「…それで、こっちのお二方は……」僕は横に立っている葛城さんと赤木さんを見て言葉を続けようとするが、母さんは笑顔で言葉を続けた。「…ナオコさんの娘さんのリッちゃんと、葛城博士の娘さんのミッちゃんでしょ?」…リッちゃん、ミッちゃん、か。「…そんな年でもないでしょ」「うるっさいわねっ!?」小声で呟いた僕のセリフに、ミッちゃんが噛み付いてきた。「…エヴァの中で眠ってて、起きた時にね、シンジと会話しているのを聞いてたのよ」「…なるほどね」僕は母さんの言葉に納得して、一人頷いた。「…それで、シンジ」「……ん? なに?」「どうして…、私を仲介しないでエヴァを動かせたの?」そういって、母さんは僕をジト目で睨む。なんとなく、だだっ子のような、邪険に扱われた人みたいな目で僕を睨む。「…ん~、それはよく判んない。だってあんなの初めて乗ったもん」「そう…、そりゃそうよねぇ~」僕の言葉に、母さんはともかく、赤木さんも一緒に肩をがっくり落とした。「…それで、シンジ。貴方、遠野さんの所にお世話になっているって言っていたけど、どういう事?」「そ…そういえば、私達の報告書にはそんな報告は来ていないわ…」母さんの質問に、赤木さんも一緒になって訊いてきた。その横では、葛城さんも興味深々と言った感じで目を輝かせる。僕はそこで軽く溜息をつくと、事情を頭で整理して、母さんに話す事にした。事実を包み隠さずに。「…僕は、母さんの起動実験が失敗…、まぁ母さんからすると魂の内包に成功した後、父さん…、碇ゲンドウに親戚のおじさんの所へ行くように言われたんだ。 それで、行く途中で志貴さんと、志貴さんの先生の猛特訓中の場面に遭遇しちゃって…、なんか一回肉体が死んじゃったんだって」「はっ…?」葛城さん、赤木さん、母さんはそれぞれ『何言ってるの?』という顔をしている。そんな事に構わずに、僕は話を続けた。「それで、その特訓に巻き込まれて肉体が死んじゃったんだけど、志貴さんの先生、青子さんて言うんだけどね、その人の仲悪いお姉さん、燈子さんに肉体を再構成して貰って、志貴さんの血を分けてもらって、生きながらえたんだってさ。 それで、まぁその影響でイロイロあって、僕の保護を志貴さんがする事になって、そのまま遠野家で今まで生活してたって訳」ここまで、自分や志貴さん、遠野家のトップシークレットには触れていないはず。「…シンジ、その、ゲンドウさんは…」僕は、少し青い顔をした母さんの含んだ言葉に、首を縦に振った。「…父さんは、母さんがいなくなってすぐ僕を自分から離した。 まぁ簡単に言っちゃうと僕を捨てたんだよ。自分じゃ育てられないと思って」「…そう…、そんな事が…。ごめん、なさい…」母さんはそう言ったきり、俯いて黙り込んでしまった。「…母さん、僕達今日はとりあえず帰るよ。…明日、また来るね」「……えぇ、気持ちの整理をつけて、待ってるわ…」「じゃぁ、おやすみ」僕がそう言うと、ソファーに座っていた面々が立ち上がり、それぞれ好きに挨拶をして部屋を出て行く。扉を閉めて、一息ついてから、僕達と別れようとする葛城さんと赤木さんを志貴さんが引きとめた。「…イロイロ、お話があるんで、お食事にでも行きましょう」ちょっと高そうな中華のお店の個室に通され、僕達9人は思い思いの座席で、食事を楽しんだ。ひとしきり、食事を楽しんだ後、葛城さんから声がかかる。「…それで、私達にお話というのは?」葛城さんは、志貴さんを確めるように見つつ、秋葉さんの機嫌に細心の注意を払っていた。……かなり秋葉さんが怖いらしい。「…貴女達が知っている碇シンジと、ここにいる碇シンジの違いを、まず教えようと思います」…唐突に、志貴さんは手札を一枚切った。