれたと地べたに座り込んでオナニーしながら、スケッチブックを抱えた早乙女であった。 唯一、アタナシアの言葉に従わず、己の欲望の向くままに行動に移した結果である。 努めて冷静に、まずむつきは刀子を降ろして地面の上の浴衣を払い手渡した。 そして自分も身なりを整え、それから生まれて初めて拳骨という体罰を行なった。 それが教師としての愛か、個人的な恨み辛みかと言えば、恐らく後者なのだろうが。 ゴンッと割と強めな拳骨音が、祭りの後の夜にしみこんでいった。 -後書き-ども、えなりんです。集団どころではない、覗きツアー。良識ある人は帰りましたけどねwさて、今回は刀子に対するむつきの考え、対応のお話でした。大人組でハーレムを作れない最大の理由が今回でました。大人組相手だと、マジで結婚できてしまうので、余計できない。アタナシア(エヴァ)は、まだ結婚とか考えてないので問題ないのですが。あと、一応むつきにも自分がダメになってる自覚ありです。でもまだ、刀子みたいに据え膳になったら頂いちゃうので自覚足りないところも。刀子とのやり取りだけだと、ネギま?っとなりそうですが、ハルナがありがたいwそれでは次回は土曜日です。