教会よりアサシン脱落の報を受け取った冥馬の動きは早かった。直ぐさまかねてより用意していた戦闘に耐えうる全ての宝石を持ち出すと、キャスターを伴って冬木教会を訪ねた。
中立地帯である教会の敷地は、原則的にマスターの届け出をする際かサーヴァントを失った場合、または聖杯戦争を放棄して棄権する時にしか踏み入ってはならぬ場所である。だが無論のこと冥馬もキャスターも白旗をあげ棄権するために教会へ足を運んだのではない。
冬木にある聖杯は一般のイメージに伝わる通り万能の願望器、魔法の釡としての性能をもつ。だがその実態はイメージとは異なり、冬木の聖杯は物体ではなく霊体だ。
聖杯戦争の勝者として聖杯をその手に掴むことを欲するのであれば、小聖杯とも呼ばれる『聖杯の器』に六騎分の英霊の魂を注ぎ、それをもって〝聖杯〟を降霊するという過程が必要となる。
そして聖杯の降霊はどこでも出来るわけではない。聖杯を降霊する第一条件は相応の霊格を備えた霊地であること。
冬木市内でその条件を満たすのは都合四か所。
第一が冬木最大の霊格を備えた場所で、地下に大聖杯が安置されている柳洞寺。
第二がセカンドオーナーこと冥馬の住む遠坂家の敷地。
第三が監督役の拠点である冬木教会の建つ土地。
第四が新都にある霊脈の加工によって後天的に霊地としての霊格をもってしまった場所だ。
聖杯戦争が終わりに近づくと、その四つの霊地のうちのいずれかに魔力が溜まっていき、聖杯を降霊するための力場が形成される。
如何に強力なサーヴァントをもとうと、この降霊地点と『聖杯の器』を抑えなければ聖杯戦争の勝利者となることはできないため、この段階になるとバトルロイアルだった聖杯戦争は、一転して陣取り合戦の様相をなしてくるのだ。
文献によれば最初の第一次聖杯戦争における降霊地は柳洞寺、第二次では遠坂邸だったそうなので、此度は冬木教会が怪しいと睨んでいた冥馬の予想は正しく、使い魔を使っての調査で、既に教会の敷地に聖杯降霊のための『力場』が形成されているのを確認済みだ。
「冥馬。君の話しは分かった。しっかり理解できたとも。本来ここにマスターが立ち入るべきではないが、そういう事情ならば黙認もやむを得ないと認める。だがその上で聞こう。何をやっている?」
リリアの宝石による治癒もあって、つい少し前に剣で串刺しにされた思えないほどピンピンしている璃正だが、流石に完全復活とはいかないらしく頭には包帯が巻かれている。
そんな璃正が眉間に皺を寄せ、青筋をたてながら背後にいても、冥馬は全く動じずキャスターと二人して教会中に怪しげな刻印を刻み込んだり宝石を埋め込んだりしていた。
「なにって罠作りと陣地作成に決まっているじゃないか」
「勝手に私の教会を罠の巣窟にするな! 私は今回に限って教会での戦闘許可を出したが、好き勝手に罠を作る許可を出した覚えはないぞ!」
璃正からしたら冬木教会はもはや自分の家も同然。救いを求める者は誰であろうと拒まない慈愛の家である。
そんな場所に来る者を拒むを通り越して、来訪者を呪殺しかねない罠を埋め込まれたら、璃正でなくとも激怒したくもなるだろう。
「そうは言ってもなぁ。真正面から戦ってもリリアには勝てないし。な、キャスター」
「キャスターのクラスは陣地作成による防衛に優れたクラス。ただでさえ最高峰の対魔力をもつセイバーとは相性において悪いのだ。せめて即席でもなんでもいいから、奴等がここに来るまでに準備をせねば戦えるものも戦えん」
ナチスと帝国陸軍と戦うために共闘した冥馬とリリアだが、いつの時代も同盟とは永劫不変のものではない。
冥馬とリリアの同盟関係は、あくまでナチスと帝国陸軍というイレギュラーを聖杯戦争から排除するまでのもの。二つの組織が敗退した今、その同盟関係は終わっている。
リリアリンダ・エーデルフェルトはもはや頼もしい味方ではなく、恐ろしい好敵手だ。
「し、しかしだな……」
「戦いは剣を交える前から既に始まっているもの。兵糧を集め兵力を揃え陣を作る――――この下準備で戦いの趨勢の八割は決するといっていい。
監督役。お前は俺たちに教会においてセイバーとの戦いを黙認すると言った。ならばセイバーを倒す為の如何なる下準備についても、聖杯戦争のルールに抵触しない限りは認めるということだろう」
「むっ……」
「それともよもや、神に信仰を捧げる敬虔な神父様が、約束を違えるわけじゃあないだろうな?」
璃正の反論はあっさりキャスターに封殺される。
キャスター相手に口で挑んでも勝ち目などないから諦めろ、と冥馬は璃正の肩にポンと手を置いた。
「頼むよ、璃正。冗談ぬきでこうでもしないと戦力差をどうにかできそうにないんだ」
「……仕方ない。神父が嘘を吐く訳にはいかんからな」
「恩に着る」
璃正の許可もとれたことで、冥馬はより一層、魔術工房の建造に精を出す。
アサシンが敗退したという情報は、遠からずリリアにも伝わるだろう。リリアには聖杯戦争降霊のことまでは話していないので、リリアが冬木教会に気付くのにはまだ時間がある。それまでにどうにかしてセイバーに対抗できるだけの準備をしなければならなかった。
だがこうして降霊地点の確保を成し遂げた冥馬だが、サーヴァントの力量を除外しても条件は五分五分である。
「土地は確保したが、器はあちらが抑えているからな」
帝国陸軍からリリアが奪い返した聖杯の器。それをリリアは教会に大人しく返却などしなかった。それどころか「どうせ私が勝つんだから、それまで私が預かってあげる」などと言って返却拒否したのだ。
教会側も幾度となくリリアに聖杯を返すように要請したが、リリアは逆に言葉巧みに帝国陸軍に聖杯の器を奪われたという過失を責め、遂には聖杯を取り返すことにより聖杯戦争の運営に協力した対価として、聖杯の器を預かることを認めさせてしまったのである。その手際にキャスターなどは「現代の魔術師もやるものだ」と他人事のように感心していた。
そうして器はリリアの手に渡ってしまったわけだが、不幸中の幸いというべきかリリアが明確な対価を得た為に、冥馬も教会に対して対価を要求できるようになり、それを用いて本来中立の教会にアサシン敗退を報告させたのだ。
「こうしていると子供の頃を思いだす」
ふと自分の魔力を地面に流し込んでいたキャスターが呟いた。
「子供の頃? 子供の頃、こんな物騒な罠を作って遊んでいたのか?」
「遊びじゃない。修行……あいつとの木剣試合でな」
「ああ」
キャスターの言う〝あいつ〟とは、もしかしなくても彼の義妹のアーサー王のことだろう。
日輪に照らされ一面に広がる緑色の地平。老騎士の厳しくも優しい眼に見守られながら木剣を交える兄妹の情景。冥馬も夢を通して何度かそれを見た事がある。それは後の華々しい騎士的名誉溢れた戦いと比べたらちっぽけな記憶かもしれないが、きっとキャスターにとってなによりも大切な思い出の一ページだったのだろう。
心なしか木剣試合のことを語るキャスターの声はいつもよりも弾んで聞こえた。
夢から覚めた今でも目を瞑れば太陽の下で元気よく木剣を振る少女と、熱心に罠を作る兄の姿が浮かぶようだ。
「……ちょ、ちょっと待った! 罠って、まさか義妹との木剣試合に、今作ってるような罠を仕掛けていたのか!?」
戦争であれば、勝つために幾多の罠を戦場に張り巡らせることもあるだろう。特にブリテンは数において蛮族たちに劣っていたのだ。王道的ではない奇襲・奇策もキャスターの記憶に残る騎士王であれば率先して用いたはずだ。
しかし戦争における戦いと木剣試合における戦いは、同じ戦いでも意味が全く異なる。木剣試合というのは互いの力量を高めあうため、殺傷力のない木製の剣を使っての模擬試合、武術における組手のようなものだ。ルール無用の殺し合いとは全く異なる。
スポーツにルールがあり、そのルールに違反すれば罰があるように、木剣試合には木剣試合のルールが定められている。そこに罠を用いるなど、はっきりいって卑怯以前の問題だ。
キャスターは「ふん」と鼻を鳴らすと、
「あいつの実力は一年と少し経つと完全に俺を追い越していた。血の滲む努力と天賦の才の相乗効果というものさ。一年でこうなのだ。二年も経てば俺がどう頭を捻ろうと、あいつに一太刀も浴びせることができなくなっていたよ。だがそれがどうした。俺はどんな手段を使ってでもあいつに負けたくなかった。だから勝つために策を用いたまで」
「後学のために聞いておくが、具体的にどんな罠を?」
「色々やったぞ。落とし穴も掘ったし、寝込みを奇襲したこともあったし、四方八方から矢が降り注ぐ仕掛けを作ったこともあった」
「……そ、そこまでやるか普通」
血の繋がりがないとはいえ、年下の妹に負けて悔しい気持ちは分からないでもない。男なんて生き物は常に見栄を張っていたいもの。それが年下の家族であれば猶更だ。
冥馬は新たなコミュニティーを形成することが億劫なため結婚願望は余りないのだが、弟の方が早く結婚し家庭をもった時は、何故か言いようのない悔しさにかられたものである。
だが幾らなんでも妹相手に寝込みを奇襲だとか、四方八方からの矢の雨を降らすなどやり過ぎとしか言いようがない。
「大人気なくなどない。お前は猫の子を相手取る時と獅子の子を相手取る時に同じ対処をするのか? 違うだろう。猫の子には猫の子の、獅子の子には獅子の子の対応というものがある。
俺の義妹はさしずめ竜の子だった。故に竜の子を相手取るに相応しい対応をしてきたまでのこと。実際あいつときたら四年も経つと、俺が百戦練磨の騎士もあたふたさせる極悪罠地獄に叩き込んでもケロリと生還したからな。しかもあいつ『兄君のお蔭で狡猾な罠を見抜く眼を養えました』だとか言ってお礼までしてきた。まったくもって可愛くない!」
「寧ろ俺にはお前の義妹の素晴らしさの方が良く分かったよ」
「それでむかついたからな。絶対に一本とってやろうと、三か月かけて家より広い三連巨大落とし穴を掘ったんだ。そうしたらどうなったと思う?」
「計画通りに妹を落とし穴に落とす事に成功したんじゃないのか?」
「違う。俺は準備万端で義妹を待ち構え、落とし穴に義妹が落ちるや否や、飛び出して脳天に木剣の一撃を叩き込んだんだ。だがあろうことかそれは義妹じゃなく、俺が夜中に出歩くのを注意しにきた父で――――」
「自業自得な結末を迎えた訳だな」
「ふん。翌日の父の怒りときたら天の雷鳴すら引っ込む勢いだったぞ……」
拗ねたようにそっぽを向くキャスターだが、やはりその表情は明るかった。あらゆる命と願いが死に絶えた丘で、血が蒸発するほどの無念の雄叫びをあげた騎士と同一人物にはとても見えない。だが火薬の量が多ければ多いほど、爆弾はより激しく周囲に破壊を撒き散らすもの。キャスターにとって昔日の日常とはそれほどに尊いものだったのだろう。
或いは――――キャスター本人に問うても間違いなく否定するだろうが――――彼が卑怯な手段を使ってまで義妹に勝とうとしていたのは、妹に対し勝者であることで、妹を後の悲劇から無意識に守ろうとしていたからなのかもしれない。
「キャスター。一つ、まだお前に教えてない事があったから、この機会に言っておく。リリアが来れば呑気に会話している余裕なんてないだろうし」
罠を作っていた手を止め、周囲に璃正たち教会スタッフの姿も使い魔による目もないことを確認してから冥馬は口を開いた。声質から冥馬の真剣さを察したキャスターは、背中を向けたまま何も言わず冥馬の言葉を待つ。
はっきり言ってこれから冥馬が話すことは聖杯戦争における最大級の秘密。大聖杯以上に知られてはならぬことだ。特に自分のサーヴァントに知られれば裏切りを招く類の。
もしかしたら父・静重が草葉の陰で説教するかもしれない。だが例え父の意向に背くことがあっても、敢えて言うべきだと冥馬は決断した。
「聖杯はね。実は万能の願望器としての機能はおまけみたいなものなんだ。御三家が作り上げた聖杯の真の用途は、サーヴァントが座へと戻る力を利用し『根源』への道を開く事」
「そうか」
「あんまり驚かないんだな」
「伊達に俺も〝魔術師〟のサーヴァントとして呼ばれたわけじゃない。魔術師とは個人ではなく、子々孫々と続く血脈により『根源』という真理を追い求めることを目的とする群体。故に魔術師の行動はそのすべからくが『根源』に到達するためのもの……。
だとすれば三つの魔術師の系譜が挙って作り上げたという聖杯が、万能の願望器としてじゃなく『根源』に到達するためのものだと教えられても至極当然と納得できる。それに俺は聖杯がどういう代物だろうと、聖杯が万能の願望器としての機能を持ち合わせているならば何の不満もない」
義妹への愛情という一点を除けば、徹底した現実主義者のキャスターらしい言葉だった。けれど聖杯に隠された秘密はこれだけではない。
「本題はここからだ。万能の願望器として使うならばサーヴァントは六体……いいや五体もくべれば死者蘇生くらいの願いを叶えるには十分すぎるだろう。だが聖杯を真の用途で、つまり『根源』への到達に使おうとすれば、七体のサーヴァントを生け贄にしなければならない」
「……」
七体のサーヴァントの生け贄、それが意味するところは一つしかない。敵の六騎のみならず、自分自身のサーヴァントをも生け贄に捧げる。
これまでの聖杯戦争で一度もそこまで到達した者はいないが、もしも『根源』への到達を求めるマスターが勝者となったならば、そのマスターが最後に行うのは令呪をもって己自身のサーヴァントを自決させることだ。
サーヴァントからしたら完全なる裏切りにも等しい聖杯戦争の真相。それを聞いたキャスターは意外なほどに静かだった。殺気を滲ますどころか、その佇まいは水面のように落ち着いている。
「どうして今になってそんな事を言った?」
キャスターが己の感情をすっぽりと覆い隠しながら言う。
遠坂冥馬は病的とまではいかないが秘密主義者である。うっかり口を滑らせるのが玉に瑕だが、それでも言うべきではない情報は漏らさないし、言うべき情報すら出し渋る事も多々ある。
故にキャスターの疑問は当然のものだ。なにせ聖杯の真実などを喋っても冥馬にはなんの利益もない。これで万が一キャスターが離反してしまえば冥馬の終わり。百害あって一利なしだ。
「一つは俺には『根源』への到達を願う気がそもそも無いから。俺はアーチャーと違って人類は平等なんて唱えるつもりはない。ソビエトを見てきたら、押し付けられた平等の害悪さは嫌でも分かるからな。けど世の中は不平等に溢れているけど、出来うる限り物事は公平であるべきだとも思う」
「理想論だな。十の努力をして万人が十の対価を得られるなら、世界はもっと平和に廻ってるだろうよ」
「出来る限りって言ったろう。別に世界を全て公平に、なんて夢物語を聖杯に託そうなんて馬鹿みたいなことを考えているわけじゃない。ただ等価交換を原則とする魔術を学ぶ身として、不公平っていうのは腹立たしいものだから、自分は自分の出来る限り公平な対応を心がけようと努力しているわけさ」
だから『根源』の到達に聖杯は用いない。同じように戦い、同じように勝者となったサーヴァントを裏切ることは余りにも不公平故に。
それに自分の主義に嘘をついてまで聖杯に縋るなんていうのは実に優雅ではない。そんなことをするよりも聖杯などの手を借りずに独力で『根源』へ到達してみせる――――それが冥馬なりの余裕をもって優雅たる生き方だった。
自分の代ではもしかしたら、大師父より与えられた課題、遠坂の悲願を成就させることは叶わないかもしれない。だが自分の次の代、またはその次の代であれば、必ず遠坂の悲願を成就させるだろうと冥馬は確信していた。
「お前の能天気さ加減は分かったが、それだけじゃ答えになってないぞ。そもそもにおいて、お前がこのことを話して得るメリットとはなんだ?」
「対価だよ。お前の過去を、俺は夢を通して無断で見ただろう。だからその対価に俺は聖杯戦争の秘密を教えた。これで公平だろう」
「…………っ」
振り返りキャスターは驚きと呆れが入り混じった不思議な目で冥馬を凝視する。
過去を見た対価として聖杯戦争の秘密を教えた冥馬だが、完全にそこに打算がなかったわけではない。キャスターは合理的で基本的に冷静な人間だ。聖杯戦争の秘密を知ったからといって逆上して斬りかかるなんてことはしないだろう。
そして冥馬の話を全て聞き終わってから、やはり冥馬は信用できないと切り捨てる事もほぼ有り得ない。ここで冥馬を切り捨ててしまえば、単独行動スキルのないキャスターは大きくその力を削がれ弱体化する。そんな状態になれば、もはや聖杯を手に入れるどころではない。出会い頭にセイバーに打ち倒されるのがオチだろう。
計算高いキャスターならば冥馬の話を聞き終え少し吟味すれば、冥馬を信用せずに切り捨てるより、冥馬を信用してサーヴァントとして仕え続ける方が勝ち目はあるという結論に至るはずだ。
実際こうして遠坂冥馬は生きている。尤も冥馬自身、そんな打算とは別にキャスターが自分を信用してくれれば良いと思っていたのもまた事実であるが。
「とんだ食わせ者だな。ああ認めてやる、お前は大した男だよ」
「円卓の騎士に褒められるなんて光栄だね」
「ふっ。だがお返しに俺からもお前に一つ教えよう。マスターは契約を通じてサーヴァントの過去を夢で見ることがある。なら、その逆は?」
「逆? というと…………ま、まさか!」
マスターがサーヴァントと契約を通じて繋がっているように、サーヴァントも契約を通じてマスターと繋がっている。だとすればマスターがサーヴァントの過去を夢に見るという逆の事象が起こり得ることは十分有り得る。キャスターのサーヴァントともなれば、それを意図的に起こすことも可能だろう。
「お前の考えなんて、全てお見通しだったんだよ、俺は。怒ってくれるなよ? ラインを通して記憶を見た事は不問だと決めたのだからな」
道理で聖杯の真実を聞いても、キャスターがまったく驚いたり慌てふためかないはずだ。いつからかは知らないが、キャスターは冥馬が話す前から全てを知っていたのだ。最初から知っている事を口頭で言い直されても驚くはずがない。
肩を落として脱力する。遠坂冥馬、聖杯戦争始まって以来の完全敗北であった。
そんな冥馬を見つめながらキャスターは朗らかに笑う。
厭な風が教会を中心に流れ込んできている。聖杯戦争最後の戦いはもう直ぐだ。