幼女を拾った。
大切な事なのでもう一回。幼女を拾った。
唯の幼女ではない。なんと蛾と人間の驚愕のハイブリッド!どこぞの悪の組織で改造でもされたのか?
ごめんなさいロシーヌさんです本当にありがとうございます
なんでこのガキ死んでないのよ?マジありえないんですけども。
イケメンすぎるワイアルドこと、元日本人の俺の旅行……もとい高飛び計画。
将来糞イケメングリフィスやら、殺戮大好きで同族を拉致して改造する大帝やらで、転覆間違いなしのミッドランド。
結構活躍して稼いだし、信頼もありはしたかな?
だが、俺は泥舟に乗るたぬきにはならない。
ロリコン王様を見捨て、とにかくどっか遠くに逃げようと、愛すべき黒犬騎士団を連れ、盗賊からカツアゲをして生活費を稼ぐ日々。
原作にはけっこう関わってたけど、もう蝕終わってるわけで、ワイアルドの因果は役割を終えたわけですよん。ちゃんと主人公共の引き立て役にはなってやった。
まあ、ちょっとフィーバーしたけど(笑)
そのことは部屋の済においておこう。
だが、なんの因果か、立ち寄ったどっかの丘あたりで、死にかけのロシーヌ居たんよ。びっくりボルテージや。
で、今治療して寝かせてる。馬車の中でね。
も〜〜うッ!団員たち誤魔化すの大変だったよ。一応まだ俺使徒って教えてないし。
腹が破けてるときし、ちょっと悪いとは思ったが、出血で朦朧としているところをひっぱたいて、変身を解かせた。
いや、普通に羽根とか生えてたらヤバイじゃん。治療どころか即殺さねかねないよ?ロシーヌ。
この世知辛い世の中、人外にはめちゃくちゃ厳しいし。ほんとに氏ねよ過激宗教祈り屋共め。
あいつらSじゃないの?
邪教判定で人に石投げたり、女拷問しちゃうとか……なまじ、それが国家ぐるみだと質悪いよね。
特にアレだよ。モズグスだっけ?あのキャラは大好きだが、実際にいたら絶対に関わりたくない。それも俺今邪教的存在だし。
……2%話ずれちゃった?
まあ、とにかく、目の前には死にかけの偽エルフ使徒。見様見真似で医師っぽく縫合してはみたが……
あれだね。どう考えても足手まとい。
一応俺日本人だし、こんな幼い餓鬼を、腹が破れたり、色々酷い状態のまま放り出すのは気が引ける。
でも、正直に言えば糞面倒くさい。
も〜〜、なんで俺が見つけた時息あったんだろ。ぶっちゃけ見つけた時死体だったら楽だったのに。ロシーヌたん。
君の両親は地獄の渦の中で君を待ってるよ?
たぶんものすごく待ってるよ?
尋常じゃないくらい待ってるよ?
八つ裂きにしたいぐらい待ってると思うよ?
俺が逆の立場なら、例え娘でも贄として捧げられたら、自分を捧げた奴を憎しみで殺す。殺しちゃうね。
……もうこのまま放り出しちゃおうかな?
「うっ……あぁ……」
「うん?目覚めたか」
ありゃ、考え事しているうちに起きた。やっぱ俺と同じチート使徒。回復が早い。タフだわ恐ろしい子。
「ここ……は……」
「喜べ。内臓ぶちまけながら落下して、死にかけのお前を俺が助けた。遠慮なく感謝してもいいぞ」
苦しそうに口を動かして、やっぱ治療しても、結構辛いご様子。それなりに塗り薬とか使ったんだけどな。
使徒には薬草とかそんなに効果ないのか?まったく怪我したことないからわからん。
「わたし……生きて……るの」
「うん、八割ほど瀕死だけどね」
これは本当だ。下半身とかもうズタズタだし、内臓に深刻ルナティックな損傷ありまくりだし、俺が助けなければ死んでたよ完璧に。
エセ妖精幼女ロシーヌ、略してロシーヌは、俺に対して質問とかありまくりだろう。
なぜ自分を助けたの?とか
ここは何処なの?とか
その他色々……とか
なぜ地球は丸いの?とか
なぜバーボはホモっぽいイメージが作者にあるの?とか
でも無理だ。もう少し治療と回復に専念させなきゃ、喋る以前に死にそうだ。
え〜〜と、確か痛覚を麻痺させる薬ってこれだっけか?あとこれは治癒促進効果のあるやつで……
近くに置いてある入れ物を幾つかとる。作った俺でも、たまにどれだかわからなくなるんだよな。あんま本腰入れてたものじゃないし。
日本食の研究にて、俺が偶然にも作成した薬品。これは結構戦場で役に立った。
はいそこ!まんまご都合主義とかは言わない。俺が天才すぎるだけだ。いや、天災か?ふふふふふふ
「とりあえず先輩として忠告。穣ちゃん死にかけだから、薬飲んで安静にしてな。じゃなきゃポックリ逝って、渦としての第二の人生始まっちゃうよ?それやだろ」
ロシーヌは俺の言葉に、しばらく呆然とする。そして、朦朧とした表情ながらに頷いた。
「お頭、そいつ起きたんですかい?」
「うん?あぁ、今起きたとこだ。でもまだ死にかけだぜ」
団員の一人が、馬車に顔を出してきた。他の連中も、ロシーヌにけっこう関心寄せてたから、やっぱり気になるんだろう。
包帯だらけのロシーヌに、物珍しそうな視線を団員が向けてる。
おいやめろよ。なんか変態チックな犯罪図みたいだぞ。筋肉ムキムキマッチョが幼女にそんな視線を向けるな。
ん?俺?俺はイケメンだからいいもん!失礼しちゃうわ激おこプンプン!
……やめよう、心の中でも虚しい。
「お頭、バーボの兄貴が、出発について聞いてこいって……」
「あぁ、もうしばらく時間つぶしちゃったし、今日はここで野営しよう。バーボにもそう伝えておいて」
「わかりやした」
病人に馬車での移動は酷だろう。今日はとりあえずここで野営するべきだろうな。
ここしばらく、各地をさすらって来たし、一箇所に留まっても別に大丈夫だろ。
「……ね……え」
「あ?なんだね。とある妖精の幼女くん」
団員が出ていったあと、ロシーヌがめっちゃ苦しそうに声かけてきた。
「あなた……は……なんなの」
うん、これまためっちゃ普通な質問だね。もっと刺激的な物だと、つい身構えちゃったよお兄さん。
ロシーヌよ、なぜいま、そんな状態でその質問を一番に?
いや、まあ、とりあえず聞かれたから答えてやろう。
「俺か?俺はーー
ーー愛と勇気と美女と金とギャグとその他諸々が友達の、正義の味方ワイアルドンです」
何だこいつ?死にかけながらに、そんな視線を向けてきたロシーヌ。ほんと恐ろしい娘。
◆作者からの一言
皆様、お久しぶりです。ハンズです。
ちょっと創作修行の山篭りしてきました。長い間更新が滞り、申し訳ございません。
これからは、ちょくちょく更新していきたいと思いまする。
今回は、もし主人公が断罪の塔編の前に、エセ妖精幼女こと死にかけのロシーヌをひろっていたら?な外伝?スピンオフ?です。初期のノリと勢いを乗せて書きました。こんな感じの外伝は、他者視点話とか入れてこれからちょくちょく出すかもです。
追伸、主人公は魔にやられたのか、それとも素なのか、ちょっと錯乱気味です。そしてちょいクズ外道です。
でも、人間の内心なんて、所詮こんなもんじゃないかなぁ。