『初号機のシステムをレイに書き直して、再起動!!』『了解、全作業中断、再起動に入ります』ゲンドウがそう号令すると、僕達の周りが慌しく動き出した。作業員のような人達が動き、こちらを眺める。その顔には、侮蔑、といった類のものが浮かんでいた。すると、そこにストレッチャーに載せられた少女が、数名の医者と思われる人間に運ばれてきた。―――自然ではありえない、青い髪と紅い目をした少女。その少女は、包帯を体中に巻いて、一目見て重傷と判る姿をしていた。「シンジ君、貴方が乗らないと…」葛城さんの声を無視し、起き上がろうとする少女の側へ駆け寄る。僕の後ろにはシエルさん、翡翠さん、琥珀さんが着いてくる。僕がいち早く少女に駆け寄ると、起きようとする少女を押し止めた。「き、君っ!? 患者に手を…」「何を言ってるんですか貴方はっ!? こんな所に彼女を連れてきておいて、今更医者のような事を言わないで下さいっ!?」すぐに駆け寄ってきた琥珀さんの剣幕に押され、その医者は押し黙った。「……くっ…、はな…して」少女は押える僕の腕を振り払おうと、手を上げる。そこに、琥珀さんが注射器で薬品を注射した。「……あ」少女は声を漏らすと、ストレッチャーの上でぐったりとする。そこへ、一際大きな振動が僕らを襲った。「きゃっ」琥珀さんと翡翠は何とかストレッチャーにしがみついて振動をやり過ごす。シエルさんは微動だにせず佇んでいた。僕はストレッチャーの上の少女を抱き上げ、その振動で落ちないようにした。振動をやり過ごして少女をストレッチャーへ寝かせて、僕はシエルさんと入れ替わるように少女の側を離れた。「翡翠ちゃん! 新しい包帯とガーゼをっ!?」「はいっ! 姉さん!」「琥珀さん、私は治癒に全力を出しますので、傷口の止血は任せます!」「判りました!」後ろからそんな声が聴こえる。僕はヨロヨロと志貴さん達の所へ歩きながら、自分の手についた紅い液体を眺めた。恐らく、抱き上げた時についたものだろう、彼女の血だった。「…まいった、本当にまいった」僕は一言そう言うと、懐から黒い銃身を取り出す。「…碇ゲンドウ」僕は黒い銃身を空へ向け、ゲンドウを睨む。志貴さん達は、もの凄く怒っているが、一番ショックの大きいと思われる僕の為に、その怒りを表に出さず、ただただアイツを睨む。「……お前、死にたいか?」僕は、怒りを前面に出した表情で、ゲンドウを睨んだ。『…ふっ、貴様に何ができる』ゲンドウは僕の言葉を鼻で笑うと、その場で支持を出す。すると、僕たちのいる部屋に、黒服の男が拳銃を携えて駆け込んできた。「……………くっ、くっ、くっ……」その笑い声は、志貴さんから聞こえてきた。「……シンジ、俺はもう、抑えられない。だが、あの男はお前のだ。俺はあの黒服のバカどもを貰う。」「…そうですわね、私も参加させて頂きますわ」「殺しはしないけどさ……、動けないぐらいの怪我は許してくれるわよね? 志貴」「あぁ…、お前が前から興味のあった『拳銃』ってやつだ。楽しんで来い」三人はそう互いに言うと、臨戦態勢に入る。その最悪の状況を引き起こしたバカを見て、僕は思わず大声で笑った。「あはははははっ! バカだなぁ~、碇ゲンドウ。お前、死ぬぞ?」『…何が可笑しい』そのバカは、現状を把握できていない苛立ちからか、威圧的、と表現するであろう声で僕に聞いてくる。僕はその声を無視して、黒い銃身に力を込めた。「…ブラック・バレル・レプリカ…。フルトランス」僕が述べ、引き金を引くと、天に向けた銃身から紅い巨大な光が放たれる。……ドォォォォォォォッ一拍措いて、衝撃が天井を突き抜けた。天井からは、地下なのに僕を中心にして太陽の光が降りてきた。「……こういう事だ、馬鹿」僕はそう言うと、その光景に呆気に取られている馬鹿に向けて銃口を向けた。その瞬間、三人は姿を消し、あっという間に黒服の男を再起不能にする。『戦闘不能』では無く、『再起不能』だ。命は取らないが、五体満足で動く事は難しい。ある者は片腕を失い、ある者は足を焼け爛らせ、またある者はありえないほどの切り口を残して体の一部を失う。途端、場に静寂が訪れる。「…シンジさん、とりあえず止血と治療は終わりました。安心してください」黒い銃身を構える僕に、琥珀さんが笑顔で近づいてきた。僕はホッと胸を撫で下ろし、銃を降ろして懐に閉まった。「…彼女は?」「えぇ、今連れてきた藪医者に連れて帰らせました」「そっか…。良かった~」僕は笑顔を琥珀さんに向けてから、ゲンドウに再び向き直る。「……彼女は助かった。僕は、彼女の変わりにアレに乗ってやろう」