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No.37700の一覧
[0] 【ネタ】魔王になったケイブリス?(鬼畜王ランス 憑依) R-15[詰んでる](2013/06/10 04:54)
[1] 1話[詰んでる](2013/06/02 05:09)
[2] 2話[詰んでる](2013/06/20 12:56)
[3] 3話[詰んでる](2013/06/10 04:53)
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[37700] 1話
Name: 詰んでる◆9a18c428 ID:f547f519 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/02 05:09
 目が覚めたらケイブリスだった。
 文章にすればたったこれだけの事だが、この事実を呑み込むのに一体どれほどの咀嚼を必要としただろうか。

「うーむ、困った」

 クッソでかい玉座にこれまたクッソでかい身体を預け、麗しくも下劣で冒涜的な気品に満ちた声色で一人ごちる。
 今のケイブリスもとい俺は人類を恐れさせる魔人という存在をも畏怖させる魔王である。そう、あの掛け値なし、向かうところ敵なしの魔王である。
 一度過ぎ去った都市は塵すら残らず消失し、生物の悉くを鏖殺する破壊と滅亡の権化。
 男を殺し、女は犯す。大人を、子供を、老人を、家畜を―――あらゆるモノ皆全て魔王の下に平伏し、玩具の如く弄ばれて殺される。
 ケイブリスはそれを容認する。いやむしろ、それをこそ彼は望んでいた。力を渇望し、手に入れて。それを以てして己の最強にして無敵の強さを全ての存在に知らしめる。
 しかし、とどのつまりはたった一つの純粋な願いでしかない。

 カミーラを振り向かせる。彼女に自分を愛してほしい。自分だけを見て欲しい。

 それは少年が抱くような、初心な恋心。しかし、その恋は決して実らないと俺は知ってる。
 なぜか――答えは単純にして明快。誰の目にも明らかな、たった一つのシンプルな答え。

「不細工が夢みてんじゃねーよ」

 ただしイケメンに限る。
 たとえ世界を跨ごうとも、決して変わらない不変の理である。

 この世界の主人公であるランスは、確かにどうしようもないくらい鬼畜で変態で下品で女ったらし――言うまでもなく、外道に片足を突っ込んでるような男だ。
 だが、そんな彼も黙っていればイケメンなのだ。しかも強い。そして稀に見せる優しさが、彼を好く女子の心を鷲掴みにする。
 それに対してケイブリスはどうだろう。強さに関して言えば、現状においてランスなど歯牙にも欠けぬ程に強いだろう。優しさもカミーラに関して言え仏陀も憐憫を覚えるレベルである。ただ、カミーラ以外に対する性格はランスもどん引きするレベルで冷酷残忍極まりない。
 次にルックスだが、これはもう酷い。魔人時代でも相当キツかったのに、今はそのキツイとかキモイを通り越しておぞましいの域に入っている。
 部分的に見れば、カミーラも「ほう……」と感心するだけの気品に満ちているところもある。しかし、そんな感心は全体像を視界に収めた瞬間に不快感へと変わる。

 さっきからケイブリスの悪口ばかり言っているような気もするが、今となってはそれが自虐にしかならないから泣きたくなる。
 しかも彼、もとい俺は同類である魔人たちから異常なまでに嫌われている。いや、その嫌悪感は分からないでもない。けれども、唯一友好的なのがメディウサって、あまりにもひどすぎるでしょう……
 ケイブリスを中心としたケイブリス派。しかしその実態は人類との共存を提唱するホーネットに反感を覚えた魔人たちによる反抗勢力の寄せ集めでしかない。
 一応、武力で勝る俺に従ってくれているみたいだが、腹の中ではきっと一物二物抱えている奴も多数いるだろう。レイ(既に死亡しているようだが)などはかつてのケイブリスが脅迫して連れてきたようだし。

 こうして羅列すれば明らかにケイブリス派が不利で、明確な目標と理念があるホーネット派が有利なようにも見える。だが、実情はむしろ逆。
 ホーネットの幸が薄いのか見る目が無いのか統率力がないのかどうかは知らんが、諸々の事情でホーネット派は戦力が大きく削がれた。今となってはいくら高く見積もっても全盛期の半分程度の力しかないだろう。
 そして、何よりもこれが一番大きい。

 俺/ケイブリスは、魔王になった。
 恐らく/確実に来水美樹を殺して、魔王になってしまった。

「ふひっ」

 ケイブリスらしからぬ卑屈な嗤笑が堪らず漏れる。
 歓喜からくるものでは断じてない。むしろ八方塞がりの状況から来る恐怖感を抑えるための、自己防衛本能に近かった。

「え、なに。どうすんの、どうすんのよ。俺、魔王だよ。ただのパンピーだった俺が魔王とか――」

 恐怖に屈服しそうになる理性に活を入れ、今一度冷静になって考える。これまでの事、これからの事を。

 俺はかつて――今となっては前世と言った方が良いのだろうか――鬼畜王ランスというゲームをプレイした。
 そして、今の俺はそのゲームに出てくる魔王ケイブリスの如き異形をしている。
 夢か幻と否定したいのは山々だが、この全身に滾る圧倒的なまでの暴力が否応なしに非常な現実を突き付け、未だかつて感じたことのない充足感が脳髄を快楽に蕩かせている。
 果たしてこれは現実で、ならば俺が今すべき事は何か。

「決まってる――」

 既に人格は俺になってしまったが、力は元よりケイブリスの記憶も引き継がれてしまっている。
 他人の記憶を知るという行為は極めて客観的であり、まるで映画を見ているような気分にさせる。ケイブリスの記憶はどぎついエログロスプラッター満載で、偶に入るアメ玉のように甘ったるいカミーラとの逢引(相手はガン無視)がそれを中和する極めて不愉快な代物だった。
 気分こそ害したものの、吐瀉物を撒き散らすような愚は犯さなかった。はっきり言ってしまえば如何に実際の出来事と云えど、己の肉眼で見て、感じなければどうという事はないというのが正直な感想だ。


「――ついにやったのねケーちゃん」

 思慮の外から投げ掛けられた言葉に虚を突かれ、自然と身体が強張った。
 その際、軽く握りしめただけで両側の肘掛けが木端微塵に砕けてしまうというアクシデントが起きたが、あくまで俺は泰然とした姿勢で応答する。

「ふん、誰に向かって言ってる。この俺様だぞ? 魔王になれん訳がなかろう」

 そう言って酷薄に嗤ってみせると、へびさんの魔人メディウサは最初こそ身を固くしていたが、やがてうっすらと笑みを浮かべた。
 俺は彼女の様子を見て、ようやく魔王という存在を真に理解した。あの人類をいとも容易く玩弄するメディウサが、それなりに親しいケイブリスであるにも関わらず、緊張して笑み一つ見せるのにも気を使っている。
 恐らくは自身の言葉に呼応するかのようにして俺が肘掛けを壊したからだろう。魔王の顰蹙を買ったとなれば、いかな魔人であろうとも死は免れないから。

「それで、これからどうするの?」
「グヘッ、ヘヘェッ、ギャハァッ、ンなもん決まってるだろうがよォ……」

 しかし、それでも俺はケイブリスを辞める訳にはいかない。
 魔人を全て殺して人類と共に生きる?――実力的に言えば出来る。だが、将来性が皆無だ。ホーネットと組むにせよ、既にケイブリスは来水美樹を殺してしまっている。大陸の覇者であろうランスや美樹を誰よりも大切に想っていた健太郎が許すわけがないだろう。そして、ランスが許さないという事は人類全てが敵に回るという事だ。
 ナイチサのように大陸の生物を死滅させる?――馬鹿げた話だ。実際にそれをやったナイチサの末路を見れば如何に無謀か馬鹿でも理解出来る。
 ジルのように人類総奴隷化を進める?――出来なくはない。この大陸に魔王と対抗出来る存在が事実上皆無なのだから、ある意味では最も容易い手段なのかもしれない。しかし、これはあまりにも凄惨に過ぎる。俺だって死にたくはない。けれど、世界中の人間を虐げてまで生き延びるほど、俺の命が高尚なものだとは思えない。というわけでこれは保留。
 適当に人類の攻撃を往なして引き籠る?――仮にランスや健太郎を抑えきれたと仮定しても、拮抗、膠着状態が続けばいずれは創造主であるルドラサウムが天使の驟雨で以て大陸の掃除に乗り出すだろう。これはある意味、ナイチサの策よりも愚策と言える。何よりもケイブリスらしくない。よって没。

色々と考えたが、俺が折衷案として考えた結果――

「とりあえずはホーネットだぁ。あのクソアマを俺様の前に連れてこい。おっと、魔人の女どもは絶対に壊すんじゃねぇぞ。
 犯さず、壊さず、殺さず持ってこい。アイツらを犯して壊して殺すのは俺様なんだからよォ! ギャハッハァハァハァハァ―――!!」

 魔王ケイブリスを演じつつ、史実に沿って行動しつつ、ルドラサウムの機嫌を損ねず、人類や敵対する魔人からも一時的に恨まれはすれど、遺恨を残さない程度に暴虐の限りを尽くす。
 自分で言っててちょっと意味が分からないし、そんなの実際にやれんのかとも思うが、やるしかないのだ。
 いざとなったらジル大先生の真似事で茶を濁しつつ、とっとと黄金像集めてプランナーに謁見し、以前の肉体の状態で健太郎たちの世界に飛ばしてもらったら終わりなんだ。
 他人の事なんぞついでだ。罪悪感が死への恐怖感に勝っているうちは色々と策を練ってもみるけど、実際に死を間近に感じれば、きっと俺のような小市民は保身に走ってしまう。
 己の命の貴賎なんぞ知ったこっちゃない。死が迫れば生きたいと願い、それを叶えるためには人はどこまでも汚くなれる。この点においてのみ、俺はケイブリス似ているような気がする。

「ホーネットやシルキィで遊んでみたかったんだけど、まぁ、ケーちゃんがそう言うんなら仕方ないわね。
 今回の所はその辺の魔物でも弄っておこうかしら」

「ゲハァッ、お前の場合は今日の所『も』の間違いじゃねぇのかぁ? まァいい、全員に召集を駆けろメディウサ。魔王ケイブリス様の凱旋だぁ! ぶわっはぁはぁはぁ!」

 高らかな哄笑とは裏腹に、俺はこれより始まる魔人とそれに率いられる魔物との戦いに内心ビクビクであった。
 魔物を殺す事に対する罪悪感はあまりないのかもしれない。まぁ、でっかいゴキブリを踏み殺す時にも似た生理的な嫌悪感はどうにも拭えないが。

 ただ一つ、断言できるとすれば。
 俺たちはきっと勝利する。これは俺が強いからでも、ホーネットが弱いからでもない。
 ククルククルより続く魔王というシステムが導きだす必然の理でしかない。魔人は魔王に逆らえない。たったそれだけの、数千年を経ても変わらぬ絶対不変の真実。
 唯一の例外たるガイがどのようにしてジルを打倒し得たのかは非常に気になる所だが、少なくとも俺には魔人が魔王に勝つ方法など想像出来なかった。いざとなれば「俺に従え」と【命令】してしまえばそれで終わりなのだ。

 そういえば、ジルは封印されているもののまだ異界で生きているんだったか。

「いずれは、どうにかせにゃならんな……」

「ん、どうかしたのケーちゃん?」

「フン、何でもない。というか、そのケーちゃんって呼び方はもうやめろ。俺様は魔王になったんだ。ちゃんと魔王様と呼べ、魔王様と」

「はいはい畏まりましたマオーサマ」

 既にメディウサに当初のような緊張感はないようだった。俺に対する態度は普段のそれに戻り、口調も非常に滑らかだ。
 何だかんだいって以前のケイブリスと嗜好が合い、それなりに良好な関係を築いていたメディウサだからこそ出来る態度なのだろう。

「ケッ、もうちっと俺様を敬えってんだ」

 俺の愚痴を背に、メディウサは手をプラプラと振りながら玉座の間を後にした。

「―――ふぅ」

 そうして彼女が去ってから数分後、よくやく俺は肩の力を抜いた。

「ははっ、マジで鬼畜王ランスでやんの」

 現実なのだと断定しながら、心のどこかで夢なんじゃないかと疑っていた。
 けれど、俺はメディウサという存在を通して、ようやく此処が鬼畜王ランスの世界なのだと改めて実感した。

「ふひっ」

魔王って自殺出来るのかな。
別方向に気持ちの悪い笑いを漏らしつつ、そんな益体も無い事をメディウサ達がやってくるまでずっと考えていた。







あとがき
意外とやってそうでやっていなかった魔王ケイブリス憑依もの。ちょっと思い付いたので一発モノとして上げてみました
実際問題、開き直ってしまえば無双出来ていいんでしょうが、まぁそこはそれなりに倫理観を持ってる小市民って事で一つ
しかし数年前の記憶を掘り出して書くという作業がこれほどしんどいとは思いませんでした。また時間があったらやった方がいいのかなorz

追記
題名ちょっと替えときました。


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