ここの所ふっていかなった雨が、いつぶりかにおおぶりで降ってきた。…すっげーうるさい。
元日本人の俺ことワイアルドは、部下達に作らせたこのベルセルクの世界では質素だが豪華な部類に入る家でのんびり過ごしている。
いや~なんかこの山奥の村に来ては今までの死にそうな思い出が夢のようだよ。めちゃくちゃ平凡だ。断罪の塔聖地アルビオンでゲル状スライムに囲まれたり、それをぶっ飛ばしては何故か炎がはけるようになったり。……まあ、クシャーン共をぶっ飛ばしては投げ、ぶっ飛ばしてはなげ、それで流れ着いたこのロスト・チルドレンの章での険しい場所にある村に着き、そこが原作で当面の危機が去った場所である事を思いだし、住んでいる人達に色々貢献して認めてもらい、こうして豪勢な村に開拓した。
最初は浮きまくっていた俺達は今や完全に馴染んでる。…これは噂だが、バーボが村の娘に熱を上げてるらしい。
しかも両想いらしい。
団長としては喜ばしい事だ。…俺って優しいね~、勿論それが分かってからは熱烈なお祝い訓練を企画し、バーボの足がガタガタになるまで走らせたり、家の建築に駆り出したりした。
いや~、恋人がいる奴は個人的にお祝いするのは当然さ。
バーボもひきつったような顔で喜んでたし。程よく鍛えられて良かったろ。
俺の城、いや、そんな豪勢ではなく、中央にでかい机があって、それ以外はベットくらいしかない四角いウッドハウスだ。
まあ、そこの机においてある椅子に座って此処で栽培したコーヒー豆擬(日本食を再現しようと計画したときの経験が役だった。この世に役に立たない経験はほぼ無いね。)で作ったコーヒーを注いだ木製の荒削りのコップ(飲み心地と味は日本製には及ばず、恐ろしく苦いが)をちびちび口に運びながら、外に降り注ぐ雨の音を聴く。
結構風情があると思うのは、俺が成長したからか、まあ、こんなのも悪くない。
今団員達は別に作った寮のような大型の建物で(俺は黒犬寮となずけた。いい名だろう?)適当にやっているだろう。
俺はあいつらと出会った時とは違い、土砂降りの日に訓練を休ませるというくらいは恩恵を感じている。
何だかんだで犯罪者だった奴らだが、俺に取っては家族だ。(本人達の前では絶対言わないが。)
ズボンと薄い上着というラフな格好をした俺は、ちまちまと飲んでいたコーヒーをぐっと飲むと、目の前に座っている赤毛の若い女の人を見る。
着ている服の上からもわかるふっくらとした程よい胸。高すぎず、低すぎないほどの身長、肩より低く伸びた綺麗な赤毛の長髪、そばかすが有るが、それがより引き立てている整った顔、十人に聞いたら、九人が美人と答える若い女の人が、俺の家の机の椅子に座っている。
この女の人は誰かって?原作で出てたあの痩せた女の子、ジルである。ガッツと別れた数年間でめっちゃ美人になっているジルたんである。
見つめる俺の視線に気づき、こっちを見るジル。やっぱり原作のちんちくりんとは思えないくらい美人さんに成長している。
「どうしたの、あなた。」
綺麗な声で訪ねるジル、いやあ、美人に話しかけられるって、それだけで嬉しい俺はちょっと情けないかな?
さて、なぜジルが俺んちにいるかというと、この村に初めて来た時から、凄いしつこく黒犬騎士団に入団したい!!って言ってくる杖を使ってるお爺さんがいた。
最初は何となく見覚えがあるから、原作でのモブキャラだろうと手厚く親切に入団を断っていたが、断っても断ってもしつこく「入団させてくれぇ!入団させてくれぇ!」と言って来るので、段々俺も面白半分にからかっていた団員達もぞんざいに扱うようになった。
そしたらしばらくとんと入団頼みしに俺んとこに来なくなって、「やっとあいつ諦めてくれたか。」と団員達共々思っていて、それから何日かたって、突然そのおじいさんがこのジル(最初は誰か分からなかった。)を無理やり引っ張ってきて、
「この娘を好きにしていいから俺を入団させてくれぇ!」
と血走った目で怒鳴ってきたんだ。
これには驚くと同時に、かなりジルの親父さん(繰り返すが、その時は分からなかった。)に怒りを覚えた。だってそうだろ?自分の血の繋がった娘を、どこの馬の骨ともしれない怪しい騎士団に好きにしていいって言って渡そうとするんだから、とんだクソ爺だと思ったね。
だからちょっとばかり懲らしめてやった。(勿論心優しい俺は、この最低な父親にも慈悲をかけ、暴力は奮っていない。変わりに強制的に爺が願っていた騎士団に仮入隊させ、団員達と同じ訓練をしっかり受けさせたら、泣きながらジルに土下座し、俺にもこっちが引いてくるぐらい謝ってきた。理想と現実は違うと分かってくれたみたいだ。)
そんなこんなでジルと知り合った訳だが、俺が親父さんにこってり油を絞ってやった後、ジルの方が俺に話しかけてきたんだ。(俺もこのときジルだと気づいた。)
「あのう…すっごい大きな剣をもった真っ黒な服装をした人を知りませんか?」
と聞かれたんだ。俺は勿論これはガッツの事を言っているんだなと一発でわかったね。主にでっかい剣という所で。まあ、俺は俺自身のガッツとの厚い絆(笑)をしっかり教えてあげたんだ。
「俺とあいつは何故かよく出会ってな。結構古くからの知り合いだよ」
という返事をしたら、
「本当ですか!!教えてください!!」
と俺が引くくらい凄い勢いで尋ねてきたので、勢いでガッツについて知っていることを教えた。(その時団員達が微笑ましい物を見る目で見てきた事が少しムカついた。)
そんなこんなでジルと知り合い、今じゃ俺んちで一緒にお茶をのみ話すいい女友達になってくれた。(村の方では変な噂になっているらしいが、俺とジルはあくまで友達である。俺としてはいい女だと思うが、まだ所謂夜の相手…的なことはしていないぞ。)
しかし気になるのは…
「ジル、あなたって言うのは止めてくれないか、変な誤解を生むから。」
そう言ったら面白そうに笑うジル、不覚にも可愛いと思ってしまった。…実際可愛いけど。
「あら、良いじゃない、いやなの?…あなたって呼べと父さんがうるさいのよ。父さん人が変わったわ、めっきり老け込んでしまってね。前は俺も戦で活躍してたんだ!て自慢してたのに、今じゃ戦のいの字も喋んないわよ。」
あの親父、自分の娘にどこの馬の骨ともしれない俺にご機嫌とりをさせてるのか?まだ懲りてないのか。全く…とんでもない親だ。なぜ其処までして騎士団に入りたいのか?そこが気になる。
「私が好きで呼んでるんだけどね。」
なんかジルが小声で言ったが、聞き取れなかった。
外では相変わらず大雨が降っているけど、親の策略とはいえこんな美人と一緒に入れるなんて幸運だなぁ。
コップの残りのコーヒーを一気に飲み干し、(味には慣れてきた。)ジルを見る。
こんなのも、たまには良いかもしれないな。
作者からの一言…久しぶりの更新です。見ていてくれていた皆様、すいませんでした。ちょっとリアルの方で学校が始まりまして、新しい学校と早々のテストで時間がとれなくて…とりあえずすいません。