「あは~、偶然というか、何と言うか、ですね~」琥珀さんはそう言うと、カートレインで運搬される車の中で優雅に紅茶を楽しんでいた。「あの~、それで、なんですけど…」葛城さんがそう言うと、葛城さんの横の座席に座っている秋葉さんがギロッと睨んだ(ように見えた)。「ヒッ」一瞬、葛城さんが悲鳴を上げる。まぁ、秋葉さんの不機嫌な状況が怖いのは当然の事だろう…。(…30分前)「し~きぃ~!!」「ア、アルク!? いきなり飛び込んでくるな!?」ワンボックスカーのドアを開けた途端、先行してNERV本部前で待ち構えていたアルクェイドさんが飛び込んできた。「こぉのあーぱーっ!? 遠野くんとじゃれてないでそこをどきなさいっ!?」「ぶぅ~、わ~かったわよ。ほらほら、そこの女邪魔。私達座るからとっとと前の座席に動きなさい」「えっ!? わ、私ぃ!?」「あんた以外誰いんのよ。いいからちゃっちゃとどきなさいって」見ず知らずの女性を女呼ばわりしてから、その女性をヒョイと持ち上げて前の座席に座らせると、アルクさんは今度は志貴さんを持ち上げて自分共々最後部座席に座らせた。「この人外女…、兄さんは貴女のモノじゃないんですよっ!?」「むぅ~、相変わらず妹うるさ~い」「秋葉さん、いいから私を車に入れてくれませんか?」「カレー教は黙っててくださいっ!?」「ちょ、ちょっと三人とも…」「カレー教とはなんですかっ!? カレーをバカにするんじゃありませんっ!?」「でか尻エルうるさ~い」「いいからそこのあーぱーは早く兄さんから離れなさいっ!?」「誰がでか尻なんですか誰がっ!?」「志貴さま、お紅茶です」「あ…、あぁ、ありがとう翡翠」「ちょ、翡翠! 貴女いつの間に兄さんの隣を確保しているんですかっ!?」「むぅ、翡翠は相変わらず気配を消すのが上手いにゃ~」「翡翠さんっ!? その席は私が狙っていた場所ですよっ!?」「どうぞ、志貴さま」「あ、あぁ……」という感じの押し問答を15分ぐらいやっていて、結局座席は秋葉さん・葛城さん・シエルさん。最後部座席はアルクさん・志貴さん・翡翠さんで決まったんだよね」「ふぇ、シンジさん独り言ですか?」その争いの中、ずっと我関せずだった琥珀さんが不思議そうな顔で僕を見る。「いやぁ、さっきの争いがね…。15分間も車の中で押し問答して、よく壊れなかったなぁ、と思ったので」「そうですねぇ。まぁ遠野家技術部門の力作ですから、アルクさんの攻撃の一、二発は耐えられるようになってますよ」…ダイヤモンドより硬いんですか、この車のボディは。「それで、葛城さん。どうかしたんですか?」僕はいまだに秋葉さんに睨まれてビクビクしていた葛城さんに問い掛けた。「あ、シンジ君…。あの、貴方とこの人達って、どういう関係なのかな~って、ね。あはは…」葛城さんの問いかけに、僕は少し困ってしまった。多分NERVが認識している『碇シンジ』という人物は、燈子さんが用意した木偶人形の事なんだろう。事実、木偶人形宛に手紙とかは全部届いていた訳だし。話によるとおじさんの家の近辺には黒服の男たち――恐らくNERVの諜報部――がよく見かけられていたようだ。僕がそんな思案をしていると、横にいる琥珀さんがニンマリと子悪魔の微笑みを浮かべた。「…葛城さん、私はですね~、シンジさんとは『男と女』な訳なんですよ~」琥珀さんはその微笑で、ポロッと核爆弾を投下した。葛城さんは一瞬その言葉の意味を理解しかねたが、次第にその顔は大きく驚愕を表していった。「えぇぇぇ~~~~~っ!!!」「あは~、そんなに驚かれると照れちゃいますねぇ~」「いやっ、ちょ、琥珀さんっ!?」僕が一人狼狽していると、今度は琥珀さんが上目遣いで睨んできた。「…シンジさん、あの初めての夜の事を無かった事にするんですか~」「…初めての夜って、僕が突然襲われた日の事ですか。確かに女性に襲われたのが初体験なんて情けなくて無かった事にしたいですよね」「……てへっ☆」琥珀さんはそう言うと、コツンと自分のこめかみを叩いて猫かぶりモードに突入した。残された葛城さんは、唖然とした表情で僕達を眺めるだけだった。