第五十九話 あの人、微妙に俺の事を怨んでないか 麻帆良男子高等部の教師である葛葉刀子は、数日ぶりに太陽の光を見た気がした。 夏の鋭い光を一身に浴びて背伸びをするとゴキゴキなる体に歳を感じもする。 だがこれ以上引きこもっていては、必死に再婚の為に踏ん張ってきた毎日が全て無駄に。 だからこそ女性教師用の寮にある自室にて、その数日ぶりにカーテンを開いたのだ。 あの夏祭りの日からずっと、大切な妹分に心配させつつ引きこもってきた。 全力で自分を愛してくれそうな年下の可愛い男に振られ、踏ん切りをつけるのにも失敗し。 一応今なら、五年後などと自分を想って振ってくれた事ぐらいは理解できている。 それに五年もあればきっと、もっと良い男の一人や二人、たぶん捕まえられるはず。 そして文字通り引きこもって泣いて暮らし、教師としての仕事もはるか彼方ですらあった。 学部合同の剣道部顧問としてもサボリまくり、その辺りは食事も含め本当に妹分の世話になってしまっていた。「八月一日、ですか。魔法先生としても、随分と迷惑を……神多羅木はもう少し苦しめば良いのよ。一人だけ勝手に、ふん」 多少胸の内で燻る感情は、長い付き合いの同僚に全て押し付けた。 携帯電話を手に持ち、毎日定時に送られるむつきからのメールを開く。 そして一緒に頑張りませんかという内容に、諦める代わりに是非とようやく返事を返した。 まだ完全に吹っ切れたわけではないが、本当にこれ以上は駄目であった。 現在時刻は朝の七時半、そろそろ妹分がと思っているとチャイムが鳴らされた。 久しく掃除をしていない部屋のゴミを蹴飛ばし、玄関に出迎えに。「おはよう、刹那。ご飯、用意してくれるのでしょう?」「刀子、お姉ちゃん。何時も私が部屋に入っても布団の中で」 合鍵を探し、制服のスカートのポケットに手を突っ込んでいた桜咲が唖然としていた。「まあ、これ以上駄目なお姉ちゃんでいるのも悪いわ。まだ先の長い人生、ゆっくりやるわ。それに折角お嬢様と仲直り出来たのに、三十路のお姉ちゃんのお世話に時間を取られる妹分が可哀想だし」「うん、私もできる事があればなんでも手伝う。乙姫先生も手伝ってくれるそうだから、一緒に頑張ろう。刀子お姉ちゃん!」 駄目姉が立ち直ったと、感極まって桜咲が刀子へと抱きついた。 ただとある事情で人並み以上に鼻が利いてしまう桜咲である。 上下の下着のみの刀子に抱きついて直ぐに、体臭が臭って固まった。 クーラーの効いた室内とは言え、真夏に何日も風呂に入らず引きこもっていたのだ。 これは再婚以前に人として駄目だと、すぐさま離れて部屋の中へと押し込んでいった。「刀子お姉ちゃん、シャワー浴びてください。そのうちに、ご飯の支度をしますから。今日はあまり時間がありません。大河内さんの水泳大会をお嬢様と応援に行く約束を」「そんなに臭うかしら。久しぶりに、私も剣道部に……」 吹っ切れついでに少しずぼらにもなったようで、臭いかと腕の匂いを嗅いだりする。 自分では良く分からないと、お尻をかきながら風呂場に向かう途中でピンと閃いた。 桜咲が、お嬢様と長年冷え込んでいた幼馴染と復縁した事で。 あれだけ期待させてくれたむつきへの、ちょっとした意趣返しを含めて。 ただまずは身支度だと、再婚にはそれが必要だとばかりにシャワーを浴びに向かった。 シャワーでさっぱりすると、改めて自分が臭っていた事が自覚させられた。 もはやアレは異臭の域だと改めて自堕落だった自分を戒め、まずは朝食である。 早炊きされた白米に恐らくはお嬢様お手製のお味噌汁に、レンジでチンされた塩鮭。 あとはパリパリ海苔とある意味で自堕落の始まりの切欠と向かい合った。「本当に悪いわね、刹那」「刀子お姉ちゃんのお世話が出来て、少し嬉しかったですから。さあ、頂きましょう」「本当、大きくなったわね。私も歳をとるわけだわ」 自虐は駄目と少し睨まれ、苦笑いしつつお互いに頂きますと一礼した。 お互い心は親しくとも元来饒舌な方ではなく、それはもう静かな朝食であった。 器を置いた音や、海苔をパリパリと食む音などそれ以外には何もない。 喋ってはいけないゲームをしているようでもなり、声が復活したのは食後のお茶である。 ずっと互いに緑茶をすすり、はあっとお腹が満たされた時の溜息がそうだ。「うん、これで最後にしましょうか。刹那、明日からは大丈夫。大人ですから、自分でなんとかするわ。でも、たまになら一緒にご飯食べましょう」「はい、わかりました。また体育館で稽古をつけてください。今はまだ未熟ですが、私は前以上に自分を強く鍛えたいです。お嬢様の為に、心も体もお守りする為に」「良い覚悟です、刹那。本当に良い覚悟」 話すなら今かと、刀子は照れ照れと笑う妹分へと温かな眼差しを送り言った。「刹那、以前の夏祭りで私が貴方を脱がした時、何を口走ったのか覚えていますか?」「えっ、アレは言葉のあやというか。決して刀子お姉ちゃんが男に飢えて女同士に目覚めたとか本気で思ったわけでは!」「へえ、そうですか。そのような事を考えていたわけですか!」「え、あれ……もしかして別の。いえ、それこそ言葉のあやといいますか!」 あの時は幸せの絶頂でスルーされたが、今度はそうはいかないと飛び掛られる。 体育館まで待てないとばかりに、刀子が桜咲を押し倒した。 妹分の成長を確かめてくれるとシャツの上から胸に手を這わせ、まだまだと余裕の笑みだ。 さすがに下は生えているかと確かめようとしたが、それこそ絶対死守と拒絶された。 しばし、本物の姉妹の様に喧嘩気味に成長具合を確かめつつ。「今日はこのぐらいにしておきますか。私が言いたかったのは、初めてはお嬢様がという貴方の台詞です。言っておきますが、お嬢様は正常な方ですよ?」「いえ、それこそ、それこそ本当に言葉の。お嬢様は本当にお綺麗な方で、私などはおろか釣り合う男性がとても、全く、全然いない有様で」「女同士でお嬢様と添い遂げられる方法が一つあるのですが」「くっ、詳しく。その方法を詳しく教えてください!」 直前までの躊躇や卑下は何であったのか、桜咲は身を乗り出して必死であった。 やはり素質があるからなのか。 私を捨てはせずとも無駄に期待させた罪を少しは償えと、刀子は薄く笑っていた。 それがまた、一騒動起こす事になるとは、妹分の人生を根幹から変える事になるとは思わずに。 八月一日は麻帆良女子中の水泳部の全国大会予選、つまりは地区大会であった。 麻帆良のとある水泳施設に埼玉中の中学校生徒が集り、三日間を掛けて全国大会出場を争うのだ。 全国大会への出場は優勝と準優勝の二校である。 もちろんそれはリレーの話であって、各種目の個人の部も当然ながらあった。 麻帆良女子中等部、期待の星であるアキラの出場はリレーとクロールの個人の部。 特に自分の力を出し切れさえすれば良い個人の部は、非常に期待が掛かっていた。 二年A組のクラスメイトもこの日の為にと、階上の応援席からの応援にも熱が入った。 だがその応援を受けたアキラは、顔色が悪く非常に体調が悪そうである。 プールサイドを歩く間もふらふらと、何時プールに落ちやしないかとハラハラしっぱなしだ。「アキラ、お前どうした。和泉、お前まさか昨日の夜に無茶させてないだろうな」「あはは、させたというか。アキラがしたっていうか。ちょい返答に困ったり」 乾いた笑いを見せた和泉に、ますます不安は募るばかりだ。 今さら言っても詮無い事だが、なんで大会前日にと思わずには居られなかった。 それが夕映を悪い意味で鳴かせたむつきのせいと知ったら、平謝りになるだろうが。「リレーが最終日で良かった。アキラ、いけるか。お前周りから無茶苦茶意識されてるぞ」「先生、大丈夫落ち着いて。予選は軽く流して、油断を誘う。午後の本選では一気に勝負をかけるから。ただ、その為に」 そこからはこそっと耳打ちで、むつき君人形を使わせてとの事であった。 お願いは、予選後のお休み中に何処かで充電させてとのお願いである。 もちろん比喩的な意味で、セックスではなく、心の充電という事だ。 選手のケアは顧問のむつきの仕事であるし、むしろ望むところなのだが。 他にも出場選手がいるので、むつきはアキラ一人に構いきれないのも事実である。 一先ずこの場は和泉に任せ、急ぎ別の生徒の下へと向かっていった。「小瀬、そっちはどうだ?」「んー、なに慌ててるの? 元々、個人の部もある程度、出場選手は実力で絞ってるし。一年生は数人、二年生は去年で経験済みだし。むしろ、先生が落ち着いたら?」「落ち着けるか、こちとらにわか顧問だぞ。あれ、朝日。お前も出場だっけか、いけるか? 一人で勝手に右往左往して、小瀬の隣にいた朝日に気付いた。 思わず気軽にも競泳水着姿のその肩にばんばんと手を置いてしまった。「来年以降の為に出ておけって小瀬先輩が。あの、私が言うのもなんですが落ち着いたらどうです? 先生がテンパってるのをみてると、逆にこっちが落ち着きますけど」「よし、なんか知らんが役立ったか。大丈夫なんだな、大丈夫なら大河内の方に戻るから。あいつ、今日ちょっと調子悪いみたいで」「先生、自重しなよ。大会前夜にやり過ぎとか特にリレーでは気をつけて」 当然その小瀬の声は小声だが、違うわいとむつきは小瀬の頭を軽く叩く。 ちょっと口が滑って別の子の初夜がと言ってしまい、唇を吹かれた。 さらに誰、どれと応援席にいる二年A組の子らを指指され、しどろもどろに。 夕映と目があい、彼女がぼっと赤面してすっかりばれてしまったが。 兎に角、他の生徒は任せたと小瀬に丸投げし、再びアキラの元へ。 だがその移動中にピストルの火薬の炸裂音が、一言投げる間もなくスタートしてしまった。「アキラ、頑張れアキラァ!」「変顔、隣のレーンも早い。変顔で笑わせれば一発だにゃあ!」「競泳水着ってさ、良いよな。食い込みを直す指とか浪漫だよな。直しても直しても常に食い込む強制水着。どう作る、材質は。くっ、自分の未熟さが恨めしいぜ」「ちうちゃん、一緒にビッグサイト行こうってば。あれ、旅行って確かお盆。旅行中じゃんか。アイタタタタ、すっかり忘れて。でも私だけコミケとか、ただでさえ腐ってるのに私だけ共通の夏の思い出がないとか痛過ぎる」 一生懸命応援しているのが佐々木や明石といった親友組である。 他にチア部である美砂や釘宮、椎名も負けず劣らずチアコスで踊っていた。 一方全く別視点で悟った顔で語っているのが長谷川とショックを受けた早乙女だ。 当然、クラスメイトの晴れ舞台にと雪広と近衛からキツイ一発を貰っていた。 それは兎も角として、アキラである。 いやこれはもはやなんと言うべきか、言葉もないというような状況であった。 アキラは軽く流してと言い、部活で何度も見ているので軽く流しているのはわかる。 ただ元々がアキラは周りから浮く程に実力のある水泳選手、麻帆良の人魚姫なのだ。 軽く流しただけで頭一つ二つぐらい抜けている、むつきが慌てただけ無駄と言うものであった。「先生、はよこっち。アキラ一番、アキラ一番」「おう、そうか。麻帆良の人魚姫は伊達じゃないな」 むつきもぴょんぴょん飛び跳ねる和泉に手を取られ、一緒に大喜びだ。 顧問として生徒一人に入れ込みすぎだが、勘弁して欲しい。 アキラは恋人なので色々と特別なのだ。 一応他の生徒は小瀬に任せてあるので大丈夫なのだろうが。 逸早く向こう岸に辿り着いたアキラは、振り返って二人に手を振る余裕さえ見せていた。「ぶっちぎりなんですけど、アキラやっぱ凄いわ」「これは、午後からも応援のしがいがあるね」「いよっ、人魚姫!」「ぶい」 チア三人組の美砂や釘宮、椎名に応え、小さく呟いたそんな声さえ聞こえたかのようであった。 ただ流したと言うだけあって、上位グループで予選突破こそしたがタイムが振るわない。 次は午後だと一応他の生徒の結果を小瀬から聞いて、むつきはアキラを連れ出した。 和泉から体調不良の原因も聞きだし、この野郎と今夜はお仕置き決定である。 それはもう盛大に鳴かせてやるつもりだが、今はアキラであった。 全員の予選が終了し、朝日がちょっと涙を零した事もあったが、全員に昼食と休憩を言い渡した。 お昼の部の前の集合場所も決め、一人でうろうろするなとだけ注意である。 それから小瀬、和泉、朝日に各学年の取り纏めを頼み、アキラを連れ出した。 施設内では場所がないので悪いが一度着替えさせ、目指したのは漫画喫茶だ。 特に完全個室のあるそこで軽く食事をさせてアキラを寝かせるつもりである。「あれ、小鈴は?」 途中、極自然に美砂と夕映が合流した為、一人足りないとそう問いかけた。「何時もの含み笑いして、どっか行ったけど。超りんの事は良く解んないし」「また何か悪巧みでしょうか。あっ、待ってください。あそこがヒリヒリ歩きにくいです」「夕映ちゃん、先生のスーツのそでに掴まって歩くといいよ」 結局その行方はわからず、解った事と言えばまた夕映が破瓜の痛みに苦しんでいる事だ。 だから左手はアキラがとっている為、夕映には右手を貸してやる。 昼間のそれも麻帆良市内の為、直接手は握らずそでを貸す程度であった。 一人余った美砂には悪いが、携帯で調べた喫茶店に入店した。 一応カモフラージュの為に二部屋借りて、カウンターでも少し寸劇を行なう。 何せ三人とも学外での行動の為、制服着用なのだ。 ちょっと声を大きく、アキラを休ませてやってと頼み三人を先に行かせた。 むつきは軽く暇つぶし用の漫画を物色してから、三人が居る方の個室へ向かった。 ドアに覗き窓もない完全個室の、床全体がベッドマットになった部屋である。 四人はさすがに狭いが、密着したいのでそれはそれでありがたい。「アキラ、確か四葉が専用の消化の良い弁当くれたろ。先に食べるか?」「うん、軽く食べて……先生早くドア締めて。予選突破のご褒美欲しい」 プールで冷えた体を気分で紅潮させ、そうおねだりされてしまった。 美砂や夕映にはちょっと待ってとお願いし、まずは今日の主役のアキラである。「よく頑張ったな、偉いぞ。けど今後、大会前は控えような?」「うん、身に染みた。リレーが最終日で本当に良かった。んっ」 唇を触れ合わせる大人しいキスだがしっかりと味わい、アキラの体から無駄な力が抜けていく。 アキラの臨むままに堪能させ、やがてよしと気合を入れて拳を握った。 充電はそれなりに出来たようで、鞄からお弁当を出して食べ始めた。 正方形の個室にてアキラを最奥に、次にむつきで膝の上に夕映を、ドア側に美砂の配置である。 むつき達も一緒にご飯を食べたがやはりアキラは過度の緊張と運動の後であった。 一人ぱくぱくとお腹に詰め込んでは、むつきのスーツの裾を掴んでコテンと寝てしまう。 お休みとまだ湿り気のある髪を撫で、美砂と夕映の相手に戻る。「夕映、体の方は大丈夫か。痛かったら撫でるけど」「気分が盛り上がってしまいそうで、局部でなくお腹をお願いするです」「先生、私も。キスして。さすがにアキラは寝てるから、本番は良いから」「美砂もかい。良いけど」 膝の上にいる夕映の頭の匂いをかぎつつお腹を撫でてやった。 手当ての言葉が示すとおりまだ違和感と僅かな痛みが残るそこを撫で付けた。 それから逆の右手で美砂を抱き寄せ、存分に唇に吸い付き唾液を貪る。 狭い個室で密着し、くうくう良く寝るアキラを起こさないよう声を押し殺して。 夕映がお腹の上のむつきの手に手を合わせ、キュッと体を丸めた。「ピリピリしてたお腹がじんわり温かく、もっと撫でてくださいです」「夕映ちゃん、一応パンツ脱いだ方が良いよ。着替え、ないでしょ? 脱がしてあげる。前からこの紐パン、脱がしてみたかったんだ」「おい、あまり声出すなよ。アキラも寝てるけど、防音なんて……そうだ、携帯」 小鈴が極所的な防音効果も出来ると言っていた事を思い出し、念のためにそれも設定する。 その間に夕映が自分でスカートをたくし上げ、美砂が紐パンの紐を楽しそうに引いた。 脱がすの楽しいと鼻歌交じりで、面積の少ない布切れ同然のそれをむつきへ渡す。 そして自分はと、夕映の可愛い割れ目をぺろりと舐めた。「夕映ちゃんの味、痛くないようぺろぺろしてあげるね」「お、お願いするです。先生、キスしてください。あとパンツの匂いをかぐのは」「夕映の濃い匂い。ほらこっち向いて、夕映。直接匂いくれ」「んぅ、先生。ぁっ、柿崎さん。まだ開くと痛いです」 上と下の口を同時に責められ、特に下の口に反応していた。「ちょっとだけ破瓜の血の味、ちゃんと洗わないと。私が綺麗にしてあげる。んぁ、んふ」「まだ痛くてきちんと洗えなかったです。けど今は痺れるです、先生。もっとキスを胸もまた揉んでください」「手、入れるぞ。ノーブラか、おませさんめ」 リクエストに応え制服の裾から手を差し込むと、胸に直接触れるのに邪魔が一切なかった。 だから胸周りのお肉をかき集めて、一端とまではいかないまでもおっぱいに仕立て上げる。 どうやら夕映はこれがお気に入りのようで、そのままふにふに揉んでやった。 普段はないふくよかさに、もう夕映は夢中である。 小さなぽっちも、嬉しそうに顔を上げてはぷっくり膨れ上がっていた。 しかし本人は、声を抑えようと鍵爪型にした指を咥えて必死に声を押し殺している。 股座で美砂が懸命に破瓜の痛みを舐めとり癒してくれている事もあるだろう。 良い正妻さんだと、ご褒美に撫でつけてやるとその手にごろごろ甘えてきた。「美砂、続けてあげて。夕映、声我慢できるな?」「毎回痛いのは可哀想だもんね。私も女の子の拡張手伝ってあげる」 夕映は応える余裕もないようで、コクンと頷くのみ。 美砂が割れ目を少し開いて舌をくねくねさしこみ、膣穴を探す。 小さな水分さえ見逃さぬようモグラの鼻先のように、愛液を見つけてその水源へと向かう。 膣穴を見つけては拡張するように舌をうごめかせ、昨晩まで膜のあった膣を嘗め回す。 むつきも夕映を振り返らせては唇を奪い、もぞもぞと制服の中で手のひらを動かした。 ビクビクと時折夕映の体が震え、絶頂も近いようだ。「何時でもイッて良いから。破瓜の痛みが消えるまで、何度でも」「んぅっ、くぅ。んんっ」「甘い蜜出てきた。ほら、夕映ちゃん。イッちゃえ、気持ち良いんでしょ」 ほらっとまだまだ狭い膣に小指を入れて、美砂もむつきの上に、夕映の上に跨ってきた。 ちゅっちゅっと百合百合しいキスをし、俺も混ぜてとむつきも参加だ。 三人で代わる代わるキスをして、その時は来た。「イッ、んぅっ!」 思わず声が上がりそうな夕映の唇を、美砂がしゃぶりつくように塞いだ。 美砂の口内にその絶頂の声は閉じ込められ、二人して呻いては唇の端から唾液を漏らす。 勿体無いとむつきがそれらを舐めとり、二人に挟まれ夕映がイッた。 ビクンビクンと体を震わせ暴れ、こらっとさらにサンドイッチされる。 その波が収まる頃にはぽうっと頬まで紅潮させ夢心地であった。 可愛いなあとむつきと美砂の二人でキスの雨を降らし、精一杯可愛がってあげた。「んぁ、も……漏るです」 ぷるぷると今までとは異なる意味で夕映が体を震わせるまで。 慌てた美砂が紐パンをむつきから奪い返し、付けさせようとしたが断念。 ちょっと行ってくると夕映を抱えてトイレへと連れて行った。 残されたむつきは、ちょっと手持ち無沙汰で大人しく寝ているアキラを撫でる。 むうむう微笑む様が微笑ましくこいつめと頬を突いたりしているとノックされた。 まさか他の客からのクレームで店員がとビクついたが、そうではなかった「親愛的、私ネ。隣のお部屋にお客さんよ」「小鈴か。先に電話してくれ、ビビッたじゃねえか。それに客ってこんな場所に?」「大事な生徒が人生を賭けた相談ネ。教師にお休みはないヨ」 小鈴が同行しなかったのはそのせいか、一体誰がとカモフラージュに取った隣へ向かう。 寝ているアキラだけだと無用心なので、伝言も込みで小鈴を残していく。 そこで待っていたのは、何時もの竹刀袋を傍に置いた桜咲であった。 本当に何やら深刻そうにベッドマットの上で正座をし、両の拳は膝の上。 私は思い悩んでいますとばかりに、俯いたまま顔も上げる気配はない。 むつきが来た事には気付き、一度だけ視線を向けたが軽い会釈の後でそのままうつむいてしまう。「桜咲、お前なんかあったのか? 夏祭りの時は、凄い楽しそうだったじゃないか」「その節は、大変お世話になりました。刀子お姉ちゃんから、経緯は聞きました」 正直、どの経緯か謀りかねるのだが、ひとまず頷きベッドマットに上がりこんだ。 桜咲の正面にて、胡坐でどっかり座り込む。 行為の途中で半立ちだったので少し苦労して位置を直し、改めて向き直った。「超の話だと、悩みがあるみたいだけど。幼馴染の近衛と無事復縁できて、まだ何かあるのか?」「その件で、お嬢様。でなく、このちゃんの件で」 まだ慣れていないせいかついお嬢様と呼び、すぐさま呼びなおしていた。 本人がいないのに言いなおすとは、どうやら心から復縁はなったようだ。 しかし、その上となるとむつきで聞きいれ解消する事ができるのか。 以前、雪広の悩みを解決し損ねただけに、及び腰となってしまう。「おう、言って見ろ。学園長のお孫さんに、俺が何してやれるかわからんが」「さ、妻妾同衾という言葉について、どう思われますか?」 ぽかーん、桜咲の問いかけを聞いた時のむつきの表情はまさにそれであった。 聞き間違いか、近衛について相談されたはずが。 確かに近衛が男でいずれ学園長の地位を譲られたりすれば、あるかもしれないが。 近衛はそもそも女であり、麻帆良学園都市は学園長の権限こそ強いが近衛家のものでもない。 つまり、普通に今後を暮らしていって近衛が継ぐような事もまずはないだろう。 近衛が妻妾と同衾、この場合は桜咲が正妻か妾か。「すまん、さっぱりわからん。と言うか、質問の意味も意図も。登場人物をまず、整理しよう。正妻、これ誰?」「このちゃんです」「じゃあ、妾は?」「私です」 確かにそうであれば妻妾はそろうが、そもそもの同衾の主役がいない。「登場人物終わったじゃん、もう意味不明過ぎる。お前、ちゃんと夏休みの宿題やってる? 夏休み終わったら実力テストあるんだぞ」「いえ、最近は刀子お姉ちゃんのお世話が忙しく」「ごめん、それ俺のせいだわ」「あれ、今朝には復活されましたが。例の旅行の件も含め、先生に連絡すると」 それは朗報と携帯電話を確認してみると、確かに一通のメールが届いている。 開いてみると、ご迷惑をお掛けしましたという一文がまず読めた。 それから再婚まで交際とは違う意味でお付き合いくださいというお願いであった。 他には頼んでいた旅行の引率も、何故か特に京都はと強調され了解された。 後はむつきが相応しい相手にめぐり合えるよう手伝うだけだ。 いやいや、一応一安心かとほっこり笑顔で携帯を閉じ、桜咲と目が合った。 忘れていた、一瞬本気で忘れていたと頭を抱え、もう少し情報の整理を試みた。「刀子さんは一先ず置いておいて。近衛と桜咲でそれぞれ、妻妾。なんとなく、お前の魂胆も見えてきた。女同士ってのもありっちゃーありだけど、近衛は?」「お、このちゃんは純粋やから。それに私が勝手に、このちゃんも同じ気持ちなら嬉しいって。いや、きっと同じはずや!」「叫ぶな、ここ漫画喫茶。もう、何この子。刀子さんに通ずる何かがあるよ」 思い込んだら一直線、周りの迷惑も顧みるどころか手を掴んで引きずりこむ感じだ。 既に巻き込まれた身としては、恐らくは逃げ出せない事だろう。 何故こんな面倒を持ち込んだと、生徒の相談だが小鈴を恨まずにはいられない。 そう、小鈴なのだこのお話をそもそも持ち込んできたのは。「ちょい、待て。待て。そもそも妻妾同衾なんて古臭い言葉、誰から?」「刀子お姉ちゃんが、このちゃんとずっと一緒に居たかったらって。何処の馬の骨とも知られない相手に奪われるぐらいなら。せめて、私が認めた人に一緒に」「あの人、微妙に俺の事を怨んでないか。まあ、幸せになる為の助力は惜しまんが。お前が近衛を大好きなのは解った、多少独り善がりだが。で、肝心の相手は?」 何故かそこでじっと見つめられ、胡坐をかいたままふいっと体を傾けた。 それを追うかのように桜咲の視線も追いかけてきたので、一度立って位置を変える。 それでもまだ執拗に、発信機でもあるかのように追跡されてしまった。 いやまさか、これまで教師と生徒とはいえ、殆ど関連という関連もなかったのに。「お前、超に何を吹き込まれた?」 疑うとすればそこ、小鈴以外に思い当たるものが他になかった。「私とて、今の時代に妻妾同衾を行なえる男性が少ない事も承知しています。が、仮にできる人と言えばあまり人柄が良くない事も。最初は刀子お姉ちゃんでしたが。なんと言えば良いか迷っているところへ、超さんが」「いやね、俺も正直に言うとお嫁さん候補とお妾さんがいるの。誰かは言えないけど。けどお前完全に、目的と手段があべこべだ。好きだから一緒になるの、手放せないから両方抱くの。正妻と一緒にいたいから取り合えずとか、ないわ」「誰も先生に決めたとは言っていません。あくまで、候補。刀子お姉ちゃんを泣かせはしましたが、幸せになる手伝いをとは見込みがあります。運良く、今は夏休み。見定めさせてください」「なにこれ、一人に認められたら次とか。バトル漫画のインフレじゃないんだから。一体俺は後何人の処女を食えば許される。あと、何人お嫁さんを作れば……」 泣きたくなってきたと、せめてもの抵抗に困れ桜咲とばかりにむつきはその場で倒れ込んだ。 美砂や夕映、寝ていたアキラまでもが察知して慰めにやってくるまで。 一体どうしてと戸惑う桜咲の前で、うつろな瞳で天井を見上げ続けた。 -後書き-ども、えなりんです。ちょっと今回、わかりづらいところがあるかもしれません。そもそも、何故刀子が妻妾同衾を進めたのか、とか。本来本文中で説明すべきことかもしれませんが。要は、生徒から妻妾同衾を前提に迫られ苦しめと。もちろん、手を出してはいけないことが常識的に前提となってますが。そこへ超が乗っかったと、そんな感じです。完全に、恨み返しミスってますね。その生徒を前日頂いちゃったばかりですし。西のお姫様が動けば、次はどうなるか。説明するまでもありませんね。それでは次回は水曜です。