※本編っぽい?※いつものオリ設定っぽい?※『こんなん○×じゃないっぽい!』な事になってるやもっぽい?※今回そんなにグロ表現あるっぽい?※筆者さん、地理とか軍事とか歴史とか算数とか壊滅的に駄目っぽい?※どうせみんないなくなるっぽい(2015/03/31初出。04/01誤字脱字修正&本日のNGシーン追加) Q:作戦開始までの約半日間、あなたはなにをしていましたか? A: ファントム・メナイ少佐「井戸少佐と名誉会長らと共に作戦の最終打ち合わせ」 水野蘇子中佐「死ぬ気はないが、何があるか分からないから金剛と夜戦してた。ゴム無しで」 井戸枯輝少佐「寝てた。起きたらメナイ少佐と会長と打ち合わせ。戦闘終了から寝ないで3時間で作戦立案したから結構穴があった。多分まだある」 目隠輝少佐&深雪「「寝たかったけど……その、水野中佐と金剛さんの声が、その、あの、その……」」 基地司令代理の漣「艤装の再確認。1年ぶりの出撃なもんで。あと、医務室のご主人様への挨拶」 佐々木提督(ショートランド泊地)「多摩の葬式。出撃前の儀式なもんで」 むちむちポーク名誉会長大佐(TKTラバウル支部)「戦闘前のスピーチ原稿の確認。その後はファントム少佐(メナイ)と井戸水中尉らと打ち合わせ。ガ島までの移動方法が若干変更されたな」 ラバウル聖獣騎士団の方々(ラバウル基地)「日課の礼拝」 回答者一同「輸送艦に積まれてた弾薬の確認? そんなの、誰かがやってるだろう?」 井戸少佐らブイン基地の面々と、ラバウル、ショートランドからの選抜部隊が旧ソロモン諸島深部――――アイアンボトムサウンドを目指して旅立っていったその当日の事である。 ラバウルに所属する一人の艦娘が、夜の気配を滲ませはじめた水平線の向こう側に、鋭い眼差しを向けていた。「待ちに待った時が来たのだ……」 白露型駆逐艦特有の、黒地に白のアクセントを加えた良家のお嬢様学校のような制服。背中が全て隠れるほどに長く伸びた流れるような金髪。酸素をたっぷりと含んだ血の赤色をした綺麗な両瞳。カチューシャ代わりに結んだ細いリボン。表は連邦、裏は合衆国の国旗の柄になっているコールドウォー・マフラー。そして、両側頭部で跳ね返ったクセ毛は、何だかとっても犬耳っぽい? その艦娘の名前は夕立。それも本土でもまだ数えるほどしかいない改二型だ。「多くの英霊が無駄死にでなかった事の証の……ために! 再び大帝国の理想を掲げるために! ラストダンサー成就の為に!!」『妖怪艦首置いてけ』『ソロモンの阿修羅』『阿修羅すら凌駕する駆逐艦』『人類製ベルセルク』『合衆国大統領および副大統領専用艦娘』 他にもあれこれ。 可憐な少女の姿形をした夕立は、これらの異名に恥じぬ鋭い眼差しで、陽の光が沈み始めた琥珀色の水平線に向けて、コンクリート製の護岸の端っこに仁王立ちしていた。「ソロモンよ!(CV:ここから谷邊由美)私は出番をハブられたっぽいぃぃぃ――――!!」 ソロモン海より遠く北西のラバウルの海に、基地防衛の要と言う名目でお留守番を命じられた夕立(独りぼっち)の遠吠えが、ぽいーぽいーぽいー……と空しく木霊する。 最初からクライマックスで行きます。 が、そんな事より聞いてくれよ読者よ。本編とあんまり関係ないんだけどさ。 このあいだ、近所のトラック防衛逝ったんです。トラック。 そしたらなんかE-2突破とかで香取来たんです香取。 練習巡洋艦。 もうね、アレかと。コレかと。 今まで番外編のメインヒロイン()のひよ子の外見なんてあんまり考えてなかったのに香取見たら一発でひよ子の外見固定されちゃいました。 メガネだよ、メガネ。 なんか高級将校っぽい礼服も来てるし、今まで外見イメージ固めてこなかったし何かしっくりきたし、 大淀さんならぬ大澱さん出しちゃったからひよ子ちゃんの外見イメージに大淀さん使えなくなったし、とか、 おめでてーな、漏れ。 よーし、漏れはひよ子ちゃんの外見香取先生にしちゃうぞー。とかもうやってらんない。 藻前は本当にひよ子の外見決める気があったのかと。 ていうか外見香取さんだとひよ子ちゃん=女子大生の設定はどこに行ったのかと、 問いたい。問い詰めたい。小一時間ほど自問自答したい。 藻前、本当は吉野家コピペ使いたかったんだけちゃうんか。 ていうかひよ子ちゃん=香取だと最後は生きたままミキサーにかけられて死ぬやんか。 と言われそうなので、やっぱりひよ子の外見はまだ薄ぼんやりとしか決めていません。ご了承ください。記念の艦これSS『嗚呼、栄光のブイン基地 ~ 鉄底海峡② 血戦、旧ソロモン海!』 艦体にぶつかって生じる僅かばかりの波の音と風の音、軋む鋼鉄の艤装、そして水野らの真上を飛ぶ絶滅ヘリ “大往生” のローター音。それら以外には、何の音も存在していない夜のサーモン海峡。 ブイン基地から正々堂々と出撃したB隊は今、月明かり一つ見えない曇り空と、困惑に覆われていた。「おかしい……」 状況はこうだ。 七日間ほど先行して隠密出撃していったA隊C隊を見送り、持ち出せるだけの燃料弾薬や鋼材を輸送艦に詰め込み、ブイン基地を後にしたのが今日の1830時である。 基地を出たなら早々に敵の哨戒部隊なりピケット艦隊なりと遭遇するものと思い、各艦ごとに適度な距離を取りながら、慎重にサーモン海峡こと旧ソロモン海峡を南下してきたのに、偵察機の一機とすら遭遇しなかったのである。 彼らの現在位置は既にニュージョージア海峡の半ば。あといくらも進めばラッセル諸島が――――アイアンボトムサウンドの入り口が――――見えてくるような位置である。 罠だ。 奴らは、絶対に、どこかで、こっちを待ち伏せてる。 誰もがそう考えていたし、彼らの置かれている状況もそれを無言の内に支持していた。 だが、肝心の敵も罠も見つからなかった。 改二型金剛2隻によるPRBR検出デバイスのクロスチェックすら完全なフラットであり、対潜警戒を密にしていたラバウル聖獣騎士団の駆逐艦らに乗るソナー妖精さん達と、彼女らのメインシステム索敵系からの報告もシロ。 ここに至るまでに見かけたものと言えば、大破して座礁したまま忘れ去られたと思わしき、無数の艦艇の骸だけだった。「いくらなんでも静かすぎる……」『デース……』 光学リレー接続された水野の呟きに、返答するかのように奇妙な鳴き声を上げたのは、ショートランド泊地の改二型金剛だ。 そして、この奇妙な違和感に気が付いた水野が、光学通信越しに “大往生” に連絡を取った。「や。それよりもちょっと待ってください。TKTの会長殿。貴方は確か、A隊だったはずなのでは……?」『知っている。では聞くが、貴公らはどうやってC隊に支援攻撃要請を取るつもりだったのだ? 衛星が撃墜されているのに』「「「あ」」」 名誉会長のその一言で、全員が今更ながらに気が付いた。今頃はどこかすぐ近くの島のジャングル内を踏破している最中であろうA隊ならともかく、地球の丸みのあっち側に待機しているC隊との連絡には衛星中継が必須だったと言う事に。 そして、この会長は撃墜された衛星の代わりとして、自分達の真上に居座ってくれているのだ。 もしも補足されれば、真っ先に撃墜されるリスクすらも承知して。『……お恥ずかしながら、今の私では練度不足でして、その、夜間発進も着艦もその、あの、その……』 ブイン基地203艦隊の中では古鷹と共にB隊の配属となった赤城が、消え入りそうな声で呟いた。 つまり結局、このB隊が他の隊と連絡を取るにはC隊のMidnightEyeか、A隊の大往生に空を飛んでもらう他なかったのだ。『大佐殿。意見具申です。C隊に、索敵機の発進を要請してみてはいかがでしょうか』 むちむちポーク名誉会長大佐の乗る絶滅ヘリ『大往生』のガンナーを務めている重巡娘『那智改』が、ランナー席に座る名誉会長に意見を寄こした。 お前、B隊とちゃうんか。という疑問でB隊の面々の心は一致したが、当の那智はまるでその事実に気が付いていなかった。『ふむ……よし。大往生よりB隊各員へ。これよりC隊に索敵要請――――』 名誉会長が無線越しにB隊の面々に通信を出していた最中、何度か遠雷のような爆発音がしたかと思うと、低く垂れこめたブ厚い曇り空を割って、火の玉が一つ、落ちてきた。 人類製のジェット飛行機と思わしき残骸だった。『『『「!!!???」』』』『MidnightEye-02よりALLUNIT! MidnightEye-02よりALLUNIT!! 罠だ! 敵はもう先手を打ってきている!!』 燃え落ちる火の玉が空中で大爆発を起こし、完全に四散する。 同時に、今まで規則正しい隊列を保っていたはずのB隊の青いマーカーの位置が正しい座標位置に再配置される。『嘘!? 何で、どうして!?』『か、艦隊がいつの間にかバラバラになってマース!?』 同時に、今の今まで沈黙を続けていたはずの全ての索敵系が一斉に反応。無数にポップアップされ続けるエネミーマーカー。 総数不明。 レーダー上が、前も後ろも赤い光点で埋め尽くされる。全てのセンシングデバイスが出せる警報を全て出す異常事態。 水野が短く驚愕する。「で、電子欺瞞!?」『リコリスの地下格納庫に隠蔽してあった戦略型の電子支配機だ!! 元々、空軍が次世代戦略システムの一環として開発していたプロトタイプだから、実際に飛べるのは今の一機だけだ!』『Bリーダー、メナイよりB隊各艦、急いで隊列を立て直せ! このままだと各個撃破の的だぞ!!』「深海魚……とうとう電子機器を扱えるまでに、電情戦の概念を理解するほどに知恵付けやがったのか……!」『水野提督、やばいデース! 前方10000に雷巡チ級が40、こっちに向かって魚雷を吐き出しまくってマース!! ……航跡で、海が白く濁ってマース』『ソォォォナン、デース!!』 2隻の金剛が各艦の観測デバイスから送られてきた生データ群を超高速で解析・計算して得られた照準データをB隊に配布する。受信した足柄が返信する間も惜しいとばかりに発砲、砲撃を続けながらサンタ・イザベル島を直接横断してきた重巡リ級群の最先頭に直撃。運良く発射直前だった右腕の口から覗いていた主砲に直撃、その狙いが大きくズレ、先に雷巡チ級が吐き出した魚雷群のド真ん中に直撃。 誘爆に次ぐ誘爆で途方も無く巨大な水柱が連続して立ち上り、魚雷の壁に大きな穴が開く。203の古鷹とラバウル聖獣騎士団所属の駆逐艦隊がその穴に向かって全ての魚雷を一斉射撃。敵魚雷群と差し掛かったあたりで自爆コマンドを送信。大爆発。魚雷の壁に、一筋の道が出来る。 それを見たB隊の指揮官を務めるメナイが穴に突っ込めというよりも先に二隻の金剛が次発装填中の雷巡チ級を狙撃するよりも先にB隊の背後。 TKTの足柄がいたあたりから轟音と閃光。超展開時に発生する純粋エネルギー爆発。 ダミーハート――――正式名称『非カレン・非AP式特殊デバイス』を用いた、提督不在の超展開。『先に行ってて! 私はこいつら始末してから追いつくから!! 行って!』『待て足柄!』 いまだ余波収まらぬエネルギー爆発を背中に受け、足柄が跳躍。サンタ・イザベル島を横断してきた重巡リ級の群れの中に飛び込む。祈るように握りしめられた両手によるハンマーナックルで最寄りのリ級に墜落。そのままB隊には視線もくれずに乱戦に突入。足柄にとってもリ級らにとっても、砲や魚雷を構えるよりも殴る蹴るの方が圧倒的に効果的な距離。『名誉会長……いいえ、提督。私ね、感謝していたわ。羽黒ちゃんがいなくなってから、提督はずっと私達の安全を最優先で確保してくれてたのは知ってるわ』 ハンマーナックルで足元に沈んだリ級の顔面――――それも目玉を!――――をトーキックで蹴飛ばして、足柄が最も敵の密度が濃い方向に突撃する。『確実に勝てる敵戦力に、確実に勝てる味方戦力を、確実に勝てるタイミングでぶつける。毎日が連戦連勝よ。とっても気分が良かったわ――――でも、駄目だったの。私、それだと全然イケなかったの』『大往生』に乗る名誉会長の静止を聞き流しながら、足柄がリ級の一匹を射突型酸素魚雷のボディブローで沈めながら電波で言った。『プロトの奴は記憶が戻ったとか言って、男にうつつを抜かしているけど、私は――――ううん『足柄』は違うの。欲しいのは男でも、約束された勝利でもないの』 次発装填中の足柄の隙をついて、異形の大口と化した両腕から射突型21インチ魚雷を突き出して背後から飛び掛かって来た別のリ級を回し蹴りで迎撃し、うつ伏せに倒れ込んだそのリ級の延髄目がけて全力で踏みつける。ストンプキル。リ級の首から明らかに嫌な音がして、曲がってはいけない角度にぐにゃりと捻じ曲がる。 続けて、前方から突撃してきた2匹のリ級を左右の射突型酸素魚雷による喉首狩りで確実に殺す。『ずっとこの時を待っていた!! 私が、足柄が望んでいたのはこれよ!』 距離を取って主砲を構えたリ級達には対空機関砲の弾幕射撃で牽制しつつ、最寄りのリ級に突撃。 そのリ級が砲を飲み込み、射突型魚雷を吐き出し直すよりも先に深く腰を落とした足柄がリ級のアゴ目がけて脳天ヘッドバッド。衝撃でリ級がふらつく。そのリ級の腰を取って拘束。そのまま盾代わりにして主砲を構えていたリ級達に突進。数は3。仲間ごと撃つべきかどうか一瞬迷ったのが運の尽きだった。一番右に盾にしていたリ級とついでにコッソリと抜き取っておいた時限信管式の魚雷の束をセットで押し付ける様に放り投げ、真ん中の首目がけて突進の勢いそのままに右腕のウェスタンラリアット。足柄の速度と体重を受け取ったリ級はあっさりと重心を後方に崩され、後頭部から水深の浅い海底に叩き付けられる。きめ細かい白砂混じりの盛大な水柱が立つ。一番最後まで残っていた左は、足柄が倒れ込む途中に斉射した主砲の一発に運悪く右目を撃ち抜かれて既に絶命していた。『私が私らしく! 艦娘が、兵器が! 全てのスペックを正しく出し切れる戦場が!! 戦い続けられる悦びが!!』 足柄が地面に倒れ込んだ反動と背筋の力でコメツキムシよろしく飛び跳ねるようにして体勢を立て直すついでに、倒れ伏していた真ん中に主砲を叩き込む。 再び前方に突撃。 この時点で、まるで無傷の足柄を半包囲していた深海凄艦達の包囲の輪が若干広がり、崩れ始めた。『ここが、この戦場が! 私の魂の場所よ!!』 足柄のその叫びを叩き潰すかのように、足柄の背中で大爆発が起こる。直撃弾。足柄が吹き飛ばされ、うつ伏せに倒れ込む。 敵の砲撃。【メインシステムデバイス維持系より緊急警告:脊椎第1、第2小脳デバイス機能停止。システムフリーズ。再起動までの間、艦体各所のレスポンス、およびリアクションに深刻な遅延が予想されます】【メインシステム戦闘系より優先警告:主砲ユニット[00 02 04 05 06 09]との応答途絶。ケーブルの断線と推測されます】【メインシステム索敵系より緊急報告:PRBR検出デバイスにhit. 6時方向。感多数。脅威ライブラリを検索中です】 思わず振り返った足柄の目に、信じられない光景が飛び込んできた。 完全な人型。死人色の肌。白とも銀色とも取れる輝きの長い髪。上半身のみの水兵服。水着とも下着とも見て取れる、下半身の破廉恥な紐(透け透けワインレッドのレース編み)。湯気や陽炎のように立ち上る赤い瘴気。実際バストは愛宕だった。 戦艦タ級。 タイプ=エリート。『!? な!? こいつ、プロトみたいな悪趣味な下着……じゃなくて! こいつ、どこから!?』 背後には誰もいなかったはずなのに。味方が抜けていった航路のはずなのに。 そのタ級の背後。座礁したままの大破艦が大きく傾いていた。艦首は天を指し、船底は大気に晒されていた。 直後、その大破艦が閃光に包まれる。 一瞬の閃光が晴れた後、そこに大破艦の姿は無く、代わりに、新たなる戦艦タ級の姿があった。『こいつ、ラバウルを半壊させた……!』 そこまで見て、ようやく足柄も猛烈な後悔と共に思い出した。 戦艦タ級。 足柄の自罵にもあるとおり、かつて単騎でラバウル基地を半壊させた、深海凄艦の新種である。 巨大である以外はほとんど人間や艦娘とそう大差無い姿形をしているこのタ級最大の特徴として、極めて高度な擬態能力が挙げられる。 沈没寸前の大破艦に偽装して人類側の基地内部に侵入し、無防備なそこでタ級本来の姿に戻って破壊活動を行ったり、今しがたのように背後から奇襲したりと、かなり厄介な戦い方をする種である。『畜生が! 何で忘れてたのよ私は!?』 純粋な戦闘能力こそ同じ戦艦種であるル級の足元にも及ばないし、大破艦以外にも擬態できないが兎に角このタ級、戦い方がえげつないのだ。 ラバウルの時も、避難の遅れた住民達がまだ大勢残っている町を背にして戦ったり、停泊中だった船を片っ端から壊して島民の脱出手段を奪ってから島中駆け回っての乱戦に持ち込んだり、艦娘や基地の防衛装置よりも先に飛行場や基地の通信塔などの、被害を無視できない高価値目標から優先的に潰したりと、とことんダーティな戦闘スタイルなのだ。 挙句の果てには、対応に当たっていた『陸奥』の第三砲塔でしこたまブン殴られて死んだ時ですら自爆して、周囲の大気と反応して活性化する強酸性の有毒体液を撒き散らかして基地の半分を燃やしたくらいだし。 ある意味このダーティな戦術こそが、タ級最大の特徴なのだと言ってもいいかもしれない。(マズイわね……今まで見てきた座礁艦が全部コイツだったとしたら、あと何匹!? 10? 20? 急いで本隊に知らせないと……!) 最新鋭の検出デバイスすら騙しきるコイツの擬態を唯一見破れる雪風は今、戦艦娘『陸奥』を護衛につけてブインとショートランド周辺の住民をパプアニューギニア本島まで疎開させている最中だったはずだ。雪風以下の索敵能力しか持たない本隊では、恐らく、甚大な被害を被るだろう。 至近距離からの不意打ちで瞬間的に大破した足柄など最早敵ではないと考えたのか、数匹のリ級を残して、タ級たちは踵を返してB隊の面々の追撃に移り始めた。『あ、こら! 待ちなさい! 待ちなさいってば!! 待てやコラー!! ……B隊足柄よりC隊、支援砲撃要請! 終末誘導はこっちでやるわ! だからミサイルいっぱいよろしく!! SALH開始!』 立ち上がり、こちらに背を向けたタ級達に追いつくべく、地響きと水柱を立てて追撃する足柄が通信と同時に自我コマンドを入力。対空砲で後方のリ級を牽制しつつ、妨害に回ってきた一匹のリ級を射突型酸素魚雷によるアゴ・ジャブの一撃で沈める。何ともいえない表情のまま沈んで行ったリ級には目もくれずに足柄は追撃に戻る。 生き残ったレーダーから得られたターゲットの情報を処理して、ミサイルに送信。討ちっぱなしで発射される対艦ミサイルの誘導と目標割り振りを足柄は開始しようとした。『C隊よりB隊各員へ。確認するが……支援はこれを入れても3回が限度だ』『『『はぁ!?』』』 足柄どころか、先行していた他のB隊の面々までもが思わず声を上げた。『こちら(C隊)に随伴していた輸送艦なんだが……積載されていた弾薬コンテナの中身がほとんど全部、艦娘向けの砲弾ばかりだったんだ』『何よそれ!? ふざけてるの!?』 今、もっとも支援を必要としている足柄が先頭集団に追いつき、最後尾にいた戦艦タ級の背中に32文ドロップキックを入れて転倒させ、倒れたタ級を背中から拘束して怒炉守落し(推力:生足)で沈めながら怒鳴り散らした。『弾薬が入ってると聞いて、皆、普通のミサイルとかが入ってるもんだとばかり思い込んでたしなぁ。一度もコンテナ開けて確認しなかったし……』『……あー』 コンテナの中身を確認しなかった一人である足柄が嫌そうなため息をつきながら、最寄りの別の戦艦タ級の両足を4の字固めで完全に固定する。 苦悶の表情で声なき絶叫を上げ、涙目になって浅瀬をタップし続けるそのタ級には目もくれずに、仰向けに寝転んだ姿勢のまま最後まで生き残っていたリ級らと砲撃戦を展開する。いいところに4発貰った。 もともと半壊状態だったところにダメージを追加で受けて、艦体各所の機能がさらに低下する。【メインシステム戦闘系より緊急警告:ダメージコントロール、負荷限界です。ただちに戦闘行動を終了・撤退し、適切な処置を受けてください】 顔には出さずに思う。(さすがに腐っても戦艦級……さっきから全力で間接極めてるのにちっとも曲がりゃしない。おまけに、さっき怒炉守落しで沈めた方も、もう立ち上がってきてる! 個人的にはもっと楽しめるから大歓迎だけど、作戦的にはかなりマズイわね……)【メインシステム索敵系より報告:PRBR検出デバイスにhit. 敵艦増援。中型10】『!!』 足柄の視界に、海中より浮上してきた新手の雷巡チ級の姿が見えた。 続けて、怒炉守落しの衝撃がまだ抜けていないのか、ふらつく頭を押さえて立ち上がる先程のタ級と、撃破したと思っていた、先程の重巡リ級らの姿も。ハッキリと。 半分も殺れてなかった。 半死半生の足柄を認識したそいつらが、実に素敵な笑顔を浮かべてにじり寄る。半分泣きそうになっていた足柄が歯を食いしばり、無理矢理に笑みを浮かべる。そして、4の字固めで拘束していたタ級の膝をヘシ折り、立ち上がる。 モズグズめいた笑みを浮かべる足柄の凶相に、にじり寄ってきていた深海凄艦達が咄嗟に足を止める。 左手でコイコイしながら足柄が叫ぶ。『ッシャア! かかって来なさい!!』 深海凄艦達も、声なき絶叫を上げて全方位から一斉に襲い掛かる。 足柄は、最後まで逃げなかったはずである。「……始まったな」 そして、B隊の面々が交戦を開始した事は、水平線の向こう側から届けられる明るさと遠雷のような轟音から、A隊の面々にもハッキリと分かった。 A隊の現在位置はサン・ホルヘ島、最南端にある砂浜から少し島に入った密林のあたりである。 彼らは既に、その日程の三分の一を消化してしまっているのだ。残りの三分の二はもちろん、飛行場姫ことリコリス・ヘンダーソンの暗殺と、全員揃って無事の帰還である。 ちょっとこの進軍速度は有り得無くね? そう思ったあなたは正しい。 少なくとも、よく訓練された艦娘という兵器が、どれほどのパフォーマンスを有しているのかを知らないのであれば、その考えに間違いは無い。「那珂ちゃん達、頑張りました!」 人間がこの密林諸島を、この短時間で踏破するのは極めて困難である。それに間違いは無い。 なので、このA隊のリーダーを務める井戸少佐は、作戦開始前に、旧ソロモン諸島の主要な島々の地形データ――――植生や高低、土壌条件までもが記載されている詳細なやつだ――――をプリントアウトしたものを那珂ちゃん達A隊所属の艦娘達に配布し、こう言ったのだ。 ――――それ全部記憶したら、俺たち人間担いで走れ。雑貨みたいに扱っていいから。急げ。 ――――……はい? 井戸は那珂ちゃんと天龍の2人によって江戸時代の飛脚の棒よろしく運搬され、輝は深雪にお姫様抱っこされてという、傍から見たら色々とアレな格好の提督達だったが、結果だけを見てみればそれは正解だった。艦娘達はソロモン諸島の島々を次々と走破し、ゴムボートで島から島へと浅瀬を横断し、深海凄艦側に察知される事無く、最終攻撃開始地点であるサン・ホルヘ島の南端部へと進軍する事に成功した。 因みに佐々木少佐は己の足だけでそんな面々に余裕綽々でついて行った。水野と佐々木のいた第11期インスタント提督の選抜試験の過酷さはこんなものではなかったのだ。 そして現在、井戸達は潜伏のため地面にそこそこ深い大穴を掘った物にビニルシートを敷いて天幕を張り、その上から土や草を被せて擬装した、即席の地下テントの中で交代で休憩を取っていた。「……ZZZzzz……ぅ、うぉ」 寝袋にくるまったまま寝返りをうつ井戸は、夢を見ていた。 夢の中で井戸は、井戸水の名前でTKTの臨時会議に出席していた。 同会議に出席していたチキンブロス大尉が、資料(という名前の日誌の抜粋記事)を片手に報告した。 ――――やはり、件のプロトタイプ古鷹もそうですが、どの艦娘も段階を追う毎に自我や記憶が希薄になっていくようですね。例えばこの井戸少佐の嫁(自称)の軽巡『天龍』の場合「……ZZZzzz……ぅ、うぉぉぉ、ゃめろー」「? 何か言いました?」 現実世界での寝言に反応した輝に気付く事も無く、井戸は夢を見続けていた。 何の脈絡も無くシーンが飛ぶ。 井戸は、急ぎ足でどこかの施設の廊下を歩いていた。 ――――草餅だ、何があった!? ――――少佐殿。帰投する少し前からずっと、天龍の様子がおかしいんです!! 井戸の背後から女の声がした。井戸も良く知る、TKTの草餅少佐の声だった。 そして、それに返事をしたのが自分だと、井戸は、何故か理解できた。 ――――症状は? ――――最初は、地下テントで仮眠に入る前にコーヒーカップを取り損ねただけだったんですが、仮眠が終わって目が覚めたら、何でここにいるのか理解できなかった、というか、ラストダンサー作戦の事自体も思い出せなかったんです。 ――――……続けて。 ――――その時は、すぐに思い出したから大丈夫だと思ったんですが、飛行場姫、ああ、リコリス・ヘンダーソンと直接対決した時に超展開をしたら……したら、天龍が、天龍の記憶がもうほとんど残っ「ぅ、ぅあっ!?」「うひゃあ!?」 井戸は、夢の中の自身の発言に驚いて思わず飛び起きた。 そして今、自分がどこで何をしているのかに理解が及ぶと、安堵のため息を盛大に吐き出した。「……ゆ、夢かぁ」「び、ビックリしたぁ……」 それに心底驚いたのは、井戸の真横で寝ていたはずの輝だった。「? な、何だ目隠……少佐か。寝ないのか」「あはは。ちょっと眼が冴えてしまいまして……ところであの、井戸少佐」「何だ?」「僕達、あ、いえ、我々はB隊の救援に向かわなくても良いのでしょうか?」 輝が隣で寝ている井戸に問いかけた。 井戸の隣では天龍と深雪がすぅすぅと小さな寝息を立てて寝ており、その更に隣ではあきつ丸が大口開けてイビキをかいて寝ていた。寝返りをうった大潮の腕が首の上に乗っかったままなのだが、寝苦しくはないのだろうか。 寝袋にくるまったまま顔だけ外に出して外を眺めていた輝の目には、暗視ゴーグルと歩兵用の多目的リボルバーランチャーを装備して――――歩兵用の5.56ミリでは飛行小型種にすら対抗できないからだ――――歩哨に立っている佐々木少佐と、彼の秘書艦『多摩』の後ろ姿が少し遠くの闇の中に見えた。「行かないでいい。むしろ行くな」 井戸は即答した。「我々A隊の役割じゃない。それに、現在無線封鎖中だ。もしもお前にGOサインを出して援軍に向かわせたとして、ここを離れている間に状況が変わったとしたら、どう連絡を付ければいい?」「ですが……」「では聞く。この作戦において、最悪のケースとは何だ?」 輝は、一瞬言葉に詰まった。「……作戦が失敗する事、です」「それ以外で」「……あと、えと……全滅、とかです……か?」「正解だ」 正解なのかなぁ。と輝は思ったが、口には出さなかった。 いいか、と井戸は続けた。「今からB隊の援護に向かったとして、その背後や遠距離からあの鬼に狙撃されたらどうする。いや、それでなくともこの近海を遊弋している連中は情報によると精鋭ぞろいだ。挟み撃ちにするつもりが挟み撃ちにあいましたなど洒落にもならん」「……」「分かったら早く寝ろ。次は俺達が見張――――」「井戸少佐。急いで来てくれ」 井戸が目を閉じ、無理矢理に寝ようとした矢先、外にいたはずの佐々木少佐が地下テントに首を突っ込んできた。 折角寝る所だったのに。という不満を何とか押し殺し、佐々木少佐に向き直った。「少佐、どうしました」「鬼が――――泊地凄鬼がすぐ近くにいる。指示を!」 地下テントで寝ていた井戸達全員が外に飛び出して周囲を確認しようとした時、一番驚いたのは泊地凄鬼がすぐ近く――――井戸達から見て右に2~300メートルかそこいらという超至近距離だ――――で背を向けていた事ではない。 夜が昼になっていた。「何これ!?」 輝が驚愕したように叫ぶ。その叫びは、この場にいるA隊の面々全ての心境を代弁していた。 その原因は明らかだった。 泊地凄鬼の右肩から伸びている、長大な砲身の先端部に、青白く輝く、膨大なエネルギーが収束しつつあったからだった。 水平線の向こう側の戦闘痕跡以外の明かりが全く存在しない、曇り空の真夜中が、真昼に見えるくらいのエネルギー量である。単純に計算したとして、その光度は53万バルス(※1バルス=53ルクスとして計算)にも匹敵する。 そして、そんなエネルギー収束の余波だけで、数百メートル離れた井戸達の所まで熱を帯びた猛風が吹き荒れていた。「何でこんな近くに!?」「ずっと隠れてたのは、こっちだけじゃなかったみたいだな!」「畜生! Bじゃなくてこっちが遭遇する可能性もあったんだ! やっぱ寝ないで3時間で作戦立案とか無茶が過ぎるだろ!!」 荒れ狂う熱風と、風に乗って口の中に飛んでくる葉っぱに負けじと互いに叫ぶ。そうしないと、この距離でも互いの声が聞こえないからだ。 泊地凄鬼はこちらに気付いた様子も無く、サン・ホルヘ島南端部の小さな岬を背もたれにして全身を寄りかからせていた。下半身は全く見えなかった。おそらく、反動を抑え込む土台として使うために、海底を掘り返して深度を確保してあるのだろう。 その証拠に、主砲の各所からはタコの足のような無数の吸盤がくっついた青黒い触手が何本も展開し、吸盤で周囲の大地や海底に吸い付きつつその先端部を突き刺して砲を固定していた。「あの鬼、どこを狙ってるんでしょう……!?」「かなり高い仰角だが……北西の、どこか、かなり遠く……トラックか? いや、待て!」 輝の発した疑問に、井戸が半分思考に没頭しながら、独り言のように答えた。 鬼の主砲は、大口径の狙撃砲だったはずだ。戦艦『大和』の46センチ砲よりも大きな、メートル単位で測った方が早いくらいの。 スナイパーカノン。 物理砲弾。「待て待て待て! ちょっと待った!」 突然叫び声を上げた井戸に、A隊の面々が注目した。「こんな至近距離で発射なんてされたら、バックブラストで、狙撃先の連中よりも先に、俺らが死ぬ……と思う」 誰も彼もが、ギョッとしたような表情になる。 メートル単位で測った方が早い口径の主砲で、たった2発でパナマ運河を完全破壊した大口径砲弾を、地表から静止衛星を狙い撃ちできるほどの高初速で発射しようとしているのだ。 当然、その反動で周囲に巻き散らかされる衝撃波の威力や殺傷範囲も、推して知るべしである。 そして現在、鬼の周囲に渦巻いている青白いエネルギー嵐は、フルチャージ状態でもないのに海水を沸騰させ、枯草が自然発火を起こすほどの熱的エネルギーを有しているのである。「だ、誰か奴を止めろぉぉぉ!!」 誰かがそう叫ぶ。誰かが砂浜に向かって駆け出す。誰もがそれを目で追う。 ブインの203艦隊の那珂ちゃんだった。「那珂ちゃん、センター入りまーっす!『展開』!」 言うが早いか、海の中に入ってからいくらも進んでいない浅瀬で那珂ちゃんが『展開』して軽巡洋艦本来の姿に戻り、即座に座礁した。その状態で那珂ちゃんが自我コマンドを入力。全ての主砲と副砲、対空砲を泊地凄鬼に指向する。魚雷は、いくらなんでも浅すぎだ。「那珂ちゃんのワンマンライブ、はっじまっるよー!!」 わぁい。と自分で合いの手を打ちつつ、那珂ちゃんが全ての砲を一斉射。精密照準など必要なかった。この距離なら、目を瞑っていても外す方が難しかった。 外した。「え」「「「え」」」 主砲の先端部に渦巻くエネルギー乱流は鬼の身体までもを完全に覆っており、飛来した砲弾の悉くを逸らし、弾き、ただの一発たりとも着弾させなかったのだ。まるで、艦娘が『超展開』時に発生させる純粋エネルギー爆発のようだった。 主砲に装填されている砲弾を徹甲弾から時限式・着弾式それぞれの榴弾に変えても無駄だった。内部の炸薬が空中で誘爆。爆発の衝撃波すら、まともに通っていなかったようだった。「発射体勢に入ると同時に防御力場展開……ドラゴンでもまたいで通るつもりか!?」「え、A隊井戸少佐よりC隊へ! 泊地凄鬼発見! 電波封鎖解除、支援攻撃を要請する! 大至急!!」『C隊よりA隊。支援要請了解。ターミナルコントロールはそちらに一任する。ミサイル発射。着弾まであと2分。交信終了』 その宣言からきっちり2分後。那珂ちゃんによるレーザー終末誘導によって、泊地凄鬼のキッチリ真上に落ちて来た都合32発の対艦ミサイルはやはりエネルギー嵐によって遮られ、満足なダメージを与える事は出来なかった。 この時点で、泊地凄鬼は井戸達A隊の存在に気が付いたようだったが、まるで意に介していなかった。少し離れたところで変な虫が歩いてた。その程度の関心しか払っていなかった。軽巡洋艦本来の姿に戻って砲撃を続けていた那珂ちゃんに対しても、それは同じだった。 発光現象がますます強くなる。 誰がどう見ても、発射は目前だった。『み、みんな! 那珂ちゃんの影に早く!!』「那珂ちゃんさん殿!!」 井戸達と共にただ発射の瞬間を見守るしかなかったあきつ丸(改)が、井戸の無線機を奪い取って那珂ちゃんの通信系に接続した。「足であります! 主砲を固定しているあのタコ足を見てくださいであります!!」 その指示通り、那珂ちゃんは見た。井戸達も連られて見た。 エネルギー嵐の影響で生じた、沸騰する大波をざぶざぶと被っている、タコのような吸盤をいくつも生やした青黒い触手だった。「あのタコ足には波がぶつかっているであります! あそこまでは防壁が届いていないのであ」 あきつ丸(改)が最後まで言い切るよりも先に、那珂ちゃんが自我コマンドを入力。 一番的が横に開いていて一番狙いやすそうだったからという理由で左端のタコ足に全砲門の照準を合わせる。発射。都合数秒間の飽和射撃により、それなりに太くたくましいタコ足の一本が見るも無残に言ちぎれ飛ぶ。 その足が何かしらの致命的な役割を持っていたのか、それとも足が一本欠けても駄目なくらいに主砲の反動が凄まじいのかは不明だが兎に角、そこで初めて、鬼の表情が驚愕に染まった。「ッ!?」 鬼が驚愕8割、怒り2割くらいの形相でこちらと発射目前の主砲を交互に見やる。そして、黒いロンググローブに包まれた細く美しい両腕で主砲にぶら下がるようにして砲の反動制御に取り掛かった。 続けて那珂ちゃんが別のタコ足を狙撃。こちらもやはりあっさりと千切れ飛ぶ。「ェエィ、ットゥシイ!!」 これ以上の妨害を嫌ったのか、鬼がその時点で狙撃を敢行。 井戸達の予想通りに、凄まじいでは済まされないレベルの熱衝撃波が――――充填中ですら鬼の周囲の海水が沸騰し、付近の枯草が自然発火するようなエネルギーが――――鬼を起点として放射状に拡散する。井戸達は那珂ちゃんの影に退避していたので難を逃れられたが、至近距離からそれを直撃を受けた那珂ちゃんは、『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁぁ!!』 タダでは済まなかった。 照射を受けた右舷の装甲板は瞬間的に沸騰し、甲板上に露出していた全ての砲は基部から溶接され砲身が溶け落ち、体積の細かった電探は一つ残さず蒸発し、魚雷発射管や汎用投射管は内部の魚雷や爆雷の悉くが誘爆して艦内にも大損害を出していた。艦橋も上半分が溶解し、原型を留めていなかった。 文字通りの身代わりだった。「な、那珂ちゃん!!」『こ、 んなになっ も、那#ちゃん、ヨゴレには……路線変更だkは絶対しないんだから!!』 その対価として、鬼は狙撃に失敗した。 反動を抑えきれずに砲身が大きく上に跳ね上がってしまい、砲弾ははるか北の上空に向かって、周辺大気をプラズマ化させて、音を置き去りにして飛んで行った。 狙撃を散々に邪魔された鬼が全てのタコ足を主砲内に格納すると、怒りの形相で那珂ちゃんの方に全身で振り返った。『ァタシノ、 ゙ャマヲ、ゥルナ!!』 かすれた声で叫ぶ鬼が那珂ちゃんに正対して砲を構える。再び徹甲弾が発射される。 咄嗟に那珂ちゃんは艦体を圧縮し、艦娘状態に戻って直撃を避けたが、砲弾が近くをかすめた際の衝撃波で吹き飛ばされる。そして井戸達の居るあたりに真上から降ってきた。 誰も彼もが慌てて両腕を伸ばして、全力で那珂ちゃんを受け止める。 そしてその反動を利用して那珂ちゃんは空中に再び飛び上がり、滞空中の数秒間に月面宙返り三回転半ひねりを決めて両足を揃えて着地。付き過ぎた勢いを腕立て伏せ一回で殺して両足を揃えて立ち上がり、胸を反らして両腕を大きく上げて身体全体でYの字――――不死教の教徒らが言うところの『太陽万歳』のポーズ――――を作る。「世界のツカハラ!!」 そして意味不明な発言をした。「な、那珂ちゃん大丈夫か!? ……その、頭とか」「大丈ーぅ夫でーっす☆ 中枢区画にはダメージ入ってなかったから、圧縮も展開もまだまだ行けまーっす☆」 艦娘状態に戻った那珂ちゃんは、顔は煤で真っ黒に汚れ、服も色々と危ない所が破けており、髪も普段のお団子ツインテールが解けた上にパンチパーマになっていたが、それでも声や体の動きには違和感を感じさせなかった。普段通りの鬱陶しいまでのハイテンションのままだった。だから、最後に那珂ちゃんが小さく呟いた『……まだ、大丈夫』の一言は誰も気が付かなかった。 今までの心配返せよ。 誰もがそう思ったが、とりあえず無事だし兎に角戦力低下にはならないだろうと思って、泊地凄鬼からのこれ以上の追撃を避けるべく、撤退の準備に入った。 佐々木少佐と多摩が歩兵用の多目的リボルバーランチャーを泊地凄鬼の顔面に向かって構え、引き金を続けて6回連続で引く。装填されていた煙幕弾が濃密な煙の尾を引いて泊地凄鬼に迫り、空中で爆発。1メートル先も見えないほど濃密な煙が周囲一帯に広がる。「良し、今だ! 走れ走れ走れ!!」「島の奥に向かって走れ! 密林を目隠しにしろ!!」「「「了解!!」」」 煙の外から佐々木と井戸の叫びを聞いた泊地凄鬼がサディスティックな笑みを浮かべる。 ――――馬鹿め。姿は見えなくとも、そんな大声を上げていては、なぁ? そして島の奥側の煙の境目に意識を注目させている泊地凄鬼の足元を通って、黒塗りの手漕ぎ式のゴムボートが一隻、全速力で抜けていった。 井戸達A隊が島から島を渡る際に使っていたゴムボートだった。 大形の軍用ゴムボートに乗ったA隊の面々がそれぞれオールを持って全力で海を掻き、全速力でサン・ホルヘ島から離れ始めた。「馬鹿め」「単純馬鹿が」「馬鹿め。と言って差し上げますわだニャー」 気取られぬように小声で鬼を罵りながらも、えっさほいさとオールを漕ぐ手を休めないA隊の面々。「提督、ヘリの音が」「うむっ。そろそろだな。A隊の艦娘各員は『展開』の準備。まずは如月からだ」「「「了解」」」 そしてある程度沖合まで来たところで如月からの進言を受け、駆逐艦娘――――言い出しっぺの如月から順々に、1人ずつゴムボートから静かに降りていった。 そして最後に天龍と多摩と深雪を下ろし、そこそこの距離を取ったところで、井戸は双眼鏡をのぞき込んでB隊の現在位置を確認した。 もう既に、泊地凄鬼との交戦可能領域にまで迫ってきていた。「……無線封鎖解除! A隊の各艦娘はただちに『展開』せよ!!」 井戸が無線機に叫ぶと同時に、夜の海が一瞬の閃光で包まれる。そして、艦娘本来の姿が海の上に姿を現した。 そして、井戸と佐々木と輝はゴムボートに寄せて来た、己の旗艦『天龍』『多摩』『深雪』それぞれに乗り込み、大急ぎで艦橋の艦長席に向かうと、ただちに南進を命令。A隊全ての艦娘はただちに『天龍』『多摩』の2隻を中核とした変則的な輪形陣を形成。当初の予定を繰り上げて、ガダルカナル島を直接目指して南進を開始した。『井戸少佐よりA隊各員へ! プランを若干変更する。進路変更、敵との交戦は可能な限り避けて、一直線でこのままガダルカナル島へと直接侵攻する!!』『『『了解!!』』』「……? アッ!?」 この『展開』の際に生じた閃光で、鬼は自分が騙されていた事に気が付いたが、もう遅かった。泊地凄鬼を射程内に収めたB隊からの――――B隊の中でも快速な連中で構成された先遣部隊からの――――攻撃が鬼に殺到する。『死ぬがよい』 まず、A隊の配属でありながらも、通信中継の為にB隊に同行していた、むちむちポーク名誉会長大佐と那智の乗る『大往生』からの一斉攻撃から始まった。世界的武器商社『EVAC』の主力商品の一つ、対地攻撃用ロケットポッド『デスレーベル』に、帝国空軍御用達の兵器工廠開発の30mmチェインガン『裏2週目』による面制圧弾幕。 いったいその小さな機体のどこに収まっていたのかと疑いたくなるような投射量だった。弾切れの気配すらなかった。 一発一発どころか全部まとめて叩き付けられても、鬼には軽い焦げ跡1つ付かなかったが、間断なく発生し続ける爆炎と爆音で、鬼は目と耳と鼻を潰された。『天に烈風、地に流星、目に物見せるは一航戦が最終奥義!』 そして『超展開』状態で、海水の抵抗など無いかのようにして急接近した赤城の近接攻撃が追撃で入った。 奥義などと言っておきながら、その実ただのショルダー・タックルだった。 しかも、赤城の重心は全然高い位置にあり、元々精密砲撃に特化した安定な形状――――下半身が接地面積の大きな平べったい形状で、上半身は小さな人型――――の泊地凄鬼にぶつかった途端、あっさりと弾き飛ばされた。「……クゥ、クゥボ、ダト!?」「「「!?」」」 鬼の掠れた呟きに、護衛の深海凄艦達の雰囲気がざわりとどよめいた。 そしてこの時点で鬼と、鬼の護衛を務めていた周囲の深海凄艦らの関心はちっぽけな戦闘ヘリから、目下最大の脅威(もちろん、深海凄艦にとっての)であるクウボ娘の『赤城』に向けられることになった。 さもありなん。 この連中――――旧リコリス飛行場基地を根城にし、現在鬼の護衛に回されている、この最精鋭部隊の面々は、かつて龍驤から直々に訓練を受けた者らで構成されている。 深海凄艦化しかかっていたとは言え、頭に『軽』の一文字が付いていたとは言え、元一航戦のクウボ直々によるカラテ・トレーニングである。 一部の深海凄艦に至ってはトラウマのあまり、戦闘中にも拘らず『アイエエエ』と情けない悲鳴を上げ、海中で粗相を致す者まで出た始末である。『うりゃー!!』 およそクウボらしからぬカラテシャウトと共に赤城は鬼の下半身に飛び乗り、人の形をした上半身に向かってパンチ。何の変哲も無い、ただのテレフォンパンチだった。 それを鬼は身体を逸らしながら赤城の腕を左腕一本で掴んで軽くいなし、右手を添えながら自身の肩を軸にして赤城の突進の勢いを回転運動に変える。赤城が後方に向かって放り投げられ、受け身も取らずに背中から水面に叩き付けられる。『……ェ?』 その光景を見て、鬼も、その護衛らも、何か信じられないものを見た。というような雰囲気と表情を浮かべた。赤城を投げ飛ばした張本人の泊地凄鬼に至っては『わ、私何も間違ったことしてないよね!?』とでも言わんばかりの不安げな表情で護衛部隊と赤城の方を交互に見遣っていた。『フ、フフ……なかなかやりますね! でもまだまだぁ!!』 膝を笑わせながら赤城が立ち上がる。赤城は海水の抵抗など存在しないかのような速度で再び鬼に駆け寄り、再び大振りのパンチ。鬼がカウンターで合わせた裏拳一発で迎撃。再び吹き飛ばされる。 それを見た、鬼を初めとした深海凄艦らは思う。 ――――もしかしてコイツ、すっごく弱い? 正解である。 この赤城がブイン基地に配属されてからやっていた事と言えば、喰う寝る遊ぶの他に、戦闘中の井戸に代わっての艦隊の代理指揮に、正規空母本来の仕事である艦載機運用くらいのものであった。 元々この赤城には無人空母としての機能と、艦隊の指揮運用能力だけが求められていたために、今まではそれでも大丈夫だったのだ。井戸には空母娘との超展開適性は全く無かったから、カラテの訓練の必要性も無かったし。 泊地凄鬼の狙撃によって島の大型レーダーが破壊されたのを境に、真面目に訓練に取り組むようになったようだが、それでも付け焼刃にすらなっていなかった。 現実は非情である。『でりゃああああ!!!!』 赤城は海水の抵抗など存在しないかのような速度で三度鬼に駆け寄り、再び大振りのパンチ。 それを鬼は、避けも防ぎもしなかった。ただ、最小限の動きで左手を赤城の腕に添えただけだった。 たったそれだけで赤城の拳はその軌道を大きく狂わされて、上半身全体が勢いに負けて大きく泳ぐ。そして完全に無防備となった赤城の胸元に、鬼のハートブレイクショットが綺麗に入った。 致命の一撃だった。『!!!? ぁ! が』 赤城が両手で胸を抱きしめ、力無く膝を付く。そのままどぅ、と倒れ込む。『赤城さん!!』 超展開状態が解除されていないと言う事は即死ではなかったのだろうが、それでも胎児のように体を丸めて不気味な痙攣を繰り返すあの様子では、恐らくもう、まともには戦えまい。『このっ……! よくも赤城さんを!!』『Wait! 古鷹チャーン! 単艦突撃はVERY BADデース!!』『ソォォォウナンデース!!』 203の頼れる勲章持ちである古鷹が超展開状態で鬼に突撃する。今の古鷹には、少し後方から付いてきている二人の金剛からの通信など、耳に入っていなかった。 自我コマンドを入力。 泊地凄鬼の足元に海水を掻き分けて辿り着いた古鷹が、完全機械化された右腕を大きく振りかぶり、たっぷりと推力と遠心力を乗せて何のためらいも無く目と鼻の先の距離にいる鬼の上半身を、二度三度と横殴りに叩き付けた。それを鬼は何の苦も無く間に合わせた左腕一本でガード。 相当の衝撃が抜けたはずだが鬼は、まるで意にも介していなかった。こんなものかと言わんばかりの無表情さで、ちらりと古鷹の右腕を一瞥しただけだった。『っ! この――――!?』 再び右腕を振るおうとした古鷹の生存本能が反応。上半身を丸め、右腕を盾にした古鷹に、無造作に振るわれた鬼の『奥の手』が――――両端を切り詰めたカヌーのような下半身から生えている巨大な左腕が――――片手だけで超展開中の戦艦娘のほぼ半分が隠れてしまうような大きさが、側面から叩き付けられた。 そして、その一撃を防いだだけで、古鷹の完全機械化された右腕はあっけなく粉砕され、古鷹自身も海面スレスレの高度を数秒間ほど吹き飛ばされて、サン・ホルヘ島の砂浜に叩き付けられた。 水から上がった際に浮力が消え、自重による艦体の圧潰が始まる。『ぐっ、あ! あああああぁぁぁぁ!!!!』 古鷹は、自重で圧潰する全身から伝わる激痛と警告信号に思わず叫びながらも自我コマンドを入力。生き残った全ての主砲と副砲を鬼に指向。鬼も同時に身体全体で旋回し、右肩の長大な砲身を古鷹に照準する。この時、下半身に引っかかっていた赤城がずり落ちたのだが、誰も気にしていなかった。 激発トリガーをコマンド。 無傷で残っていた左肩の第三主砲塔と、同砲塔下部に設置されたの対空砲が一斉に火を噴く。それとほぼ同時に、鬼の主砲から、0秒起爆の対空散弾が発射された。 避けるも防ぐも出来ない古鷹の全身に、無数のHESH散弾が付着する。 直後、爆発。 爆煙が晴れた後には、残った左腕でわずかに顔面だけを防いだ姿のまま、砂浜に背中から倒れ崩れる古鷹の姿があった。 対して、鬼は無傷だった。腰のマントを手で掴んで大きくひるがえし、即席の盾にしていた。 超至近距離からの20.3センチ砲の直撃を確かに受けたはずの鬼の被害は、その黒いマントの留め金が外れただけだった。『そ、そんな……!? 提督、ごm eんなさ い……』『KILL YOU!!』『DEATH!!』 驚愕の表情を張り付けたまま古鷹が崩れ落ち、盛大な砂柱と轟音が上がったのと同時に、鬼の左右から二人の金剛がそれぞれCIWSを起動させて飛び掛かる。 ブイン基地の金剛のCIWSは、いつも通りの鋼鉄製のボクシンググローブのふりをしたおっかない何かで、ショートランド泊地の金剛は、左右の五指それぞれに嵌められた5つの指輪だった。それらの指輪には華美な装飾や宝石の代わりに、親指から順に『D』『E』『A』『T』『H』のアルファベットが刻印されていた。 きっちりとコンパクトな軌道に折り畳んだボディ狙いのフック、顎先を狙ったジャブ、顔面狙いのストレートと見せかけての突き出した親指による眼球抉り、背中から腎臓を狙い撃ったミドルキック。 まるで、木人人形を使ったカラテ・トレーニングの如き光景。 だが鬼は、左右それぞれから、タイミングを微妙にズラして急襲する二隻の『金剛改二』の攻撃を、上半身の動きと左右の腕だけで次々といなし、躱し、逆にほんの一瞬にも満たない隙をついて反撃し、金剛らのダメージを確実に蓄積させていった。 そして、同士討ち上等で発射された41センチ連装砲による密着射撃も、咄嗟に割り込まれた鬼の『奥の手』によって完全に遮られた。こんな至近距離で、大戦艦クラスの主砲の一斉射を受け止めたのだ。さしもの鬼の『奥の手』も無事では済まされなかった。 砲弾の直撃を受けた箇所はほとんど全てが全貫通し、運悪く骨や腱に当たった部分では、そこで信管が起動して、内部からの爆発で周辺の肉や組織が内側から弾け飛んだ。 結果だけを見れば、左右どちらの奥の手も、断続的な出血と不気味な痙攣を繰り返すだけになっていた。 文字通りの致命傷だった。 だがその対価として、白く美しい女の姿をしている上半身の方には、何一つ被害が及んでいなかった。精々が返り血を多少浴びただけだった。『M,Monster……!!』 ――――化け物め!! ブイン基地の水野と金剛が叫ぶと同時に、鬼の奥の手が呆然としていた二隻の金剛を手の甲で打ち据えた。一瞬の間隙を突かれて、巨大な裏拳の衝撃が金剛らの艦体を貫く。 全身に浸透した衝撃でジャイロコンパスか三半規管のどちらかあるいは両方がやられたのか、まともに立っていられなくなる。それに付け加え、今までに蓄積させられたダメージがここにきて重く響いてきた。【メインシステムデバイス維持系より緊急警告:主砲塔ユニット内弾薬揚弾機構に小規模な火災発生。自動消火装置作動しません。次弾装発作業を中止。予備弾パージします】【メインシステムデバイス維持系より警告:艦内第223、224、225区画にて火災発生。自動消火装置作動しました】【メインシステムデバイス維持系より警告:艦内各所に気化ガスを検知。自動排出システム作動しました】【メインシステムデバイス維持系より警告:内耳三軸ジャイロに異常傾斜発生。補正実行中... ... ...】【メインシステム戦闘系より警告:各主砲塔ユニット内の残弾、1です。至急、補給作業を受けてください】 そんな金剛らをあざ笑うかのように、鬼が、まず初めにブイン基地の金剛の方に全身で振り向いた。そして、先ほどの古鷹の時と同様に、右肩の長大な砲身を金剛に照準する。『『させるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』』「ッ!?」 その時点で、死んだフリをして不意打ちの機会をうかがっていた赤城と古鷹の2人が同時に飛び掛かる。古鷹は正面から鬼の上半身に飛び掛かり、赤城は背後から主砲の接合部に、文字通りの意味で齧りついた。 ただ、二人とも半死半生の状態だった。 だからこそ、鬼の首に手を回し、それこそキスでもしているのかと疑われるほど密着した古鷹の左目から照射された高出力のCIWSレーザーは鬼の左手一本で無理矢理遮られ、背後で艤装に齧りついている赤城の無様さ、滑稽さに鬼は冷たい一瞥をくれると、彼女らを無視して主砲で金剛を照準。徹甲弾の通常発射をREADY。『こ、金剛さ ん! 逃げて!!』 叫ぶ古鷹のレーザー照射が終了する。赤城がさらに両手と噛みついている顎に力を込める。年頃の乙女がするようなもんじゃない必死の形相だった。 鬼の背後から、ブ厚い金属が巨大な圧力に負けて歪む際特有の、甲高く嫌な悲鳴が聞こえてきた。 さて。 もの凄く不自然、かつ唐突ではあるが『自然淘汰』あるいは『適者生存』という言葉をご存じだろうか。もしかしたら『自然選択説』と言った方が良いのかもしれない。 例えばサバンナのライオン。 同じ群れの中に、鈍くさくて気配の消し方も下手っぴで体力もあんまり無い中年♂と、若くて活きが良くてピチピチで、足も速くて狩りも上手なイケメン♂がいたとする。 結果は言うまでもない。若くてピチピチでイケメンな♂は次代に種を残し、おっさんライオンの血筋はそこで途切れる。結果、次の世代のライオンはより強く、より速く、よりイケメンとなるだろう。 例えば上記のイケメンライオンと同じサバンナのシマウマ。 こいつらはもっと簡単だ。足の遅い奴から死ぬ。生き残った連中はみんな足が速い。だからそいつらから生まれて来た次の世代も、今まで以上に足が速い。 つまり自然淘汰とは、ものすごく乱暴にまとめると、より優れた子孫を生み出す為の条件の一つなのである。 そして例えば、ブイン基地の赤城とヤシガニ。 こいつらの関係も、上記のライオンとシマウマの関係に近い。赤城がヤシガニを喰う。生き残ったヤシガニは足が速くて甲殻が硬くて身を隠すのが上手い。そいつらの子孫を赤城が喰う。生き残ったヤシガニの倅どもは、オヤジの代よりも足が速くて甲殻が硬くて身を隠すのが上手い。そいつらの子孫を赤城が喰う。次の世代のヤシガニはより速く、より硬く、より賢くなる。 この繰り返しである。赤城がこのブイン基地に着任して以来、一日たりとも途切れる事のなかった血と磯の生臭い香りが漂う自然淘汰の連鎖である。 そして、どんどんと硬くなるヤシガニに対応するかのように、赤城の握力や咬筋力も段々と強化される訳である。まるで、ある種の筋トレのように。 いい加減に結論を言おう。 赤城が、鬼の主砲を喰いちぎった。 ――――『『『「嘘ッ!?」』』』 当の鬼を含めた誰も彼もが異口同音に叫んだ。 そして誰かが我に返るよりも先に、鬼の元に次々と砲弾やミサイルが飛来した。 こちらの状況など無線越しにしか把握していなかったにもかかわらず、後続の奇襲部隊からの追撃を上手くあしらいつつ、泊地凄鬼を射程圏に捉えたB隊の主力部隊――――指揮官のメナイ少佐が乗る『愛宕』を中核とする――――からの支援砲撃だった。『先遣部隊、待たせたな!!』 メナイが無線越しに指示を出す。『B隊、反撃開始だ!』『『『『了解!!』』』』 ――――金剛!『Yeees,私は、まだまだやれマース! ……響ちゃん達の敵が、目の前にいるのに、いつまでも寝てる趣味はNothingネー!!』 倒れていた金剛の全身に再び力が満ちる。半壊状態ながらも力強く立ち上がって鬼に正対する。両手で拳を作り、顔の前で構える。 叫ぶ。 ――――『我ら、夜戦を継続す!!』 火と砲火で照明された旧ソロモン海域。第二ラウンドのゴングは、敵味方互いの砲声によって撃ち鳴らされた。 部隊編成: A隊:(リコリス・ヘンダーソン暗殺部隊) ブイン基地『天龍(203)』『那珂ちゃん(203)』『大潮(203)』『如月(203)』『電(203)』『深雪(204)』 ラバウル基地『龍驤改二(TKT)』『絶滅ヘリ “大往生” (TKT)』『羽黒(TKT。遺影のみ)』 ショートランド『多摩(第八艦隊)』『あきつ丸改(第七艦隊)』 B隊:(泊地凄鬼攻撃部隊) ブイン基地『ストライカー・レントン(201)』『愛宕(201)』『金剛改二(202)』『電(202)』『赤城(203)』『古鷹(203)』『漣』 ラバウル基地『ラバウル聖獣騎士団』『那智改 (TKT)』『妙高改 (TKT)』『那珂ちゃん(無表情)』 ショートランド『金剛改二(第八艦隊)』 輸送艦『ウルザ』『テイザー』『フレイアリーズ』『アドミラル・ガフ』 C隊:(超長距離支援部隊) ブイン基地『201艦隊のストライカー・レントンおよび愛宕以外の全艦艇』 ショートランド『伊8(第七艦隊。アルマゲドンモード起動済)』 輸送艦『ダリア』『クリスティナ』『ウィンドグレイス』『ボウ』 本日の戦果: 情報が錯綜しています。確定ではないので記載できません。 各種特別手当: 大形艦種撃沈手当 緊急出撃手当 國民健康保険料免除 以上 本日の被害: 情報が錯綜しています。確定ではないので記載できません。 各種特別手当: 入渠ドック使用料全額免除 各種物資の最優先配給 以上 本日のNG(遅れに遅れまくったお詫びとして誰得の設定資料集一部公開します2)シーン 没キャラ軍団再び 戦艦レ級 はい閣下。ご安心ください。 当SS内および、番外編の有明警備府~内において、戦艦レ級は、ノーマルからフラグシップ級まで、一切登場させない事をここにお約束いたします。 深海凄艦側の概念実証機的存在。 人類を排除するのに、わざわざ巨大で強力な艦娘と真っ向から戦う必要はないのでは? という疑問から開発された深海凄艦。 人型の部分は全長百数十センチ、長大な尻尾を入れてもせいぜいが数メートル程度の、現在確認されている中では最小の個体。 超展開中の艦娘の艦内に侵入して内部から艦娘を破壊、あるいは後方や人口密集地帯での撹拌工作を主任務とする。 そういった運用思想のため、艦娘や鍋島Ⅴ型との戦闘は最初から考慮されておらず、ぜいぜいが飛来する小さな破片を防ぐ程度の防御力と、圧縮保存(艦娘)状態の艦娘を素手で引き裂く程度の馬力しか有していない。 この小柄な深海凄艦の存在こそが、奇しくも第四世代型――――等身大の艦娘に、従来の戦艦クラスの戦闘能力を。というコンセプト――――の艦娘開発が始まるきっかけになった。 これどこのPlan1211よ。 兵装実験艦娘『夕張』 ブイン基地本編においては、天龍の見た初夢の中に一単語だけ登場。 兵装実験艦の名の通り、軽巡洋艦でありながらも、様々なデバイスやパーツを接続するため、正規クウボ級の大規模な展開・圧縮機能と大容量のシステム資源を有する。 戦闘中においては、作戦前にプリセットしておいた情報を呼び出して艦体各所に展開・圧縮を実行する事で艤装や各種デバイスの換装作業をごく短時間で完了させる事ができる。 デフォルトで登録されているのは、 最も夕張らしい動きの出来る『/ZERO』 最も近接戦闘に特化した『シュナイダー』 最もメカロボしている『イエーガー』 最も戦闘艦らしく砲雷撃戦に強い『パンツァー』 の四種類だけであるが、提督諸氏のカスタムセットの追加や変更も可能である。 また、拙作『艦これ(等身大)×艦これ(原寸大)でクロスしてみた』に出す予定だった方の夕張さんは『お前にふさわしい夜戦装備(カットイン)は決まった!』と決め台詞を叫んで、いちいち艤装の説明をしながら装備を付け替えて攻撃します。 お前らはどこの機獣新世紀&黒い風だ。 比奈鳥ひよ子(没バージョン2) カレー食って寝ぼけたひよ子 ①青白 伝説のクリーチャー - 人間・提督 0/2 発生源がカレー食って寝ぼけたひよ子にダメージを与えるたび、そのダメージに等しい数の現実感・カウンターをこのクリーチャーの上に乗せる。 カレー食って寝ぼけたひよ子の上に、現実感・カウンターがX個以上乗せられている場合、それの上に置かれた現実感・カウンターをすべて取り除き、それと同じ数の忠誠心・カウンターを乗せた状態で変身させる。Xは、あなたのライフの数に等しい。 T:クリーチャー1体を対象とする。それをタップする。 目覚めたひよ子 プレインズウォーカー - ひよ子 初期忠誠心:0 +X:『T:あなたのコントロールする艦娘1体を対象とし、それをさでずむする。その後、そのクリーチャーをタップまたはアンタップする』と書かれた、白であり黒である『ひよ子』という名前の1/1の人間・提督・クリーチャー・トークンをX個、あなたのコントロール下で戦場に出す。 -X:対戦相手1人とあなたを対象とする。2人は、その合計がちょうどXリットル以上(※ただし、いずれかのプレイヤーが1リットル未満になるのは認めない)になるように比叡カレーを食う。生き残った方がこのゲームの勝利者になる。その後、あなたはこのゲームに使用していないカードの中から、最大X枚のパーマネント・カードを探し出し、戦場に出しても良い。 ひよ子は、極めてユニークなプレインズウォーカーです。 彼女は他のプレインズウォーカー達や在野の呪文使い達と異なり、生物呪文や精神呪文、他の生命を害するような魔法を使いません。かといって、魔法の機械(アーティファクト)を使っている訳でもありません――――厳密には違いますが。 彼女の生まれ育った次元世界『地球』において、彼女はとある小さな島国の軍人でした。ひよ子は海の底から現れる、深海凄艦と呼ばれる巨大なクリーチャーの群れを相手に、地球独自の発展を遂げた奇妙なアーティファクト・クリーチャー『艦娘』らと共に世界の海の平和を守って来た、優れた戦士であり指揮官でした。 ある日、ひよ子は彼女の部下でもあり兵器でもある艦娘の1人である比叡から、夜食の差入れを受け取りました。夜食の内容はひよ子の故郷の民族料理である『Hiei's curry』と呼ばれる物体でした。 それを一口食べた時の衝撃で彼女は火が入り、ほとんど幽体離脱同然で他の次元へのプレインズウォークを果たし、運よく帰って来れました。 ひよ子は火の入ったプレインズウォーカーでありながら、他の次元世界や並行宇宙の存在を認知していません。幽体離脱のようなプレインズウォークで次元を渡り、その先の次元での出会いや発見などは全て眠っている時に見た泡沫の夢であるとしか認識していません。ですので、元の身体に意識が戻って来た時には、ほとんど何も覚えていないのです。 後付設定が必要になった時のためにここまで後付で考えたけど、別に出す必要ないし出す予定も無いね。という理由で全て没に。(今度こそ終れ)