第七十五話 旅の恥は掻き捨て。知ってはりますやろ? 東からの修学旅行生がどんちゃん騒ぎする騒音を耳にしながら、天ヶ崎は膝を抱えていた。 宴会場とは同じ建物ながら遠く離れた縁側の片隅でのことである。 そこで夜空に浮かぶ半月と葉桜を見上げながら、そっと虚しい溜息をつく。 あの後、急いで預金通帳を確かめに行ったら一応貯金は無事であった。 もう確認するまで凄く怖く、背筋が凍るとかそんなレベルではない。 思わずキャッシング機の前で盛大に良かったと安堵の息をついてしまった。 何事ですか、如何しましたかと警備の男性が寄ってきた事の方が困ったが。 今日は仕事終わりに降ろしに行く予定だったので財布の中は、殆ど入っていなかった。 軽い気持ちで過激派の依頼を承諾したばっかりに、明日からどうしようと本気で考えた。 なんと言う恐怖、なんと言う他を省みない末恐ろしい行動か。 後で刀子が実は嘘っと可愛く言ってきたら、神鳴流相手に呪術師が殴ったという大事件さえ起こせそうだった。 しかし、しかしである。 両親の為、復讐の為にと貯めた大事なお金ではあるが、なんだろう。 まず最初に心配したのは、明日明後日のおまんまの事とはちょっと情けなくはないだろうか。「はは、復讐の鬼や言うても。やっぱ本物の鬼にはなれん、人間様やえ」 小太郎の飯代だって自分の通帳から出ているのだ。 直ぐにだからどうしたと、底冷えした気分はなかなか浮上してくれない。 小太郎は学校にさえ通っておらず、通わせる為に睨めっこした通帳でもある。 結局その当人が、そんなもんより戦いたいと戦闘民族のような事を言い出して無駄に終わったが。「おっしゃあ、腕相撲や。男の強さ見せたるわ!」「第二ラウンドアル。こっちも負けないアルよ。愛は無敵!」「じゃあ、私は小太郎君に掛けるわ五百円」「えっと……じゃあ、私も?」 その小太郎は明日、若さ全開ノリノリであの集団に混じっていた。 小太郎に賭けてくれたのは特に眼を掛けてくれている年齢詐称っ子と、そばかす地味っ子か。 厳密に手はだしていないが、あの教師に襲いかかった後悔とかないのだろうか。 ないだろうな、あのお気楽能天気な性格ならと羨ましくもなった。 いっそあの集団にこそっと紛れ込ませ、西も東もなく過ごして貰った方が良いのか。 結婚もしてないのにお母さんかと、自分で突っ込んでもっと凹んだ。「とぅっとぅっとぅっとぅる、とぅっとぅとぅ」 全くの別方向から能天気な鼻歌が聞こえ、一気にムカッと来た。 一体誰だと滲んだ涙を拭いていると、あの集団の教師にして唯一の一般人が歩いている。 浴衣姿が妙にしっくりくる関東人がこちらの気も知らず。 何処をどうやってきたのか、宴会場とは全く別方向に風呂上りほかほかでだ。 そしてふと、目があった。「あれっ、天ヶ崎さん。どうし……どうしました、何処か辛いんですか!?」「えっ、ちょっ」 割と暗がりなのに目元の涙に気付くとは、ぼけっとしているようで目ざとい。 ずいっと詰め寄られ、涙も怒りも一気に引っ込んでしまった。「いえ、お気になさらずにお客はんは宴会を楽しんでおくれやす」「泣いてる女の人を放って置いて楽しめる程、神経太くないんですよ。話し辛い事なら、一杯やりながら愚痴ぐらい聞きますよ。そう言うの、割と得意ですから」「強引なお人や。お客はんの接待やったら、サボってても煩い事は言われへんえ。ほな、乙姫はんやった? ちょいと待っとっておくれやす」 はいはーいと能天気な返事を背中に受けながら、天ヶ崎が向かったのは厨房だ。 食べ盛りが一気に三十越えと大忙しの中、口八丁でお手伝いとのたまいお酒とおつまみをゲットである。 お盆にそれらを乗せて、こんな役得ぐらいとどん底気分は少しまともに。 まだ明日は明日の風が吹くとまではいかないが、お客用の美味しいお酒とおつまみを摘むぐらい許されよう。「お待たせ、乙姫はん。うちもご相伴に預からせていただきますえ」「月見や葉桜も良いけど、綺麗な人と飲むほうが断然美味しいですからどうぞどうぞ」「あらお上手。ほな、まずは一献」 関東の男は軽いと思いはしたが、綺麗といわれて嫌な思いがするはずもなく。 これで年上ならなと、僅かに少年期の名残がある若いむつきへと心で溜息をついた。 もちろん歳を経た経験からそんな感情おくびにも出さずに、渡したお猪口に冷酒を注ぐ。 それから二人縁側に並んでお猪口をチンッと乾杯である。 むつきは男らしくグイッと飲んで、冷たさと同時に喉の奥が熱くなる感覚にくうっと唸った。 余りの美味さにこっちが泣きそうと、お盆の上のお漬物を一つまみ。 天ヶ崎はしっとりと女性らしくお猪口を両手持ちでちびりと舐める程度に喉を潤す。「男らしゅうて、素敵どすえ。さっ、お次どうぞ」「はい、どうもです」 ほぼ初対面な為、何処まで踏み込み踏み込ませるか。 ちょっと探り合う感じで天ヶ崎がむつきへとお酌していた。「天ヶ崎さんは生まれも育ちも京都なんですか?」「総本山、あっ。お嬢様のご実家で働く者は皆そう。少々理由がありまして、一度関東へ行くと戻り辛いん。刀子が良い例ですえ」「そう言えば、刀子さんも関西出身者だっけ。観音がなんか言ってたな。京都ほにゃらら流とか。ん、祭事と剣術に何か関係が?」「祭事はお偉いさんの役目ですから、昔から護衛の剣術家はつきものだったんですえ」 豆知識だと朗らかに笑うむつきを見てると、一時忘れたはずの切なさが戻ってくる。 貯金の事が頭をもたげたわけでもないのに、なんでと再び涙が零れそうになって気付いた。 もはや記憶もおぼろげだが、こんな風景を見た事がある気がしたからだ。 季節はもう少し過ぎた秋頃のお月見ごろの事である。 親子三人で一緒にお月見をした事があった。 自分はお月見団子を頬張り、母が父のお猪口にお酌する。 喉が渇いて、いやもしくは母に構われた父が羨ましくて私も飲みたいと駄々をこねた。 もう少し大きくなったらと父と母から頭を撫でられ、そのまま。 何年経とうと、成長が止まっても、もうその大きくなった時が来ない。 零れ落ちそうになった涙を隠そうと、お猪口をぐいっとあおってお冷ごと飲みほした。「ああ、美味しいですえ」 もちろん今の揺れ動く感情のままで味など分かるはずもない。 無理にそう言って、まだ滲んでくる涙を隠そうとしただけだ。 まだ収まらないかと自分でお猪口に注ごうとすると、そっと手で遮られた。「あの、嫌だったら言ってください」 おつまみがのったお盆を後ろへずらしつつ、むつきがそっと天ヶ崎の肩に手を伸ばす。 当然その手が肩を掴んだ瞬間、自分の胸元へと強引に抱き寄せた。 最初のお断りの一言以降、むつきは何も言わない。 それどころか、胸元の天ヶ崎に視線を落とす事なく、そっぽを向く様に月を見上げていた。 何も言わない、聞かない、行きずりだからこそ吐露できる思いだってある。 どんな姿を見せても相手は明日には周りから消えてしまうのだ。 旅の恥は掻き捨て、この際どちらが恥を晒すかは置いておいてそう言うことであった。 ならば、もうこの涙をとどめる理由は何処にもない。「お父はん、お母はん……どない、どないして死んでしまはったん? うち、もうお酒飲めるようになったえ。お酒、注いで注がれて。あの時みたいに笑いたかったんえ」 もちろん亡くなった二人は応えてくれず、応えたのは肩を抱き寄せたむつきの手のみ。 より強く肩を掴み、態度で大丈夫と口にするように。 たまらず天ヶ崎は嗚咽を漏らし、むつきの胸に縋って泣きはらした。 男らしい胸板の上で、男らしく抱き寄せてくれた行きずりの相手の腕の中で。 例え相手が次のように内心思っていたとしても。(やべえ、何故か超地雷踏んだ。重い、潰れる。潰れちゃう、重すぎて折れちゃう。助けて美砂、アキラ……いや、さすがに無理か。ならここは大人のアタナシア!) 強く抱き寄せたのは過度の緊張から来るものであったが、どうせ伝わりはしない。 天ヶ崎は今は泣く事で手一杯で、むつきもそっぽを向いているが功を奏した。 しばし五分程天ヶ崎は泣き続けたが、むつきにはそれこそ時間単位で感じられた。「初対面やのに、申し訳あらへん。うちの涙で濡れてもうた」「い、いえ。お気になさらずに。あの、なんで浴衣をはだけ」 涙で濡れたと天ヶ崎が浴衣が肌蹴たむつきの胸板を手で撫でつけた。 自分の涙を塗りこむように、少しずつ刷り込ませながら浴衣が肌蹴ていく。 天ヶ崎がはだけさせながら、身を乗り出しむつきへとしな垂れかかってくる。「旅の恥は掻き捨て。知ってはりますやろ?」「ちょっと待って、落ち着いて。天ヶ崎さん絶対に今正気じゃないから」「年上は嫌い?」「だ、大好き」 咄嗟に答えてしまった瞬間、俺って意志あるのかと凄く疑問に思った。 我思う故に我有りというが、我思ってもふわふわと自分が何処にいるのか。「ここな、夜になると誰もこうへん。私の秘密の場所なんですえ?」「嘘、だって俺。宴会場に行こうって」「方向音痴、刀子の言う通り年下も可愛いかもしれへん。乙姫はん、下の名前。教えてんか?」「ちょ、下は下でもそっちはちが。あっ」 生徒達のどんちゃん騒ぎの声は遠く、されど聞こえる程度の距離の事である。 半月の月と葉桜に見下ろされながらむつきは、天ヶ崎共々倒れこんだ。 縁側の板張りは硬いが、それを忘れさせるぐらいに激しく天ヶ崎が浴衣の裾に手を差し入れ下半身を弄ってきた。 下の名前と聞かれ、おちんちんと答えたくなりそうなぐらいに。 もうどうにでもなれと心中で叫ぶのが、最後の抵抗ならぬ抵抗だった。「天ヶ崎さん!」「千草って呼んでおくれやす」 亜子や刀子もそうだが、確かに方言を操る女性は浪漫だと押し倒し直した。 寝具がないので仕方ないが板張りの廊下の上に、千草をである。 仰向けで寝かせ足はそのまま縁側から投げ出しぶらつかせた状態だ。 そのまま有無を言わさぬように、冷酒の味が残る唇を互いに貪らせた。 むつきから進んで擦るより前に、千草の方から舌を絡ませむつきの唾液を飲み始める。 肩を出すどころか、胸しか隠していない刺激的な着物を着ているだけあって激しい人だ。 しかし、日々やりたい盛りの若い娘達と楽しんできたむつきも負けてはいられない。 懸命に舌を絡ませ千草の体液をすすり、わざと喉を鳴らして飲み込んでいく。 のみならず着物が胸を隠すパッド部分に指を引っ掛けずり下ろした。「ぁっ」 さすがに千草も声を出さずにはいられなかったようで、隠すように身を捩ろうとする。 もちろんそれを許すむつきではなく、少し力を入れて肩を押さえつけた。 そして手を伸ばし取ったのは冷酒が入った徳利だ。「少し冷たいですよ」「そんな、そないな飲み方。うち知らへんえ」 月明かりに照らされた千草の胸に、つーっと冷酒を滴らせた。 かつてアタナシアから教わったエロイワインの飲み方の日本酒バージョンである。 乳首の上に冷酒の糸が滴り落ち、その冷たさにビクンッと千草が体を震わせた。 冷酒はそのまま乳首を飲み込むように溢れ、重力に丸く潰れる乳房の上を流れていく。 その流れを舌で舐め取り遡り、冷酒に飲まれた乳首を一緒に飲み干していった。「冷酒が千草さんのおっぱいで程良く温められて美味しい」「ほ、ほらなこういうのはどうや」 最初は恥ずかしがっていた千草も、そこまで言うのならと腕で胸を挟み持ち上げた。 もちろん寝転がったままでは無理なので、腹筋を使って少し体を持ち上げも。 胸の谷間にできた三角推の穴に、心得たとばかりにむつきが冷酒を垂らす。 隙間無く作られた胸の谷間で冷酒は受け止められ、谷底に湖が出来上がった。 そのまま直ぐに飲んでも良いが、少し寄り道しても良いだろう。「そこ違う」「違わないよ、千草さん。零したらお仕置きだから」 この状況を直ぐに終わらせるのは勿体無いと、胸の谷間ではなく首筋に舌を這わせた。 当たり前だが皮の薄い敏感な場所だけに、千草は舐め上げられるたびに震える。 だが胸の谷間に垂らされた冷酒は健在で、喘ぐ事も動く事もままならない。 なのにむつきは次から次へと、首筋からうなじ、耳の裏から穴まで舐めてくるのだ。「関東人は意地悪や。乙姫はん、はよう。零れてまう」「ごめんね、意地悪で。今直ぐ飲むから」 自分から進んでやったとはいえ、窮屈な状態からやっと解放される。 そう千草が安堵した瞬間を逃さず、むつきはふっと耳元に吐息を吹きかけた。「あんっ」 虚をしっかりと突かれ、思わず大きく揺れた体から冷酒の飛沫が飛んで行った。 量は限りなく少量、水滴と呼んで差し支えない量ではあったのだが。「千草さん、こぼしちゃったね」「違う、零れただけやえ」「こぼしちゃったね、千草さんが」 言い訳も許してくれない意地悪キングが逃すはずもなかった。「それじゃあ、罰ゲーム」 その内容は誰もいないのに、わざわざ千草の耳元で囁くように伝えた。 すると月明かりだけの中でもしっかりと分かる程に千草が顔を紅潮させていった。 そんな事は誰にもしてあげた事はないとばかりに。 出来ないと言いたいが、それだけで許してもらえるのか。 チラチラ許してと視線で言うが、にっこり笑顔だけで駄目っと言われてしまう。 ならば今度こそ旅の恥はと、何もかも捨て去ってしまうしかない。「冷酒は乙姫はんが垂らしてな?」「喜んで」 せめて教師失格と反撃してみるが、知ってますと返された。 もう何一つ反撃の要素もなく、やるしかなかった。 今再び縁側の板張りに仰向けとなり、足元の着物の裾を自分で肌蹴た。 そのまま自分で足を上げて、途中から膝裏に手を添えぐっとお尻を上げて手を引く。 自分でまん繰り返しの状態をつくりあげ、成熟した女性器へと手を添えた。「乙姫はん」 既にぬれ始めている割れ目を千草は開かされた。 さすがにもう桃色とはいかないが、返って準備ができているとも言える。 種を仕込めば何時でも孕めるそこに、むつきは精液ではなく冷酒を注いだ。 乳首にしたように顔が見えるクリトリスに垂らし、冷酒はそのまま割れ目の中へ。 正式名称はむつきも知らないが、あえて名づけるなら日本酒のあわび蒸しだろうか。「ぁっ、冷たい。うちの中に、はよう吸って。吸ってや乙姫はん」「今の千草さん、凄く綺麗」「お世辞はええから、うちのおめこにキスしてや」 そこまで頼まれてはと、むつきはようやく蜜壷ならぬ酒壷へと口をつけた。 つっと吸うたびに千草がビクンと震えるのが楽しい。「うち、おめこにお酒注いで吸われ、吸われとるん。乙姫はん、うちの酒壷どうなん?」「凄く美味しい、お代わり……あれ、なくなっちゃった」 一頻りすすり上げ、お代わりと徳利に手を伸ばしたがあいにく空だった。 胸に垂らしたり色々していれば、小さな徳利ぐらい直ぐに空なのは当たり前。 なんだと思っていると、全部吸ったはずの冷酒がまた溜まり始めていた。 千草の酒壷の奥からとろとろと。 指で救うとつっと糸を引いたそれは、お酒ではなく愛液だった。 膣口の周りで少し指を彷徨わせ、それからつぷりと埋めるとそのまま奥まで誘われた。「千草さん、中が温かい。とろとろ」「そんな、ぁっ。気持ちええけど、太いの。もっと太くて硬いのおくれやす」 それじゃあ足りないと腰を振った千草が、喘ぎながら懇願してくる。「太くて硬い。地方の違いかな、なんの事だか」「おちんちん、乙姫はんのおちんちんを。うちのおめこに」 もはや捨てる恥すらないとばかりに、降参だと千草がそう懇願した。 改めて膝を抱えなおし、酒壷から再び蜜壷、いや肉壷と化したここにと手で開く。 はやくはやくと、上の口以上に膣口が喘ぐように誘っている。 そこまで言われてはと、むつきも縁側に上がりなおして千草の尻を手で掴んだ。 ばっと浴衣の裾を払いのけ、完全勃起中、千草を犯す為の一物を取り出した。 ノーパンだったのはひかげ荘にいる時の癖でこの時ばかりはありがたかった。「ほら、これが欲しいんですか」 千草が開いた花園を反り返った一物の裏筋でずりずりと、擦り上げる。 それですと千草が答える前に、陰唇がフェラをするように吸い付いてきた。「んぅ、気持ちええけどちゃうんよ。中に、おめこにぶっさして!」「行きますよ」 酔ってるどころじゃないなと思いつつ、むつきは誘われるままに膣口へと亀頭を添えた。 そのままずぶりと、成熟された体から潤う愛液を潤滑油に挿入していく。 何時でも孕める準備は万端だと、千草の体もスムーズに受け入れてくれる。 のみならず、はやく精を種を寄越せとばかりにねっとり絡み、搾り取ってきてさえいた。 思わずキュッと尻に力を入れなければ、射精してしまっていた事だろう。 まだまだお楽しみはこれからだと、若干歯を食い縛りながらむつきは一気に差し込んだ。 子宮を強かに亀頭で打ち付け、板張りとのサンドイッチで千草を押し潰した。「はぅぁっ、奥。深い、太ぃ。乙姫はんのおちんちん、凄い。キスも乱暴」「じゃあ、優しく行きますよ」「嘘、絶対嘘やぁっ。ぁっ、ぅぁっ、んぅっ!」 御明察とばかりに、むつきは子宮とキスをしながら腰を臼のように回す。 ごりごりと子宮口を引いて潰すように、あまりの感覚に千草の手は板張りを引っかいていた。 快感が大き過ぎて、けれど止めてしまいたいわけでもなく。 ただただぶつけさきのない感情を、物言わぬ床にぶつけるように引っかいただけだ。「おめこ、おめこ壊れる。乙姫はん、もっとごりごりしてぇ」「京美人が乱れるとか、凄い俺得してる。でも俺、セックス中は意地悪なの」 激しく求められれば、優しくしてあげたくなるのも意地悪の一つだ。 小さく腰をグラインドさせ、ちゅ、ちゅっと小刻みに小さく子宮口へとキスをした。 そうすると余計に、その小さなチャンスを逃さないと子宮口がしゃぶってくる。 チャンスの到来は直ぐなのだが、一度一度を決して逃さないとばかりに。「ぁっ、だめ。感じ過ぎ。イク、意地悪なおめこでイッてまう!」 じゃあ流石にと外出しの為に抜こうとすると、その前にがっしり腰をつかまれた。「千草さん、ちょっと」「お互い、ええ大人でっしゃろ。対処は心得とりまえすえ。な?」「良い大人だから、って。もう、俺流されすぎ!」 こんな時、もう知りませんからと投げやりになるのは男だからだろうか。 相手が仮に孕んだ場合、俺のせいじゃないからと。 そんな後ろ暗い思いが頭の片隅でチラっと浮かんだが、目の前の快楽には勝てない。 むしろ孕んでしまえという思いの方が大きく、目の前の雌を孕ませようとたぎる。 小さなキスは止め、グラインドは大きく、強かに子宮にキスを叩きつけた。 ぐちゃぐちゃと飛び散る愛液で千草の顔を汚しつつ、こいつめとばかりに。「これ、これが欲しかったんやえ。乙姫はん、うち。うち、イク!」「遠慮なくどうぞ、良い大人なんですから」 もちでもつくように、白い千草のお尻をぺったんぺったん叩き続ける。 合いの手は千草の喘ぎ声でリズムを整えた。 実際は、ぺったんなんて生易しい音ではなく、ぱんっと短い音だが。 千草を孕ませようとそれはもう、一生懸命にむつきは腰を打ちつけた。「乙姫はん、うちもう。あかんえ。最後に接吻、接吻してや」「千草さん、好きなだけ。思い切りイってください」「んぅ、乙姫は。イクゥ、うち。イクッ!」 求められたキスに応じたが最後、むつきが振り落とされそうな程に千草が体を震わせた。 幸いと言うべきか、果てる声はキスで抑えられたが体は喜びに打ち震えている。 むつきもこれ以上我慢できず、子宮の中へと射精しているのだ。 初対面、出会ってまともな会話すら殆どしていない相手へと。 そんな相手を孕ませようとしていると、美砂達とは別種の背徳感がさらに射精を促がす。 特別に濃く量も多い精液は直ぐに千草の子宮を見たし、蜜壷からあふれ出す。「ぷはっ、ぁっ。熱い、溢れ。凄い、乙姫はん」「射精止まらない、千草さんの体が気持ち良くて。ほら、硬いまま」「ほ、ほんまやえ。んぅ、ぬりぬり。うちの中にぬりぬりしたらあかんえ」 駄目だと言いつつ、千草の足はまだまだむつきの腰を放してはいなかった。 むしろより強く抱き締め、膣壁にまでぬりつけてとマーキングを誘う。 だったら遠慮なくと、始めたのは自分だがむつきも千草に自分の匂いを染み付かせる。 旅の恥は掻き捨て、掻き捨てるままに京都美人に自分を残そうと。 長い長い時間をかけて、マーキングも終えてむつきは、力を失い千草の上に覆いかぶさった。「すみません、少しだけこのまま」「ええよ、乙姫はんの重さ。嫌いやあらへん。接吻して」 射精こそ止まったがまだ千草の膣を犯しつつ、名残惜しげにキスを繰り返す。 まだ掻き捨てて去る時じゃないとばかりに、もう少しだけと。「乙姫はん、ありがとうな」 お礼を言うのはこっちだとも思ったが、その台詞を最後に一度だけキスをする。 それからむつきは気だるい体を起こし、千草の中から一物も抜いた。 着物の奥で見え辛いがきっとありったけの精液が流れ落ちている事だろう。 やっちまったなとも思ったが、そこに意外と後悔はない。 縁側の外、庭先で肌蹴た浴衣を直していると、千草もゆっくりと着物を直しだす。 それからちょっとの沈黙、お互いに照れくさそうに笑った。「うち、お冷のお代わり持ってきますえ。ちびっとお待ちを」「千草さん」 お酒はもう十分と、お盆に手を伸ばそうとした千草の腰に手を回し抱き寄せた。 潤んだ瞳に浮かぶ期待の二文字から、恐らくは間違っていないのだろう。 そうでなければ、お冷のお代わりなんて言いだすはずがない。「僕の部屋で、今夜は過ごしませんか?」 今さらだが恥ずかしそうにこくんと千草が頷いた。 片付けは明日で良いと近くの使われていない部屋にお盆や徳利達を隠すように片付け。 むつきに腰を抱かれ、千草は肩に首を預け恋人のように歩いていった。 正直むつきは迷子状態だったので、お部屋はあちらと千草に案内されながら。 もちろん、生徒達にバッティングしないよう気をつけてもくれていた。 だが部屋が近付くにつれて奇妙な違和感が、いや違和感どころではない。 向かう先の部屋からなにやら聞きなれた声が。「いややわ、刀子の部屋も近くなんか」「えっ?」 忘れていたが、千草は京都出身の刀子の知り合い、最悪は友達なのだ。 本当に今さら、これやばいんじゃと嫌な汗が噴き出し始める。 それでも千草は短い逢瀬の時間を惜しみ、むつきをどんどん連れて行く。 その表情は当初にこにこしていたのだが、廊下を歩くに連れて不審げにも。 決定的になったのは、むつきの部屋の前に辿りついてからだ。 行灯に照らされた障子の向こう側、今は影しか見えないが争う影が二つ。「ちょっと帰りなさいよ、察しなさいよエヴァンジェリン。故郷での一夜とか今日限りなのよ。踏ん切りをつける良い機会なのよ!」「やかましいばつ一が。私はむつきと囲碁を楽しんだ後にしっぽり。京都だぞ、京都。そっちこそ帰れ。さっさとどこぞの馬の骨とでも結婚してしまえ!」 本人が居ない場所で超修羅場が発生していた。 思い起こせば夏祭りの時も、刀子とアタナシアはと思い出した所で、んっとなった。 今刀子はエヴァンジェリンと言わなかっただろうか。 だからそれは妹の方だと顔に手を当てていると、障子がスパンっと開かれた。 げっと思う間もなく、そうしたのは額に血管を浮かばせた千草であった。 乱れた布団の上で顔をひっぱりあうキャットファイト中の二人が固まっている。「お二方、乙姫はんは今夜。うちと過ごす予定ですえ。お引取りを」「ちょっ!?」 起こって殴ってくるどころか、正面から千草は戦いを挑み始めたではないか。 刀子とアタナシア、やっぱりエヴァではなくアタナシアである。 その二人もぽかんとしていたのは、一瞬の事であった。 深い事情までは察しずとも、寄り添って現れればその目的は一目瞭然だ。「むつき先生、へえ。これはお手が速い。うちをさっさと別の男に押し付けて、ご自分は京都の女漁りですか」「私と囲碁の約束をしておきながら。古臭い、蜘蛛の巣が張ってそうな女を。覚悟は出来ているんだろうな」「当然、うちとしっぽり楽しむ覚悟はできてますえ。なにせ、ついさっき楽しんできはりましたから。なあ、乙姫はん?」「お、俺生徒達が迷惑かけてないか見回りに」 当然の事ながら、逃がすかと三人の手によりむつきは引きずり込まれていった。-後書き-ども、えなりんです。大人組が絡むと大抵こういう落ちになる。もちろん、うやむやにせず次回は修羅場回です。それでは次回は土曜日です。