「………するわ。何だってする。だから、真実を教えて」葛城さんは決意を持った視線を僕に向けて、言い放った。僕はその視線を受け、一息つく。「…約束してください。恨むな、とは言いません。ですが復讐しよう、などとは考えないでください」「…………判ったわ」「……では、話しましょう。セカンド・インパクトの真実を」「まず、きっかけは南極での第一使徒アダムと呼ばれるモノの発見でした。 続いて第二使徒リリス。 恐らく、これは裏・死海文書の記述を元に捜索した結果でしょう。 裏・死海文書の解読者は、碇ユイ。僕の母さんです」「…………ユイさんが、解読者…」葛城さんの声を聴き、僕は先を続けた。「文書の通りに解読して、アダム・リリスを発見。 その内容を知っているSEELEは『人類補完計画』をこの頃から開始したんでしょう。 …先ほどの赤木さんの話から行くと、この仮説は恐らく的を得ていると思います。」「……そうね、多分その頃からだと思うわ」赤木さんの言葉に頷いてから、僕は先を続けた。「…そして、まず計画の第一歩となるセカンド・インパクトの発動。 これに利用されたのが、アダム発見の報を聞き、夢の無限エネルギー、スーパー・ソレノイド理論を研究していた葛城博士率いる葛城調査隊のメンバーです」「……父、さん…」葛城さんは胸に下がるネックレスを握り締めて、静かに僕の話を聞く。「そして、当時碇ユイのコネにより、SEELEの駒使いをしていた現、碇ゲンドウが南極に行き、密かに第二使徒・リリスを南極から持ち帰る。 そして、葛城博士の指示の元、S2機関の実験が始まり、暴走。 博士はその被害を最小限に止めようと奮闘するが、アダム覚醒。 一旦目覚め、インパクトを起こすも、葛城博士の身を削る尽力によりアダムは冬眠、恐らくSEELEで言う『ロンギヌスの槍』で魂の還元をされ、インパクトの被害を最小限に押し止めた。 ……この話は、先ほど赤木さんから聞いた真実、『協会』の報告に上がった真実、そして僕の両親に関する真実で固めた話です。 恐らくここまでの話は、赤木さんも知らないでしょう」「………えぇ、知らなかったわ」僕の言葉に赤木さんは返事を返す。ここまでの話で、葛城さんは幾らかショックを受け、幾らか真実に癒されたはずだ。だが、話はまだ終わらない。「……葛城さん」「………まだ、話は続くの?」僕は葛城さんの言葉に無言で頷く。「……エヴァンゲリオン初号機、アレは恐らく、第一使徒アダムの模造品…、つまりコピーです」僕の言葉に、葛城さんは今後こそ大きなショックを受けた。…まさか自分が復讐に利用しようとしていた道具が、父を殺した使徒のコピーだとは思わなかっただろう。「………な、んで…、そこまで判るの?」赤木さんは、葛城さんと同じように、だが違うショックを受けていた。「…魂の干渉です。その時に初号機が語ってくれました」「……そう、人造人間だものね…」赤木さんはそう言うと、ぐったりと頭を垂れる。葛城さんに至っては、目的、目標を見失ったショックで、自己の確立が上手くいっていないようだ。「……葛城さん、ここまで全て、真実です」「…………そう、判ったわ」葛城さんはそう言うと、深く沈んだ顔を上げた。「…葛城さん、先ほど約束しました。僕達に協力してください」「………えぇ、何をするの?」葛城さんは自分を見失い、茫然自失状態。だが、話を続ける。決定的な一言を。「…『人類補完計画』、その為に葛城博士を利用し、セカンド・インパクトを起こし、今また葛城さんを利用しようとしたSEELEに『制裁』を加える手伝いを」この一言で、葛城さんの目は大きく見開かれ、僕達に向き直った。「………するわよ、やらせてっ!?」葛城さんは大きく頭を振り、僕達の協力者になる事を了承した。「……貴女達、SEELEと争うつもり?」一人、赤木さんが冷めた視線で僕達を見やる。それに葛城さんが食って掛かろうとするが、秋葉さんが視線で押し止めた。「…今、私達は実質上遠野家、碇家で世界経済の1/3は押えていると思いますが?」「…経済力では張り合えるかもしれないけれど、力で来られたらどうするのよ? 今日の一連の騒動で貴女達個々が強いのは判ったけれど、軍隊に攻め込まれたらおしまいでしょう?」赤木さんの『一般的』な意見を、アルクさんが鼻で笑った。「…人間なんて、いくら来たって私に敵う訳ないし~。 まぁ最も、軍事力とかいう面だったら逆にこっちのほうが圧倒的に上なんじゃない?」「そうですねぇ。時計台と法王庁を巻き込んでしまえば、各国のキリスト教集団や軍、加えて魔術士や志貴さん達の師匠である魔法使いのお二方も引っ張ると、SEELEなんて秘密になってない秘密結社なんてあっという間に消えてなくなるでしょうね」「遠野家の人間も加えるともっと早くなりますわね」「…使徒を相手にするより遥かに厄介なヤツをゴロゴロ敵に回してるなぁ、SEELE」「でも力でねじ伏せるだけだったらこれからすぐにでもできるんでしょうけど、それだけじゃダメなんですよね~」「はい、姉さんの調べた所、SEELEという組織はセカンド・インパクトで甚大な被害に遭われた国に経済援助をしていますから、その国々が崩壊してしまう恐れがあります」「…自立できていない小国に援助をして、ある意味人質に利用している訳か」「そちらのほうは、遠野家と碇家両家で一度会談を開き、なんとかする事にしましょう」「SEELEっていう組織は、投資家や資産家の集まりなの?」「えぇ、最も老い先短いご老人ですけれど、人体改造なぞをして存命しているようですよ」「…金持ちの道楽か」「そこまでして、神とか言うのになりたいのかにゃ~?」「だから下らない計画を立てているんじゃないのでしょうか?」「NERVという組織の事を考えると、国連にも手を回しているんだろうね」「そうですわね、最もそちらはすぐに手を打てますが、まだ泳がせておく事にしましょう」「じゃぁ明日にでも協会と教会、家にいる四季と碇家に連絡するか」「そうですね~。とりあえず両『きょうかい』のほうには現状維持、遠野、碇両家は、経済活動と小国に対する経済支援をするようにしましょう」「という訳なので、NERV内部に関しては葛城さんと赤木さんに協力して頂きたいんですが」「………私も?」今まで議論の蚊帳の外だった二人に声をかけると、赤木さんが驚いた声を上げる。「えぇ…。今まで利用されてきたツケ、払ってもらわないと、でしょう?」「………それは、そうだけど」「赤木さん…、貴女はポイ捨てされるような女性ではないでしょう」「……知ってたの?」「いえ…、母さんの病室に入る前の行動、計画の概要と事の真実をある程度認識していた事を踏まえて考えた結果です…。 赤木さん、父さんと関係を持っていたんでしょう?」「…道具として、だけどね」赤木さんは自嘲的な笑みを浮かべると、一つ、溜息を尽いた。「………判ったわ。今更だけど、鎖を断ち切ろうと思う。…手伝ってくれる? シンジ君」「えぇ…、喜んで」僕は笑みを浮かべると、赤木さんと握手を交わした。