「シンジ君、碇総司令、先日目を醒ませたわよ」「そうですかぁ、それじゃぁこれから上からの面倒は全て勝手に処理して貰えますね」僕はそう言いながら、コーヒーを飲む。「それで、碇司令、シンジ君達が来て、自分が意識を失う間の事、覚えてないようよ」「………自分に都合の悪い所は覚えてないのか。 らしいと言えばらしいですね」「そうね…。でも、お陰でこちらとしてもやりやすかったわ。 ……あの後から第四使徒戦までの事、適当にデータを改竄して見せたわ」「……向こうの反応は?」「『ふっ…、全てシナリオ通りだ』ですって」「なるほど…。まぁそれでいいんじゃないですかね? それで、遠野家の事とかは何て?」「『邪魔になるようなら排除すればいい。それまでは好きにさせておけ』 って言ってたわよ」「…本当に、自分の都合の悪い事は覚えてないんだなぁ」「えぇ…、副指令も呆れてたわよ。醜悪だな、なんて言って」「それは、赤木さんもじゃないですか?今までの口ぶりだと」「まぁ、ね…。こうして見てみると、なんであんなに拘ってたのかがわからないわ」「それは、視点が変わったからですよ。 主観的な見解と客観的な見解には大きな差が生まれますから」「そうねぇ、今は客観的な観点からしか見れないわね」「そういう事です」そう言って、お互いコーヒーを飲む。赤木さんは、口をつけてからカップを机に戻し、煙草を咥えて火をつけた。シュボ「……ふぅ~、ん? どうかした? シンジ君」「えっ? あ…、いや、なんでもないですよ」なんていうか、目の前で煙草を吸われると、無性に吸いたくなってくる。赤木さんはそれに気付いたのか、ニヤリと唇の端を吊り上げた。「……一本、吸う?」そう言って、スッと煙草の箱を差し出してくる。「いえ、別にそんな…」「ふふっ、大丈夫よ。…この間検査した時に、ニコチンが検出されたから、知ってるわよ」「なんだ…、バレてたんだ」僕はそう言って、照れ隠しに頭をポリポリと掻いた。「えぇ、まぁたまに吸う分にはとやかく言わないけれど、一日に何本も吸うのは、もう少し成長してからね」「…あい」そう言って、差し出された煙草を咥え、火をつける。「………ふぅ~」ユラユラと揺れる煙草の煙に巻かれ、今後、どう動くか、考えていた。「オシエテクレ イッタイナニヲスレバイイ」「……やめい。もう聴きたないわ、そんなん」「………長かった、な」「………一週間ぶりやね」「…………あぁ、シャバだ」とぼとぼと人通りの無い道を、少年二人が歩いている。一人は、黒の暑そうなジャージ。もう一人は、金髪で小脇に鞄を抱えたメガネの少年。「………家帰って眠るわ」「………俺も、そうする」二人はそう言うと、住宅街へと姿を消す。彼らを見送る姿は、ただ一つ。「もう来るんじゃないですよぉ~」黒装束に身を包んだ、ホウキ少女だけだった。