「…シンジ君は、お父さんからNERVのIDカードを貰っているでしょう? だからシンジ君はNERVの関係者なのよ。シンジ君、IDカードを出して」赤木さんの言葉に、僕は平然と答えた。「そんなもの貰ってませんよ?」二人の顔は、それはそれは大変な事に…。『総員第一種戦闘配置、繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地迎激戦用意』「ですって」「これは一大事ね」「で、初号機はどうなの?」「B型装備のまま、現在冷却中」「それホントに動くの?まだ一度も動いた事ないんでしょ?」「起動確率は0,000000001%、オーナインシステムとはよくいったものだわ」「それって動かないってこと?」「あら、失礼ね。零ではなくってよ」「数字の上ではね、ま、どのみち動きませんでしたではもうすまされないわ」僕達を除け者にした会話がようやく終わった。結局あの後、僕が来ないと困る、という話になり、じゃぁ他のみんなも、という話になり、計10人で水の張っている地下ドームをゴムボートで渡る事になった。「…なぁんか、怪しい会話してますねぇ」僕がそう言うと、琥珀さんがニヤリを笑みを浮かべる。「なんとな~く思わせぶりな会話をして、そちらの内容や今自分の置かれている状況などに疑惑や興味を引かせようと、そういった魂胆なんですよ。 でなければ、わざわざ私達に聴こえるようにあんな『いかにも』な会話はしません」琥珀さんの説明に、会話をしていた二人はぐぅの音も出なかった。さすがは遠野家影の黒幕、人外相手に数々の陰謀を展開してきただけの事はある。「…シンジさん、なんとな~く変な事考えてません」「いえ、ぜんっぜん」…こういう感の鋭い所も、流石です。ちなみに志貴さん達は、アルクさん、シエルさん、秋葉さん、翡翠さんがそれぞれ後ろで陰謀を展開している模様。途中、シエルさんが水に落ちるというアクシデントがあったものの、無事這い上がってきたようだ。志貴さんはただただ、哀愁漂う乾いた笑みを浮かべている。「…志貴さん、背中が煤けてますねぇ~」琥珀さん、その言い方はあんまりです。僕たちの乗るボムボートは、どこかへ向かっているらしい。その目的地らしい所に近づくにつれ、僕たちは次第に静かに、周囲を警戒するようなった。(…志貴さん、この気配って)(あぁ…、さっき外で視た怪獣と、似たような気配だ)(あぁ、あの首がない緑のやつ? 確かに似てるわね)(えぇ、ですがここ、二つ感じますよ)(…もしかしたら、似たようなものがあるのかもしれませんわね)(あぁ…、こんな所で変なのが出てきたら困るからな、警戒しとこう)(でもさっきの、そんな強そうな気配しなかったけど?)(念には念を、だ。判ったなアルクェイド)(はぁ~い)僕たちが小声でそんな会話をしていると、ゴムボートが停止した。僕らはゴムボートを降り、どこかの部屋に入った。その部屋の中心に、先ほどから感じる気配の元がある。僕らは警戒しながら真っ暗な部屋に入り、その気配の元と対面した。(…顔、ですね)(あぁ、顔だな)(顔だね~)(顔ですか…)(顔ね…)(顔でしょう)(顔ですね~)暗闇も、僕達には全くの役立たずだったようだ。僕達が小声で話をしていると、パッと天井のライトがついた。「……演出?」僕の一言に、赤木さんの黒眉毛が大きくヒクついた。「人の造り出した究極の汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン、その初号機、建造は極秘裏に行われた、我々人類最後の切り札よ」なんだか大層な説明をしてくれる赤木さん。でも、これって……。「…紫なんて、趣味悪いですね。赤木さんのカラーリングですか?」琥珀さんの痛烈な言葉に、赤木さん、更に眉をヒクつかせる。多分、赤木さんは「これが…、父さんの仕事ですか?」という僕の一言が欲しかったんだろう。『…そうだ』突然、頭上から低い声が響いた。上を見上げると、顎髯、赤いサングラス、黒ずくめのオッサンが僕達を見下ろしていた。「…なるほど、やはり赤木さんのカラーリングなんですね」僕達は、琥珀さんの一言に納得して大きく頷いた。