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No.3690の一覧
[0] リリカル in wonder 無印五話 挿絵追加[角煮(挿絵:由家)](2009/04/14 12:06)
[1] 一話[角煮](2008/08/02 22:00)
[2] 二話[角煮](2008/08/02 22:03)
[3] 三話[角煮](2008/08/02 22:06)
[4] 四話[角煮](2008/08/02 22:11)
[5] 五話[角煮](2009/04/14 12:05)
[6] 六話[角煮](2008/08/05 19:55)
[7] 七話[角煮](2008/08/21 04:16)
[8] 八話[角煮](2008/08/21 04:26)
[9] 九話[角煮](2008/09/03 12:19)
[10] 十話[角煮](2008/09/03 12:20)
[11] 十一話[角煮](2008/09/03 20:26)
[12] 十二話[角煮](2008/09/04 21:56)
[13] 十三話[角煮](2008/09/04 23:29)
[14] 十四話[角煮](2008/09/08 17:15)
[15] 十五話[角煮](2008/09/08 19:26)
[16] 十六話[角煮](2008/09/13 00:34)
[17] 十七話[角煮](2008/09/14 00:01)
[18] 閑話1[角煮](2008/09/18 22:30)
[19] 閑話2[角煮](2008/09/18 22:31)
[20] 閑話3[角煮](2008/09/19 01:56)
[21] 閑話4[角煮](2008/10/10 01:25)
[22] 閑話からA,sへ[角煮](2008/09/19 00:17)
[23] 一話[角煮](2008/09/23 13:49)
[24] 二話[角煮](2008/09/21 21:15)
[25] 三話[角煮](2008/09/25 00:20)
[26] 四話[角煮](2008/09/25 00:19)
[27] 五話[角煮](2008/09/25 00:21)
[28] 六話[角煮](2008/09/25 00:44)
[29] 七話[角煮](2008/10/03 02:55)
[30] 八話[角煮](2008/10/03 03:07)
[31] 九話[角煮](2008/10/07 01:02)
[32] 十話[角煮](2008/10/03 03:15)
[33] 十一話[角煮](2008/10/10 01:29)
[34] 十二話[角煮](2008/10/07 01:03)
[35] 十三話[角煮](2008/10/10 01:24)
[36] 十四話[角煮](2008/10/21 20:12)
[37] 十五話[角煮](2008/10/21 20:11)
[38] 十六話[角煮](2008/10/21 22:06)
[39] 十七話[角煮](2008/10/25 05:57)
[40] 十八話[角煮](2008/11/01 19:50)
[41] 十九話[角煮](2008/11/01 19:47)
[42] 後日談1[角煮](2008/12/17 13:11)
[43] 後日談2 挿絵有り[角煮](2009/03/30 21:58)
[44] 閑話5[角煮](2008/11/09 18:55)
[45] 閑話6[角煮](2008/11/09 18:58)
[46] 閑話7[角煮](2008/11/12 02:02)
[47] 空白期 一話[角煮](2008/11/16 23:48)
[48] 空白期 二話[角煮](2008/11/22 12:06)
[49] 空白期 三話[角煮](2008/11/26 04:43)
[50] 空白期 四話[角煮](2008/12/06 03:29)
[51] 空白期 五話[角煮](2008/12/06 04:37)
[52] 空白期 六話[角煮](2008/12/17 13:14)
[53] 空白期 七話[角煮](2008/12/29 22:12)
[54] 空白期 八話[角煮](2008/12/29 22:14)
[55] 空白期 九話[角煮](2009/01/26 03:59)
[56] 空白期 十話[角煮](2009/02/07 23:54)
[57] 空白期 後日談[角煮](2009/02/04 15:25)
[58] クリスマスな話 はやて編[角煮](2009/02/04 15:35)
[59] 正月な話    なのは編[角煮](2009/02/07 23:52)
[60] 閑話8[角煮](2009/02/04 15:26)
[61] IFな終わり その一[角煮](2009/02/11 02:24)
[62] IFな終わり その二[角煮](2009/02/11 02:55)
[63] IFな終わり その三[角煮](2009/02/16 22:09)
[64] バレンタインな話 フェイト編[角煮](2009/03/07 02:27)
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[3690] 後日談2 挿絵有り
Name: 角煮◆904d8c10 ID:63584101 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/30 21:58
シフトをなんとかやりくりして時間を作り、今日は聖王教会へ。

目的の建物にたどり着くと、ベルを鳴らして鍵が開かれるのを待つ。

「お邪魔します」

「いらっしゃい、エスティマくん」

ドアをくぐると、杖で身体を支えた修道着姿のはやてが出迎えてくれた。

かたかたと手が震えてはいるが、きちんと両足で立っている。

リハビリは順調なようだ。

入ってー、と勧められて入って部屋には、既になのはがいたり。

ザフィーラはぐてーっと床に寝っ転がっており、ヴィータはケーキと格闘してる。

と、俺がきたことに気付いたのか、ヴィータが頬にホイップを付けながら顔を上げた。

「良く来たな。ケーキ食え」

「ああうん、いきなりそれはどうかと思うけど、ありがとう」

「紅茶とコーヒー、どっちがええかな?」

「コーヒー。ブラックで」

「うわぁ、すごいなぁ」

む、そうか。あんなもんは煙草と同じで慣れだけどね。

回数重ねる毎に美味しくなってくんですよ。

テーブルに着くと、しばらくしてはやてがコーヒーを持ってきてくれる。

礼儀とかにはあんまり明るくないので、カップを無造作に持ち上げて一口。苦みが美味い。

「はやて、その服どうしたの?」

「うん。海鳴の家から持ってきた着替えのバリエーションが少なくてな?
 ちょっと洗濯サボったら着るものがのーなって、シャッハさんに貸して貰ったん」

む、炊事洗濯が得意なはやてにしては痛恨のミス。

まぁ、最近はリインの遺産――リインフォースⅡの製作に関わっているから、あんまり時間が取れないのだろう。

ま、それはともかくとして。

「落ち着いた感じで似合ってるね。可愛いよ」

「そ、そんな……もう、エスティマくん女ったらしやね」

頬に手で挟みながらそんなことを言うはやて。

うわぁ、新鮮な反応だなぁ……などと思いつつ、なんだか視線が突き刺さるので、ギギギ、と首を回してみる。

「……なんでせう」

「べっつに」

「あんなこと、言われたことないの」

「非常にコメントに困る反応だぞそれ!」

と、声を上げたらザフィーラに鼻で笑われた。この野郎。

「ええと……エスティマくん、お仕事の方はどう?
 執務官補佐って何やるのかよう分からんけど、大変やろ?」

「まー、それなりに。勉強半分仕事半分みたいなもんだからねぇ。
 まだ知らないことが多くて、役に立っているとは言えないかな」

「でもこの前のお仕事、私の出番がないぐらいに頑張ってたよ?」

「あー、あれね」

偵察がてらフェレットモードでスネークして遺跡内に潜入し、不意打ちで違法発掘組織を一網打尽にしたやつか。

「適材適所ってヤツだろう。あんなの、俺でなくてもできることだって」

「でも、リンディさんだって褒めてたよ? 『遺跡を壊すこともなく事件解決。花丸です』って」

「……まぁ、なのはだったら遺跡ごと砲撃で吹っ飛ばしそうだからなー」

「ひどー!? エスティマくん、私をどういう風に見てるの!? ちょっと模擬戦を交えつつお話を――」

「おや、皆さん、揃ったようですね」

レイジングハートに手をかけたなのはを止めるように、唐突に扉が開いた。

そこから顔を覗かせたのは、シスター・シャッハ。皆さんご存じ、教会騎士団の暴力シスターである。

ちなみに初対面で、あ、暴力シスター、と口を滑らせたら首筋にトンファーを突き付けられた。笑顔で。

マジどうかと思う。聖王教会の成り立ちから考えて、ここの住人は生粋の戦闘民族なのか。

次元規模で小競り合いをしていた古代ベルカの皆様、そしてそれを収めた世紀末次元覇王。

そりゃー考えが戦闘民族趣向になりますよ。

「エスティマくん、なのはさん、お久し振り。元気なようで何よりです」

「どうも、シャッハさん」

そんな風に挨拶をしたりして、スケジュールを伝えられる。

……今日、遂にシグナムとシャマルの復活が行われる。

守護騎士プログラムの素体。

解析の結果、欠片にデータとして残っているのはそれぞれのデバイスと成長したらシグナムとシャマルになるであろうプログラム体の元。

それらは、俺となのはがマスターとなって保護観察を行うことになっているのだが……。

「……なぁ、はやて。やっぱり俺じゃなくて、君がシグナムの面倒を見た方が良いと思うんだよ」

「そんなことない。エスティマくんなら、シグナムを立派な騎士に育てられるよ」

「いや、俺はそんな真っ当な人間じゃないから……ヴィータにザフィーラ。お前らもなんとか言ってくれ」

「オメーなら間違ったことを教えることもねーだろ」

「ああ。主を救ってくれたことを、我々は評価している。頼む、エスティマ」

んなこと言われてもなぁ。

舌打ちしたいのを必死に我慢して、んー、と声を上げるだけにする。

「……まぁ良い。けど、約束だけは守ってもらうからな。
 俺が執務官になるまで、ベルカの学校に入れる。面倒を見るのは、シグナムが最低限の一般教養を学んでからだ」

「……どうしても?」

「どうしても。それが駄目なら、シグナムは預からない」

正直、仕事と執務官試験の勉強で手一杯なのだ。

それに、集団の中で生活することで倫理観と道徳観念をしっかりと身に付けてもらいたいのだ。俺一人に付きっ切りだと、絶対に偏りが出てしまう。

ベルカ自治区に来る時間は取るようにするから、それぐらいは勘弁してもらいたい。

譲るつもりのない俺に、しゃあないな、とはやては肩を落とす。

ふと視線を感じたので顔を向けると、そこにはなのはがいたり。

「なのははどうするんだ? シャマルのこと」

「うん。……シャマルさんは、私の家で預かることになってるの。お父さんとお母さんにも許してもらったから」

それはそれで良いのかもな。

次元世界の事情には疎くなるが、平凡な家庭がどういうものかを知るってのは大切なことだ。

彼女たちは贖罪のために、いずれは戦いに身を投じる存在。

ならば、自分が守るべきものがなんなのかを知っておくのは無駄ではないだろう。

そのまま俺たちは移動。研究棟に行くと、そこには法衣を纏ったリインフォースがいた。

今の彼女はリインフォースEXと呼ばれている存在だ。現に、はやてやヴィータは彼女のことをエクスと呼んでいる。

アインスの記憶を持ってはいるが、存在自体は別。同じ名前で呼ぶことに抵抗があるのだろう。

ユニゾンデバイスとしての力を失ったリインフォース・EXは、現在、持っている知識を生かす仕事、聖王教会の司教になるための研修を受けている。

同時に、古代ベルカ式魔法を再現するためのアドバイザーでもあるが。

「準備は整っています、主はやて」

「ん、ありがとな、エクス」

「エスティマ・スクライア。高町なのは。よくきてくれた」

「まぁ、頼まれたからな」

「もう、エスティマくん……よろしくお願いします、エクスさん」

「ああ……では、早速始めよう。まずは説明を」

言いつつ、エクスが宙に手を差し出すとモニターが浮かび上がった。

「まず、守護騎士プログラムについて。本来は夜天の主専用のプログラムであるこれを二人に移植するのだが、やはりそのまま再現するのは不可能だった。
 故に、近代ベルカ式を参考に、二人はミッドチルダ式魔法の使い手なので、使い魔システムを組み込んでの起動を試みる。
 シグナムとシャマルは守護騎士と使い魔のハイブリットのようなものとなるだろう」

「質問。あんまり使い魔に関して詳しいわけじゃないんだけど……使い魔のシステムを使うってことは、やっぱり守護騎士としての能力は俺やなのはの魔力に左右されるのか?」

「ああ。……とは言っても、主はやてに匹敵する魔導師であるお前たちならば、それはむしろメリットだろう」

そんなもんか。

はやてやなのはと比べたら俺の魔力量は見劣りする――と言いたいところだが、ここ最近で異常に魔力量が増えているからなぁ。

ま、力があることに越したことはない。それをどう使うかを、教えてやれば良いだけなのだから。

「エクスさん。使い魔ってことは、シャマルさんが私と同じ砲撃を使えるようになったりするの?」

「いや、それはない。シグナムとシャマルの素体には、『才能』という因子が既に設定されている。
 育て方次第では使えるようになるかもしれないが、そもそも古代ベルカの騎士であるシャマルには向いていないだろう」

そっか、と安心したような残念なような声をなのはが上げる。

まぁ、研鑽の末に辿り着いた境地のようなものだったからな、シグナムやシャマルの在り方は。

ある意味、どの方向に育てればいいのか分かっているようなもんだ。

「質問は以上か? ならば、術式を開始する」

エクスは法衣のポケットからネックレスと指輪を取り出すと、俺たちに手渡してきた。

それを握り締め、魔力を込める。

サンライトイエロー、桜色の魔法陣。それを補助するための、エクスの古代ベルカ式の魔法陣が展開。

守護騎士の欠片が薄く光り、宙に浮く。

「守護騎士システム、稼働開始」

一語一区同じ言葉を、俺となのはが紡ぐ。

それと同時に、守護騎士の欠片の真下にラベンダーとライトグリーンの魔法陣が現れた。

そして、閃光が研究室に溢れる。

その光りの中、ゆっくりと二つの影が魔法陣から浮かび上がってきた。

原作と同じように、黒のドレスを身につけた……

身に付けた……

「騎士シグナム、ここに、はせさんじました」

「けいやくの元に、騎士シャマル、ここに」

……幼女。話し方が非常に舌ったらずである。

思わず周りを見回してみると、はやてやヴィータ、ザフィーラは勿論のこと、エクスやシャッハさんまで白目でガビーンとなっている。

……なのはは一人だけ、うわー、とか言って喜んでいるが。

「主、あなたの名を……うわあ!」

「はわわ……!」

ガシャン。

チャリリーン。

そんな音を立てて、シグナムとシャマルはそれぞれのデバイスを取り落とす。

子供が持つにしてはゴツすぎる剣に、サイズが合ってない指輪。

そりゃー落とすのも当然か。

シグナムは慌ててレヴァンテインを抱きかかえて直立不動に戻り、シャマルは床を転がるクラールヴィントを追いかけつつ、あああああああ待ってー、と半べそになってる。

……なんだこれ。

http://www.exblog.jp/blog_logo.asp?slt=1&imgsrc=200903/30/23/f0200523_2141879.jpg



























まさか子供の姿になるのは想定の範囲外だった。

そんなことを言ってエクスは頭を抱えていたが、はやてやヴィータの順応は早かった。

「何着せてあげよっかー」

「おう、シグナム、シャマル、アイス食え」

……すっかりこの調子である。

特にヴィータ。お姉さん気取りだ。

ちなみにザフィーラは、

「…………」

部屋の隅で不貞寝しつつ、我関せずを貫いている。この野郎。

溜息を吐きつつ、なのはに念話を飛ばす。

『なぁ、なのは。どうするよ、これ』

『妹ができたみたいで、嬉しいかな』

『ちっげーよ! 育てる手間が増えただろ!?』

『何も知らない子を育てるのは大変だけど楽しいって、お父さんとお母さんは言ってたけど……』

『だから違うっつーのに!』

思わず頭を抱える。

ちなみに服のサイズから考えると、シグナムとシャマルは六歳児相当。

非常に困った。身体の成長が人と同じならば、六課設立時での戦力としてアテにできない。

頭痛と胃痛の種がまた増えた。薬が増えそうだ。

「あの……父上」

「マスターなのは」

呼ばれたので顔を上げると、そこにははやてと同じ修道着に着替えたシグナムとシャマルが。

なのははにこにこと笑みを浮かべながら、シャマルに暖かな視線を送っている。

「シャマルちゃん、そんな固い呼び方をしなくて良いんだよ?」

「えっと……じゃあ、なのはちゃん」

「うん」

えへへ、とシャマルは笑顔を浮かべる。

年相応の、屈託のない笑みだ。

『ほら、エスティマくんも』

『ん……ああ』

「あの……わたしは」

「好きなように呼べ」

「……はい」

『もー、エスティマくん! 意地悪しちゃ駄目だよ!』

『意地悪じゃない』

変に親しくなったら、彼女たちがしっかりとした道徳観念を備え、自分たちが何をしたのか、何をするべきか教えた時の罪悪感がヤバくなるだろう。

これ以上面倒事を背負い込むのは御免なのだ。情が移ったら身動きが取れなくなりそうで怖い。

処理しきれなくなったときのしっぺ返しがどんなものなのか、闇の書事件で痛いほどに知らされた。

それに、フェイトやユーノのシグナムに向ける感情だってある。

だから。

「シグナム。お前は最低限の常識を身に付けてから、学校に通ってもらうことになる。
 異論はないな?」

「……はい」

「なら良い。学べるだけのことを、しっかりと学べよ。……それじゃあ俺は用事があるし、ここら辺でおいとまするよ」

「ちょっと、エスティマくん!?」

「ええよ、なのはちゃん。……それじゃあ、またな? エスティマくん」

「……ああ」

それだけ応えて、ドアノブに手をかける。

去り際、シグナムがじっとこちらを見ているのを直視できず、視線を逸らした。

































「わたしは……父上にきらわれてるのだろうか」

「あ、あのね、シグナムちゃん。エスティマくんは、今忙しくて余裕がないんだよ。
 本当はすっごく優しい人だから、絶対に嫌ってなんかないよ」

「……ありがとう、高町なのは」

と、シグナムが言うと、シャマルが彼女の袖を引っ張った。

なんのことだろう、と首を傾げるシグナムだったが、はっと気付いて、

「……なのは、ちゃん」

その言葉に、にっこりとなのはは笑顔を浮かべ、シグナムの頭を撫でた。

「……なのはちゃん。ちょっと、ええかな?」

「ん、どうしたの?」

「エスティマくんと話してくる」

「分かった。行ってらっしゃい」

ん、と頷いて、はやては飛行魔法を発動させると、低空飛行を維持したまま部屋から出て行った。

つつー、と廊下を滑っていくと、すぐにエスティマの背中が見えた。

角を曲がってなんとか追い付くと、地面に降りる。

「エスティマくん!」

「ん……どうした? はやて」

「シグナムのことなんやけど」

「ああ……」

そうか、と頷いて、エスティマははやてに庭へ出るように促した。

ちょっとした庭園になっている中庭。そこにあるベンチに腰掛けると、早速はやては話を切り出す。

「……こうやって二人っきりで話すの、久し振りやね」

「そういえば、そうかも。いつもヴィータやザフィーラがいるからね」

「うん。せやから、言いたいことを言って欲しい。……ねぇ、エスティマくん。
 やっぱり、シグナムのことを頼むのは押し付けやったかなぁ」

「……何度も言ってるからはやても耳タコだと思うけどさ。
 俺ははやてが思っているような真っ当な人間じゃないんだって。
 自分勝手だし、色んな人に迷惑かけることしかできないし。
 そんな奴にシグナムを預けないで、君が面倒を見てやるのが一番だと思うんだ。
 それに聖王教会にいれば、騎士として研鑽を積むことだってできる。どう考えたって、ここで育てるのが一番だって」

ガリガリ、とエスティマは頭を掻きむしる。

その姿に、なんでそんなことを言うのだろう、とはやては心底不思議な心地となる。

謙遜などではなく、エスティマは心の底から、今口に出したように思っているのだろう。

……真っ当な人間じゃないなんて、なんでそんな悲しいこと言うんかなぁ。

今こうやって平穏な生活に戻ることができたのは彼のお陰だ。デバイスまで失って、死んでもおかしくないほどの怪我を負ってまで、自分を助けてくれた。

それに、今は仕事に専念するべき時期なのに自分のところへと通ってくれる。

そんな彼が真っ当じゃないだなんて嘘だ。自分勝手だったり他人に迷惑をかけるだなんて、当たり前のことなのだから。

だのに、なんでそんなことを。

「……自分で思っているほど、エスティマくんは駄目なんかじゃあらへん。
 それは、エスティマくんに助けてもらった私だからこそ、はっきりと言えるよ?
 もっと自分を信じてもええと思う」

「自分を信じる……ね」

そうだな、とエスティマは呟いて、小さく頷く。

「分かったよ。そこまで言ってくれるなら……俺を信じてくれる、はやてを信じることにしますか」

よっ、と声を上げてエスティマはベンチから立ち上がると、はやての髪の毛を一撫でし、それじゃあね、と言って出口へと向かって行った。

その後ろ姿を見送りながら、難しいなぁ、とはやては薄く苦笑した。

結局は自分が押し付けるような形となってしまった。お願いを聞いてもらった。

「……私、まだまだ駄目な子やね」

そんな言葉が思わず口を点いて出る。

闇の書事件が終わってから、いや、事件の最中からエスティマに世話になりっぱなしだ。

……いつか、恩返しをすることができるだろうか。

押しつけがましくない、さりげない優しさを、身に付けることができるだろうか。

……できたらええな。

守ってもらう側から守る側へ。そのためには、エスティマよりも強くならなければならないだろう。

それまでは、きっとたくさん甘えることになるかもしれないけれど。

「うん、頑張らな」

































聖王教会から出ると、その足で今度はスクライアへ。

非常に顔を出しづらいのだが、そこら辺は自業自得。

冗談めかされた悪態をなんとかやり過ごして、ユーノたちの元へ。

「ただいまー」

「あ、エスティ。おかえり。遅かったね」

「ちょっと寄るところがあったからね。……フェイトは?」

ちょっとした図書室と化しているユーノの部屋を見回しつつ、そんなことを。

しっかし相変わらずだな。こんな量の本を捌けるんだから、こいつの処理能力はずば抜けている。

「フェイトは今、護衛隊のところ。……ん、念話で君が帰ってきたのを伝えたから、すぐに戻ってくると思うよ」

「サンキュ。……うあー、疲れたなぁ」

倒れ込むようにソファーへダイブして、全身から力を抜く。

呆れたような困ったようなユーノの笑い声。なんだよぅ。

「仕事の方はどう? 執務官試験、受かりそう?」

「まだ一年近く先のことじゃんかよ。気が早いって」

「そうかな。……ああ、頼まれてた問題集のピックアップ、やっておいたから。
 けっこうたくさん種類が出てるのに、使えそうなのって少ないんだね」

「問題集なんてそんなもんだろー」

「言えてる」

……俺はともかく、なんでユーノが同意するんだ。コイツ何歳だよ。

「でも本当に大丈夫? 学校じゃ、デバイスマイスターの資格とかに授業のほとんどを割いてたでしょ?
 司法関係なんて、ゼロからのスタートみたいなもんじゃないか」

「まぁ、そこら辺はなんとか。クロノにも色々と教えてもらっているし――ああもう、一生の内でたぶん今が一番勉強してるぞ」

本当に。

精神がアレでも脳味噌自体は若いから割と覚えるのは楽なんだけど、その覚える事柄の量が膨大すぎる。

実技試験は現時点でも余裕な気がするけど、ペーパーテストがあまりにも。

けど、なんとか一年で執務官にならないとなぁ。

JS事件を良い方向に転がすには、まず戦闘機人事件からの介入が必須だし。

今回の闇の書事件で、ただの嘱託魔導師の限界を悟った。

管理局所属の魔導師としての立ち位置は最底辺みたいなものだから、出撃には誰かの許可が必要だし勝手に行動すればその後にしっぺ返しがあるし。

それから逃れるには、最低限の自由を手にするには、一定以上の権限を手に入れなければならないわけで。

そのためのに執務官になりたいのだが……。

「流石に難関と言われるだけあってキツイねー」

「当たり前だよ。……まぁ、エスティは稀少技能持ちだから他の人より恵まれているじゃないか。
 随分と優遇されるらしいから、あんまり愚痴るのもどうかと思うよ」

「お前ぐらいにしか愚痴れないんだから許してくれー」

「ん……まぁ、そうか。そうだったね」

そこで会話が止まる。

視界の隅でユーノの発動させている検索魔法の光りが瞬き、あいつの周りをいくつもの本が踊る。

それをぼーっと眺めていると、ドタドタと慌ただしい足音が聞こえた。

……へたれタイムは終わりか。

身体を起こして髪の毛を手櫛で整える。その様子をユーノに苦笑された。悪いかよ。

「おかえりなさい、兄さん!」

「ん、ただいま、フェイト」

ドアを蹴破らんばかりの勢いでユーノの部屋に突入してきたフェイト。

その後に続いて、苦笑したアルフが。

……いつもの風景。いつもの調子。

それを努めて崩さないように気を付けながら、じゃれつく犬のように懐いてくるフェイトの相手をする。

うあー、和むわー。

「よいしょ」

なんて声を上げながら、フェイトが俺の膝の上に座ってきた。

身長は少しだけ俺が高いぐらいだから、こうするとフェイトの背中に隠れてしまう。

髪の毛からはシャンプーの匂いがしたり、ちょっと前まで訓練をしていたのか、ほんのりと汗の臭いがしたり。けど、悪い気はしない。

「兄さん、いつまでスクライアにいられるの?」

「明日の朝かな。今日の休みと明日の午前休しか取れなかったから、午後にはアースラに戻らないと」

「ん……じゃあ、今晩はゆっくりできるんだね」

と言いつつ、フェイトは投げ出していた俺の手を自分の手と重ねてくる。

それに特に意味はないんだろう。

指を絡めながら、フェイトは弾んだ声で会話を続ける。……ユーノの白い目が痛い。

なんつーか、なんだろう。

べったり具合がパワーアップしてません?

「アルフ、写真撮って?」

「……え、なんで?」

「だって兄さんが久し振りに帰ってきたんだもの」

「いや、一週間しか経ってないんだけど――」

「あああああああフェイト可愛いよフェイトー!」

俺の言葉はパーペキに無視される。

床を転がるような勢いでアングルを変えながら、どっかから取り出したカメラのシャッターを連射するアルフ。

変なオーラが上がっていそうで怖いんですけど。

っていうか、一分経たない内にフィルムを使い切って次のをリロードしてるよ!?

「ほらフェイトこっち向いて! おらエスティマ、もっとくっつきな! いや、それ以上は駄目だ!」

「どうしろってんだよ!?」

などと慌てていると、

「兄さーん」

振り返ったフェイトが首に手を回してきて、ガッチリと頭をホールド。

そして頬ずりしてきて、そこをバッチリと激写された。

……ええ。現像した写真に写っていたフェイトは、実に嬉しそうでしたよ?

その場でユーノにゲラゲラ笑われ、面白半分に野郎がクロノに写真をデータで送ったせいで失笑されたもしたが。









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