「あ~、そういえば先ほど、ジオフロントがありましたね~」後ろを歩いているシエルさんが、ふとそんな言葉を呟いた。「まぁ、それぐらいの場所なんてどこにでもあるし、めずらしくも何ともないわね」嬉々としてシエルさんの言葉に反応した葛城さんが、アルクさんの一言でしょぼ~んと落ち込んでしまった。とある会議室。「……そうか、わかった」カチャ。顎に髯を蓄え、暗がりの中サングラスをかけている中年男性が、電話を置いた。「…碇、どうした」「…サードチルドレンが到着した」「…そうか」「では、後をお願いします」顎髯の男は、そう言うと暗い会議室から出て行った。「……ふっ、三年ぶりの親子の対面か」三年ぶりなのは、父親だけだという事実をまだ知らない。「おっかしいな~。確かこの道のはずなんだけど…」「…葛城さん、先ほどもこちらは通りましたが?」秋葉さんの物言いに、葛城さんはビクッ、と身体を震わせる。「あ、あはは…。シ、システムはこんな時の為にあるんですよねっ!?」なぜか秋葉さんに敬語で語りながら、葛城さんは傍らにある非常用と思われる内線の受話器を取り上げた。近くにあったエレベータで葛城さんが行きたがっている地下まで下り、目的の階に付くと、扉の前には不思議な人がいた。金髪、黒眉毛、水着の上に白衣。「……随分と変わったご趣味の方ですね」怖いもの知らずの琥珀さんが決して小さくない声で喋った。金髪黒眉毛のお姉さんは頬をヒクつかせてこちらを見ている。「…ミサト、そちらの子達は?」「あはは、実は私、この子達に助けて貰っちゃって」葛城さんが気まずそうに話をしていると、秋葉さんが一歩前に出た。「はぁ、葛城さん共々、こちらの方は礼儀というものを知らない無礼者の集団なんですね、NERVという所は。 人に物を尋ねる時は、まずご自分の素性を明かしてからというのが当然ではありませんか?」秋葉さんの言葉に、黒眉毛の女性は葛城さんを見るが、葛城さんは『逆らうな』という鬼気迫る視線を投げかけていた。「…私は、NERV技術部の技術部長、赤木リツコよ」「私は遠野秋葉と申します」赤木さんの自己紹介に、秋葉さんは丁寧なお辞儀で返した。「…それで、そっちの子がサードチルドレンね?」「そう、マルドゥックの報告書によるサードチルドレン」赤木さんは秋葉さんから視線を外して、僕を確めるような視線を向けてきた。「…マルドゥークですか…。趣味悪い機関の名前ですね」「終末と再生、秩序と混沌を司る闘争の神の名を持つ機関名か。 悪趣味も悪趣味、正常な人間だったらそんな名前つけないわね」二人の会話から出てきた名前を、シエルさんとアルクさんが涼しい顔で批判した。葛城さんはそれに驚き、赤木さんはそれに苦い顔をしていた。……赤木さん、要注意人物一号に決定。「…貴方が碇シンジ君ね?」先ほどの批判など何処吹く風、と言いたいのであろう赤木さんが、僕に向かって訊いてきた。「サードチルドレンだかなんだか知りませんが、一応僕が今の所碇シンジです」僕の言葉に、赤木さんは『何言ってるの?』という表情を浮かべる。が、それも一瞬の事、すぐに現実問題と向き合うようだ。「…それで、ここから先は一般人は立ち入り禁止なので、貴女達は他の者に控え室まで送らせるわ」赤木さんはそう言うと、僕に向き直る。が、琥珀さんのほうが速かった。「あら~、そうなんですか。それでは葛城さん、本部の案内、ありがとう御座いました。 さ、いきましょうかシンジさん」「はい、それでは葛城さん。またお会いできましたら」僕たちはそう言って、エレベータまで戻ろうとする。だが、それを引き止める声が後ろから挙がった。「ちょ、ちょっと待ってシンジ君っ!? 貴方は私達と一緒に…」「あら? 一般人は立ち入り禁止なのでは?」葛城さんの言葉に、秋葉さんが正論で返す。ざっつ・葛城キラー。