「…父さん、調子はどうですか?」「…初号機へ、乗ったそうだな」…人の話完璧にスルーですか、あんた。「乗ったよ…。他に、できる人がいなかったんだろ」「ふっ…、そういう事だ。 今後も乗って貰う。そのつもりでお前を呼んだのだからな」「……分かってるよ、父さん」……なぁ~んか、自分で言っててアレだけど、『父さん』て言うのが白々しいねぇ。「話は終わりだ、帰れ」「…分かったよ、またね、父さん」僕はそう言って、司令室を出た。「…あれでよかったのか? 碇」「ふっ…、どうせアレには居場所はここしかない」「…なるほど、な」「それに、初号機にはアレが必要だ」「それは、そうだが…」「所詮は子供だ、どうにでもなる」(…どうにもならんのだよ、彼はな)「冬月、零号機の起動実験は?」「…あ、あぁ、もうそろそろだ。だが…」「ふっ…、全ては順調だ、問題無い」(…私も、こうだったのかもしれんな)司令室を出て、赤木さんの執務室へ向かう途中、見知った顔に出くわした。「…やぁ、綾波。碇司令に呼ばれたのかい?」「……えぇ」「そう…。まぁ、頑張って」「…………なに?」「いや、なんでもないさ」僕はそう言うと、綾波の脇を通り過ぎる。「あぁ、そうそう」僕は脇を通り過ぎてから、後ろへ振り返る。綾波は立ち止まり、こちらを見ていた。「……コレ、渡しておくよ」そう言い、ポケットから万能君を取り出し、綾波に握らせる。「碇司令と話をして、僕達の所へ戻れなくなったら使えばいい。 これは、よく研がれているから。 ……君の力でも、自分を刺しても深く刺せるはずだ」「………私は、人形じゃない」「それは、関係無い。 …君は、まだ碇司令の側から離れていない。 彼の命令で、僕を殺せと言われたら、今の君なら殺すだろう」「………何故、そう思うの?」「…君は未だに操り人形だからさ。 碇ゲンドウに忠実な、操り人形」「………私は……人形じゃない」「そう思うなら…、それを見せてくれ」「…………こんなもの、使わないわ」綾波はそう言うと、踵を返して司令室へと向かう。…途中、一度こちらへ振り返り、握り締めている魔刀・眞を一度強く両手で握り、再び司令室へ歩き始めた。「……それでいい。君の心、少しずつだけど、見えるようになったよ」彼女に聴こえぬよう、小さく呟いた。「まぁたシンちゃんってば、キッツいわねぇ~」「自分でもそう思いますよ、かなり性格悪い事やってるなぁ~って」赤木さんの執務室で、何故か葛城さんとコーヒーブレイク。赤木さんは近々行われる零号機の起動実験準備で大忙しのようだ。「部屋でコーヒーでも飲んでいるといいわ。 …私も休憩が取れ次第、部屋へ戻るから」という訳で、コーヒーを一人で啜っている所、葛城さん乱入、そのまま談笑していた訳だ。………最も、笑える話は少ないけれど。「それで、やっぱそのまま放っておいた訳、フォロー無しで」「……フォローしたら意味ないじゃないですか」「ま、ね。そりゃそうなんだけどさ。 女の子っていうのは、デリケートなもんなのよぉ~」「それでも、あぁする以外僕は思いつかなかったし」「…レイの心に任せるというのは賛成だけどねぇ……」分かってはいるけど、そんな感じで葛城さんは言って、コーヒーを飲む。「だぁってシンちゃん、マジになると怖いし」「ん~、自分では怖がらせるつもりはないんですが…」僕がそう一人呟くと、執務室へ赤木さんが帰ってきた。「…あら、ミサト。貴女暇なの?」開口一番、とっても皮肉っぽく言った。「いやぁ~、作戦部って戦闘ないと…」「書類整理や兵装ビルの展開、その他作戦後の事後処理とか、いろいろあるわよ」……そりゃそうだ。「あ、あははは~、そ、そういえばそうだったわねぇ~。 …じゃぁシンちゃん、またねぇ~」「あい、頑張ってください」プシュー葛城さんはそう言い残し、そそくさと逃げ出した。「………荒れてますねぇ」「…まぁ、ね。 大変よ、こっちの事なんか考えてない人の相手をするのって」どっかりとソファーに座り、大きく溜息を溢した。「はぁ…、父さんですか?」「正解。…『今夜、食事へ行こう』ですって」……凄いな、それは。「……それ、どうしたんですか?」「もちろん断わったわよ。 『零号機の起動実験準備が大詰めなので、申し訳ありませんが』 って言ってね。 最も、こんな手は何度も使えないでしょうけど…」はぁ~、とまた溜息を溢し、赤木さんは煙草を咥える。「どうするんですか?今後」「…どうしようかしらねぇ。 自分の手駒だと思わせといて、かつ関係を求められないようにするには…」「………相手、作ればいいんじゃないですかね?」「それは一番早いわよね。 ……でも、そんな相手いないし」「いるじゃないですか、同性ですけど…」僕のその言葉に、ピク、と赤木さんは反応し、ギギギギッと首をこちらへ向ける。「………そう、見えるの?やっぱり」「…いやぁ、まぁ、あれだけ懐いていると、ねぇ……」「…あの子、やっぱそうなのかしら」「……どうなんでしょうねぇ」「…そうではない事を、願うしかないわね」「……心中お察しします」そうだった場合は、かなりアレがソレなもんで。赤木さん、大変だなぁ~。そんな事考えてると、赤木さんがこっち見てニヤリと笑う。「そうね…、相手を作るっていうのは、いい案かもね…」そう言うと僕を見て、再びニヤリと笑う。「…………ジョ~ダン、ですよね…」ジリ…。「あら…、言い出しっぺの癖に、逃げるの?」ジリジリ…。「……僕、子供ですよ」ジリ…。「嘘…、経験、あるでしょ?」ジリジリ…。「な……、なんで、そんな事わかるんですか」ジ…、トン。「貴方の身体検査したの、私よ? ……それに、私だって一応女だしね」ジリジリ…。「……でも、やっぱり僕子供ですから」……か、壁が…。「私はそうは思わないわよ…?」ジリジリ…。「……絶対すぐにバレるし」「隠さなければいいのよ…。 彼女なら、多分、大丈夫よ。 だって、実例がすぐ側にいるんでしょう? しかも現在進行形で」「……鍵、かけて下さいね」「ふふっ…、分かってるわよ」………志貴さん、やっぱり貴方の影響なんでしょうか…。