『敵シールド第十七装甲板を突破。本部到達まであと3時間55分』『四国及び九州エリアの通電完了』『各冷却システムは試運転に入ってください』…なんていうか、でかい銃だ。これ、本当に使うのか?「こんな野戦向きじゃない兵器、本当に役に立つんですか?」「これは、上の目を誤魔化すカモフラージュ。 ま、一応ちゃんと撃って貰うけれどね」「大丈夫ですよね?」「理論上はね。けど銃身や加速器がもつかどうかは撃ってみないとわからないわ。こんな大出力で試射したこと、一度も無いから」「…まぁ、なんとかなるでしょ」「本作戦における各担当を伝達します。シンジ君、初号機で防御を担当」「はい」「レイは零号機で砲手を担当して」「はい」「は~い、それではここからはこの琥珀が説明させて頂きま~す」ヒョッコリとテントに琥珀さんと翡翠さんが入って来た。「耳と目は完全に潰しましたので、ここから先は大丈夫です」「という訳で、説明しますね~。 シンジさんはとにかく零号機の盾を担当いて頂きます。 そしてレイさん、零号機の肩あたりには志貴さんとアルクェイドさんが乗っかっちゃいますので、くれぐれも安全運転でお願いしますね~」「…了解」「そして、零号機がポジトロン・ライフルを撃ったと同時に、志貴さんがブラック・バレル・レプリカを発射。 そしてそして、同時にアルクェイドさんが空想具現化で二つの砲撃を混ぜ込んで、威力を増幅、陽電子の特徴である地球の磁場、自転、重力や敵の砲撃の影響を全く受けない空間の道を作って敵目掛けてどか~ん、です」「…琥珀さん、アルクェイドさんのリミットは?」「そうですね、一回だったら大丈夫のようですが、二回目になると流石にアレっぽいです」「…アレになって直接攻撃して貰った方が早いかもしれませんね」「それはそうですが、碇司令を誤魔化せないです」「…なるほど。 それで、当の碇司令は?」「はい、司令室にいらっしゃいますよ」なるほど、と僕は頷いて、もう一つ、質問をする。「ポジトロン・ライフルの電力は?」「それは、日本中からチビチビと徴収、それとメカ翡翠のバッテリーに加え、シエルさんが今頑張って蓄電してます」「…蓄電って?」「……自転車、よ」「…………じてんしゃぁ~!?」「あのスタミナの塊のシエル様ですから、後三時間、一生懸命漕いで頂きます」…何気に失礼だね、翡翠さん。「それにより、まぁ日本中から電力を掻き集めるよりは出力は低いですが、それでも相当の威力は確保されています」「…頼みはブラック・バレル、か」「シンジ君の使うSSTOの盾で、計算上敵の加粒子砲を17秒防御できるわ」「MAGIでの計算ではこの作戦での成功率、出なかったわ。 …それだけ、あの銃と外的要因の力が不安定なのよ。 そういう訳だから、安全とも、危険とも言い切れないわ」「…結局やらなきゃ生き残れないんだから、やるしかない、か」「…もう時間ね。 ……二人とも、お願いね」さてさて、頑張りますか。―――やらなきゃ殺られるだけだからな。…こんな所で着替えるのかい、屋外だぞおい。薄いカーテンの向こうでは、綾波が着替えている。とにかく、明かりの所為で影がカーテンに映って、丸分かりだ。…昔の古い映画で、こんなシーンの後、そのシルエットの人物は良く死んでたなぁ。「……うわ、不謹慎すぎ、僕」とりあえず自己嫌悪。「………何?」「あぁ~、いや、何でもない何でもない」「………? わかったわ」大丈夫、綾波は死なない。……僕が、護るんだからな。虫の鳴き声と、山、そして僕と綾波、零号機の肩の上には志貴さんとアルクェイドさんがいる『はず』。…二人が何やっちゃってるかは知らないけど、さ。と、とにかく、夜風が冷たくて気持ち良い。……き、気持ち良いねぇ~、夜風。『……ぁ……こ…えが……』『………だ……うぶ、聴こえな………』…聴こえてるっつぅ~の、バカァ~~~~~!!「あぁ~! あ、あ、綾波は、何故これに乗るの?」とりあえず居た堪れなくなり、僕は綾波に声をかける。「……絆、だったから」「…今は違うの?」「……私は、エヴァに乗る事が出来るから」「だから…、乗るのかい?」「……ええ」「綾波は…、戦わなくても、いいんじゃないかな?」「………でも、私は戦えるわ」綾波は、赤い目を僕に向ける。「……戦って、みんなを、碇君を守れるもの。 それが…、私の、魂の望みだから」「…みんなを戦って、守る事が?」「……そうよ。 …何もしないのは、死んでる事と同じ。 それは、碇君が教えてくれたわ」「……そんな危険な事、教えたつもりないんだけどなぁ」「………時間よ、行きましょう」綾波はそう言って立ち上がり、エントリープラグへと向かう。「綾波、…また、後でな」「………えぇ、また後で」僕は綾波にそう挨拶して、プラグに向かう。「……碇、君」「…ん? なに?」僕が綾波の声に振り返ると、綾波がなんとなく困った目をしていた。「………どうすれば、いいの?」そう言って、零号機の肩の上を指差す。「………起動させれば、いいと思うよ」僕はそれだけ言って、エントリープラグに乗り込んだ。『只今より、0時0分0秒をお伝えします』移動指揮車の中でカウントダウンが終わり0時丁度になる。『作戦スタートです』『…シンジ、失敗は許さないわよ』「……分かってますよ、秋葉さん」『第一次接続開始』『第1から第803管区まで接続開始』機械が重厚な作動音を上げ、稼動した。『全冷却システム、出力最大へ!』『陽電子流入、順調』『第二次接続』『全加速器運転開始!』『強制収束機作動!』『全電力二子山増設変電所へ』『第三次接続問題なし』『最終安全装置解除!』『撃鉄起こせ!』そう言われ、零号機が動く。それにしても、あの八面体、パーフェクトだな。あそこまで見事に八面体だと、とても生物だとは思えない。宇宙人の侵略兵器か何かじゃないのか?『第七次最終接続』『全エネルギーポジトロンライフルへ』『発射まであと10秒』『9.8.7.6』『目標に高エネルギー反応!! 前回より高くなっています!!』『何ですって!?』チッ、事態が動いた。『3.2.1』『発射!!』ドンッ僕の脇を、黄色と蒼白い光が混ざった一本の線が飛び出す。僕の目の前には、赤い光が迫ってきた。「耐えろぉぉぉぉぉぉ!!!」バチバチバチバチバチバチッ『敵シールドジオフロントに侵入!!』目の前に掲げた盾が、みるみる融解していく。張ってあったA・T・フィールドが、あっという間に貫通された。多分、盾があるからと、心に余裕があったからだろう、迂闊すぎた。その余熱で、エヴァの装甲も少しずつ融解する。「まだかぁぁぁぁ!!!」そう叫んだ途端、プッツリと目の前の光はかき消えた。『…目標、完全に沈黙しました』その声と共に、目の前で沈んでいく八面体が見えた。「……助かった、かな」…どう考えても、今の砲撃は僕を狙って来た。僕はセッティングされた場所から、一歩も動いていない。「………学習能力ってやつか…、厄介だな」攻撃してくる奴より、自分に攻撃手段を持たない奴を狙ったのか。姑息だな…、なんて、そんな余裕ないさね。「生き残るので精一杯だもんな、俺達も…、お前達も」そうだ…、これは戦争。種の保存を賭けた、生存競争の上に成り立つ、魂のぶつかり合いだ。「熱いのは僕には似合わないんだけどな…」そんな事考えてると、ブービー音が響く。「どわっ! なんだっ!」ガクン、と自分の座っている椅子が動く。…動いてるのは椅子だけじゃない。『…君! 碇君っ!』「…あ、綾波? どうかした?」ガクン、という音と共に、僕は何となく周りの空間が横倒しになった気がした。「…おいおい、なんだなんだ?」とりあえず、エントリープラグを出てみる。ブシューそんな音と共に、プラグのハッチが開いた。そこから出てみると。目の前には零号機が。「……なにしてんの?」「な~んかね、この子、急いでたみたいだから降ろしてやったのよ」その前には、襟首掴まれた志貴さんと綾波をぶら下げるアルクェイドさんがいた。「……碇、君」「よぅ、シンジ、大丈夫か?」地面に降ろされた綾波がこちらへ向かってくる。「えぇ、砲撃も途中で消えましたから、だいじょ」ドンッ……綾波が、そのまま僕に衝突してきた。「あ~、シンジ泣かせた。 女は泣かせちゃいけないって、TVでこの間やってたよ」「…僕の所為じゃないですよ」「とりあえず、どうにかするべきだろう」志貴さんのニヤニヤした笑顔の先には、僕の胸に顔を埋めて泣いてる綾波がいる。「……っぐ、碇、君。 ……良かっ、た」「…あぁ、心配させちゃったのか、ごめんごめん」「お前、軽すぎるぞ、それ」「志貴さんのほうが軽いでしょうが」「……お、俺は別にだな…」「否定、するんですか?」「……………ぐぅ」泣いてる綾波をあやしながら、軽い掛け合いをして、僕達はみんなの待つテントへと戻っていった。