で、中学校への転校初日。こっちの家に引っ越してからいろいろ問題あったけど、ここニ~三日でそれも消化されたようだ。ちなみに部屋割は、一階………メカ翡翠格納庫&整備室。二階………翡翠さん、琥珀さん。三階………シエルさん、アルクェイドさん、秋葉さん、綾波。(一室空き)四階………僕、志貴さん。(一室空き)三階の空いている部屋には退院して、おじいちゃんの所に顔を出しに言った母さんがそのまま入る予定だから、とりあえずゲストルームは一室空いている事になる。「……じゃぁ、学校まで道案内、お願いね、綾波」「…………わかったわ」今日から高校組み&教師組みも学校に行く事になっていて、高校は少しここから離れていて、教師組みは他の職員への挨拶や学校の説明なんかもあるらしいので僕達より先に出て行った。そんな訳で、僕は綾波と一緒に登校だ。そして、最終チェック。琥珀印弁当………よし。ハンカチ&ちり紙………よし。万能君………よし。琥珀印の『かもぉ~ん、ひっすぃ~ちゃ~ん!スイッチ』………なんだかわからないけど、OK。教科書………問題ない。制服………着ているので大丈夫。…………よし、準備はOK。「じゃぁ、留守番よろしくね、メカ翡翠ちゃん」「「イッテラッシャイマセ、シンジサマ…」」「…………いってきます」「「イッテラッシャイマセ、レイサマ……」」メカ翡翠ちゃんに見送られながら、僕は初めての登校となる中学校へ思いを走らせ、少しワクワクして綾波の道案内の元、通学路を歩いた。「というわけでぇ~、これからよろしくお願いしますねぇ~」「………謀ったな、シャア…」僕の目の前では、琥珀さんが嬉しそうにニコニコしていた。あぁ…、ご都合主義、万歳。「遠野の財力にかかれば、こんなものです」…また他人の力を利用して裏から操ったんですか…。「そういう訳で、私達の教室となるコード707な場所へれっつらごぉ~です」……なんとなく機密が出てる気がする。「では、私が先に教室へ入って自己紹介をさせて頂きますので、それが終わったら呼びますから廊下で待っていてくださいね」「…は~い」シンジの返事を聞いて、琥珀は無言で頷いてから教室へと入る。ガララッ「「「「……うぉぉぉ~!!」」」」教室へ入り、教卓へと近づく間、琥珀は男子生徒の歓声を一身に浴びてニコニコと歩いていた。そして黒板に向き直り、キレイな文字で何かを書く。カカッ、カッカンッ!「…新担任の、巫浄琥珀です。よろしくおねがいしますね~」琥珀はそう挨拶して、向日葵のような笑顔を浮かべる。「「「「……う、うおぉぉぉぉ~!!」」」」「う、売れる~! こ~れは売れるぞぉ~!」その笑顔に、男子はとにかく歓声を上げ、女子は羨望と嫉妬の入り混じった目で琥珀を見つめていた。学校での琥珀は普段の和服姿ではなく、きっちりとしたスーツ姿である。この格好が、和服を着ている普段より幾分幼く見せていた。白のパイピングジャケット、インナーには明るいブルーのニット、スカートは濃いピンクをしたフレアスカート。目を向けるなというほうが無理な話だった。パンパンッ「はいは~い、みなさんお静かに~」琥珀はそう言って静粛を促す。途端、教室の野獣の咆哮は収まり、元の静寂を取り戻した。「…それでは、新担任の初仕事という事で、転校生を紹介しちゃいま~す」その言葉に、再び教室は色めき立つ。それを無視し、琥珀は廊下を見つめた。「は~い、それでは入ってくださ~い」琥珀がそう言うと、教室の喧騒がピタリと止み、なんとなくピリピリした空気を醸し出していた。ガラッ教室のドアが開き、少年が入ってくる。教室はシ~ンと音を立てて静まり返っている。そのまま少年は、琥珀の傍らまで近づき、笑顔を振り撒いて自己紹介を始めた。「……えっと、碇シンジです。家族の仕事の都合で転校してきました。 …………よろしくお願いします」ペコリ。その瞬間、何かが弾ける。「「「「きっ…、きゃぁぁぁぁ~~~♪」」」」「う~れる~っ! ま~たこれはうれるぞぉ~!」……彼らの学校生活は、こうして幕を開けた。『おはよう、シンジ君。調子どう?』「う~ん、80点、て所ですかね。 少しおなかが空きました」『いや、そうじゃなくって…、学校はどう?』「学校ですか、まぁそれなりにやってますよ」事実、なんとな~くという感じでやっている。……別に男子の視線が痛々しいとか、女子の視線がどこかうすら寒く感じたりとかあり、加えて変にあのクラスはテンションが高いので、なかなか溶け込みにくい。ていうか、あのクラステンション高すぎ。『そう…、ならいいんだけど。エヴァにはもう慣れた?』「エヴァ自体には慣れたけど、LCLはいくらやっても慣れませんね、やっぱ」『それは、やっぱり我慢してもらうしかないのよね』「うい、わかってますよ、赤木さん。 ………ジュースとか混ぜたらどうですかね?」『…肺にジュースが入ったら、どうなるか判ってるわよね?』「……そういやそうでしたね」LCLはおなかじゃなくて肺に入るんだったね。『ふぅ…。じゃあ、今日もいくわよ。エヴァの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット、全部頭に入ってるわね?』「まぁ、それはまたおいおい、という事で」『……入ってるわよね?』「うい…」赤木さんは怒らせるとマズイ。『では昨日の続き、インダクションモード始めるわよ』コンピューターの誘導による射撃モード、か。遠距離攻撃っていうのはあまり得意じゃないんだよなぁ…。ブラック・バレルぐらいの火力の武器なら別なんだけどさ。「目標をセンターに入れてスイッチ。目標をセンターに入れてスイッチ。目標を…」第三使徒サキエルがビルの隙間から出てくる。それをライフルで三点射。爆発して、再びサキエル襲来。また射撃。また…。また…。「…スイッチを目標に入れてセンター。スイッチを目標に入れてセンター。スイッチを…」『……飽きるの早いわよ、シンジ君』「…単純作業には向かないんです。複雑な思考回路してますから」『…一度見せて貰いたいわね』「………ゴメンナサイ」「しかし、よく乗る気になってくれましたね、シンジ君」「ま、彼にはやる事があるからねぇ~」「……やる事、ですか?」「そ、こぉ~んなに大量にね」両手を大きく広げて、『こぉ~んなに』を表現するミサト。「……嫌じゃないんでしょうか? まだ中学生なのに、彼」「…まぁ、それを言われたら私達が初対面で彼にやった事、後悔して自殺でもしなきゃならなくなっちゃうわね」「………本当、よく私達あんな事出来たわね」「……あの時は、しょうがなかったんじゃないでしょうか?」ミサト、リツコの苦い顔に、マヤがおずおずと自分の意見を言った。「…『しょうがない』、か…。そうやって自分を追い詰めて、他人を追い詰めて…。 もし彼が普通の中学生だったら、あの後彼を待っていたのは精神崩壊ね」「……彼のお陰で、こうして後悔もできるのね。 彼が彼じゃなかったら、後悔なんてする事も無く、ただの中学生を追い詰めて破滅を迎えさせていた訳か」「………足向けて寝れないわね」「……彼の部屋に頭向けると、北枕になっちゃうわ、ウチ」プシュー「ただいまぁ~」「オカエリナサイマセ、シンジサマ」「ただいま、メカ翡翠ちゃん」「お帰りなさいませ、シンジ様」「ただいま、翡翠ちゃん」「ほぉ~、翡翠ちゃんに『ちゃん』付けですかぁ~」…………また、謀られた。「……やりました、姉さん」なんか僕を『してやった』事が嬉しかったらしい。翡翠さんは拳を握って天井を見上げていた。「……翡翠さん、もう一体のメカ翡翠ちゃんはどうしたんですか?」「……シンジ様、別に『翡翠ちゃん』でもよろしいのですが」「それはムリっす」翡翠さんの提案を速攻で却下。「…メカ翡翠はちゃん付けですが?」「それとこれとは別ですよ。 ……というか、何故メイド服を?」最近は、メカ翡翠のお陰で掃除やらなにやらをしなくて済んでいるので、余り翡翠さんのメイド姿は見ていなかったら、今日は何故かメイド服だ。「週に一回はこうしなければ、私の気が治まらないのです」……………よく、わからない。「そういう訳ですので、本日はメイドデーです」……………本当に、よくわからない。「それでは、お部屋をお連れします」「………本当にメイドモードなんですね」「えぇ…」その言葉遣いはわざとなんですか?転校して二週間、未だ教室のテンションに馴染めない僕は、学校から帰るとかなりぐったりしてしまう。琥珀さんは授業やHRの時しか居ないのでテンションについていけない事はないそうだ。学校から帰宅して食事、入浴とこなしてからアルクさんと琥珀さんに付き合ってゲーム、秋葉さんと翡翠さんから愚痴を聞き、シエルさんにおいしいカレーの食べ方を教授して貰い、なんとなく溜まった鬱憤を志貴さんとの実戦さながらの組み手をこなして寝る。だが、夜中に時たま琥珀さんの襲来や、綾波の秋葉さん達による『男と女の為のステップ・アップ術』を用いた不法侵入などがあり、寝るのは日付が変わってからだったりする。ちなみに、綾波とはいたしておりません。そんな一日を過ごしてから、僕はいつもの朝を迎える…。