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No.38264の一覧
[0] 【習作・オリジナル】 マジカルオブザデッド [げんのすけ](2013/08/14 19:21)
[1] 第1話 [げんのすけ](2013/08/14 19:23)
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[38264] 第1話 
Name: げんのすけ◆795dfa9d ID:a414bfde 前を表示する
Date: 2013/08/14 19:23

 遠く、東の島国には盛者必衰という言葉があるそうだ。
権力を持ち、どれほど栄えた者であってもいつかは必ず衰え消え行く。
世界の真理に最も近い言葉であると私は思う。

かつてこの大地と空を制した生き物は、ただの一匹も残らずに死に絶えた。
博物館でその化石を初めて見た時、まだ幼かった私にとって彼ら強大な種族が絶えたという事実は、
他の如何なる出来事よりも恐ろしいものに思えた。
どれほどの力を持とうとも、どれほどの栄華を極めようとも。
滅ぶ時には、ほんの数年で終わるのだ。

我ら人間も、そしてその他の多くの種族も。
その定めからは逃れられない。
この星の上に生まれ、栄えた以上はいつか必ず生態系の頂点という座を奪われる日が来る。
それがいつ訪れるのか、いつ始まるのかは分からない。
しかし目を逸らした所で、その運命からは逃れられないだろう。

備えよとは言わない。
後悔の無いように生きろとも、心構えをしておけとも私には言う資格が無い。
なぜならば、私自身がその運命を未だに受け入れられないからだ。

だが受け入れることはできなくても、決して忘れてはならない。

我々は、必ず滅ぶのだということを。


・ ・ ・ ・ ・


 『続いてのニュースです。旧首都方面で発生した暴動は今だ収束せず、暴徒と軍の駐屯部隊の間で激しい衝突が続いている模様です・・・・・・』

ああ、まだやってるのかと。
暴動という物騒な言葉の響きにも、抱く感想はその程度。
年がら年中同じようなニュースが流れていれば、そうなるのも仕方のないことだろう。

子供の頃からニュース番組というのは苦手だ。
見れば日毎に胸糞悪くなる報道の連続、原稿を読むアナウンサーの顔も神妙で、声のトーンは一辺倒。
やっと明るいニュースが聞こえてきたかと思えば、次の瞬間にはまた暗い内容に変わる。
他の番組がみたいとダダをこねた俺に、親父は大人になればお前もニュースをみることになるんだぞなんて言って丸め込まれたこともあったが。
成人の儀を再来年に控えても、俺にはニュースを好んで見るなんて習慣は身に付かない。
身につけてたまるものか。

「おーい、チャンネル変えてくれー」

二段ある寝台の下側、ここ何年かずっと俺の寝床はそこ。
右に寝返りをうてば壁、左に寝返りをうてば玄関から洗面所と便所のドア、リビングまで見渡せてしまう狭い部屋だ。
それに加えて同居人までいるとなると狭苦しさは倍になり、ただでさえ規律に縛り付けられている行動の自由もより制限されてしまう。
勝手にチャンネルを変えることもできない現状が正に良い例だといえるだろう。

「聞いてる?」

体を横たえて、柔らかな寝台に肘をついてそこに頭を乗せる。
だらけきった姿勢で、テレビに齧りつく様にして見入っている同居人に声をかけた。
数えちゃいないがこれで数度目の問いかけになるのだが、声をかけた同居人は長い耳をぴこぴこ動かすだけで振り向くどころか返事もしない。
やつの耳がそうやって動くのは音を聞き取っている証拠であり、またやつの種族から考えて今の声が聞こえていないはずはない。
ないのだが、こうして待てどくらせど返事がないということは意図的に無視されているということで間違いない。

「お前なあ、今日は俺がテレビの支配権持ってるんだぞ。3分だけでいいからニュースを見せろっていうから俺は・・・・・・」

「・・・・・・」

未だに暴動による犠牲者がどうのこうの言っているアナウンサーの声に負けじとさらに言葉を重ねる。
すると跳ねるように動いていたやつの耳が、図星を突かれて参ったのかギクリと一瞬固まり、次いで申し訳無さそうに力を失ってくたりと垂れた。
実に器用な耳先である。
元来彼らエルフの耳というのは、俺たち人間と変わらず動かすことはできないらしいのだが。
こいつに関してはそういう常識は当てはまらないらしい。
獣人族のしっぽと同じぐらいその心情を性格に伝えてくれる。

「・・・・・・はぁ、そのニュースだけ見たらチャンネル返せよ」

影が落ちそうなほど気落ちした耳があまりにも落ち込んでいる様に見えて、結局は俺の方が先に折れてしまった。
途端にしゃっきりと耳を立たせる辺り、全く良い性格をしている。

「しかしお前さ、ずっと思ってたけどエルフって人間の文化嫌いなんだろ?幾ら実家に無いからってテレビに食いつきすぎだろ」

「・・・・・・それは古い世代だけだ。僕ら若いエルフにとって、君ら人間の文化というのはとても輝いて見える。特にこのテレビは偉大な文明の象徴だ」

「何が若いだ180歳のおっさんが」

「おっさんではない。エルフの180歳は君ら人間で言うところの成人前、つまり君と僕は近い年齢だ」

ようやく応じたかと思えば、帰ってくるのは肩が懲りそうな硬い言葉ばかり。
もう慣れたものだが、同室になった当初は殴り合いにまで発展してチャンネルを奪い合ったことを思えば、歳相応に俺たちも落ち着いたのかもしれない。
いや、俺が譲ることを覚えたというだけかもしれないが。

「君ら人間はもっと自分の文明に誇りを持つべきだ。エルフやドワーフでは成し遂げられなかった壮大な」

「テレビ一台で過大評価もいいとこだろ。ほら、もうニュース終わるんだからチャンネルよこせ」

「む、しかしどうだ今回の暴動は。大陸一治安の悪い旧首都といえど、ここまでの規模は初めてではないか?」

この野郎め話題を逸らしてチャンネルを譲らないつもりだ。
今日は好きな番組を見ることはなさそうだと諦め、こちらも画面に視線を向ける。

旧首都というのは、文字通りかつて首都であった都市のことだ。
今ではあらゆる種族の複合国家となっている俺たちの国が、まだ人間だけで構成されていた頃の遺物だ。
かつてそこには度が過ぎた圧政と弾圧があり、1人の男が全てを牛耳っていたとされている。
その男が死に、支配体制が崩れた後に首都としての機能は別の都市へと移され、旧首都は捨て置かれたまま長い間放置されてきた。

「あそこ色々いるらしいからな。マフィアから怪しげな黒魔術師までって、治安改善部隊に行った先輩が頭痛いって愚痴ってたよ」

「エルフのはぐれも多いと聞く。まったく俗世に染まりきった恥さらしどもめ」

忌々しげにそう吐き捨てつつも、画面から目を離さないのだから俗世に嵌ってるのはこいつも同じだと思うのだが。
まあそれはいいとして。

長い間放置されていた旧首都は、いつの間にやらならず者や他に行き場の無い人々が集う闇の街と化した。
そんな状態でろくなことが起きるわけもなく、今画面に映っている暴動のような類はそれこそ年に何度か起こるのが当たり前。
近年になってようやく政府による介入が始まり、軍の一部が治安改善を目的として派遣されてはいるが。
正直な所、効果は薄いというのが現状だ。

「しっかしお前の言うとおり今回は規模がすごいわ。万単位だっけ?」

「それも日に日に増しているらしい。今日だけで1万人近く」

「たった1日でそれかよ・・・・・・なんかあったのかね」

「詳細はニュースでも報道されていない。規制がかかっているのかもしれないが、もしそうだとすると」

ろくでもないことになっているのかもしれない。

もしも本当にどこからか、政府か軍かは分からないが報道機関に口止めをしている者がいるのだとすれば。
旧首都で起こっている暴動の裏に、なにやら不穏な影が蠢いていることになる。
頻繁に暴動が起こっている場所ではあるが、幾らなんでも日に1万もの人々が新たに加わるなんて事態は異常だ。

「向こうに駐屯してる連中はなにやってるんだ。普段なら3日とたたずに鎮圧してるのに」

「む、知らないのか?」

「はい?何を」

「・・・・・・お前がニュース嫌いなのは知っていた。知っていたが、これからはもう少し社会に関心を持つべきだ」

お節介はよせとひらひら手を振ってそれに応えると、エルフの同居人は立ち上がってこちらに歩み寄った。
狭い部屋だけあってすぐにベットまで寄って来ると、そのまま梯子を上って自分の寝床へ身を乗り出して、なにやらごそごそと漁っているようだ。
お堅い所があり、キビキビとした行動を旨とする彼ではあるが以外にも寝床はとっ散らかっていて収拾が付かない状態に陥っている。
食べかすやらなんやらということはなく、なので今まで注意したこともないのだが、人間の文明を大いに気に入ってい彼は寝床に読み物を大量に持ち込んでいるのだ。
小説やら俺が見ても全く分からない学問の教練書なんかの重たい物から、絵本にコミックに雑誌に後は。

「あったぞ、これだ」

「寝る場所あるのかお前」

「うむ。若干狭いが許容の範囲内だ」

梯子に脚をかけたまま、下の俺のベットに向けて何やら紙の束を放る。
見ればそれは彼が毎朝購読している何種類もの新聞だ。
あちこちの会社の物があって、一体どれを読めと言っているのか分かったものではない。
とりあえず手近なものを引き寄せて広げ、その一面に目をやると日付は数日前のものだ。

一面にはまず1人の男の写真が載っていて、会った憶えも無いのにどこか見覚えのある顔だ。
芸能人だったか、学者だったか、確かテレビで何度か・・・・・・。

「見た覚えはある。けど何だっけこいつ」

「我々の天敵だぞ、名前は覚えておくべきだ。エリック・レンバー、反武装主義者の筆頭格だ」

「・・・・・・あー思い出したぞ。男前活動家とかで一時期テレビに出ずっぱりだった」

「父親がテレビ局の社長だそうだからな。でなければ、あれだけ偏った思想の持ち主がここまで持ち上げられることはない」

エリック・レンバー。
さっきまで忘れていてこういうのもなんだが、こいつがテレビで主張していた内容だけは良く憶えている。
曰く、全ての武器を破棄し軍隊を解体すべきであると。

俺たちの国は今でこそ大陸全てが繋がった複合国家だが、そうなるまでには100年単位で続いた戦争があった。
凄惨な戦いは国土と国民を傷つけ、結局はどの種族もが何も得られないままに厭戦ムードに押される形で収束した。
愚かな歴史を繰り返すまいと、この大陸に生きる大半がその志を胸に前へ進んだ結果が今の平和。
それは分かっているし、俺だって進んで戦争をしようと叫ぶような馬鹿じゃない。
だが。

「確かこいつの言い分だと、武器を捨てれば内外問わずに戦争なんて言葉は辞書から消えるだろうだっけか?」

「理想論者というやつだ。一方が武器を捨てたところでもう一方がどう動くか、そんなことは火を見るより明らかだろうに」

「分かってて言ってるんだったら大した悪党だわ」

「確かに。それよりも記事を見てみろ、恐らく旧首都の暴動が収まらないのもそれが原因の1つだ」

言われて、新聞の見出しを読んでみると。
太い字で書かれたそれは、いやに目立つように色まで付けられている。

『平和への願い実現に向けて。エリック・レンバー、新党結成へ』

悪い冗談かなにかだろうと思いたかった。
平和な時代というやつの弊害なんだろうか、誰でも彼でも政治家や活動家になれてしまうというのは。

「たちの悪いことにレンバーの人気は本物だ。恐らく党が結成されれば次の選挙は大勝するだろう」

「おっかねえなあ。・・・・・・で、それと暴動と何の関係があるんだ?」

「言ったろう、次の選挙で彼の勝ちは揺るがない。つまり現職の議員連中にとっては非常に困難な闘いになる」

それがどう暴動と関係あるのか分からず、頭を捻る俺に向けて同居人はついに哀れむような視線を向け始めた。
彼は友人を見下したような態度を決してとらない。
とらないのだが。
あまりにも酷いとこうしてかわいそうな物を見るかのような、哀愁漂う表情を作るのだ。
わざとやっているのか天然なのかは分からない。

「勝ち馬に乗ろうとした者が余計なことをしたということだ。下手な方法を使って何ヶ月も前からな」

そう言うと彼は梯子にかけたままだった脚を踏ん張って、自分のベットに乗り出してまたなにやら漁り始めた。
今度はなんだろうかと思いつつ、長ったらしい新聞に目を走らせる。
えらく持ち上げられている印象はテレビに出ていた時にも感じたが、媒体が新聞に変わっても何も変わっていない。
まず顔を褒め、若さにわざとらしく驚嘆し、次いで彼の主張に共感を覚え、まるでそれが一分も誤りのない正論のように讃えられている。
親がテレビ局の社長だそうだが、もしかすると裏で俺なんかでは想像も付かないやり取りがあるのかもしれない。

「これだ。それからこっちのは君にも届いていたはずだぞ」

「ん、ありがと。ええと・・・・・・1ヶ月前!?お前どんだけ新聞溜めてんだ!」

「ええい、いいから読め」

最近仰向けに野転ぶと上の寝台が迫ってきているように感じていたのは錯覚ではないようだ。
次の休日に絶対掃除するからなと怒鳴り散らし、それから新たに手渡された2つの紙束に目を落す。
片方は先ほどと同じく新聞だったが、日付が一ヶ月も前のものだ。
もう一方はというと、封筒に収められたプリントのようだ。
律儀に開封口をペーパーナイフで切っているようで、乱雑に扱った様子が少しも無い。
まず新聞の方に目を落すと、レンバーの記事のような華やかさはなく、扱いは至って普通といったところか。

「終戦記念週間を新たに制定・・・・・・?なんじゃこりゃ」

「文字通りだよ。今週は終戦を祝い喪に服して過ごす七日間にするんだそうだ」

「週末に終戦記念日があるだろう。それじゃ足りないってことかぁ?」

「だから言っただろう。勝ち馬に乗ろうとしていると」

ああ、なるほどそういうことか。
ようは目立ち、人気もあるレンバーの存在を受けて現職の連中がその真似をしようとしていると。
この大陸の民衆は大きな争いごとを忌避する国民性ではあるが、終戦からもう100年近く経った今になってこんな馬鹿げたことをするなんて。

「もっと他にやることあんだろうが・・・・・・」

「選挙はもう目前だからな。人気取りに奔走する者、今からレンバーに取り入ろうと躍起になっている者。
現政権から離脱してレンバーに付こうとしている連中も大勢いるそうだ」

「それでこれか、裏が見え見えじゃねえかよ。ほいで?こっちはなんだ」

「事務室からの連絡事項だ。終戦記念週間に伴って、銃火器の使用は原則禁止。今週に入って一度も射撃訓練は行われなかったろう」

「そんな理由だったのかよ・・・・・・」

「お前が知らなかったことの方が僕は驚きだよ。郵便物はしっかり確認しなければ困ったことになるぞと、あれほど僕はお前に・・・・・・」

クドクドと、ベットは汚いわテレビは占領するはのエルフのお説教が始まった。
負けじと言い返しても弁が立つのは向こうのほうで、こっちが1を言うと3を返してくるほどの勢いでどこまでもこちらを追い詰めてくる。
結局言い負かされた俺は布団を被って撤退し、しかし追撃に出たやつに馬乗りにされて必死の攻防が続く。


俺たちはまだ知らなかった。
この時、本当は何が起こっていたのかを。
この先俺たちがどうなるのかも、世界がどうなるのかも。
旧首都で始まった暴動が、何を意味していたのかも。
武器を捨てろと叫ぶ人々の裏に何が潜んでいるのかも。

俺たちは、何もしらなかった。



・ ・ ・ ・ ・

 『交戦規定解除!繰り返す、交戦規定解除!以降は個々の判断で火器の使用を許可する!』

街は埋め尽くされている。
土埃と炎の巻き上げた黒煙に。
人の悲鳴をかき消す様に、また悲鳴が上がった悲鳴に。
怒号に、呻き声に、暗雲に。
そして、亡骸に。

『繰り返す!応戦は個々の判断で許可する!・・・・・・おい、誰か聞こえてたら返事してくれ!』

大通りから外れた、小さな建物が密集する暗い路地。
その中ほどに倒れ伏した骸が1つ。
性別は男、服装はグレーの迷彩。
それは都市での戦闘を想定したもので、この死体が元は軍人だったことを意味していた。
胸の辺りから悲壮な声が絶え間なく響き、しかしそれに男が言葉を返すことはない。
彼はもう死んでいるのだから。

「こっちだ、走れ走れぇ!」

人影の無かった路地裏に、怒号と幾つもの足音。
むき出しの土の道に前日に降った雨が溜まり、ぬかるんだ道がむべちゃべちゃと音をたてた。

「糞ったれが、今さらなにが火器の使用だ!もう、もうどうにもならないじゃねえか!」

大通りから続く細い道を駆けながら、複数の人影が路地裏になだれ込んだ。
中ほどに伏している男と同様、迷彩を着た男達は誰もが血に塗れていて、しかし誰一人として傷を負った様子はなかった。
となれば、付着した赤と黒の入り混じった色は他人のものであるということになる。

「とにかく撤退だ!このまま留まってもできることは無い・・・・・・!」

「んなことは分かってんだよ!大体、あの化け物どもは何なんだ!」

「分からない。分からないが」

人影の数は5つ。
疲れてきっている様子で、時折ぬかるみに脚をとられながらも彼らは決して止まろうとはしない。
疲労が濃く、彼果てた声には苛立ちが多分に滲んでいる。

「連中に囲まれたらもう終わりだ・・・・・・!」

「こんなこと、あって溜まるかよ!エドワードもジャックも、皆、皆死んじまって!俺はトーマスを自分の手で殺しちまったんだぞ!?」

「仕方が無かった、他にやりようがあったか!?あいつを殺さなければ、俺たちも今頃は」

「お、おい!」

走る5人の先頭で言い争いが始まろうとした時。
不意に誰かが叫んだ。
剣のある声で争っていた2人も、はっとして前方に注視する。

視線の向かう先、そこには伏した亡骸が1つ。
ぬかるみに前のめりに倒れ、ピクリとも動かない。

「し、死んでるのか?」

「構うかよ、放っておいて突っ切ろう!どうせ負傷したやつは基地に入れない!」

「だが・・・・・・」

「黙れ!生きてようが死んでようが、動く前にここを抜けるんだ!いいなぁ・・・・・・!」

鬼気迫る表情で、仲間であるはずの他の者を脅して男は脚を早めた。
躊躇って互いの顔を見合わせながらも、先に行った彼を1人にするわけにもいかずに皆が後に続く。

先に駆け出した1人が亡骸のわきを通り抜ける。
無論、死んだ人間が動くはずもなく何の問題も起きない。
後から駆け出した残る4人も続く。

2人目が抜ける。
亡骸は動かない。

3人目が抜ける。
亡骸は動かない。

4人目が抜けた所で。

不意に、亡骸の目が大きく開いた。
その瞳はくすんだ白に染まり、ぎょろぎょろと動く眼球が、自らの傍らを行く人影を捉えた。

「え・・・・・・?」

列の最後を抜けようとしていた5人目は、唐突に何かに引っ張られるような感覚に足を止めた。
ふと見れば。

死んでいたはずの男が、自分の足首を掴んでいて。
ゆっくりと上がった顔は泥に塗れ、まるで生気の感じられない肌は灰色。

「あ、うあ」

5人目は声も出せずに。
自分を見つめる白濁色の瞳に捉われ、死体だった男が大きく口を開き、自分の足に歯をたて、激痛に襲われたところでようやく。

「うわああああああああ!!」

悲痛な叫び声が路地裏に響いた。
先に行っていた全員が足を止め、振り返り、その表情を絶望に染める。

「ラルフ!」

「た、助けて、助けてくれぇ!」

5人目、ラルフと呼ばれた男はそのまま引き倒されて、動き出した死体が覆いかぶさるように馬乗りになった。
仲間達へと必死に手を伸ばすラルフだったが、仲間達は一向に自分を助けようとはしない。

「・・・・・・もう、手遅れだ」

「ラルフ、すまない、許してくれ!」

それは助けを懇願する自分を拒絶する言葉だった。
これまで苦楽を共にしてきた仲間達は、自分から目をそらしてそのまま走り去ってしまう。
待ってくれと叫ぼうとした声は。

喉笛に喰らい付いた死体によって阻まれた。

「がふっ、かっ・・・・・・」

血の泡を吹いて、それでもなおラルフは仲間達の背中を見つめた。
なんて薄情なやつらだろうと、今にお前らも、きっと俺と同じ目に遭う。
そんな呪詛が届いたのかは分からない。
だが。

「ひっ・・・・・・!」

「あ、うわああ!来るな、来るな化け物!」

薄れ行く視線の先で、自分を見捨てた仲間達が何かに取り囲まれているのが見える。

『連中に囲まれたらもう終わりだ!』

つい先ほどの仲間の言葉が、彼ら自信に現実のものとなって襲い掛かった。
それで少しは気が晴れたのか、はたまた仲間の死を悟り、悲しんだか。
結局ラルフは、何も見届けることなくその瞳を閉じた。
ゆっくり、ゆっくりと。
彼が最後に見たのは、飛び散った自分の肉と血が赤く広がる様だった。


過去に起きた種族間の戦争からあと僅かで101年になろうかという日に。
世界の終わりは始まりを告げた。

旧首都に派遣されていた軍数千余人は壊滅。
外の世界で暴動と呼ばれていたそれは、いつしか旧首都の城壁を越えて。
大陸に破滅の一歩を踏み出した。






・はじめまして。
初っ端はマジカル要素ゼロでした。
突っ込みどころ満載だとは思いますが、ご感想やご指摘がありましたらよろしくお願いします。



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