「…簡単に言うと、ここにいるシンジは貴女方の調べた碇シンジとは別人ですが、正真正銘貴女方が知っている碇シンジです」「「………はっ?」」『ワッカリマセ~ン』て感じで目の前の二人は呆けた顔をしている。そんな事に構わず、志貴さんは言葉を続ける。「ここにいる碇シンジは幼少の頃からずっと僕と一緒に生活をしてきました。 ですが、貴女方の知っている碇シンジは幼少の頃からずっと碇ゲンドウが当てたおじさんの所で生活をしていた、そうでしょう?」「……えぇ、そうよ」いち早く立ち直った赤木さんが、志貴さんの言葉に返事をする。「つまり、そういう事です。 貴女方の知っている、というか調べた碇シンジはおじさんの家で生活をしていた碇シンジで、遠野で生活していた碇シンジではない。 だが、ここにいる遠野で生活していた碇シンジが正真正銘碇ゲンドウの息子である碇シンジ。 …ここまで言えば、意味はわかるでしょ?」「…つまり、NERVが知っている碇シンジは、真っ赤なニセモノ…?」「厳密に言えば、碇ゲンドウが三年前まで年に一回逢っていた碇シンジも、ですね」志貴さんの言葉に、二人は絶句していた。「…まぁ、NERVの諜報部が悪い訳ではないんですけどね。 遺伝子的には100%同一人物なんですから」「……ありえないじゃない。100%遺伝子的に同一のニセモノなんて」志貴さんの言葉に、赤木さんが再び絶句する。「…病院での会話、覚えていますか? シンジが一回死んだという」「………えぇ、一回死んで、『肉体』を再構成…、あ、まさか…」シエルさんの言葉に、赤木さんが的を得たように返事をする。シエルさんはその返事に嬉しそうにうんうん、と頷く。「正解です。再構成できるなら、新しく創造する事も可能。 つまり、同じ人間の肉体をもう一つ造って、擬態の魂をあてがう。 それを行く予定だったおじさんの家に持っていけば碇シンジの真っ赤なニセモノの完成、です」シエルさんはそう言うと、説明した事に満足したのか、ずずずっ、と中国緑茶を啜る。「…そんな、そんな技術、ありえない……」「どういった技術かは知らないですが、実際できちゃったんですよね…」「……確かに、そういう事なら報告書との違いを説明できるわ。 …おじさんの家に居た碇シンジには、遠野さんとの関係は一切認められないもの」絶句している赤木さんを他所に、志貴さんの言葉を葛城さんは納得した面持ちで受け止めた。「…さて、そういう事なので、こちらも少し聞かせて頂いていいですか?」未だに止まっている赤木さんを放っておいて、志貴さんは葛城さんに問い掛ける。「…えぇ、私で答えられる範囲なら」葛城さんが神妙な面持ちで返事をすると、志貴さんは僕を促す。僕はそれに無言で頷くと、葛城さんに向き直った。「……『人類保安計画』ってなんですか?」ガタッ「いや、『人類補完改革』じゃなかったか?」ガタタッ「お二人とも、『人類補完計画』ですよ」ガタタタッ僕達の言葉に、目の前で赤木さんが思いっきり椅子を揺らして狼狽していた。一方の葛城さんは『何ソレ?』って顔でこちらを見ている。………さすが要注意人物NO.1「…どうやら、赤木さんは知っているようですね」僕はニンマリと笑うと、赤木さんを見つめる。その顔は、酷く青ざめていた。「…あっ、貴女達! ど、どこでそんな情報を……」「…まぁ、話せば長くなるんですけどねぇ」「ふっ、そんな情報、遠野グループの本家である遠野家にかかれば、簡単なものですわ」……確かこの情報は『協会』からだったと思うんですが、秋葉さん。「……と、遠野グループ? ってあの日本経済の中心と、世界経済の柱って言われてる…、大財閥?」秋葉さんの発言に、葛城さんは思いっきり反応した。「えぇ、そうですわよ。私は今代遠野家当主、遠野秋葉。言うなれば遠野グループの総長、って所ですか?」さらりと出た爆弾発言に、二人揃って被弾した。「あっ、そ、そそ、そうちょうぅぅぅ~~!!」「………な、なんて事…」「…ちなみに、シンジは遠野家より影響力は下ですが、碇財団という所の次期総帥、という事になっていますが? まぁ公式なものではありませんがね」またまた投げ込まれた爆弾に、またもやお二人は被弾、大変な事になってます。……爆弾投げすぎです、秋葉さん。「…まぁ、そんな事はどうでもいいんですけど。…それで、どこまで知ってるんですか?」僕の『どうでもいい』発言がちょっと癇に障ったのか、不愉快そうな秋葉さんにビクビクしながら僕は赤木さんに聴いてみた。「…わ、私は何も………」「…そんなに動揺してる人間が、何も知らない訳ないですよね」爆弾でボロボロになったんだろう、取り繕う事も無く赤木さんは動揺を前面に押し出していた。だが、赤木さんは一向に口を割ろうとしない。「……赤木さん、こちらとしては、別に力づくでもいいんですよ?」僕がそう言うと、琥珀さんが着物の袖から二つの注射器を取り出した。「うふふっ…、赤いのとぉ~、青いの、どっちがいいですかぁ~?」………怖いよ、琥珀さん。「大丈夫ですよぉ~、ちょ~っと痛くなった後、すっきりとしますから~」………何が大丈夫なのか判りません。目の前に赤いのと青いのを突きつけられ、赤木さんは観念したのか、大人しくなって言葉を発した。「………その計画は…」「……という訳よ」僕達は赤木さんの説明を受けてから、とりあえずお互いの顔を見合わせて言った。「…法王庁勤務のシエルさん、ご感想は?」「非常に不愉快ですね」ばっさりと斬り捨てました。「大体、何故あんな化け物が天使の名前を冠するんですか? まずそれが意味判りません。 加えてあの化け物が人類の出来そこないとは…。 本当に、地球という生命はロクなモノを造りませんね」シエルさんはそう言って、地球の触手であるアルクェイドさんを見て溜息を尽いた。「…な~んか、バカにされた? 私」アルクさん、なんとなく不機嫌そうだ。「…とりあえず、全てはセカンド・インパクトがきっかけ、か」志貴さんがそう呟くと、葛城さんの肩がビクッ、と震えた。「…確か、葛城さんのお父さんは、スーパー・ソルノイド理論に基づく研究をされていたんですね。…南極で」「………えぇ、そうよ。…その研究している所に、大きな羽根が…。 その羽根は使徒のものだという事を教えて貰ったわ。 …私はその時の南極で唯一人の生き残り。 だから…、ううん、私は、使徒への復讐の為に今NERVで働いている」葛城さんは俯き、拳を握り締めながら語る。だが、その内容は、いささか問題があった。とりあえずその問題は置いておく事にする。「…そして、そのセカンド・インパクトで目覚めた使徒が、今ここに向かってくる。全てはサード・インパクトを示す裏・死海文書の記述のままに、か」「それを利用して呪術を行い、地球の生命を群体から固体へ還元、つまり一度一つにしてからSEELEの用意した心の壊れた依り代を使い、SEELEの思うままの世界を創造。まさに神に欺く行為、って所ですか」志貴さんと僕の言葉に、赤木さんと葛城さんは、大きく動いた。ガタッパシッ「…あんたっ! そんな事に手を貸そうとしてた訳っ!?」葛城さんは赤木さんの頬を張り、彼女を罵る。赤木さんはされて当然とばかりに俯き、微動だにしなかった。「…何とか言ったらどうなのよっ!? あんたっ!?」「葛城さん、赤木さんは唯利用されていただけなんです…。貴女が復讐心を利用されていたように…」シエルさんがそう言うと、葛城さんは俯き、震える拳を押さえつけて椅子に座った。「…葛城さん、貴女は本当の事を知りたいですか?」「…………どういう事?」僕の問いかけに、葛城さんは顔を上げて反応した。「…僕達に協力してくれるなら、教えましょう。『真実』を」