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No.38827の一覧
[0] 【チラ裏より】嗚呼、栄光のブイン基地(艦これ、不定期ネタ)【こんにちわ】[abcdef](2018/06/30 21:43)
[1] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】 [abcdef](2013/11/11 17:32)
[2] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】 [abcdef](2013/11/20 07:57)
[3] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2013/12/02 21:23)
[4] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2013/12/22 04:50)
[5] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/01/28 22:46)
[6] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/02/24 21:53)
[7] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/02/22 22:49)
[8] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/03/13 06:00)
[9] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/05/04 22:57)
[10] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/01/26 20:48)
[11] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/06/28 20:24)
[12] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2014/07/26 04:45)
[13] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/08/02 21:13)
[14] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/08/31 05:19)
[15] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2014/09/21 20:05)
[16] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/10/31 22:06)
[17] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/11/20 21:05)
[18] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2015/01/10 22:42)
[19] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/02/02 17:33)
[20] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/04/01 23:02)
[21] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/06/10 20:00)
[22] 【ご愛読】嗚呼、栄光のブイン基地(完結)【ありがとうございました!】[abcdef](2015/08/03 23:56)
[23] 設定資料集[abcdef](2015/08/20 08:41)
[24] キャラ紹介[abcdef](2015/10/17 23:07)
[25] 敷波追悼[abcdef](2016/03/30 19:35)
[26] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2016/07/17 04:30)
[27] 秋雲ちゃんの悩み[abcdef](2016/10/26 23:18)
[28] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2016/12/18 21:40)
[29] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2017/03/29 16:48)
[30] yaggyが神通を殺すだけのお話[abcdef](2017/04/13 17:58)
[31] 【今度こそ】嗚呼、栄光のブイン基地【第一部完】[abcdef](2018/06/30 16:36)
[32] 【ここからでも】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!(嗚呼、栄光のブイン基地第2部)【読めるようにはしたつもりです】[abcdef](2018/06/30 22:10)
[33] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!02【不定期ネタ】[abcdef](2018/12/24 20:53)
[34] 【エイプリルフールなので】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!(完?)【最終回です】[abcdef](2019/04/01 13:00)
[35] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!03【不定期ネタ】[abcdef](2019/10/23 23:23)
[36] 【嗚呼、栄光の】天龍ちゃんの夢【ブイン基地】[abcdef](2019/10/23 23:42)
[37] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!番外編【不定期ネタ】[abcdef](2020/04/01 20:59)
[38] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!04【不定期ネタ】[abcdef](2020/10/13 19:33)
[39] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!05【不定期ネタ】[abcdef](2021/03/15 20:08)
[40] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!06【不定期ネタ】[abcdef](2021/10/13 11:01)
[41] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!07【不定期ネタ】[abcdef](2022/08/17 23:50)
[42] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!08【不定期ネタ】[abcdef](2022/12/26 17:35)
[43] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!09【不定期ネタ】[abcdef](2023/09/07 09:07)
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[38827] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!02【不定期ネタ】
Name: abcdef◆fa76876a ID:45064d35 前を表示する / 次を表示する
Date: 2018/12/24 20:53
※安心と信頼の毎度毎度のオリ設定でございます。
※まごう事無きキャラ立ちの方向音痴。
※卑猥は一切無い。文章力も一切無い。
※ていうかー、イイ歳こいたオッサンがー、今時のJC同士の会話書くとかー、そんなの無理ゲーすぎな感じなんですけどぉー。I'm not good...
※第一部の『嗚呼、栄光のブイン基地』は鬱暗い話だったので、第二部では、スナック感覚でサクサク読める、底抜けに明るい話にしたいと思います!

※ところでどうでもいい事ですが、メイドインアビスの舞台であるオースの街がある南海ベオルスカって、なんか野球チームの名前みたいですよね。



 引き続き台風情報をお伝えします。
 現在沖縄県に接近中の台風■号はその前例の無い規模から人的物的被害が途方も無く甚大になると予想されるとして、
 帝国陸海軍は異例の台風出動を決定し、異例の共同出兵をさせました。
 これは、接近する巨大台風■号に対してミサイルや砲弾、魚雷などを撃ち込んでその規模を減衰、あわよくば消滅を目的としたものであると――――

        ――――――――『第三次菊水作戦(民間呼称:台湾沖・沖縄本島防衛戦)』前日の台風情報



『さぁ、たったいまラジオのチャンネルを切り替えてこの放送を聞き始めたそこのあなた! あなたはいったい、今日一日今まで何をして過ごしていたのでしょうか!? 無駄もいいところです! ですがご安心ください。深海凄艦の沖縄侵攻により長らく中断されていた今リーグ最大の山場である南海ベオルスカvs大鯨ホエールズ戦は現在まだ九回裏、2アウト満塁、2ストライク3ボール!』

 枕元のラジヲが垂れ流す野球中継の絶叫にも負けずに惰眠を貪る駆逐娘『吹雪』は夢を見ていた。
 自分の司令官、比奈鳥ひよ子准将を乗せて、何十何百隻もの艦艇からなる連合艦隊の総旗艦として、艦隊の先頭にて颯爽と快晴の大海原を突き進んでいくのを。

『ここを抑えきれればベオルスカ、1900年ぶりのリーグ制覇となります。新監督メディポ・P・トゥートに率いられたベオルスカは未だ復旧進まぬ沖縄に希望と優勝旗をもたらす事が出来るのか!? そしてタイム明けでマウンドに戻ったピッチャー王善、運命の一球を……投げた! 打った! デッチー打った! 観客席に向かってどんどん伸びて……これは入るか、入るか!? センターのレグ、ボールに向かって走る! 走る! 手を伸ばして……ああッー!?』
「うへ、へへへ……」
『入ったー! ホーム! ホーオオオォォォム! ホームホームホームホームホームホームホムホムホムホムホムホムホムホムホムホムほむらちゃんほむほむホーム、ホーム、ホーム、ホーム、ホーム、ホオオオム! ホオオオォォォォォォォォォォォォォォォムラン、ホムーラァーン!! 大鯨ホエールズ、まさか、まさかまさかまぁさぁかぁぁぁ~、の逆転勝利です!! ベオルスカの面々はオーゼン、もとい呆然とボールの飛んで行った観客席を眺めております! 王善、なんかものすごい表情です! カメラさんアップ、アップで!!』

 しかしそれはただの夢だ。
 不意に、夢の中の吹雪の隣に誰かが立つ。新生ブインの艦娘だというのは分かった。
 だが、吹雪はその娘の名を呼ぼうとして、名前を思い出せない事に気が付いた。

「えと、あ、貴女はたしか――――」
『ああっと! 飛び掛かった!! ピッチャーの王善選手飛び掛かった! そして何か叫んでます! ホームベース踏む前にお前らを倒せば試合続行不可能で繰り上げ優勝みたいなことを叫んでいます!! ここまで来て大人気ない、大人気ないぞ王善選手! 貴様それでもベオルスカの年長組か!?』

 夢から覚める。

「ふゃ……」
『そしてベオルスカの外国人選手ボンド、お前は何をやっている!? お前の所業は果たして放送していいものかぁ!? それはちょっと度し難い、度し難いぞボンド・ルードルド!!』

 どうでもいい夢を見た時の常として、つい今しがたまで鮮明に覚えていたはずの景色と記憶は、それこそ夢幻の如く滲んで消えていく。
 新生ブイン基地、着任二日目の駆逐娘『吹雪』もまた、タオルケットを腰から下に掛けたまま上半身だけを寝床から起こし、寝ぼけた回転数の脳ミソで『何かいい夢みた気がする』などと寝言を思いつつ、何をするでもなくボケっとしていた。
 閉じた目の奥で、静かな波の音と、波の音にも似た風に揺られるヤシの葉擦れの音と、近くから響く複数のやたらと酒臭いイビキの音色を聞きながら、吹雪は何をするでもなくただ心地良くうつらうつらとしていた。

「ふゅぅ……」
『両陣営のベンチからも次々と出撃しています!! 乱闘、乱闘です!! 両監督も巻き込んだ大乱闘が始まってしまいました!!』

 それから約五分後に熱気と湿気による不快感でようやく完全に目を覚まし、周囲の状況を理解した。吹雪が目を覚ましたのは横須賀にいた時に使っていた布団の上でなく、心地良く冷えたコンクリートの床の上で、タオルケット一枚だけを掛けていた。

(そっか、ここ、もう横須賀じゃなかったんだっけ)
『そしてここでラジオの前の皆様に大事なお知らせです。私の身体も乱闘を求めているため、本日の放送はここで終了させていただきます』

 確認ついでに今朝の夢を反芻する。ハッキリと覚えているのは誰かの名前を呼ぼうとして名前に詰まった事くらいだ。

(今朝の夢……)
『なお、大鯨ホエールズの優勝は確定していますのでファンの皆様はご安心ください』

 それで思い出した。
 そういえば、まだ、基地要員の顔と名前全然知らないやと。
 自我コマンドを入力。空き領域に書いておいた今日の予定を脳裏に表示させる。

 午前:休養(前日緊急出撃後のため)
 午後:座学(比奈鳥司令官の居る201号室で)

 それを見て吹雪はよし、と思う。

(今日は、島と施設を見て回ろう!)
『それではラジオの向こうのみなさんさようなら。また明日の試合でお会いしましょう。本日の放送は私、ユージロ・H・オニノカオがお送りいたしました』

 そう決意した吹雪は、昨日の緊急出撃後の再宴会で酔い潰れた連中が横たわる工廠を一人静かに後にした。



 実にどうでもいい事なのですが、つい最近まで筆者はアイマスの三属性を『セクシー』『キュート』『パッション』だと勘違いしており、それぞれの頭文字を取って並べて、
『なるほど、アイドルたちの可愛さはSCPだったのか』
『だから薄い本の中でよくSecure(意味深)Contain(意味深)Protect(種の保存的な意味で)されてたのか』
 と考えておりました。因みに筆者はアイマスやった事ありません。それではよいお年を。



 とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!
 第二話『駆逐艦吹雪の建もの訪問、もといブイン基地旅行 の巻』



「あら。吹雪ちゃん」

 工廠正面シャッター横のサービスドアを通り、昨日の戦闘のせいで少し抉れたコンクリート製の護岸の前に出たところで、吹雪は、外を歩いていたひよ子達と出会った。この新生ブインの基地司令である比奈鳥ひよ子准将と秘書艦の重雷装艦娘『北上改二』に、そして、吹雪の知らない面々とその秘書艦と思わしき艦娘達。

「お、おはようございます司令官!!」
「おはようございます吹雪ちゃん。どう、二日酔いとか大丈夫? 昨日結構飲んでたみたいだったけど」
「はい! 通信機越しとはいえ修理中の陽炎ちゃんとお話しできたし、軍用酔い覚ましも貰えたのでバッチリです!!」
「あら、一日で随分仲良くなったのね……ふぁ」
「はい。一番艦同士でとっても話が合ったんです。司令官はだいぶお疲れのようですけど……?」

 小さく欠伸をしたひよ子を心配した吹雪が伺い、それと同時に気が付いた。
 昨日の緊急出撃の後、自分は再宴会に突入してそのまま工廠の床で寝てしまったが、提督という立場には緊急だろうとそうじゃなかろうと、実戦の後には戦闘報告書なりデブリーフィング・レポートなりの作成や消費した燃料弾薬や各資材の計算があったのだ。こいつらをやっつけ、布団に入ったのは今日の何時くらいなのだろう。
 そう思った吹雪だったが、当のひよ子は何故かバツが悪そうに眼を逸らして、人差し指で頬をポリポリと掻いていた。

「いやね? 昨日、報告書書き上げて布団入ってもなかなか寝付けなくてね? たまたまラジヲでやってた稲作淳備の『今年のガチ怖百物語』(※翻訳鎮守府注釈:これ書き始めた当初は7~8月のうpを予定していたんです。本当なんですだってばよ!)を聞いてたら逆に怖さで目が冴えて寝れなくなっちゃって、何時間か前まで書き終わった報告書の手直ししてたのよ」
「えぇ……」

 それでいいのか南方海域。
 まともな戦闘なんて月に数回あるか無いかの二級戦線だったのは、先代の基地司令の時代までだったはずでは。吹雪は訝しんだ。
 そんな吹雪の視線を誤魔化そうとして、ひよ子はそっぽを向いて吹雪に告げた。

「そ、そんな事より朝ごはんにしましょ。今日の執務はその後! 輝くーん、夕張ちゃんと明石ちゃんに塩太郎さーん。ご飯ですよー!?」

 吹雪と、ひよ子の背後にいた艦娘らの不審げな視線を振り切るように、ひよ子は吹雪のいたとこの隣にあるもう一つの工廠へと逃げていき、他の面々も何となくという理由でその後を追った。
 そしてひよ子はシャッター横のサービスドアを開けて室内を覗きこんだ。
 そこには、床や整備機材の中に転がる男女5つの死体と、その中の一人の頭を正座した両膝の上に乗せ、その寝顔を静かに眺め微笑んでいる駆逐娘『陽炎』の姿があった。

「ひっ!? ……って、何だ、陽炎ちゃんか」

 死体だと思ったのは、再宴会にも出ずに陽炎の修理に夜なべしていた輝と塩太郎と明石、そして軽巡娘の『夕張』と、輝の秘書艦である駆逐娘『雪風』の五人だった。
 5人とも機械油で黒く薄汚れたツナギを着て、寝息ひとつ立てずに死んだように眠っていた。輝は普段使っているボロっちいタオルケットの代わりに金属廃材と工具の山の中に頭を突っ込んで寝ていた。明石は整備用にカスタマイズされた鍋島Ⅴ型のコクピットを解放状態にしたまま中で寝ていた。夕張はCADを起動させたままのノートパソコンに指を掛けたまま白目を剥いて寝落ちしていた。雪風は輝の寝ている廃材の山の中腹に簡単な巣穴を組み立ててその中で丸くなって寝ていた。陽炎の膝枕で安眠していたのは塩太郎だった。
 そして、部屋の中で唯一起きていた陽炎がひよ子らに気が付くと、小さな声で挨拶を返した。

「ひよ子さんおはようございまーす。吹雪もおはよ」
「おはよ陽炎ちゃん。修理完了おめでと。朝ごはん呼びに来たんだけど……どする? も少し後にする?」

 そうですね、すみませんがもうちょっとだけここにいます。そう言おうとしていた陽炎だったが、かつていたウェーク島泊地での勤務経験から食える時に食っとかないと安心できないという事を思い出し、膝の上に置いた塩太郎の耳元に顔を近づけ、小声で『それじゃあまた後で』と囁き、優しく膝を抜き取って塩太郎の後頭部を枕の上に安置した。





 工廠前のコンクリート製の護岸に折り畳み式の白いチェアと丸テーブルを囲み、日よけのパラソルの下で、ひよ子と陽炎と吹雪、そして吹雪が昨日の歓迎会では見なかった2人の提督と艦娘達が朝食を取りつつ吹雪と話していた。

「そいえばさ吹雪……んぐん。あんた、旅行途中のままだったわよね。どう? 私も今日休みだから残り案内してあげられるけど?」

 真っ白い食パンのトーストにこれでもかとイチゴジャムを塗ったくったものを三口で口の中に詰め込み、ヌル目に入れたホットミルクで胃の中に流し込んだ陽炎がマグカップを持った手で吹雪を指さした。

「あっうん。おねがいしてもいいかな?」
「オッケー。これで今日一日ヒマ潰しが出来るわ」
「暇潰して……陽炎ちゃん、一応は病み上がりなんだから少しは自分の身体労わりなさいな」
「大丈夫ですって。自分の身体の事ぐらい分かってますって」

 心配し過ぎですって、ひよ子さん。と陽炎が気楽に笑って手を上下に振る。

「まったくもう……じゃあ食事にしましょ。と、言いたいところだけど。皆、昨日の宴会の時は有耶無耶になっちゃってたけど、とりあえずまた紹介しとくわね。昨日の宴会にいなかった人たちも結構いるし。この娘が今度やって来た吹雪ちゃんよ」

 ひよ子が吹雪を促す。吹雪が椅子から立ち上がって敬礼し、言う。

「み、みなさん初めまして! 第3世代型艦娘の、特Ⅰ型駆逐艦娘の1番艦『吹雪』です! よ、よろしくお願いいたします!!」
「「「よろしく~!」」」
「じゃあ自己紹介! まずボクから!!」
「あ、ズルい、オレが先ー!!」

 吹雪の知らない一人目が立ち上がる。それに釣られてもう一人も立ち上がる。
 一人は黒のショートカットヘアの少年。もう一人は長い金髪のポニーテールが特徴の艦娘。どちらも同じくらいの歳と背丈のチビガキ共だった。こんな南の島で軍人やってるよりは、近所の空き地か土手の原っぱで野球かサッカーかおこちゃまデートでもしてる方がお似合いの。

「オレ鴨根木 翔太(カモネギ ショウタ)!! 比奈鳥先生とは沖縄からずっと一緒だぜ!!」
「ボクは駆逐艦娘の『皐月』だよ! よろしくねっ!」
「はい。こちらこそよろしくお願いします!」

 続けて二人目と三人目。やはり人間と艦娘。人間の方は先の皐月と鴨根木よりもやや背丈の低い少女で、肩にかかる緩やかなウェーブを描くアッシュシルバーのミドルヘアと、どことなく自信なさげに下を向く視線が吹雪の印象に残った。艦娘の方は、長い黒髪と、巫女服にも似た意匠の白い上と赤いミニスカート。そして砲塔部分にペイントされたシマウマ模様――――ダズル迷彩が目についた。

「う、鵜野美・スルナです……翔太君とは、く、クラスメイトです。わ、私も比奈鳥先生とは沖縄からずっと一緒、です……」
「金剛型戦艦娘の『榛名改二』です。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」

 吹雪がこの二組に挨拶を返し、ひよ子が残りのメンバーを紹介しようとして気が付いた。

「そしてあとは私の艦隊の不知火、もといぬいぬいちゃんと……て、あれ? 秋雲ちゃんとプロト19(イク)ちゃんは?」
「あー。あの二人ならまだタウイタウイ泊地だそうです。なんでも、こないだタウイに墜落したUFO見に行くから帰還は今日の夕方くらいになるって言ってました」

 なんだそれ。ひよ子も吹雪も榛名もスルナも紹介をスルーされたぬいぬいもそういう表情をしていた。皐月と翔太は目を輝かせていた。

「UFOぉ~?」
「何でも、クジラに似た形で、昔蒸発した提督が操縦してたらしいですよ」

 ひよ子は飽きれたようなうめき声を小さく上げ「どのみちサボりじゃない……」と呟いた。
 新生ショートランド泊地の陽炎は陽炎で「ていうか宇宙にもクジラっているのかな」と呟きつつ、今は不在の自身の提督の事を密かに思い出していた。
 そして吹雪は『先生?』と心の中で首を傾げた。



「比奈鳥 “先生” っていうのはね。私も直接見聞きした訳じゃないんだけど、沖縄で徴兵された学徒提督達に、他の艦隊の艦娘と一緒に戦い方とか教えてたから、その子達からはそう言われてたみたい」

 そんな朝食の後。吹雪と陽炎は二人並んで島中を歩いていた。
『基地に近いとこからってのも芸が無いし、まずは一番遠いトコから行きましょ』という陽炎の思い付きにより、新ブイン基地の背中にある大きな山の中腹に2人は来ていた。

「へぇ、そうなんだ。私てっきり教職についてたのかと思ってた」
「やっぱそう思うわよねー? でも准将、なんかそう呼ばれるのあんまし好きじゃないみたいだから、言わない方がいいわよ? さ、新生ブイン旅行の一件目到着~。建設現場」

 文字通りの建設現場だった。着任初日に無人の新生ブイン基地の前で吹雪が遠目に見た、大理石製の誰かの巨大な全身像の建設現場だった。四方全てを飛散防止用のネットと巨大衝立で囲まれていたが、それでも未完成の胸から上が飛び出していた。完成したら、恐らくは『超展開』中の吹雪達とほぼ同じ背の高さになるだろう巨大さだった。

「何でこんなところに? ていうか誰なんです?」
「さあ? 何でも、旧ラバウルの偉い人らしいって。でも――――」

 トラックやダンプカー、コンクリートポンプ車、整備用に改造されたスズメバチ色の鍋島Ⅴ型などの建機や重機が周囲を行きかい、ガンガンゴンゴンと喧しい騒音と排ガスの悪臭に包まれている周辺環境に目と耳と鼻を顰めつつ陽炎がチラリと視線を寄こした巨大衝立。
 その真っ白な中央部分には所有主を示すエンブレムとして、炎に包まれた炊飯器とスズメバチそして意匠化された大文字のアルファベット三文字、大きく描かれていた。
 こんな悪趣味なエンブレムを使っている連中なぞ、世界広しと言えども陽炎には一つしか心当たりが無かった。

「――――でも、あんまり近づかない方がいいかもね。危なそうだし。次行きましょ」

 因みに。
 これと同時刻。
 比奈鳥司令の仮の執務室となっている旧ブインの201号室に飾られている、旧ブインメンバーの集合写真の中にいたTeam艦娘TYPEラバウル支部の重巡娘『羽黒』が少し俯き気になって『 ← こちらの方です。私の提督です』と書かれたカンペ代わりのスケッチブックで顔と胸元を隠すようにして掲げていたのだが、この時間は執務室に誰もいなかったのでそれはさておく。



 次に陽炎が向かったのは、山を下りて旧ブイン基地(という名のプレハブ廃墟)の背後にあった小さな岬。丁寧に草が狩り取られたそこの先端にひとつだけ鎮座していた、歪な形の黒石。

「ここはね。お墓なんだって。前の基地司令のお子さんの」
「え、民間人がいたの? 軍事基地なのに?」
「詳しくは知らないわよ。私だって輝くん――――目隠准将から聞いただけだし、その准将も旧ブインの人からまた聞きしただけだって言ってたし」

 へぇ。と吹雪は呟き、何かを決意したのか「よし」と小さく呟いて手を合わせた。

「見ていてください民間人の人。私がきっと、いつか静かな海を取り戻して見せます!」
「私達が、でしょ」

 便乗して手を合わせていた陽炎と吹雪は互いに顔を見合わせ、2人同時に笑った。
 因みに。
 これと同時刻。
 比奈鳥司令の仮の執務室となっている旧ブインの201号室に飾られている、旧ブインメンバーの集合写真の中にいた、吹雪と同じ特型駆逐娘の『敷波』が実に不満げな顔で基地司令の座る車椅子から手を離して『あたし民間人じゃないんですけどー!』と書かれたカンペ代わりのスケッチブックを頭上に掲げていたのだが、この時間は執務室に誰もいなかったのでそれはさておく。



 次に陽炎が向かったのは、旧ブイン基地時代のドライドック。
 旧ブインから海岸線沿いに歩くこと数分間。海に面した断崖絶壁に空いた巨大な海蝕洞穴を拡張・補強した、良く言えば周辺環境に配慮した最小公倍数の機能美を有する、悪く言えば場末の三流海賊の秘密基地といった趣だった。
 ここは既に使われなくなって久しいようで、中に残されていた機材や工具には何処から降り積もったのか、普通の砂粒よりも目の細かい湿った砂ぼこりがうっすらとかかっており、赤錆も至る所に浮いていた。
 そして、奥の壁沿いに隠すようにして遺棄された無数の巨大な細長い鉄塊の山が吹雪の注目を惹いた。

「で、あのガラクタの山は何なの?」
「駆逐艦用の火炎放射器と天龍さんの刀の試作品の失敗作だって。見つかった手記だと、使われた資材の量がもの凄くて、当時の事務方だった古鷹さんが眼鏡と釣り糸とラジカセと【親指締め具/Thumbscrews】を持ったまま卒倒したって」
「何その拷問器具のラインナップ」

 黒の万力とか無かったのかな、と呟きながら吹雪は周囲を見渡す。砂と錆にまみれた機材と工具、赤錆だらけになって周囲の暗がりに完全に溶け込んでいたラジカセの化石とフレームだけのメガネ、水面からの青を反射して揺らめく洞窟の壁面。そして、その青い揺らめきの中で小さくもはっきりとその存在を主張するメタリックブルーの無数の煌めき。

「何これ? 何かの金属?」
「さあ? 比奈鳥准将も知らないし、目隠准将も聞いてなかったって。でもずっと昔からあったみたい。パッと見夜空の星だから、ここは星空洞窟って呼んでるの」

 大分掘り崩されて不格好になっちゃってるけど、戦争が終わったら良い観光資源になるんじゃないのかしらって比奈鳥准将も言ってたわ。
 陽炎はそう続け、その場を後にした。



 次に向かったのは、旧ブイン基地(という名のプレハブ遺跡)だった。

「いよいよここなんだね、陽炎ちゃん!」
「……何でいきなりテンション高いのよ? ていうか昨日も来たじゃない、ここ」

 何の脈絡も無くテンションを上げた吹雪からそれとなく距離を取りつつ陽炎が聞いた。対する吹雪は目を輝かせて上高い声で返した。もしもこの作品が漫画かアニメだったなら、吹雪のお目々は今頃、シイタケの様なエフェクトできらきらと輝いていた事だろう。

「き、昨日は見た目のアレさにちょっと……でもね陽炎ちゃん! だってブイン基地だよ!? ブイン基地!! 嗚呼、栄光のブイン基地!!!」

 この吹雪は比奈鳥ひよ子准将の元に配属だという通達が来てからの後、ひよ子准将の事はもちろん、配属先となる南方海域のブイン基地の事も調べていたのだ。
 そしたら出るわ出るわ、当時の配属人員のアレやコレ。
 人員死亡と情報操作の完了による機密解除、単に二級戦線という事で誰も気にしていなかったりと理由は様々だが。

「だってここ、調べてみたらここ本当に二級戦線なの? っていうような人材のオンパレードだったんだよ!?」
「そなの? 旧南方の頃は、数年前のスタンピードと、2年前のあの沖縄の姫が出てきた以外には何も無かったド田舎じゃん。旧ショートランドもそうだったらしいけど」
「うん、それは私も不思議に思った。それでね、まず比奈鳥司令の居る201号室の元の持ち主のファントム・メナイ大佐! 外国の軍人さんなのに重巡洋艦娘の『愛宕』さんがいたんだよ。すごくない!?」

 陽炎には、それのどこがスゴイのかよく分からなかった。
 なので古巣の新生ショートランドでドジやって(※翻訳鎮守府注釈:『yaggyが神通を殺すだけのお話』参照の事)、3人纏めてウェーク島泊地の地獄の壁部隊に配属(トバ)されてた頃を思い出してみた。

 ――――あそこでは、国とか人種とか役職とか関係無しに、動かせる奴が動かしていた。直せる奴が直していた。書類仕事だけは誰もやりたがらなかったので総員参加のじゃんけん大会でいつも決めていた。

 やっぱり分からなかったので聞いてみた。

「すごいの?」
「すごいの!」

 吹雪が即答。

「昔は艦娘に関する機密保護のレベルが最近の比じゃなかったんだって。外国人提督なんてありえなかったし、嘘かホントか知らないけど撃破された艦娘は破片ひとつ、血液一滴に至るまで回収されて、それが出来ないなら焼却処分までされてたんだって」
「うへぇ」
「だからきっと、このファントム・メナイ大佐は、そんな横紙破りが出来ちゃうくらいもの凄い発言力と実力があったんだよ!! でね、次に隣の202号室! 水野蘇子(ミズノ ソコ)准将!!」

 吹雪が陽炎の手を取り、目の前にあった二階建てのプレハブ小屋(という名の遺跡)に駆け寄り、外側にあった赤錆まみれの軽金製の階段で二階に上がり、その202号室の前まで引っ張って来た。吹雪よ、お前が旅行される方なのではなかったのか。

「あー。この人なら私も知ってる。確か、黄金剣翼突撃徽章持ちだったっけ」
「そう! 南方海域がまだ二級戦線ですらなかった頃に発生した深海凄艦のスタンピードに対して、艦隊旗艦の戦艦娘『金剛』さんと、麾下艦隊の第六駆逐隊の『暁』ちゃん『響』ちゃん『雷』ちゃん『電』ちゃんの、たった5隻だけで24時間休み無しで戦い抜いて、南方海域陥落の危機を救った若き英雄!! 終身撃破数はちょっと覚えてないけど、たしか戦艦ル級だけでも二十数隻!!」
「……改めて聞いてみると、とんでもない戦果よね、それ」

『泳ぐ要塞』なんてあだ名ついてるあの化物どもを、何でそんなにポンポン倒せるのよ。だったら少しはウェーク島にヘルプに来てよ。
 もし来てくれてたのなら、ひょっとして、ル級どころかあの最後の日に出てきた白くて黒い奴だって――――
 そこまで考えて陽炎は、吹雪に悟られぬよう小さく細くため息を吐いて、吹雪に問うた。

「……んで、お隣203のは? 塩太郎さんと目隠准将と夕張さんと明石さんの、いつもの4人が入り浸ってゴミだか資料だか漁ってるのはよく目にしてるけど」
「んっふっふー。こちらの方は何と、元陸軍さんです! 井戸枯輝(イド カレテル)大佐。元々はあきつ丸さんやまるゆちゃんの開発チームの主任だったか主任補佐だったかだそうですがある日突然水雷魂に目覚め、そのまま陸軍を裏切り海軍の門扉を叩いたという素晴らしき覚者さんです!!」
「おー」

 陽炎は素直に拍手喝采した。何か色々と嘘臭い経歴の持ち主だがそんな事はどうでもいい。重要なことじゃない。
 まさか陸の人間が水雷魂に目覚めるとは。素晴らしい。素晴らしい事である。
 水雷戦隊万歳。ひいては駆逐艦万歳、万歳だ。
 因みに。
 これと同時刻。
 比奈鳥司令の仮の執務室となっている旧ブインの201号室に飾られている、旧ブインメンバーの集合写真の中にいた、旧ブイン第202艦隊所属の朝潮型軽空母娘の『龍驤』が、新婚夫婦よろしく幸せ満面の笑みで頬と頬をくっつけていた件の水野と金剛の二人を引っぺがす作業を中断し『え、え? あれ? ウチは?』と書かれたカンペ代わりのスケッチブックを困惑混じりの表情で頭上に掲げており、同じく202所属の『暁』『響』『雷(モーットタヨッテモイイノヨ)』の3人は写真の左隅で龍驤を慰めるべくヤケ酒会の準備を進めていたのだが、この時間は執務室に誰もいなかったのでそれはさておく。
 因みに、最後に残った204号室は現在も目隠輝准将が使っている部屋だったのでそこは省略された。



「それじゃあ最後に残ったのはここ、新生ブイン基地、なんだけど……あれ?」

 陽炎と吹雪の目の前には、真新しい基地の外箱があった。
 昨日吹雪が着任した時には確かにあったはずの『工事中』だの『ペンキ塗りたて』だのといった看板はどこにもなかった。
 陽炎が試しに大きな木製の正面入り口扉のドアノブを回そうとしたが、カギがかかっていた。

「まだ開いてないわね……看板もフェンスも無いからもう開いてると思ったのに。吹雪は何か聞いてない?」
「私に聞かれても分かんないよ。昨日来たばっかりだし、朝からずっと陽炎ちゃんと一緒だったじゃない」
「言われてみりゃそうだったわね。となると、工廠以外開いてないからあと旅行できるトコっていったら、あの工事現場で働いてるガテン系の兄ちゃん達が寝泊まりしてる建設村と、カニ浜くらいしかないわよ、もう」
「カニ浜? カニが沢山いるとか?」
「そ。カニ浜。この島特有のヤシガニがうじゃうじゃの十倍くらい――――」

 言いかけた陽炎の口が途中で止まる。何事かと思った吹雪が陽炎の視線の先を見ると、彼女の司令官である比奈鳥ひよ子が左右の肩それぞれに巨大なバッグを掛けたままこちらに走って来て、そしてその後方では今朝方出会ったばかりの人や艦娘達らが両手に段ボール箱やカバンなどの荷物をもってこちらに歩いて来る姿が見えた。その中には朝寝ていた塩太郎や輝らの姿もあった。

「ごめーん! 鍵開けるの忘れてたー!!」

 ひよ子はカギを握った片手を頭上でブンブンと回しながら立ち止まっていた2人の間に身体全体で割り込み、昔懐かしのニッケル合金製ピンタンブラー・キーに擬態した分子配列照合式のデジタル・キーを差し込み、ドアノブ上部の小さなLEDランプが軽い電子音と共に赤から黄色に変わった事を確認してからキーを回し、黄色から青に変わってからドアノブを捻って開いた。

「二人ともごめんね。今日からここ開通するって朝言うの忘れてたわ」
「いえ、お気になさらずに」

 陽炎はそう返事を返し、チラリと視線を動かしてようやくひよ子が左右それぞれの肩にブギーポップ製の大きなスポルディングバッグを担いでいた事に気が付いた。そして真新しい方のホーリー&ゴースト=モデルのが吹雪ので、古びた筒っぽい感じのトーカミヤフジ=モデルのが自分がこのブインに持ってきた私物入れだと見当をつけた。

「ていうか私と吹雪の分の荷物までもって来ていただいたみたいで、申し訳ないです」
「あ。も、申し訳ありません司令官!」

 そこでようやくひよ子の両肩の荷物に気が付いたのか、吹雪が慌てて頭を下げる。

「良いって良いって。言い忘れてた私が悪いんだし」

 対するひよ子は近所のおばちゃんよろしく苦笑しつつ片手を顔の近くで手招きするように上下に振った。その仕草を見て吹雪と陽炎は、こいつは本当にデータプロフィールにある通り現役20代の元・女子大生なのだろうかと割と本気で疑問に思った。
 そんな事を思われているとは露知らぬひよ子は扉を解放したまま後ろの面々を新生ブイン基地内に入れると自らも中に入り、近くにあった来客用の応接テーブルの上にバッグをドカリと置くと何度か肩をぐるぐると回し、その場にいた面々に告げた。

「よーし、それじゃあ皆、空いてる部屋適当に使っちゃって! 荷解き終わったら十二時半、もとい一二三〇にこのロビーにまた集合という事で。そこでお昼と基地開封記念パーティしましょ!」
「「「はーい!!」」」

 開封ってなんやねん。ワインか何かかじゃあるまいし。と吹雪も陽炎もそれ以外の面々も思ったが、皆さっさと荷物を下ろしたい一心であったためにそこはスルーされた。
 そして一度バラバラに分かれた面々がそれぞれ適当と思う部屋(個室・相部屋不問)を見繕って荷物を下ろして広げ、一三〇〇に一階ロビーに再集合し、基地完成記念会を兼ねた昼食会が始まり、誰かがロビーに置かれている大型モニタの存在に気が付いたのが切っ掛けだった。

「あ、折角ですし皆でゲーム大会やりませんか? モニタあるし、ゲーム機本体もソフトもシイタケ・ファクトリーにいた頃買ったの持ってきました! 金色陣営使わせたら、私、出荷前の吹雪達の中では誰にも負けなかったんですから! ここでも負けませんよ!!」
「「「ほほぅ」」」

 そう提案した吹雪が部屋の中から持ち出してきたゲーム機本体と『大奮闘ペイントスプラッシャーズ』のソフトが収まっているパッケージを目の前に掲げ、宣言した。
 それを聞いた陽炎とひよ子、翔太の3人は不敵な笑みを浮かべ、それぞれがコントローラーを手に取って答えた。
 因みに。
 これと同時刻。
 隼鷹那智千歳の飲んだくれ改二トリオは現在、二日酔いに痛む頭と吐き気逆巻く胃袋を抱えて太陽が高く輝く近海を哨戒任務中である。
 とはいえご安心いただきたい。こいつら脳から酒さえ抜ければ艦としても娘としても器量良しなのである。



「えー! 司令官何でそんなにぽややん・ブルーが強いんですか!? 何ですり足キック一発でリングアウトした上にフィールドの半分近くが青一色に染まっちゃうんですかー!? ズルだ、比奈鳥司令ズルしてますね!?」
「ふふん。猫被りやめたぽややんは公式から『悪しき夢にとっての悪しき夢』て言われてるのに何を今さら。チート言うならクリーチャートレーナー使ってる翔太君でしょ」
「え? あー!? 12postとパリンクロンとか反則一歩手前の殺人コンボー!! ていうか何で青のパリンクロンが無色陣営にいるのー!?」
「よっしゃ69マナ溜まったー! ゆけっ! 無限に廻る絶え間無い飢餓の引き裂かれし永劫の約束されし大いなる歪み真実! きみたちで決めろー!!」
「いやぁー! 折角フィールド7割金色に塗ったのにー!? あ゙ー! 陽炎ちゃん不明なユニット接続での追撃止゙め゙でぇ゙ぇ゙ぇ゙!!? あ゙ー!? 私のカブトムシ姫さまとスチェンカ杉元といあマスターテリオンの黄金トリオが一瞬で真゙っ゙黒゙に゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ー!?」
「うわぁ!? 私の青色が一瞬で全部真っ黒に!? どこ!? 青義最後の砦はどこ!?」
「ま、まだだ! まだ終わって……え!? ここでタイムアップ!? 判定負け!?」

 応接広間に設置された大型極薄液晶モニタの中から『YOU WIN!』の声がする。それを受けて、陽炎が鼻を高くする。

「どう? 私のチェーンソー捌きは? 少しは参考になったかな? ああ、お礼なんていいのよ~? 7つ目の優勝カップだ、け、でぇ~?」
「むうぅー! 次こそ勝ちます! 皐月ちゃんが!! 交代!!!」
「オッケー! 金色ならボクのB-5Bと第四次ウルクの過労死王様の空戦コンビに任ぁっかせてよ!」
「ちっくしょー。折角プラクティス以外で6体全召喚できたのになぁー。北上さん、リベンジおなしゃっす!!」
「北上様にまかせなさーい」
「よっしゃかかってこーい! 3人纏めてまた返り討ちよー!」
「「「それならば遠慮なく」」」

 高笑いを続ける陽炎の脳天に背後からの不意打ちチョップが3つ同時に入る。
 いつの間にか帰還していた隼鷹那智千歳の飲んだくれ改二トリオだった。

「向こうの基地の明かりと荷物が消えているから何かあったのかと思ったら……まったく。何をやっているのだお前達は。今何時だと思っている。陽炎?」

 お前達は、の時点で既に陽炎は自我コマンドを入力。脳裏に現在時刻を表示させた。
 なんかすごい数字が出た。

「ひ、一八○○です!」
「そうだ。一八○○。午後六時ジャストだ。陽炎、貴様、今日全休だったとはいえ、気を抜き過ぎだ。懲罰勤務とはいえ、元・地獄の壁の名が泣くぞ?」
「も、申し訳有りませんでした! 猛省しております!!」
「当たり前だこのバカ者、以後気を付けるように」

 那智も疲れていたのか、これ以上お説教を長引かせようとせず、軽めの脳天チョップによる修正一発で締めた。

「まったくもう。比奈鳥准将も、他の皆さんもですよ? 息抜きは大事ですけど、ちゃんと仕事もしてくださいね?」
「「「は、はい」」」

 同じショートランド所属の陽炎は那智に叱られ、それ以外の面々はすっかり酒気の抜けた千歳に『めっ』とたしなめられた。そして最後まで黙っていた隼鷹が戦果を報告した。

「んじゃ、最後にあたしから報告だぜー。えーと、本日の近海警備では戦闘は発生せず。近海は普段通り平穏無事。昨日みたいな敵集団の痕跡も無し。ただし、いくつかの島でPRBR検出デバイスに反応があったため3人で索敵機を飛ばして目視及びセンサー類で観測してみましたが明確な痕跡は確認できませんでした。検出した波が微弱かつ断続的だったため、艦種の同定は出来ませんでした。近日中に再偵察の要を認めます」
「報告を受け取りました。隼鷹さん、ご苦労様でした」

 ひよ子に向かって一切の遊び無い真面目な顔で敬礼し、立て板に水を流すようにスラスラハキハキと報告する隼鷹。
 これは本当に昨日の飲んだくれお姉さんと同一人物なのだろうかと吹雪は本気で疑問に思っていた。

「よっし堅苦しいお仕事終わりー。呑むぜ呑むぜ~♪ 素面の今ならいつもより五臓六腑に染み渡るはず~♪」

 一秒前までは。

「うむ。隼鷹の言う通りだ。堅苦しい話はここまでにして、ここからは気分を変えて飲むぞ」
「皆さん、おつまみもありますよー」
「あ、そうそう。夜間警戒は大淀と、目を覚ました夕張の2人がやってくれてるぜ」
(こっち来て二年たつけど、この人達全然ブレないなぁ……ん?)

 那智がワンカップ酒の蓋を親指一本で弾き飛ばし、千歳が常備していたスルメの袋の封を切った。
 そんな彼女らを見て呆れるひよ子の仕事用スマートホンにラインの新着メッセ―ジが入ったと短く音が鳴る。

「秋雲ちゃん達から? 何だろ? あ」

 ひよ子の発した『あ』に釣られて、その場にいた面々がひよ子のスマホの画面をのぞき込む。
 そこには、いくつかのコメントと共に写真と動画が複数張り付けられていた。

 秋雲:提督ヤバーイ! マジヤバー! 見て見てUFOの破片ー!!

『UFO大☆粉☆砕01.bmp』
『タウイの皆がUFO復元しようとしてたった.mp4』
『帰ってきたウルトラもといアドミラル蒸野.bmp』
『現地人らしき少女と睦月型11人による十二つ巴の正妻戦争.bmp』
『蒸野提督直筆サイン入り! UFO復元図.bmp』

 さらに新着メッセージ。

 秋雲:あ、そうそう。プロト19ちゃんと一緒に夕飯ゴチになってきたよー。これから帰るからそっち戻るのもう少し後になりそー。

「ホントに何やってんの秋雲ちゃん達……」
「へぇ、この人が帰ってきた提督さんかぁ……」

 ひよ子の左右から画面をのぞき込んでいた、陽炎を始めとした新生ショートランド泊地の面々は、数年ぶりにタウイタウイ泊地に帰ってきたという提督を撮った一枚の画像に注目していた。
 そして、その中の1人である陽炎は口には出さずに心の中だけでこう呟いた。

 ――――だったら、私の司令官も、秘書艦の神通さんも、きっと帰って来るよね。

(それに、コロンバンガラ・ディフェンスライン突破作戦もあるし)
「ん? なんか言った陽炎ちゃん?」
「いえ、何も」

 大丈夫。きっと、きっと帰ってくる。タウイの提督さんも7年かかったらしいけど帰ってきた。
 だから司令も、神通さんも、きっと、必ず。
 陽炎本人も気付かぬ内に、固く握り拳を握りしめていた。

 因みに。
 これと同時刻。

 南方海域における深海凄艦側勢力の最前線防衛拠点、コロンバンガラ島――――人類側呼称『コロンバンガラ・ディフェンスライン』にて、一体の人型深海凄艦が片手で額の汗を拭うジェスチャーをしていた。

「フウゥ~……我ナガライイ仕事シタワァ」

 実に良い笑顔を浮かべながら独り言を呟く深海凄艦。

「提督ノ方ハ、半日デ堕チタッテイウノニ……二年モ耐エルトカ、マッタク、テコズラセテクレタワネ」

 完全な少女型の上半身と異形の大口を模した機械の下半身、青白い肌、ボタン止め式の真っ黒なセーラー服、顔を模した胸元の黒いアクセサリー、腰まで届くストレートの黒髪は頭部の両側でお団子状にまとめられており、その瞳は勝気に吊り上がり、鬼火と同色の微かな輝きを放っていた。
 二年前のトラック泊地近海における、かつての神隠しの主犯。
 二番目の鬼種。
 歌う鬼。

「デモ」

 帝国海軍呼称『軽巡棲鬼』

「デモ、コレカラハ、苦労シタ分、沢山働イテモラウカラネェ?」
「……はい」

 実に楽しそうな声で、実にサディスティックな笑みを浮かべて背後を振り返った軽巡棲鬼。
 そこには、彼女と同じくらいの巨大な背丈をした、もう一体の人型深海凄艦が立ちつくしていた。

「ソウネェ……マズハ手始メニ、貴女ノすぺっくヲ確カメルタメニモ、連中ニ一当テシテキテモラオウカシラ。勿論、監視ハツケルケド」
「……はい。了解しました」

 軽巡棲鬼と同じく、完全な女性型をしたその深海凄艦はおよそ一秒ほどのタイムラグを得てから軽巡凄鬼に向かって敬礼。それを見て幾分気分の良くなった軽巡棲鬼、略して軽巡鬼が満足げに――――実に見事ドヤ顔全開で――――腕を組んで何度もうなずいた。

「ソレジャア、出撃! ……ノ前ニヤッパ、今日ハ航行訓練ニシトキマショ。準備運動ハ忘レチャ駄目ヨ?」
「はい。了解しました」

 Sの字型の短く黒い角を目の部分から生やした独特のアイマスクをした、そのもう一体の人型深海凄艦が敬礼をしたまま続けて告げた。

「新生ショートランド泊地、神通改二。訓練航海に抜錨します」










 次回予告

 イランカラㇷ゚テー!

 ……って誰と勘違いしたのかなぁ~?
 チィーッス、航空巡洋艦娘のシュシュヤもとい鈴谷でーっす☆
 この作者、鈴谷の口調再現できないから本編には出せないけど、せめて次回予告には出したかったんだってー。……止めてください。冗談抜きにキモいんです。
 んで、早速次回の話だけどー、なんかブイン基地、金欠でとうとう稼働できなくなっちゃったんだって。
 そこで基地司令のひなちゃん以下、基地の面々は旧ブイン基地の人達が残した金塊を見つけるために入れ墨で暗号を彫られた24人の艦娘を見つけ出すために東奔西走するってお話だよー。

 次回、とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!
 第3話『ゴオオオオォォォゥルデェェェンンンン、ブゥゥゥイィィィン゙ンンン』(CV:ここだけ伊藤健太郎)

 来週もお楽しみにねー☆
 あ、そうそう。来週の見どころだけどねー、エラー猫のゴーストが宿ったHAW-206をお供につけた輝君と塩太郎さんが『艦娘は脱がーす!!』とか叫んで陽炎ちゃんのスカートの中に頭突っ込んでスパッツとパンツまとめてずり下ろすシーンだよー。
(※翻訳鎮守府注釈:なお次話タイトル、次話投稿予定日、および投稿内容は何の予告も無く変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください)






 本日のNG(どうでもいいQ&A)シーン その1

 Q1:大奮闘ペイントスプラッシャーズ、最後に出てきた秋雲とプロト19は何色使い? あと基本戦術は?
 A1:
 秋雲
「白黒陣営かなー。メインはフライング・アイアン・カタマリで、サポートにパラダイス閻魔様かなー。フライングは色合わせればダメージ吸収からゲージ技のエナジーマッに繋げられるし、閻魔様はサポに回せば自動で白黒ハッキリさせてくれるからこのコンビは相性抜群なんだよねー。あ、サブキャラはその日の気分だね」
 19
「イクはプラチナなのねー。メインはレナスちゃんを速攻でヴァルキュリア化させてから神技の乱発でリングアウトさせて復帰までの間にペンキ塗り潰しがメインなのねー。それでも逃げ切る避け切る相手にはサポートキャラの承り郎の時間停止で足を止めたらサブのゴズマとチェンジしてナイアガラクラッシャーでフィニッシュがイクの鉄板なのねー☆ ……海ではじっとしている任務ばっかりだから、ゲームの中くらいは思いっきり派手に暴れたいなのねー☆」

 Q2:初心者は何色選んだらいいの?
 A2:陽炎と同じ黒単色がおすすめです。とあるキャラを入れとけばピンチの時に高確率でその時不思議なことが起こるので。

 Q3:そもそも大奮闘ペイントスプラッシャーズって何よ。
 A3:考えるな、感じろ。



 本日のNG(没)シーン その2

 応接広間に設置された大型極薄液晶モニタの中から『YOU WIN!』の声がする。それを受けて、陽炎が鼻を高くする。

「どう? 私のチェーンソー捌きは? 少しは参考になったかな? ああ、お礼なんていいのよ~? 7つ目の優勝カップだ、け、でぇ~?」
「むうぅー! 次こそ勝ちます! 皐月ちゃんが!! 交代!!!」
「オッケー! ボクの赤色陣営に任ぁっかせてよ! まずは隠しキャラのパスワードで『あかしけ やなげ〔以下全文焚書済み〕』」





 本日のOKシーン

 Please save our Okinawa 02.


『引き続き台風情報をお伝えします。史上稀に見る大規模な勢力をもった巨大台風■号は、現在もなお沖縄県に向かって北上中。直撃する恐れの高い沖縄県全域には、本日未明に非常事態宣言および避難命令が発令されました。帝国陸海両軍は現在、沖縄県、那覇鎮守府にて避難支援の準備を進めており――――』
「テレ帝ですら台風特番……これ本当にヤバイみたいね、北上ちゃん」

 こっちの空はこんなに青いのにね。と、比奈鳥ひよ子少佐は隣の椅子にまたがりギッコンバッコンと前後に揺らして遊んでいる雷巡娘の北上改二に向けて呟いた。

「そだねー。海が荒れると魚雷の針路も荒れるから嫌なんだよねー。はー、嫌だねー。ベオルスカとホエールズの決勝戦も延期になっちゃったし、ホント嫌だねー」
「あの、北上さん。ここは有明警備府ではなくて余所の鎮守府なのですから、もう少し大人しく出来ないでしょうか?」
「ぬいぬいちゃんは真面目だねー。へーき平ー気。ここ、新しく箱作ったって感じじゃないから床に引っかき傷の一個や二個増えたって誰も気づかないっしょ。現に秋っちとプロト19はどっか出かけちゃったし。ていうか輝君と雪風はどこいったのさ」
「ですから私はぬいぬいではなくてですね」
「にしてもさ~」

 帝国海軍所有、那覇鎮守府の一階応接室。それが今、彼女達の居る現在地である。
 先日、有明警備府にある比奈鳥ひよ子少佐の端末に大本営から送られてきた動画メールことミッション命令に従い、飛行機(経費削減のため、民間の航空機ではなく同警備府所属の蒼龍再び改善の偵察機を使用)に乗ってここ、那覇鎮守府までやって来たばかりである。
 そして滑走路で待機していた背広組の人間に案内され、他の作戦参加者が全員揃ってからブリーフィングが開始されるのでそれまでここで待機して欲しいといわれ、今に至る。
 ここに至るまでの間、ひよ子達は案内役の背広組以外の人間も艦娘も、誰も見なかった。 

「にしてもさ。外、なんかガキ多くない?」

 扉の向こう側や窓の外から聞こえてくるざわめきを聞いた北上がその内容と音質を精査して呟いた。改二型艦娘の固定兵装の1つである極めて高い対人索敵能力は、こういった事にも使えるのだ。

「社会科見学……でしょうか?」
「作戦行動前の軍事基地に? 人がいないときに? ぬいぬいちゃんそれは無いと思うわ」
「私もそう思うよー。無いわー、ぬいぬいちゃん、流石にその発想は無いわー」
「ですから司令に北上さん。わたしはぬいぬいではなくてですね。出来ればちゃんと不知火と――――」

 不知火もといぬいぬいの言葉を遮るかのように応接室の扉がノックされ、ひよ子たちの返答も待たずに開かれた。
 最先頭は滑走路にいた背広組の男。続いて困惑した表情をした有明警備府所属の駆逐娘『秋雲』と潜水娘『プロトタイプ伊19号』そして有明警備府で厄介になっているブイン基地のチビガキこと目隠輝と、輝とほぼ同じ背丈のラバウル所属の駆逐娘『雪風』。
 そして、その背後に連綿と続くガキ共の群れと、そいつらの隣にいる艦娘達。
 ご丁寧な事に、ガキ共の最先頭の委員長っぽい雰囲気のメガネ少年の手には『多学校連合社会科見学 鎮守府で1日提督体験コース』と書かれた旗が握られていた。
 それを見たひよ子と北上、ぬいぬい3人の表情と声と感情が完全に同期した。

「?」「?」「?」

 背広組が口を開く。

「有明警備府の皆様、お待たせいたしました。第三次菊水作戦、参加提督全員が到着いたしましたので、これよりブリーフィングを始めさせていただきます」

 ひよ子の頭の中で、瞬間的にパズルのピースが組み上がる。

 曖昧かつ不明な部分が多かったミッションメール。
 極秘と言ってもいいくらいに情報の無かった敵主目標。
 今の今まで伏せられていた参加人員の詳細なプロフィール。
 台風に軍隊を差し向けるという愚行。
 規模の割にやたらと人気も艦気も無かった那覇鎮守府。
 能天気に『今日は一日よろしくお願いしまーす!』と唱和するガキ共。
 そして、鎮守府で1日提督体験コース。

 生贄。

 その一単語が脳裏に浮かび、これから自分が、彼らをどうしなくてはいけないのかを悟った瞬間、比奈鳥ひよ子インスタント少佐はその場にひざまずき、一瞬も耐える事が出来ずに盛大に嘔吐した。

(今度こそ終れ)


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