「志貴さ~ん、お手紙が来ていますよぉ~」玄関から、琥珀さんの声が聴こえてきた。僕は志貴さんと秋葉さん、翡翠さんと一緒に優雅に昼食後のリラックス・タイムを楽しんでいた。ぱたぱたぱた。琥珀さんが玄関から居間に近づいてくる足音が聞こえてくる。「はい、志貴さんへお手紙です。燈子さまからですね~」「あぁ、ありがとう琥珀さん」「姉さん、紅茶はいりますか?」「うん、ストレートでお願いね、翡翠ちゃん」琥珀さんは笑顔で志貴さんに手紙を渡してから、僕の正面に座った。「多分シンジさんへのお手紙なんでしょうねぇ」琥珀さんはチラリ、と志貴さんの顔を見てから僕に向き直った。それからすぐ、志貴さんがこめかみをピクピクさせて無言で僕に手紙を差し出してきた。こんな志貴さんは久し振りに見た気がする。この前見たのは、『アカシャの蛇』と戦っていた時だったかな…。「兄さん、そんなに不機嫌になるなんて、何が書いてあったんですか?」「…シンジ、とりあえず読んでみろ」秋葉さんの言葉に『読めば判る』という形で返事をした志貴さんから、僕は手紙を受け取った。「えぇ~っと…『木偶人形の所に手紙が届いた。そのまま記載する。【来い 碇ゲンドウ】一緒に第三新東京市への片道切符も同封されていた。どうするかはお前の自由だ。好きにしろ。切符の日付は明後日になっていた。』………らしいです」僕の朗読に、居間でお茶を楽しんでいた面々が、志貴さんと同じようにこめかみをヒクつかせていた。秋葉さんのヒクつき方は志貴さんよりさらに凄い。こんな状況はやっぱり一年前の『アカシャの蛇』以来だ。志貴さんの高校の屋上でシエルさんやアルクさん達と一緒に今ここにいる面々と『アカシャの蛇』が対峙していた時だったなぁ。突然『アカシャの蛇』が「ふふふ、お前達の兄の欲望、心地よいぞ」とかのたまったあと、突然「秋葉ぁぁぁ~~~! お前の身体は俺のものぉぉぉ~~~!!」とか叫んだ後みたいだ。その後みんなで袋だたきにして、『アカシャの蛇』の魂を消滅させたんだっけ。多分致命傷は秋葉さんの金的だったんだろうな…。何度もヤクザキックしてたし、アソコに…。「…シンジ、お前どうする?」くだらない回想に浸っていた時、志貴さんから声をかけられた。「…とりあえず、行ってみようと思います。碇ゲンドウが何かを企んでるのは明らかだし。NERVやSEELEが絡んでくるのは当然でしょう。なんて言いましたっけ、『人類補完改革』?」「『人類保安計画』じゃなかったか?」「あぁ、まぁどっちでもいいですけど。多分それが絡んでくるんでしょう。丁度、『協会』でもちょっと話に出てましたからね。それを探ってみようかな~、なんて。何しろ全世界が巻き込まれる計画みたいですから」「……そうか」志貴さんはそう言って少し思案したあと、顔を上げた。「…俺も行こう。家族が巻き込まれるのを黙って見ていられる訳がないからな」「そうですわね、これは既に遠野家の問題にもなりました。私達も参りましょう」志貴さんと秋葉さんは、当然と言った勢いでそう僕に告げた。「えぇっ、でも、呼ばれたのは僕で…」「大丈夫ですよ、シンジさん。秋葉さま、志貴さん、とりあえず学校は転校するように手配しておきますね?」「えぇ、頼んだわよ。それと、第三新東京市での住居も手配しておいて。 もしいい所がなければ当分はホテルでもかまわないわ」「秋葉、それだと琥珀さんとシンジの料理が食べれないぞ…」「あらっ! そうですね…。それは忌々しき事態です…」「いやっ、あのっ…」「とりあえず、アルクェイド様やシエル様にもご連絡しておきますか?」「そうだね、頼むよ翡翠」「かしこまりました」「いやっ、ちょ、ま、まって…」「そういう訳だから、今からすぐ荷造りするぞ」「えっ、えぇ~~~~っ!?」僕は志貴さんに引き摺られながら、そんな叫び声を挙げてしまった。