第七十八話 二人で話せませんか? 無事何事もなく京都での観光を終え、現在時刻は午前一時。 超包子の車両は四国へと向けて、これまた夜間に田中が走行させていた。 特別修学旅行も残す所、三日。 四国、九州、最後に沖縄と長い旅にもついに終わりが見え始めていた。 むつき達教師陣とむつみは、毎晩おなじみのスケジュール確認を大広間で終えた所だ。 とは言っても、実際に確認をしていたのは神多羅木や刀子にむつみの三人だけ。 一番肝心なむつきはというと、テーブルから遠く離れた壁際にぽつんと胡坐をかいて坐っていた。 膝の上に、ピンクのパジャマ姿で丸くなるように眠る明石を抱え込む様にしながら。(役得と言えば、役得なんだけど。これ後々、問題にならんのか?) きっかけは、消灯後に恒例のスケジュール確認の最中に、明石が部屋から出て来たことだ。 謎の不眠、恐らくはホームシックなのだろうが。 部屋でごろごろ寝返りをうっては皆が眠れないと、昼間の様にむつきの傍ならとなったわけだ。 もちろん、そんな助言を彼女に行ったのは、別の部屋にいてメールで相手をしていたアキラや亜子であった。 そんな馬鹿なとも思ったが、結果はこの通りであった。「お父さ……ん、んぅ?」 小さく身じろぎしながら、匂いかなにかが違うとばかりに明石が鼻をすんすん匂いを嗅いでくる。 ちらっとスケジュール確認中の三人を見るが、気にした様子は全くない。 とりあえず、彼女が身じろぎするたびにその体を抱え直す。 何度かパジャマの隙間から見えるはちきれんばかりの果実に目がいったのはご愛嬌。 生殺しですかと、脳内でお経を読むこと四回半、ようやく明日以降のスケジュール確認が終わったようだ。 真っ先に振り返ったのはむつみであり、四つん這いの格好で近づいて来て明石を覗き込んだ。「すっかり、寝ちゃって。むっくん、お父さんみたい」「止めて、姉ちゃんまで。こんな大きな子供いたら幾つなの俺」 むつみにくすくすと笑われ、体勢がずれていく明石を抱えなおしつつ苦笑いである。「少し似てきたな、夕子さんに」「そうですね」「二人共、明石のお母さんを知ってるんですか?」 何処か懐かしそうな視線を神多羅木や刀子が向けた為、気になって聞いて見た。 明石が父子家庭という事は知っていたが、母親がどうしていないかは知らない。「個人的な付き合いで少しな」「彼女の母親は、この子が幼い頃に海外出張中に事故でそのまま」 だからこそ、母親を失った寂しさを埋め合わせる為に必要以上に父親にべったりなのか。 ファザコンと言われ全く気にしないのも、明石自身は家族愛を向ける相手は父親しかいない。 明石にとって家族を愛する事は父親を愛すること。 ちょっと行き過ぎな事もあるらしいが、当たり前の事なのだろう。 ただそれでも七日やそこらでホームシックとは子供やのうとつんつん頬をつつく。「むっくん、裕奈ちゃん折角寝たのに起きちゃう。お姉ちゃんにかして、部屋に寝かせに行ってくる」「あの、むつみさんはさすがに落としかねないので。ここは私が。そろそろ、お休みにしましょう」 むつみでは共々倒れ込みかねないので、刀子がむつきから明石を譲り受けた。 軽々とひょいっと横抱きにし、四班の部屋のドアを開けて入っていく。 その間に今日もお疲れと神多羅木とむつみが同じ部屋へと向かっていった。 俺もそろそろ寝るか、もしくはお嫁さんの誰かが起きていればもう一頑張りか。 そう思い部屋に足を向けようとした所で、全く別のドアが開く音が聞こえた。 目の前、少し先の自分の部屋はまだ開いておらず、では誰が。 刀子は出てくる可能性があるが、寝かしつけたにしては少し速い。「乙姫先生、少しお話が」「桜咲、近衛は良いのか?」 振り返った先、開いていたのは二班のドアであった。 ドアを開けたのは桜咲であり、何時もの竹刀袋を胸に抱きなにやら思いつめた表情だ。 消灯時間を当に過ぎていると言うのに、制服姿である。 チェックのスカートの下、太股辺りにスパッツが見えるなど普段通りの姿であった。 その傍に近衛はおらず、最近は常にペアだったのにと思わず聞いてしまう。「このちゃんは大人しく寝ていらっしゃいます。本当です、大人しいですよ?」 途端に頬を染め、わたわたと桜咲が念を押すように言い出した。 赤くなった頬、それも右側だけを手で押さえているから大体想像はつく。 一緒に寝ていた近衛がよくキスでもしてくるのだろう。 近衛は大和撫子を体現したような少女だが、意外におせおせな所もある。 相変わらずでとチャカしもしたくなるが、その前の思い詰めた表情が気になった。「刀子さんなら、明石を寝かしてるから。直ぐに戻ってくるぞ。俺で良いのか?」「むしろ、先生が。二人で話せませんか?」「二人きりか」 桜咲の申し出にそう唸ったのは、理由があった。 ここが学校で昼間なら良いのだが、現在は夜中であり、むつきの部屋ぐらいしかない。 そこまで思ったのだが、桜咲は半ひかげ荘の住人である事も思い出した。 まあ良いかと、まず最初に小鈴にちょっと待ったメールをしてから、部屋の扉を開けた。 一応誰にも見つからないか注意しつつ部屋へと招き入れる。 むつきの部屋は一番狭いので、用途があったと小さな丸型テーブルの椅子を桜咲に勧めた。 それから自分はベッドを椅子代わりに、相談教室の格好であった。 ただ竹刀袋をテーブルに立てかけた桜咲は、両手を膝に首をすくめるようにガチガチだ。 緊張のし過ぎというか、それでは相談で本音を漏らす事もできないだろう。 まずはそこをほぐすところからかと、からかい半分でむつきは言った。「それで、改まって相談ってのは。近衛の寝相についてか?」「違います!」「それじゃあ、近衛が好き好き大好き過ぎて毎晩体が疼いて持て余してるとか?」「ちゃいます、このちゃんはちゃんとうちを満足させてくれとる。最近、皆と相部屋でできなくてちょっと欲求不満、ハッ!」 思いのほか緊張が解けすぎてふしゅうっと桜咲が頭から湯気を出した。 むつきもガチレズな桜咲を前に、ちょっと反応に困ってしまった。「失礼します、この話はなかった事に」「待て、すまん。俺が悪かった。チャカして悪かった。大丈夫、誰にも言わないから。プライバシーは守る!」「絶対やえ。バラしたら、うちも覚悟してひかげ荘の件を」「思いつめるな、そこまで思いつめるな。お前はバレても、思春期で済むが。俺はそうはいかねえんだよ。マジ、止めて!」 普段は寡黙で扱いに困らない生徒かと思いきや、もの凄く手のかかる子であった。 腕を掴んで引きとめ、逆に肩を掴まれ凄まれたりと。 お互いに冷静になるまで割りと長い時間が掛かってしまった。 視線で牽制し合い、言うなよ、絶対に言うなよとダチョウ倶楽部並みの牽制である。 言ったが最後、主にむつきは人生の破滅なので言えと言っているわけでは絶対にない。「よし、仕切りなおしだ。チャカしはなし。来い」「こほん、それでは」 むつきが居住まいを正した事で、桜咲もそれならと咳払いで姿勢を正した。「先生、明石さんの様子はいかがでしたか?」「は? いや、最初は俺の膝の上で眠れないってごろごろしてたけど。なんの事はない、三十分経たないうちに寝ちまったけど」 桜咲のお悩み相談で何故にいきなり、明石のホームシックの件が出てきたのか。 もしや桜咲もかげではホームシックとでも言うのだろうか。 いや、桜咲の故郷は京都であるし、父母も既に死別しているとも。 逆に京都に来て、近衛が父と触れ合う様を見たりと近付いたが故にホームシックにでもなったか。「では、改めて。先生、心を守るとは何ですか?」「突然哲学染みた。すまん、さっぱり意味が……あっ、あれか。近衛のボディーガードの件か。明石全然関係ないけど」 刀子から桜咲が近衛のボディーガード的な存在だとは聞いている。 十四の女の子にそれをさせるのはどうかとも思うのだが。 近衛の実家を見て、彼女が学園長のお孫さんだと考えると、おかしくない気もする。 普通のボディーガードでは学生のそれも女の子に四六時中張り付くなんて無理だ。 近衛が鬱陶しいと思うだろうが、その点において桜咲は最適であった。 まず何より、近衛が桜咲を好き過ぎて離したくないと思っている。 さらに桜咲も剣道に置いて優秀で、A組の中でも武道四天王と呼ばれていた。「あれ、古は拳法。長瀬は忍者マニア、桜咲は剣道で。龍宮はなんだ?」「えっ、あの……そう、バイアスロン。鉄砲が、違ッ!」「ふーん、まあいいや。どうせサバゲーとか、女の子としては表に出しにくい事でもやってんだろ。必死になんな。誰にも言わねえよ」 だからアイツそこかしこにエアガン持ってるのかと、むつきは勝手に一人で納得していた。 以前も魔眼とか言って、千雨に中二病呼ばわりされていたが。 恐らくはエアガンのスコープを覗いて私の魔眼とかゲーム中に言っているのだろう。 そんなむつきを見て、これ絶対後で怒られると桜咲が頭を抱えていたのは少しの事だ。 心の奥底ですまんと謝り、優先順位はこっちだからと忘れる事にしていた。「夏祭りの時に、刀子お姉ちゃんからこのちゃんの心を守れと言われました。ですが、心と言われても具体体に。そこで先生に相談を」「また凄いの来た。何故、お前達は俺にどうしようもない相談ばかり持ちかける」「ですが先生は明石さんの心をお守りに」「明石? 大げさな、あいつただのホームシックだぞ?」 先程から度々会話がかみ合っていないというか、眼を見開いた桜咲がそうかと呟いている。 良く要領は掴めないが、明石のホームシックをむつきが治した。 直したとまではいかないまでも、一先ず不眠は解消されたはず。 だからそれが桜咲には明石の心を守ったように見えたと、そういう事なのだろうか。「とりあえず、俺の主観としてはだな。膝に抱えて一緒にいて、時々声をかけて喋ってただけ。後は勝手に寝ちまったけど?」「それでは、さっぱり分かりませんね。はぁ……」「おい、俺を前にして溜息をつくな。つく前に、お前チラッと俺見ただろ。役立たず的な意味で」 そうでしょうかと、しれっと返されさすがのむつきもイラッと来た。 チャカしは無しだとは言ったが、すまんアレは嘘だと心中で意見を変える。「そうだ、桜咲。お前、ちょっとこっちに来い」「こっちとは?」「明石と同じ状況になれば、分かる事もあるんじゃないのか?」「確かに」 むつきがベッドの上で胡坐をかいて、ポンと膝を叩くと桜咲が普通に頷く。 アレっと思ってももう襲い、むつきが疑問に思っている間にも桜咲は動いていた。 ベッドの脇にまで歩いてきて、背中を向けるとむつきの胡坐の上に座ってきたのだ。 先程まで明石がそこにいたので、随分とその大きさの違いが分かった。 身長にして十センチも違うので、桜咲がそれはもう小さく思えた。 サイドテールがふぁさっと揺れて女の子の匂いがし、思わずお腹に腕を回してしまう。 腰もそれは細く、上から覗いた胸などそれはもう明石と比べるのがかわいそうなぐらい。 当初は、彼女がそんな事は出来ませんと赤くなる事を予想していたのだが。 もう人生何度目の事であろうか、どうしてこうなった。 それだけ真剣に桜咲が相談してきていたのであって、チャカしてごめんなさいの二度目だ。「ど、どうだ。何か分かりそうか?」「すみません、ど。ど、どううしてこうなったのでしょうかッ?!」 今さら言うなとも思ったが、すっぽり収まってから桜咲も気付いたらしい。 その表情はうかがい知る事はできないが、変わりにサイドテールが動揺を現すようにピコピコと動いている。 動揺した桜咲がキョロキョロすると筆で顔を擦られたように痒い。 くしゃみが出そうで、どうにでもなれの精神で良くエヴァにするようにした。 顎で小さな桜咲の頭、頭上をぐさっと差したのだ。「大人しくしろ、良いから。暴れるな。今、どう感じてる?」「どう、背中が密着してる背中が熱くて。ドキドキ……うち、このちゃん以外の人に」「いや、それはもう良いから。安心する、とか。落ち着く、とか。あったら、多分それがそうなんじゃねえの。まあ、心を守るのにあれはいらないわな」 桜咲が押し黙ってしまったので、代わりに思ったままをむつきは語った。 特に彼女が普段から持ち歩いている竹刀袋。 ボディーガードは痴漢撃退要員ではないのだから、アレは不要だろうとも。 特に心をなどと思っているなら、まず心がささくれ立ちそうな武器は手放すべきだ。「おおっ、ボディーガードで思い出した。昔な、ボディーガードって映画があったんだよ」「映画、ですか?」「ネタバレになるけど、良いか?」 桜咲が見るかどうかはさておき、断っておいてから核心部分に触れた。 直球な題名に心轢かれたのか、桜咲がむつきを見上げてくる。「お前らと違って、当初は守られる方、女優がボディーガードを嫌ってたんだ。あれこれ、注文されるしプライベートはないし。けど時間をかけて信頼をつくりあげ彼女が人生最大の舞台に上がった時だ」「どうなったんですか?」「銃で撃たれた彼女をボディーガードが身をていして守った。その身に銃弾を受けてな」 素晴らしいと目を輝かせた桜咲を見て、より強く顎を彼女の頭に突き立てた。「馬鹿、話は最後まで聞け。犯人は確かに取り押さえられたが、信頼してたボディーガードが代わりに撃たれたんだぞ。それはもう女優の方が取り乱した。彼を助けて、私のボディーガードなのって」 想像でもしてしまったのか、桜咲が少し顔色を青ざめさせていた。 自分が素晴らしいと瞳を輝かせた行動が、守るべき相手を泣かせてしまったのだ。 つまりは、今の自身の感性では自己満足で守ったつもりになるだけの可能性がある。 仮にそのまま自分が死んでしまえば、大事なこのちゃんが泣き顔のままだ。 誰がその傷を癒す、一番信頼されているであろう人が死んでしまってから。「教訓は自分で考えろ。てか、一度その映画見てみろ。いや、その映画だけじゃない」「他にもボディーガードの映画が?」「ちゃうわ。今までお前は、近衛を身を挺して守るのがボディーガードだと思っていた。刀子さんに心をって言われてもだ」「はい」 素直な返事だと頭を撫でながら続けた。「映画一つで視点がこうも変わるんだ。近衛だけじゃなく、中学生として色々な事に興味を持ってやってみろ。そうすりゃ、自然と見えてくる。心を守るとは何か。近衛にとって傷つかれたら悲しむ相手はお前一人か?」「学園長に長、それから同室の神楽坂さん。図書館探検部の方達に、クラスメイト。それから、先生」「ん、俺もいれてくれてありがとうよ。時には近衛と離れて別の友達、龍宮か? 遊ぶのだって悪くない。道は一つじゃない。周り回って、アレが必要ってのも構わない。何も見ず、試さずにアレだけだってのが一番駄目だ」「龍宮には、ガチレズではないと説明しなければ……」 違うのとも思ったが、ちゃちゃを入れるのもまずかろう。 前よりは少しまともな相談室になったかなと、まだ見上げてきたいた桜咲を見下ろした。 まだ色々と思案している表情だが、何処へ歩けば良いか迷った表情ではない。 闇雲という状況ではあったが、心に指針のようなものが生まれた顔だ。「映画がレンタルできなけりゃ、宮崎とか頼るのも悪くない。これですとか、あっさり原作の本を渡してくれるかもな。読んでる途中で寝るなよ?」「す、少し自身が活字ばかりでは……」「うっかりしてると、バカレンジャー入りだぞ。今は馬鹿スリーだけど。絡繰は次の中間で抜けるだろうから。力の一号と技の二号が、あいつらもなんとかしないとな」「こちらとは違う先生も、意外と大変なんですね」 こちらとは生徒を指したことだろうが、意外とはどういう事だと、顎でがすがす頭を突いてやる。 痛いと笑う、そう珍しく笑っていた桜咲だがふいに気付いたようだ。「ぁっ」「ん?」 頬が触れ合うぐらいに近い距離で笑いあい、お互いに目があった。 今の自分の状況、抱っこされている状態を再認識させられ耐え切れなくなったらしい。 ばっと飛びのくようにむつきの腕から飛び出し、ぱぱっとスカートを直していた。 わたわたと慌てて身支度を整え、なにやら思い切ったように振り返った。 それからキュッと一度瞳を閉じてから、いきなりその頭を下げてきた。「申し訳ありませんでした。以前、このちゃんをひかげ荘に連れていった時。私はこのちゃんの事しか考えていなくて。先生の事をこれっぽっちも考えていませんでした」「知ってたよ、お前近衛が大好きだからな。暴走する事ぐらいある。俺だって生徒相手に手出したり、度々暴走してるしな。お相子だ」「次は、ちゃんと自分の意志で行きます。このちゃんがどうするかは、このちゃんに任せます。それでは、失礼します!」 脱兎の如く、竹刀袋を手に取り桜咲は行ってしまった。 今の反応は照れくさくなっただけか、それともパターンに入ってしまっただけなのか。 とは言っても、ひかげ荘の半住人が住人になったところで何が変わるわけでもない。 また一つ、むつきが表立って俺は教師だと豪語できなくなるだけ。 それはそれで悲しいなと思っていると、部屋全体がぐらっと揺れた。 何時もの一班への強制移動かとも思ったが、揺らぎが落ち着いても部屋は変わらなかった。 その代わり、バスルーム内から千雨と小鈴が顔を覗かせた。「あれ、二人だけ?」 体にはバスタオル一枚を巻いた格好のままで。「先生が待たすからだよ、何時だと思ってんだ二時だぞ。私は夜更かしなれてるからな」「私もネ。今日はこの異色のタッグで親愛的に御奉仕ネ。お風呂、入らないカ?」「喜んで」 確かに今日も既に遅いし、今からしていては朝になってしまう。 三人で一風呂浴びて、そのまま一緒というのも悪くはない。 エッチするかどうかは、自然の流れに任せようとベッドを立ち上がった。 部屋の鍵を改めて掛けて、それからスーツの上着をベッドに放り投げつつお風呂場へ。 二人は既に湯殿らしく、もう脱ぎ散らかすように急ぎ服を脱いだ。 案の定と言うべきか、二人はキャッキャと騒ぎながら体を洗いっこの最中だった。「いやあ、世紀の大天才に一つでも勝るものがあるって良いよな」「あはは、くすぐったいネ。しかし手頃派と巨乳派に分かれるとすれば、千雨サンはいささか中途半端ネ。時代は美乳ヨ。アジア人らしく、手頃なサイズが」「負け惜しみ、乙」 洗いっこというか、ボディージャンプーで体をあわ立てボディタッチ中だった。 椅子に座った小鈴の後ろから、千雨が抱きつくように胸を弄んでいた。 嫁が仲良く良い事で、この光景だけでご飯三杯は軽くいけそうだ。 早速俺も混ぜてと、一物がふんがっと立ち上がりそうだった。「小鈴、椅子あけて俺の膝に。千雨は悪いけど背中頼めるか?」「んっ、千雨サンのすべすべの手がごつごつに。刺激が変わって良い感じネ」「軽くシャワーかけるぞ。先生、背中ってタオルで? 胸で?」「胸に決まってぶわっ、熱っ。温度確かめてからにしろよ」 悪い悪いと笑ったままで、本当に千雨は処女を貰ってあげたのに態度が変わらない。 そういう千雨が好きといった手前、今さらしおらしくなどとも思わないが。「刹那サンのお悩み相談はどうだったカ? ちなみに、会話は全て聞いていないから安心すると良いネ。千雨サンが保証してくれるヨ」「ずっと一緒にいたけど、確かに何もしてねえな。ぶっちゃけ、録音とかされてたらわかんねえけど。超に対して、他人のアリバイ証言ほど意味のないものもねえけど」「的確な保証で泣けてくるヨ。親愛的、後輩嫁が苛めるネ」「ぶりっ子、キメエ」 小鈴がごろごろと喉を鳴らして甘えてくるが、千雨がばっさりである。 むつきとしては、腹黒さのないぶりっ子は割りと歓迎なのだが。 なんだかんだで、騙されているとは分かっていても可愛いと思ってしまうのが男だ。「可愛いな、小鈴は。ほら、乳首摘んでやる」「やん、親愛的。手つきがいやらしいネ。もっとして」「千雨、無言でガスガス蹴るな。ちゃんと可愛がってやるから、滑りやすいここで片足立ちになるな」「先生はまだ半立ちだけどな」 お前本当に下ネタ好きだなと半笑いで、首を回して振り返った。 ほらお駄賃の前払いとばかりに、キスである。 それで少しは機嫌を直してくれたのか、両肩に手を置いて密着してくれた。 もちろんその体はボディーソープであわ立てられている。 ぬるぬると北海道で学んだソープ嬢仕込みの御奉仕であった。 胸でむつきの背中を流しつつ、両手は半立ちと証した竿をこれまた洗ってくれた。「うお、また上手くなったな。これぐらい普段も勉強熱心だったらな」「その辺は超や委員長、和泉に任せた。エロイ勉強は柿崎や私に任せとけ。ソープ嬢とも度々連絡とっててさ。色々相談に乗ってもらってる」「皆既に私と葉加瀬開発の携帯だから、検閲も完璧。危ない情報は載らないヨ」 なら安心だと、その効果をしっているだけにむつきは超を可愛がった。 さよと同じく小ぶりで手頃な胸を包み込むようにふにふにと。 流し残しのある首筋にキスを落としては、片方の手をつっとお湯の流れにそって落としていく。 小鈴もそれが分かるのか、むつきを見上げては早くと切なげに見つめてきていた。「小鈴ってMだったよな?」「突然、親愛的になら何されても平気ヨ?」 そりゃ良い事を聞いたと、むつきは小鈴の膝の下に両手を滑り込ませた。 そのまま両足を掲げ上げると、胸の上で小鈴の背中が滑っていった。 ボディーシャンプーのお陰でそのまま一回転しそうだったがもちろんしない。 小さな子のおしっこスタイルに小鈴を持ち上げ、椅子の上で一回転。 背中を洗ってくれていた千雨とご対面であった。 一体何事と千雨は眼を点にしていたが、むつきの悪い顔を直ぐに察してくれた。「親愛的、さすがに恥ずかしいネ」「我慢我慢、千雨」「あいよ。両手をに良くボディーシャンプーを絡めて。冷たっ、マットしいときゃよかった」 千雨が四つん這いになる。 椅子に座るむつきと、そのむつきにおしっこスタイルをさせられた小鈴。 自然と千雨の視線は小鈴の泡立てられた下腹部の割れ目へと向かった。 にやりと笑った千雨は、良く泡立てた両手の親指を、その割れ目に掛けた。 いきなりは少し怖いので、 大陰唇を開かせ花びらを覗き込んだ。「うわっ、綺麗なピンク色。写真撮りたいぐらいだ。おいおい、超。濡れるの早過ぎ。ボディーシャンプーいらなかったなこれ」「だって、親愛的のがお尻をツンツン。悪い顔しながら、犯したいって」「小鈴、羞恥に震えるその顔がエロイ。もっと見せて。千雨、頼む」 むつきに言われ千雨は小さな花びらを指でどけ、膣口へと両の人差し指をかけた。 多少の抵抗があったが二本の指は第一関節部分ぐらいまで入った。 この時点で千雨は処女膜がない事に気付いたが、恐らくは再生中なのだろう。 拳法で大また開きでもした時に、破れたかと思って流した。 それよりも今はと、小鈴の膣口を挿入させた指を左右に開いていった。「んっ、千雨サン。ゆっくり、見られてるネ。親愛的にも見られた事がない所まで」「千雨、小鈴の中はどうなってる」「すげえの一言だ。これ、うねってる。ちょいグロイ。赤ん坊ってここを通るんだよな。女ってすげえ。いや、私も女だけど」 もう凄いしか言えないのかと言うぐらい、凄いを千雨は連発している。 ただそう言われる度に出産を想像したのか小鈴がふるふる打ち震えていた。「小鈴、産んでくれるんだよね?」「もちろんヨ。千雨サン、息が。かかって、イキそぉ」「へっへ、行ってらっしゃい。よっと」「ぁっ」 膣を広げた事で周辺の肉や皮が引っ張られた結果なのだろうか。 千雨が目ざとく割れ目の上の奥底に隠れていたクリを発見し、指で弾いた。 効果はてきめん、同級生に体の奥まで覗かれていたのだ。 もう他に恥ずべき事は何もないとばかりに、小鈴の体が大きく跳ねた。「ヒィ、イグ。親愛、イクゥっ!」「おっ、さすが天才。いま少し潮吹いたぞ。次は私な。ほら、どいたどいた」「お前、容赦ねえな。早く変わって欲しくて無茶したろ。床にお湯流してやれ」「へいへい」 シャワーで千雨が床のタイルを暖め、そこに痙攣中の小鈴を座らせた。 さすがに寝かせるのはかわいそうなので、むつきにもたれかかるようにだ。 そして膝の上が空いた事を良い事に千雨が嬉々として座り込んだ。 対面座位、それも座るや否や首に腕を回して密着してきた。 夫婦のようややり取りの後で恋人にと、切り替えが少し忙しい。「先生、ガチガチじゃねえか。うりうり、セックスしたい。ちうちゃん犯したいって言ってみな?」 お腹とお腹の間にあるむつきの竿を、陰毛で刺激しながら挟み込んでくる。 挑発的に笑いながら、淫らに腰を振って本当にエロイ嫁であった。「可愛い子ぶるか、夫婦かはっきりしてくれ。どっちの千雨も孕ませるけどな」 空いた手で千雨の下腹部に手を伸ばすと、確かめるまでもない程にぬれていた。 むつきに御奉仕したり、同級生の膣奥を眺めてクリを弾いたり。 そりゃ濡れもするかと思いつつ、一応大丈夫かなと指を入れて確かめていた。「んぅ、先生の指。柔らかい?」「破瓜の前に、俺が弄んでるからな。けど、まだ俺の形になってねえな」「毎晩セックスして直ぐに覚えるさ。ここに受け入れた男は一生先生だけ。嬉しいか?」「ちょっとな。指じゃなくて、もっと太いの入れるぞ」 うんと少しだけしおらしい返事を聞いて、千雨のお尻に両手を支えた。 そのままゆっくりと持ち上げ、UFOキャッチャーのように移動させる。 もちろん、落下点をさがし、位置の微調整は何度しても問題ない。 しっかりと千雨の膣口とむつきの竿の亀頭を合わせゆっくりと降ろしていく。「ぐっ、最初はまだぐいっとくるな。先生たんま、先っぽだけ」「落ち着け、ほら深呼吸」「深呼吸よりキスしたい。先生、大す……き、かな?」「照れんな、馬鹿」 ちゅっと口付けて直ぐに、互いに舌を伸ばしては唾液を絡めあう。 くぐもった声と唾液が絡む音で互いに気分を盛り上げていく。 キスに気を取られた分、むつきの腕から力は抜けて千雨が降りてくる。 自然と竿が千雨の膣を徐々に潜り込んでいき、貫いていった。「千雨、可愛いぞ。俺も大好きだ、ほら。言ってみな」「好き、先生が好き。んぁぅ、奥に来っ?!」 好意を伝え合う途中で、急に千雨の声が途切れた。 何事かと閉じていた瞳を開けると、千雨がイッた時のように天井を見上げている。 呼吸困難を起こしたように短い吐息で喘ぎ、視線を下に何かを伝えようとしていた。「フッフッフ、良くも親愛的にささげる初めてを二つも奪ってくれたネ」 若干おどろおどろしく言ったのは、意識を取り戻していた小鈴であった。「て、てめえ超。私の」「膣奥を見られたのは親愛的が提案したプレイだから良いネ。けど、クリトリスは駄目ネ。私の全ては親愛的のもの。だから、罰としてお尻を貰ったヨ?」「止め、お尻ぐりぐり。前と後ろ同時って、和泉じゃねえんだぞ私は」 千雨が半分涙目の理由は彼女が口にした通り、お尻の方にあった。 超が意識を取り戻してした反撃は、指で千雨を貫く事だったのだ。 とは言っても膣は今むつきのそれで塞がっているので穴と言えばもう一つ。 お尻の穴に小鈴の細い指が挿入され、くにくにと動かされていた。「やべ、千雨の尻が刺激されて膣もぐねって気持ち良い」「あくまでこれは親愛的への奉仕。多少私怨は混ざるが」「超、後でぶっ殺す。次のお前の番は覚悟しとけよ」「ほら、喧嘩すんな。小鈴も、千雨はお尻初めてなんだから優しくしてあげなさい。命令です。千雨も、腹立った分は俺が可愛がってやるから」 その苛立ちを寄越せとばかりに、千雨の口にすいつき吸い上げる。 口を小さく尖らせストローの要領でだ。 もちろん、吸い上げられたのは怒りではなく唾液だが、千雨も満更ではなかったようだ。 多少おでこ辺りに怒りの名残は見えるが、愛し合う場でそぐわないとも思ったのだろう 素直に小鈴の指を受け入れ、むしろ腰を振る勢いでむつきの腕の中で踊っていた。「先生、私の中は気持ち良いか? 絶品美少女中学生だぞ?」「気持ちよくないわけがない。今にも出そうだよ、千雨がイクまでは我慢するが」「絶倫になっちまったんだから、好きな時に好きなだけ出せば良いのに。律儀だな、そういう所も良いんだけど。超、悪いけどもう少し浅い場所が良い。ちゃんと準備してないから、不安になる」「分かったネ。親愛的のお嫁さん同士仲良くするヨ」 お詫びの印だとばかりに、むつきから一時的に小鈴が千雨の唇を借り受けた。 熱烈なキスをむつきにみせつけるように、されどその指は千雨の中で蠢いている。「んぅっ!」「ここ、ここに親愛的の竿があるネ。千雨さん、分かるカ?」「ぁぅ、擦るな。やべぇ、ぁっん。感じ過ぎっ、癖になったらどうする!」「親愛的も感じるか?」 そう尋ねられたが千雨が暴れた為、それはもう膣内がうねり捲くっていた。 はやく精液をと射精をうながし、小鈴の細い指どころではない。 これがディルドなどむつき並みのものであればまだ分かったのだろうが。 そもそもそんな太いものを日本挿しでは千雨が持たない。「先生、やばいの来る。ぶっちゃけ、初夜より凄い。来る、来ちゃう!」「急に女言葉になるな、興奮するだろ」 濡れた髪を振り乱し、口の悪さも引っ込んで千雨は少女ではなく女になっていた。 このギャップに燃えねば男ではないと、むつきも臨戦態勢だ。 再度コントロールの為に、両手はしっかりと千雨のお尻をガッチリ掴んだ。 ボディーソープで多少滑っても問題ないぐらい強く。 暴れる千雨の乱れようを壊さぬ程度に持ち上げては落として貫いた。「良い、超もう少し奥まで。尻も馬鹿にならねえ。先生のが一番だけど」「もう、なにさ。千雨、もっと言ってくれ」「先生が良い、先生が。好きなの、大好き!」「千雨、お前が可愛い。千雨!」 もう千雨以上にむつきが暴れ、千雨は首に腕を回しながらへたり込んでいた。 力が殆ど入ってはおらず、突き上げられるままに任せている。「んっ、んんぅ。ぁっ。先生、イク、イクよ。先生!」「良いよ、可愛いぞ千雨。イけ、存分に孕ませてやるから」「孕む、孕んじゃう。先生の赤ちゃん、お腹で孕むぁぅっ!」 むつきの体を突き飛ばすように体を起こし、千雨が思い切り体を震わせていた。 同時にお腹の奥、子宮の奥に精を解き放たれ何度も何度も。 本当の意味で性剛となったむつきの長い射精の間ずっとだ。 しかも子宮の壁を精液だ叩かれるのみならず、むつき自身もより多くの千雨を求めていた。 俯く顔を上げさせられては吸い付かれ、大き目の胸もさんざん弄ばれる。「やべ、止まらねえ。千雨、大丈夫か。まだいけるか?」「無理、もう無理。双子、三つ子になる。一度に沢山孕んじゃう!」「遠慮せず、ぐぅ。また、孕め!」 再三むつきに射精され、終わった頃にはもう本当に千雨はぐったりだった。 改めてむつき達が体を洗う間も、精巧な人形のようにされるがまま。 お腹を押さえて幸せそうに微笑んでいるだけである。 そんな風に三人仲良く体を洗い終えて、それから湯船に浸かった。 今からお風呂の本番なのだが、別の意味で本番は終えてしまっている。 胡坐をかいた膝の上に千雨を、隣に小鈴を置いて腕で抱き寄せて仲良く入った。「これ、凄く眠れそう。だけど、ちょっと時間足りねえか。明石の不眠を治して、嫁を不眠にさせるとか。鬼畜、変態鬼畜教師」「それに惚れたのは誰だ?」「惚れてねえよ、レイプされたレイプ。この犯罪者」「はいはい」 余程良かったのか体に力はないが、千雨の口は絶好調であった。 口が悪くなる程良かったとは、千雨のバロメーターも分かりやすいものだ。「小鈴、お前はどうだった? 満足できたか?」「親愛的にあまり可愛がって貰った気がしないネ。お風呂を出たら、お願いするネ」「私はパスだ。もう無理。尻もちょいヒリヒリするし、軟膏塗って寝る」「じゃあ、親愛的は独り占めネ。夜型人間でよかったヨ」 はいはいと小鈴を抱き寄せ、一先ずむつきの意見は無視で夜はまだ続きそうであった。-後書き-ども、えなりんです。生徒にフラグを立てつつ、釣った魚(嫁)のご機嫌とりも忘れず。むつきは忙しい男ですな。本当はもっと裕奈と絡ませたかったのですが、長くなりすぎるのでカット。刹那とのイベントもありましたし。ちなみにボディーガードの映画は、女優ではなく歌手です。執筆当時は作者が間違えてたのですが、むつきが間違えたことにしてもいいかなと。物忘れしてたり、覚え間違いしてた方が人間らしいかと。あと、千雨はデレてるけどそれを表に出さないのが良い。他の嫁と違い、あからさまでないけど好き的な。ちょっとしたこだわりです。それでは次回は水曜です。