「…明日、ですか?」「そうよ。 明日、旧東京で開かれる日本重化学工業共同体という所のパーティーに出席する事になっているの。 招待状はあります。 …もちろん拒否は認めません」秋葉さんはそう言うと、招待状を僕に手渡した。「…でも、なんでこんなもの送られてくるんだ?」「日本重化学工業共同体、久我峰が出資していたそうですよ。 最も、明日発表されるモノの事を知ってから、出資を止めたそうですが。 …大方今回の招待は、モノを見せて再び出資して貰おうという魂胆なのでしょう」「で、そのモノってなんだ?」「聞いてる? 翡翠」「いえ…、行ってからのお楽しみに、と言われまして」「…斗波さんらしいと言えば、らしいね」「久我峰さんは来ないんですか?」「久我峰さまは当日、お忙しいようですよ」「大方、どこぞの高校で行われる学園祭などで忙しいんでしょう?」「………有り得るだけに、怖いな」「…………えぇ」志貴さんと二人で、あまりにもリアルすぎる想像に溜息を吐くしかなかった。あの変態っぷりは、感心してしまう程だし。翌朝、アルクさん、シエルさんは学校へ先生のお仕事。綾波は学校、レンはメカ翡翠ちゃんとお留守番…琥珀さんも仕事なんだから学校行かないでいいのだろうか。そんな訳で、遠野一家+僕という構成で旧東京へ行く事になった。玄関を出て、全員でエレベータを待っていると、エレベータが下ってくる。シュー「あら、おはようみんな」「おはようございます、赤木様、葛城様」「みなさんお揃いでどしたの?」エレベータに乗り込みながら、降りてきたエレベータに乗っていた赤木さんと葛城さんに挨拶をする。二人とも、今日はNERV支給の制服だ。「えぇ、これから旧東京の三鷹で行われるパーティーに出席をする事になりまして」「…偶然、私達もなのよね」「………マジですか」「えぇ、申し訳ないけど…」「……久我峰、今度会ったら御仕置きね」下がるエレベータの中で、秋葉さんはなにやら物騒な事を考えていた。NERV専用移送機と化したVTOL重戦闘機で、7人で旧東京の上空を飛ぶ。目的地が同じだから、という事で赤木さん達が同乗を許可してくれたのだ。「ここがかつて花の都と呼ばれていた大都会とはね」「ついたわよ」「何もこんな所でやらなくてもいいのに」「…こんな所だからこそ、なんじゃないですか?」「…で、その計画戦自は絡んでるの?」「戦略自衛隊?いえ、介入は認められずよ」「どうりで好きにやっているわけね」「全く、こんな所で行うパーティーなんてたかが知れてますわね」「遠野グループは、今回の計画に出資していたの?」「遠野グループは出資しておりません。 過去、久我峰家が出資していた事があるようで、今回の招待は再出資の要請も兼ねたものかと思われます」「お金を持っている所にはへつらう、俗物の考えそうな事ですわ」「そう考えられるのは、それだけの力を持っている場所に居るからよ」「当然、遠野家はそれだけの力を持っていますもの」「……凄いわね、秋葉さん」「遠野家当主として必要な心構えですわ」……秋葉さんをそんな輝いた目で見つめるなよ、葛城さん。『本日はご多忙の所、我が日本重化学工業共同体の実演会にお越し頂き、まことにありがとうございます』「…なんですか? アレは」「………農協さんは、随分昔から存在しているハズですがねぇ」司会っぽい人が話している舞台の上に下がってる『JA完成披露記念会』と書かれた垂れ幕を指差して聞く。「あれは農協という意味ではなくて、Jet Alone…日本重化学工業共同体が開発した、自称、巨大人型自走兵器の事を指しているのよ」コーヒーを飲みながら、赤木さんが説明してくれた。「ところで…、本当にいいんですか? 割り当てられた席に居なくて」「NERVの方が良いと言っているんですから、問題はありませんよね?」「えぇ…、最も、ミサトはもうあの席には戻る気無さそうよ」そう言って、チラリと横を見る。その視線の先には、ブランデーを飲む秋葉さんと、瓶ビールをラッパ飲みする葛城さんに挟まれてチビチビ茶色い何かを飲んでいる志貴さんがいた。「…秋葉さんまで呑み出す事ないのに」「飲まなければこんなパーティーやってられない、とおっしゃってました」「………翡翠さん、止めようよ」「私には、あのお二人を止める事は無理です」……あっさりと拒否。「まぁよろしいじゃないですか~。 折角のパーティーなんですから~」「そうね…、折角のパーティーで割り当てられたあの席にはミサトは居られないでしょ」リツコさんはそう言って、その席を見る。そこには、『ネルフ御一行様』と書かれた簡素な紙で書かれたポール、そして嫌がらせのようにただでかいだけのテーブル。そのテーブルの中心、男が手を伸ばしてやっと掴めるかどうかという位置に嫌がらせのように置いてあるビール瓶が三本。そして、他のテーブルと違い、料理が全く運ばれていない。「………なんか、小学生のいじめみたいですね」余りにも僕達、『遠野グループ御一行様』とは扱いが違う。「その為に招待されたんですか…、大変ですねぇ~NERVも」「…NERVは、好き放題やっている超法規組織、て事になっているもの。 少なくとも、否定はできないけれどね」いつの間にか、運ばれてきた剥き海老の揚げ物を食べて、リツコさんが答える。『皆様には後ほど、管制室の方にて、試運転をごらん頂きますが、ご質問のある方はこの場にてどうぞ』…あぁ、試運転するのか。質問…、どうするんだろう?「…赤木さん? ご質問なさらないのですか?」琥珀さんが海老を食べてるリツコさんに訊いた。「…そうね、その為に呼ばれたんでしょうね、私達は」海老を食べる手を止め、リツコさんはチラリと舞台の上に立つ男性を見る。その男性は、ネルフ御一行様の居るハズの席をチラチラ見ていた。「しょうがないわね…、はい」リツコさんが手を挙げた。正確には、手を挙げてあげた、って感じだな。『これはご高名な赤木リツコ博士。 お越し頂き光栄の至りです、ですが…』「質問を、よろしいでしょうか?」向こうが何か言おうとする所で、リツコさんが言葉を遮る。『…ええ、ご遠慮なくどうぞ』「先程のご説明ですと、内燃機関を内蔵とありますが」『ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保障されております』…150日って、何するんだろう?「しかし格闘戦を前提とした陸戦兵器に、リアクターを内蔵する事は安全性の点から見てもリスクが大きすぎると思われますが」…そりゃそうだ。しかし、リクスの大きさだったら僕が初めてエヴァに乗った時のほうがリクスは大きかったよなぁ…、動くかどうかも判らなかったらしいし。『五分も動かない決戦兵器より役に立つと思いますけど』まぁ、そりゃそうだ。でも、一応初号機は初戦でS2機関であろう使徒の核を吸収してるから、半永久的に稼動するんだよね、知ってる人はほとんど居ないけど。う~ん…、五分がダメなのはわかるけど、150日は無駄だろう、やっぱ。「遠隔操縦では緊急対処に問題が残ります」『パイロットに負担をかけ、精神汚染をかけるよりは、より人道的だと思います』精神汚染はアレとして、パイロットに負担がかかるって言うのは普通の戦闘機とかに乗ってる人達と変わらないと思うんだが…。「うぅ~ん、やっぱパーティーにはビールよねぇ~」「アルコールの置かれていないパーティーなど、味気なくて楽しくありませんわ」……声でかいよ、葛城さん、秋葉さん。「人的制御の問題もあります」『制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない兵器よりは安全だと思いますがね?制御できない兵器などまったくのナンセンスです。ヒステリーを起こした女性と同じですよ』…あぁ、そういや初戦の事は暴走って事にしてあるんだっけ。初めてなのにあんな戦い方したからだって言ってたけど。ていうか、言い方がなんか嫌な感じだな。まるでリツコさんがヒステリー起こしてるみたいな言い方だ。………端から見たら、そうかも知れない。『本当、手に負えません』「その為のパイロットとテクノロジーです」『まさか、科学と人の心があの化け物を押さえるとでも?本気ですか?』「なんと仰られようと、ネルフの主力兵器以外あの敵生体は倒せません」『ATフィールドですか?それも今では時間の問題に過ぎません。 いつまでもネルフの時代ではありませんよ』そう言って、彼が笑みを浮かべると同時に、会場から拍手が挙がる。…NERV、嫌われてるねぇ~。「は~い、質問させてくださ~い」ここで、拍手を遮るように琥珀さんが手を挙げる。『はい、それでは…、申し訳ございませんが、どなたですかな?』赤木さんと同じ机に居るからか、少し小馬鹿にした態度で彼は訊いてくる。「はい、遠野グループ技術部門、機械開発・研究室専任顧問、及び遠野グループ総帥、遠野家当主遠野秋葉様秘書、遠野家使用人巫浄琥珀です」遠野家の一言で、場の空気があからさまに変わった。『こ…、これはこれは、わざわざこのような場へ起こし頂き、真に有難う御座います』「ご質問、よろしいでしょうか?」『はい、出来うる限り、答えさせて頂きます』そう相手が言った途端、『キュピーン』と琥珀さんの目が光った。「はい、まず稼働時間についてですが、150日間という長時間での活動、これは一体なにをする為のものでしょうか?」『それは、敵生体を殲滅する為、必要な時間を割り出し…』「敵生体を一体倒すのに、150日間も連続稼動しなければいけないのですか?」『…そのような事はありませんが、しかし』「それでは、何故150日間なのでしょうか? 『長ければ長いほうがいい』などという理由ではないとは思いますが」『…も、もちろん、そのような事は』「それでは、お答え頂けますか?」『…………』…何にも考えずに稼働時間設定してたのか?そんな訳ないよな…。何か大っぴらに出来ない理由が…、NERV進攻を想定しての活動時間か?………なんとなぁ~く、有り得るっぽい。兵装ビルの破壊、ジオフロント進入、各エヴァとの対決、全て終わった後の復興作業。そんなのを考えての150日間かな?まぁ予測は予測でしかないけれどね。「…どうも明確なお答えが頂けないので、次の質問とさせて頂きます」琥珀さん、少し呆れた感じで次の質問へ。「先ほど赤木博士がおっしゃっていた、格闘戦を前提とした兵器へのリアクター内臓に関する問題、あのご意見には私も賛成です。 何らかの処置はされているとは思いますが、リアクターの暴走、制御不能、反応炉の融解などが起こった場合、どのような対処をするのでしょうか?」『そ、そのような事は決して…』「有り得ない、とは言い切れません。 敵生体がどのような攻撃方法を用いるのかは全く不明です。 その状況で、有り得ない、などと断言できうる事柄は一つもありませんよ」『…そ、そのような場合、緊急停止コードが』「暴走状態の精密機械が、そのようなコードを受け付けなかったら?」『そ、その場合は直接乗り込み…』「反応炉の中に人を飛び込ませ、停止コードを入力させるんですか? それこそ、非人道的なのではないでしょうか?」………琥珀さん、きっついなぁ。「そして、遠隔操作による作業、パイロットを必要としない点に置いては賛同させて頂きますが、作業の正確性、緊急対処による問題、人的制御による問題など、様々な問題点が挙がると思いますが、そちらについては?」『……そ、そのような問題点など、NERVのパイロットに比べたら…』…あぁ~、なんかぶっちゃけちゃったよ。まぁ確かに、パイロットが子供っていうのは、何かと問題があるんだろうねぇ。「NERVのパイロットの問題点のほうが、それらの問題よりも甚大である、と?」『…そ、そう思っておりますが』「では…、そのパイロットにお話を伺ってみましょうか?」琥珀さんはそう言って、僕のほうへ向けてニヤリと笑みを浮かべた。そして、僕の腕を掴んでムリヤリ立たせてマイクを握らせる。「……ども、パイロットの碇シンジっす」とりあえず、自己紹介………。