「綾波レイ、十四歳、マルドゥックの報告書によって選ばれた最初の被験者、ファーストチルドレン。エヴァンゲリオン試作零号機専属操縦士。過去の経歴は白紙、全て抹消済み」「で、さきの実験の事故原因はどうだったの?」「未だ不明。但し、推定では操縦者の精神的不安定が第一原因と考えられるわ」「精神的に不安定?あのレイが?」「ええ、彼女にしては信じられないくらい、乱れたの」「何があったの?」「解らないわ、…でも、推測ならできる」「…心当たりがあるの?」「…実験当日、私は司令から待機していた救護班の待機解除を指示されたわ」「それって、どういう事?」「あの時、零号機は暴走、レイの乗るエントリープラグはハッチに不安定な固定をされ、オートエジェクションにより室内を飛び回り、落下。 レイを助ける為、司令は落下地点へいち早く駆けつけ、手に火傷を負いながら救出。 …よく出来た美談だと思わない?」「…不安定に固定されたハッチと言うのは?」「整備班の話だと、司令から装置には触れるなと言われていたそうよ」「……用意されていた事故だった訳?」「あの事故のお陰で、最近までレイは司令に固執していたわ。 …碇司令にしれみれば、それだけの価値はあったんでしょ? 最も、副産物かどうかは分からないけれど、あの失敗のお陰でレイを人類初の使徒戦で出撃させない理由になった」「…シンジ君には、この事教えたほうがいいのかしら」(彼なら…、あの手の火傷と零号機の起動実験の事を聞いたらすぐわかっちゃうわよ。 細かい事情は把握していなくてもね)……あっつぃ~。本当、セミは五月蝿いし、すんごい熱いし。ムサ苦しい格好したネルフの職員がバタバタ動いてるし。汗だくだよ、あの人達。「…こんなもん、この間見たっての」「……随分と不機嫌ね、彼」「都会は熱い、っていってたわ」僕がイカの残骸を見上げていると、後ろで葛城さんとリツコさんが話をしていた。「…それで、僕を呼んだ理由ってなんですか?」「えぇ、先の戦闘で第四使徒の損害はコアのみ。 理想的なサンプルを提供してくれたお礼にご招待しただけよ」「…熱いっすよ、ここ」僕がそうぶ~たれると、葛城さんが割り込んでくる。「それで、何か分かったの?」「…こっちよ、付いて来て」リツコさんはそう言うと席を立ち、僕らをどこかへ案内した。…こんな所で大型パソコンなんか起動させて、大丈夫かよ。そう思ったけど、そこは『ねるふのぎじゅつりょく』って事で自己完結しといた。リツコさんは、恐らく調べたのであろう結果を、ディスプレイに表示させた。「…なにこれ?」「解析不能を示すコードナンバー」「…それで、他には?」601と表示されたディスプレイを横目で見て、リツコさんはまた違う画像を表示する。「…二重螺旋、ねぇ」「そ。結局ここまでしか分からなかったわ。 使徒の固有波形パターンが構成素材の違いはあっても、人間の遺伝子と酷似しているってこと、それが99.89%の一致だって事ぐらい。 …こんな事、分かってる事よ。 S2機関への接続回路や、そういったものも見当たらない。 結局、どういう構造で、どういう進化を遂げているのかもさっぱり」そう言って、リツコさんは傍らに置いてあったクーラーボックスからアイスコーヒーを取り出して飲んだ。「結局、わからない事だらけなのね」葛城さんはそう言って、パイプ椅子に座った。僕もそれを見て横にあるパイプ椅子に座り、外を眺める。すると、復帰していた碇ゲンドウが冬月さんと並んで何か見ていた。「ここがコアのあった場所…、痕跡はどうだ?」「はい、残念ながら見当たりません。 ここだけが、そっくりそのまま焼失しています」「…そうか」…ん?あの父さんが、怪我か?「…葛城さん」「ん~? あによ」「父さんの掌、怪我か何かの痕があるんですけど」「あぁ~、あれは…」「あなたがここに来る前、起動実験中に零号機が暴走したの、聞いてるでしょ?」葛城さんが言おうとした時、リツコさんが割って入った。「…まあ、一応」「その時、レイがエジェクトされたプラグに閉じ込められたのよ」「…綾波が」「えぇ、その時碇司令が助け出したのよ。 …加熱したハッチをムリヤリこじ開けてね」「…へぇ」「その時に、掌に火傷を負ったのよ」………これはこれは。「なんとも良く出来た救出劇だ。 一体救護班はどうしていたんですか?」「引き上げさせられていたわ、碇司令の指示でね」「……作為的過ぎて、笑っちゃいますね」「レイも、こっちもいい迷惑よ」「…今だから言える、ですか?」「……それ、皮肉?」とりあえず、無言で答えてみた。当然、リツコさんには睨まれたけど。あっちぃ~。マジであちぃ。なんでこんな暑いのに男子はグラウンドなんだ…。女子はプールできゃ~きゃ~言ってるってのに。……涼しそうだなぁ、羨ましい。ん、一瞬、綾波と目が合ったな。…彼女、相変わらず学校では一人なんだな。「みんなエエ乳しとんなぁ~」「おっ、センセ、なに熱心な目で見てんねん」…この間まで廃人みたいだったのに、復活早いなぁ。「綾波か、ひょっとして」「…別に、そんなんじゃないけど」「またまた、怪しいな」「「ああ、綾波の胸、綾波のふともも、綾波のふくらはぎ~」」「…暑苦しい! くっつくなお前等!」ほっぺとほっぺをくっつけるなっ!