「………それから、冬月さん」「ん…? なんだね?」母さんが泣き止んで、一息ついた所で僕は再び冬月さんに話を振った。「あのですね、僕は『魔術士協会』という場所の人間なんですが、今第三に来ている僕達の知り合いには、基督教…、つまり、法王庁、法王直結の機関に所属している方がいるんです。 それに加え、僕と同じ師匠に師事している、『魔術士協会』の先輩で、僕の格闘技の師匠は、遠野グループの総長のお兄さんで、その妹さん達と一緒に僕は暮らしてきました。 …加えて、僕は次期碇財団の次期総帥というポジションだったりします。 ついでに言うと、一緒に第三に来た人達は、多分生身で使徒を倒せると思いますよ。僕もそうですけれどね」「……あ~、つまり、君達を敵に回すイコール世界を敵に回すって事かね? それで、今後使徒を生身で対処する事があるかもしれんと」「……まぁ、そういう事ですね。純粋なパワー、という部分では使徒に勝てるのは、多分一人か二人だと思うんですが、技や能力で言えば僕達が負けるという事は有りえないと思いますね」「ふむ…、それは世の中に知れたら大変だな。 …判った、NERV内部にそういった事が起こったら緘口令を布いて、情報操作の類をするよう手筈を整えておこう。 …無論、SEELEにも知れる事の無いようにな」「有難う御座います」「いや、こうなったら最後まで付き合うしかないんだろう?」「あはは…、まぁ、そうですけれどね」「そういう事だ。…さて、SEELEからそろそろ招集がかかる。 …老い先短い老人達の相手は任せておけ。 最も、その相手をするのも碇が復帰するまでだがな」「頑張ってください、冬月さん」「あぁ…、それでは、またな。赤木君、シンジ君達に司令室と君の執務室以外のフリーパス、MAGIのSSSランクのIDを渡しておきたまえ。 …MAGIのハッキングで徹夜など嫌だからな」「…わかりました、副指令」「うむ…。では、またなユイ君」「はい、冬月先生」冬月さんはそう言うと立ち上がり、病室を出て行った。「……とりあえず、第一段階『説得』は成功かな?」「……アレは、『脅迫』というのよ?」まさか、葛城さんに突っ込まれるとは思わなかった。『使徒再来か』『余りに唐突だな』『十五年前と同じだよ、災いは何の前触れもなく訪れるもの』『幸いとも言える。我々の先行投資が無駄にならなかった点においてはな』『そいつはまだ解らんよ、役に立たなければ無駄と同じ』『さよう、今や周知の事実となってしまった使徒の処置、情報操作、ネルフの運用は全て適切かつ迅速に処理してもらわんと困るよ』「その件に関しては既に対処済みです、ご安心を」『しかし冬月君、ネルフとエヴァ、もう少しうまく使えんのかね』『零号機に引き続き、君らが初陣で壊した兵装ビルの修理代、小国には影響するよ』『聞けばあのオモチャは碇の息子に与えたそうではないか』『人、時間、そして金、親子そろっていくら使ったら気が済むのだね』『それに君達の仕事はこれだけではあるまい』『人類補完計画、これこそが君達の急務だ』『さよう、その計画こそがこの絶望的状況下における唯一の希望なのだ、我々のね』それまで黙って聞いていた、バイザーをつけた老人が、ゆっくりと口を開いた。『いずれにせよ、使徒再来における計画スケジュールの遅延は認められん。予算については一考しよう』『では、あとは委員会の仕事だ』『冬月君、ごくろうだったな』その言葉を最後にバイザーをつけている老人と冬月コウゾウ以外の全てが消え失せた。『碇に伝えておいてくれ、後戻りはできんぞ、とな』その言葉を吐いたあと、バイザーの老人も消え失せた。「…時間が無いのは、お前達だけだろう」爆発の中心地付近にあるテントの中で、葛城ミサトはテレビを見ていた。チャンネルを変えるがどのチャンネルも同じニュースしかやっていなかった。「発表はシナリオB-22か、事実は闇の中、か」「広報部は喜んでたわよ、やっと仕事ができたって」「ウチもお気楽なもんね~」「どうかしら、本当はみんな恐いんじゃない?」「あったりまえでしょ」「…でも、知らない方と知っている方、貴女はどちらが怖かった?」「……そうね、知らない事って、怖いわね…。」僕は病室をでて、廊下を歩いている。外には、沢山の緑が生い茂っていた。「……遠野の森は、もっと暗い感じだよな」そんな事を考えながら歩いていると、目的の病室に辿り着いた。『綾波 レイ』それだけ書かれていた。コン、コン病室のドアを叩く。…返事がない。コン、コン、コン再び叩く。…やはり返事が返ってこない。とりあえず、もう一度叩いてみようと思った時、「…はい」なんだか、鈴を鳴らしたような声が聴こえた。「失礼ぶっこきます」…みんなは、こんな言葉使っちゃダメだぞ?