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No.38827の一覧
[0] 【チラ裏より】嗚呼、栄光のブイン基地(艦これ、不定期ネタ)【こんにちわ】[abcdef](2018/06/30 21:43)
[1] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】 [abcdef](2013/11/11 17:32)
[2] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】 [abcdef](2013/11/20 07:57)
[3] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2013/12/02 21:23)
[4] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2013/12/22 04:50)
[5] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/01/28 22:46)
[6] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/02/24 21:53)
[7] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/02/22 22:49)
[8] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/03/13 06:00)
[9] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/05/04 22:57)
[10] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/01/26 20:48)
[11] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/06/28 20:24)
[12] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2014/07/26 04:45)
[13] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/08/02 21:13)
[14] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/08/31 05:19)
[15] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2014/09/21 20:05)
[16] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/10/31 22:06)
[17] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2014/11/20 21:05)
[18] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2015/01/10 22:42)
[19] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/02/02 17:33)
[20] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/04/01 23:02)
[21] 【不定期ネタ】嗚呼、栄光のブイン基地【艦これ】[abcdef](2015/06/10 20:00)
[22] 【ご愛読】嗚呼、栄光のブイン基地(完結)【ありがとうございました!】[abcdef](2015/08/03 23:56)
[23] 設定資料集[abcdef](2015/08/20 08:41)
[24] キャラ紹介[abcdef](2015/10/17 23:07)
[25] 敷波追悼[abcdef](2016/03/30 19:35)
[26] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2016/07/17 04:30)
[27] 秋雲ちゃんの悩み[abcdef](2016/10/26 23:18)
[28] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2016/12/18 21:40)
[29] 【不定期ネタ】有明警備府出動せよ!【艦これ】[abcdef](2017/03/29 16:48)
[30] yaggyが神通を殺すだけのお話[abcdef](2017/04/13 17:58)
[31] 【今度こそ】嗚呼、栄光のブイン基地【第一部完】[abcdef](2018/06/30 16:36)
[32] 【ここからでも】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!(嗚呼、栄光のブイン基地第2部)【読めるようにはしたつもりです】[abcdef](2018/06/30 22:10)
[33] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!02【不定期ネタ】[abcdef](2018/12/24 20:53)
[34] 【エイプリルフールなので】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!(完?)【最終回です】[abcdef](2019/04/01 13:00)
[35] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!03【不定期ネタ】[abcdef](2019/10/23 23:23)
[36] 【嗚呼、栄光の】天龍ちゃんの夢【ブイン基地】[abcdef](2019/10/23 23:42)
[37] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!番外編【不定期ネタ】[abcdef](2020/04/01 20:59)
[38] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!04【不定期ネタ】[abcdef](2020/10/13 19:33)
[39] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!05【不定期ネタ】[abcdef](2021/03/15 20:08)
[40] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!06【不定期ネタ】[abcdef](2021/10/13 11:01)
[41] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!07【不定期ネタ】[abcdef](2022/08/17 23:50)
[42] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!08【不定期ネタ】[abcdef](2022/12/26 17:35)
[43] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!09【不定期ネタ】[abcdef](2023/09/07 09:07)
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[38827] 【艦これ】とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!08【不定期ネタ】
Name: abcdef◆fa76876a ID:64bedcaa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2022/12/26 17:35
※いつも通りのオリ設定。
※序盤にあるアイアンボトムについては第一部こと嗚呼、栄光のブイン基地の第19話『鉄底海峡③ Many Fleet Girls / And then there will be none』を読んでおくと、より分かりやすくなるやもしれません。読んでいない方は是非お読みいただけると幸いです。ていうか読め。
※筆者の頭の中では、リコリス棲姫=再生怪人リコリス・ヘンダーソンの等式が成立しています。それはねーよ。と言う方はご注意ください。
※第一部の『嗚呼、栄光のブイン基地』は鬱暗い話だったので、第二部では、スナック感覚でサクサク読める、底抜けに明るい話にしたいと思います!

※アナベル・ガトーは言いました『3年待ったのだ』と。
※マブラヴのファンは言いました『オルタが出るまで1age待ったのだ』と。
※なので我々はこう言いましょう『我々は9年間待ったのだ、アーマードコア6が出るまで!!』

※(2022/12/24初出。同12/26 以下の単語を変更 帝都経済新聞 → 帝国経済新聞)



 おめでとうございます。あなたは当選しました。
 あなたの暗号鍵は『■■月■■日付けの帝国経済新聞』『ひらがな』『フィボナッチ数列』です。

        ――――――――い号計画チケット当選者の自宅ポストに投函されていた手書きの便箋、その全文。





「元帥閣下! いつこちらにお戻りになられたのですか?」
「おお。大淀君か。ただいま」

 帝国本土にある大本営。その中にある廊下で、紙袋を手にした一人の老人が艦娘の大淀に話しかけられた。

「おかえりなさいませ。スウェーデンへの視察、お疲れ様でした。それと……それと、よくご無事で……閣下の御宿泊なさっていた国際ホテルが、テロリストに乱入されて死傷者が多数出たとニュースで知って、閣下とも連絡がつかず……」
「ああ。心配かけたのう。ただいま。ほれ、スウェーデン土産のトロール人形とバレリーナ・クッキー」

 ほい。と紙袋を押し付けられた大淀は、元帥と呼ばれた老人に一言断りを入れてから紙袋の中を覗きこんだ。

「(このトロール人形、どうして『突進する』って書かれてるお札がキョンシーみたいに貼られてるのかしら?)あ、ありがとうございます閣下。ですが、ご無事ならご無事と、一報いただけたらよかったのですが」
「連絡しなかった事はすまんかったの。こう見えてもワシ、帝国軍部の重鎮じゃから、秘密裏に帰国して、余計な枝や足が付いてないか自宅に引きこもって確認してたんよ」
「左様でしたか……改めまして、ご無事で何よりです」

 大淀は瞳を潤ませ、元帥に静かに抱き付いた。対する元帥もまた、静かに微笑むと大淀を抱擁した。
 たまたまその場を通りがかった、とある艦娘が『まぁた犬淀が、飼い主様に尻尾振って媚び売ってるぴょん』と悪態付いたが、当の大淀は聞こえていなかったし、元帥は承知の上かつコイツはこのままの方が都合が良いので聞こえていないフリをした。
 ややあって二人は離れた。

「ところで閣下。何か良い事でもあったのでしょうか? 随分とご機嫌な様子で廊下を歩かれていましたが」
「ああ。ちょっと引き籠り最終日に、まるで夢のように嬉しい事があっての。ところで大淀君?」
「はい閣下。何でしょうか」

「ここの購買に、帝国経済新聞は置いてあったかの?」



 …… “それ” は何だと言われても、どう説明したらいいのか分からない。

 光も届かぬ真っ暗な海底、そこに走る大きなクレバスの一番奥底に “それ”は存在していた。
 少なくとも人ではないし、陸の生き物でもなかった。もちろん海の生き物とも形は違っていた。

 人の身からすれば巨大すぎて平面にしか見えない、全長数キロメートルほどの半球状の “それ” は何をするでもなく、ただ静かにそこに存在していた。
 何故光も届かぬのに形状が分かるのだと言われれば、それ自身が微かに青白く発光していたからだと答えよう。
 真上から “それ” を覗きこめば、水中から水面を眺めているかのように揺らめき輝いているのが見えた。
 もっと遠くから見れば、 “それ” が収まっているクレバスを細めたまぶたに見立てた、瞳のようにも見て取れた。
 そして、 “それ” の周囲には、海流や重力によって流されてきた艦船の残骸や人の遺体が無数に降り積もっていたのも見えた。遺体には人間である事以外の共通点は無く、海で死んだ人間を新旧適当に選んできたのだと言われても違和感はなかった。骨だけになっているナイスバディのビキニのお姉ちゃんもいれば、つい今しがた沈んできたばかりとしか思えないドラム缶に生コンとセットで詰められた借金返済焦げ付き太郎もいた。
 そんな賑やかな海の底に、少し前に海流に流されつつ、上から落ちてきた一隻の船があった。
 少し前までは鋼鉄で出来た船の残骸だったが、どういう理屈か、誰もいないはずの深海の奥底でゆっくりと、生物の傷が塞がるようにして修復・再生が進んでいた。
 そして、完全に元の状態へと復元したその船は、これまたどういう理屈か、大きな音を立てて海底から浮かび上がると、水面を目指して、泡のように静かに浮上し始めた。
 浮かび上がる艦の存在にも左右されず、 “それ” は自ら発する光量が音も無く強くなり、ゆっくりと元の光量に戻っていくのサイクルを繰り返していた。

“それ” は、光も届かぬ世界最深部の底で、何をするでもなく、ただ静かにそこに存在していた。



 夢を見た。
 あの日あの時、あの夜の。
 二年前の、アイアンボトムサウンド防衛戦の夢を。

 意識が途切れる直前の記憶は、人間どもが言う艦娘の『赤城』の満面の笑み。
 油断も慢心もしていないつもりだった。
 事実、そいつの右腕は折れたのか外れたのかは分からなかったがプラプラと不自然に揺れているだけだったし、音も波紋も無く暗闇の水面を飛び跳ねるのは脅威だったが徐々に精彩を欠いてきているのが明らかだったし、己の上半身が肩に担いでいた主砲の接合部を噛み千切った自慢の咬筋力も疲れていたのか、己の筋肉を食い破るほどではなかった。
 つまりは手負い。
 何度目かの交差で、とうとう力尽きたのか、その赤城が水面に片膝をついて完全に足を止めていた。無傷の左腕は背後に回されており、こちらからは見えなかった。
 あの時は、絶好の機会だと即座に判断した。自身の負傷は眼前の赤城よりも深刻だったし、体力も残り少なかった。1人でも敵の数が減れば、と考えていた。
 今思い返せば、あからさまに過ぎる罠だった。
 腕を振り上げ、拳を握り直し、いざ振り下ろさんとしたその刹那。

「絶好の機会だと思いました? それこそ……慢心ね!」

 その赤城が無傷の左腕に『展開』した20センチ単装砲による単発砲撃が、腹部の皮膚を抜き、肉を裂いて、内部にあった有機パーツ群のいくつかに突き刺さる。榴弾や徹甲榴弾でないのが幸いし

「ふふっ」

 見間違いだと思った。
 新手の精神兵器か一時的なスペックダウンからくる重度の幻覚かと思いシステムに再チェックの実行を命令までした。
 赤城が、腹部に開いたその砲弾痕に、左腕を肩まで付き込んで中をまさぐっていた。

「ふふっ。あなたのお腹の中、とても暖かいで、す、ね、ぇっとぉ!!」

 こちらが反撃するよりも早く、己の中にあった何かを力強く握りしめ、両足で腹を蹴って真横に跳躍。

 極端に細長い有機系の消化吸収管や、それに付随したいくつかの臓器群が太い血管をいくつも破りながら腹の穴から引きずり出される。限界を超えて引っ張られたそれらはブチブチと音を立てて引き裂かれていく。
 想定外の損傷により一時的に意識がシャットアウト。
 意識が途切れる直前の記憶は、人間どもが言う艦娘の『赤城』が、満面の笑みで『採ったどー!』と叫んでいるその光景。

「――――、――――? ――――」

 次に意識が再起動したときに、一番初めに知覚したのは、驚愕する艦娘が数名。
 こちらよりも幾分低い背丈だったから、恐らくは超展開中。察するに駆逐娘。

『嘘だろ、コイツ、再起動しやがった!』
『し、司令官! 再起動、ウェポンユニットが再起動した! 回収目標03はまだ生きてる!!』

 状況を確認すべく質問信号を発信。送信先は己の上半身にして、身命を賭しても守り抜くべき我が存在意義。
 応答なし。
 再送信。次は作戦に参加していた全ユニットに。
 ごく少数から返信。その中では、最も稼働時間が長かった一体の重巡ユニットに接続し、情報の提供・共有を要求。
 ?
 その重巡ユニットとの接続を再確認。その後、情報の提供・共有を再要求。
 やはり、意味不明な返答が帰ってきた。
 作戦が失敗に終わったのは理解できる。現在交戦中なのも理解できる。己の意識が途切れてから再起動するまでの間にとんでもない日数が開いていたのも、まぁ、理解できる。
 だが、誰が死んだというのだ。
 人間どもはこういう時『寝言は寝て言え』というらしい。休眠しながら有意な出力が出来るとは、どうやら人間の脳は並列処理能力が生半可な領域ではないらしい。そんなどうでもいい事が頭をよぎる。
 三度再接続して、三度情報を提供してもらっても、内容は同じだった。
 ならば、直接見に行った方が早い。

『畜生、コイツ、主砲も魚雷も全然効いてねぇぞ!? ハラワタこぼれてんのに、ゾンビかよ!?』
『響改より全ユニット、響改より全ユニット! 03が移動を開始! こっちの阻止砲撃は効果無し。まっすぐガダルカナル島に向かってる!!』
『了解。作戦総司令より全ユニット。作戦総司令より全ユニット。現時刻をもって全ての作戦を放棄。ただちに撤収を開始せよ。繰り返す。作戦終了、即時撤収せよ。こだわるな、姫と鬼の死体はサルベージ出来ても、お前らの命ばかりは出来んぞ!!』

 本拠地にようやくたどり着いた時にはもう、戦闘は終了していた。
 現場指揮を執っていた、件の重巡ユニットから情報を得てみると、ついさっきまでここで戦闘していた人間どもは、こちらが良く知る南方の連中とは別の群れの所属だったらしく、極めて高い練度と十分以上の数が揃っており、全滅必至の防衛戦を繰り広げていたとの事。自分がこちらへの移動を開始したの察知するとほぼ同時に、潔いほどの速さで撤退したそうで、文字通りの全滅は避けられたとの事。
 ただし、リコリス姫の焼死体の大部分と、我が上半身の主砲、そして首。それらを持ち去って行ったのだという。
 だから誰の首だよ。
 やはり、この重巡ユニットが何を言っているのか分からない。彼女はきっと疲れているのだろう。
 そして己自身も、きっと疲れているのだろう。
 己の目の前に横たわる、この、どこかで見たようなプロポーションの首無し死体は、きっと、よく似た誰かのボディに違いない。きっと疲れて寝ているだけだ。今すぐにでも目を覚ますはずだ。
 見間違いのはずだ。
 すぐに目を覚ますはずだ。
 いつまで経っても目を覚まさない。何故だ。

 そうか、首から上が無いからだ。

 処理中枢が無ければば意識の再起動など出来るはずがない。何故今まで気が付かなかった。
 本来の首は、人間どもが持ち去ったという。連中今すぐ皆殺しにして取り返してやりたいが、そちらよりもまずはボディの保全に努めなくては。連中から取り戻しに出ている間に、このボディが腐敗したらどうしようもない。
 件の重巡ユニット達が、輸送ユニットに命じて精製させた封印ゲルの中に身体を漬けていなかったら、もう影も形も残らぬほど腐敗していたであろうほどに日数が経過していたのだ。輸送ユニットが撃破され、ゲルも底を尽いた今、そちらを最優先せねばならない。
 だがどうやっ

 思考回路に火花が走る。

 振り返ると、そこには、燃え残った巨大なリコリス姫の頭部の破片があった。
 砕けてからずっと、残り僅かな自身の肉を食い潰しての自己修復を続けていたらしく、もう既に、全身の再生をほぼ終えていた。しかし、肉の量が足りなかったのか己らと変わらない大きさにまで矮小化していたが。
 そして、幸運なことに、その首から上は完全に再生を終えていた。
 重巡ユニット達は功労者だ。手に掛けたくない。使うなら、こちらだ。
 そっと手を伸ばす。

 夢から覚める。





 E.G.コンバットの4巻が9月末に何らかの進展有りと聞いたので『ヒャッハー! 2001年6月10日は2022年9月30日にやって来るんだぜー! こうしちゃいれられねぇ、何年か前の新年初夢用に取っておいたけど使い損ねてたネタを使って突発話差し込むぜヒャッハハハハー!!』と意気揚々に書き始めていつも通り筆が詰まった12月現在も音沙汰無し……地球儀に降りていった幽からの合図を待ち続けるクリスマスの気分を味わい続ける今日この頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
 そういうわけで今回は突発的に差し挟んだお話ですので、沖縄編はありません。本来の第8話の予定だった『エンドレスビッグセブン』までお待ちください。
 な艦これSS

 とびだせ! ぼくの、わたしの、ブイン基地!!
 第8話『YUME ~人それぞれのカタチ~』





「ひゅー。ひゅー、こひっ、こひっ、こっ、っ……っ、」

 夜明け直前の南方海域、ガダルカナル島にて。
 人類側からは第3ひ号目標乙種、あるいはリコリス棲姫。
 深海側からは姫、あるいは上位存在。しかし本人の聞こえぬ所では人形姫と陰口を叩かれる存在が目を覚ました時、己の上に座らせている上半身が変な格好でしなり、おまけに首が取れかかっていたのに気が付いた。

 ――――ああ、これはいけない。

 急いで両手十指の先から伸びている糸を操作。一指につき数本接続されているそれを微妙に操って大まかに姿勢を直すと、糸を通じて上半身の神経系にコマンド送信。完全にバランスを戻して己の上に座り直させると共に、両腕を使って首の位置を正位置に戻した。

 ――――えぇと。確か、彼女はこんな口調だった、ような。

 続けてプリセットコマンドを複数、連続で送信。糸を経由して微電流が横隔膜や声帯筋などを刺激し、事前設定されたコマンド通りのパターンで収縮し、あるいは弛緩する。
 その結果、両手で首を抑えた姿勢のまま上半身が『フ……』『トレル』『トコロダッタリ』『ホントウニ』『トレタリ』『イソガシイモノダナ』と発声した。
 正しく発声できたことにより、首の縫合部から呼気や体液の流出がない事を確認したリコリス棲姫は、そこでようやく安心した。

 リコリス棲姫。
 その姿は姫の名に相応しくない異形だった。黒くて丸くて大きな口だけがある頭の横から二本の腕が生えた何か。としか言いようがない、正真の化物の姿だった。
 かつて、ハワイの白鬼と呼ばれた泊地棲鬼。その下半身を覆い隠していたウェポンユニットの成れの果てだった。

 ――――いちおう、後で再縫合と消毒だな。

 そして、それに腰掛ける完全な女性型もまた、異形だった。
 白い肌、白い髪、首をぐるりと一回りする縫合痕と、全身を這い回るパッチワークめいた縫合痕、ぱっつん前髪&お嬢様式縦ロール、ドス黒い色をした角型髪飾り、フリルが控えめについた白いドレスシャツに乾いた血の色のミニフレアスカート、足元に咲き乱れる季節外れの彼岸花。黒くて丸くて腕らしきものが生えた何かの指先から体の各所に伸びた細い糸のようなもの。時折不自然にカクカクと揺れる首とか関節とか。
 容姿については眉目秀麗だが、この通り、所々に違和感があった。

 ――――……いつに。

 黒くて丸くて大きな口だけがある頭の横から二本の腕が生えた何かは、リコリス・ヘンダーソンだったものから失敬した素材だけでは足りなかったので、己の身体の大部分もまた、素材としてつぎ込んだのだ。
 その結果、両端を切り落とした巨大なカヌーのような形状と、超展開中の艦娘を複数乗っけてのステゴロが出来るほどのサイズは失われ、辛うじて一人が乗っかる程度の黒い球体へと小さく矮小化してしまった。人類側から “奥の手” と呼ばれた両腕が残ったのは幸運だったが。

 ――――いつに。いつになったら。

 結論を言うと、このウェポンユニットの目論見は上手くいった。
 首の接合にはリコリス姫の体液を使ってもなお手間取ったし、途中で素材が足りなくなって自身の身体も幾許か矮小化して丸っこくなってしまったが、問題らしい問題はなく首は繋がった。
 
 ――――首は繋げた。縫合痕こそ残ったが神経も血管も全て繋げた。神経系にパルス信号を送って自発呼吸と鼓動の再起動も上手くいった。末端組織の壊死も腐敗も無い。身命を賭しても守り抜くべき我が存在意義よ。何故。何故だ。己の上半身よ。

 何故目を覚まさない。
 リコリス棲姫の静かな慟哭だけが、朝日の差し始めたガダルカナル島に木霊する。



 南方海域のブイン島にある新生ブイン基地に朝日が差し始めたちょうどその時、比奈鳥ひよ子は気が付くと、外から光差す薄暗いコンクリート製の地下トンネルの中にぼけっと突っ立っていた。
 誰かが泣いている。

「……? あっ」
「ひゃうっ」

 すぐ目の前にあったトンネルの出口側から、光を背にして一人の小さな女の子がべそをかきながらこちらに走って来ていた。
 ひよ子はボケっとしていたし、黒いロングヘアのその子も前を見ていなかったので、2人は軽い音を立ててぶつかった。

「ご、ごごごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「え、あ、ちょっと!?」

 少女が残像が残る速度での秒間十六連射オジギによる謝罪を決め、そのまま暗闇へと走り去ろうとしたのを、ひよ子は反射的に手を掴んで引き留めた。その際、少女の頭の上から短い毛に覆われた細長い獣の耳のようなものが生えていたのが見えた。
 次の瞬間、2人はその姿勢のまま何の脈絡も無く、日の当たる舞台の上に立っており、周囲から大歓声が投げかけられた。

「へ?」
『――――番、ヒナドリヒヨコ。パプワニューギニア独立国はブイン島、ブイントレセン学園からの留学生です』
『良い仕上がりですね。これなら『走る酸素魚雷』とまで呼ばれる超ロングスパートにも期待が持てますね』
「は?」

 ここでひよ子は初めて、自身が手を掴んで引き留めているその少女が薔薇をモチーフにした暗い青色のドレスを着ている事に気が付いた。そして、周囲の声が顔の横からではなく頭の上の方から聞こえてくる事と、己の尻に何かふさふさした物が当たっている事にも。

「う……」

 思わず両手で己の尻やら脳天やらをぺちぺちと触ってみれば、そこには耳があり、尻尾があり、超人的な脚があった。

「う、ウマぁ――――!?」




「ぴょいッ!?」

 意味不明な言葉を叫びつつ、比奈鳥ひよ子は机に突っ伏していた上半身を勢い良く上げた。

「?! !? ……?」

 状況を理解できていないひよ子が周囲を目だけで見回してみると、そこは、普段から根城にしている新生ブイン基地の執務室だった。
 電気は消えていた上に窓の外は月明かりどころか星明りすら無い完全な暗闇だったため、部屋の中は薄暗くて良く見えなかったが、来客用のソファに二種礼装を着た眼鏡の男が1人、腰掛けていたのだけはハッキリと見えた。
 どうやら書類仕事中に机に突っ伏して寝落ちしていたようだった。

「……夢、かぁ」

 ひよ子が片手に持っていた私物のスマホの画面に目をやってみれば、液晶の向こう側ではウマ耳とウマ尻尾を生やした女の子が『おっ、お姉さま! あのね、なにかお知らせがあるみたいだよ?』と言っていた。そして、その手の向こう側には、今朝からやってるのに標高が全然減ってない書類山がうず高く積み上がっていた。書類山の一番上には失敗コピーを小さく切ったメモ用紙が置かれており、ひよ子の自筆で『数字に不備 書き直し 明日の朝まで』と書いてあった。

「あぁ。このゲームみたいに、こっちにも本当に目覚まし時計があったらなぁ。そしたら最初からやり直せるのに」

 この書類も、沖縄の時も。
 そう思っていたひよ子に突然、ソファに座っていた男性提督が突如として疑問の声を出し、彼女を見た。

「やり直したいのか?」
「ッ!?」
「今を無かった事にしたいのか?」

 ひよ子はその男をどこかで見た事がある気がしたが、それ以上は思い出せなかった。

「どこの少佐が言った言葉だったか。脳機能のほとんどですら人工物で代替可能となった現在、その個人を個人たらしめるのは最早、記憶と人格だけだという。現に我々もごく少数だが脳に仕込む量子チップの製造・運用には成功している。行動食4号の奴、量産方法秘匿すんなよ。川内になった草餅少佐も、巻雲になったミルクキャンディも、そして灯花も。その一点を軸にアイデンティティを形成している。ならばその言葉は事実なのだろう」
「川内ちゃん? ミルクキャンディ? 灯花? え、誰。ていうか貴方が誰!?」

 男の顔はひよ子の方を向いていたが、ひよ子の事は見ていなかった。

「つまり今を無かった事にというのは記憶を消す事と同義であって、それは記憶と人格の否定と抹消。つまり魂の殺人だ。俺に灯花を――――天龍をもう一度殺せというのか? 今度は身だけではなく、とうとう、心 、ま でも……」

 どうやら男は半分寝落ちしかけているらしく、目は半開きで時々白目をむき、首が前後にうつらうつらと揺れていた。酷い時には上半身ごと前のめりになった。言葉も、最初こそひよ子に対する質問だったが、途中から意味不明で、頭の内側にあるものが理性で濾過されずにそのまま口からこぼれだしたといった感じだった。

「やっと……やっと帰れるんだ……こんなところで、こんなとこ、ろで……次に、 目が覚め、 た ら……zzzZZZzzz……」
 
 男は最後まで言い切れずに机に突っ伏してすぅすぅと小さな寝息を立て始め、そのまま姿が薄くなって消えた。

「お、お……オバケ!!」

 至極真っ当な悲鳴を上げつつ、比奈鳥ひよ子は夢から覚めた。



「オバケ!!」

 意味不明な寝言を叫びつつ、比奈鳥ひよ子が机に突っ伏していた上半身を勢い良く上げると同時に周囲を索敵してみると、そこは、普段から根城にしている新生ブイン基地の執務室だった。
 電気は消えていたが、窓の外から朝日が差し込んでいたので、部屋の中はハッキリと見えていた。
 来客用のソファには、もちろん誰もいなかった。

「……」

 ひよ子が片手に持っていた私物のスマホの画面に目をやってみれば、液晶の向こう側ではウマ耳とウマ尻尾を生やした女の子が『良い子、良い子♪』と言って頭を撫でるモーションをしていた。そして、机の上には、未決済の書類が数枚残っていた。
 どうやら書類仕事中に机に突っ伏して寝落ちしていたようだった。

「夢、かぁ……まさか、今回も夢じゃないでしょうね?」

 頬をつねったらちゃんと痛かったので、今度こそは現実だと判断したひよ子が、ふと机の片隅に目を向けた。そこには一枚の写真が写真立てに飾られていた。
 旧ブイン基地時代の、最後の出撃直前に撮られた集合写真だった。
 その写真の最前列。中央よりやや左側では、珍しく真面目な表情をして敬礼している井戸水冷輝大佐(当時は少佐)の姿が映っていた。

「? あ! この人、さっきの夢の中に出てきた……けど私、この人とは一度も会った事も話した事も無いはずなんだけど」

 ひよ子は首をかしげて写真の中の井戸を見やる。
 ついでに言っておくと、その写真の片隅では、龍驤と羽黒と敷波と霧島の4人が布団にくるまってグースカピーといびきを掻いて寝ており、暁、響、雷と、南方棲戦姫の4人が真白いエプロンをかけて朝食の仕込みをしている所がバッチリと写っていたのだが、寝ぼけ半分の頭で考え事をしていたひよ子は全く気が付かなかった。

「うーん……ま。考えても分かんないし、もしかしたら私が忘れてるだけかもしれないし。気にするだけ無駄よね」

 そう結論付けるとひよ子はクローゼットの前に向かい、その中に吊るしてあった二種礼装に擬態した触手服を手に取ってそのまま退出し、風呂場へと向かった。
 朝シャン朝シャワーついでに触手服も洗浄するという横着は良しとして、替えの服も下着も持ってきてなかった事にひよ子が気が付くまで、あと30分。



「へっへっへ……緊急出撃やら哨戒任務やらで、リアタイ視聴も再放送も全然見る機会なかったけど、やぁっと見れるよ『猫の地球儀』の一時間スペシャル回!」

 ちょうどその時、陽炎型駆逐娘の『秋雲』は、自室の中で、私物のパソコンの前に陣取っていた。
 部屋の電気を消して薄暗くし、パソコンと有線接続されたちょっと値の張る高級ヘッドホンで外界からの情報を必要最低限以外は全てシャットアウトし、趣味の世界に没頭出来る体制を整えていた。

「前にトレンドワードに上がってた『毛布』『視聴負荷』の意味が気になって気になって仕方なかったけど、今日までずっとネタバレ避け続けて来た努力があったものさねー。やー、次回予告で活動のおじいと楽が一緒に映画館で映画見てたって事は、やっぱ過去回想の総集編だと思うけど、よし、実際見てみますかぁ。ほいじゃ視聴ボタンを、ポチッとな」

 そう言って秋雲はブラウザ上のボタンをクリック。動画が再生され始め、秋雲はそれの視聴に集中し始めた。

「……」

 秋雲は、苦しんだはずである。



 ちょうどその時、塩太郎こと塩柱夏太郎整備兵は、駆逐娘の陽炎に迫られていた。

「へぇ。塩太郎坊ちゃまって、本当は夏太郎って言うんですね。知らなかったぁ。でも、すごく良い名前ですね。センスがあるっていうか、そう、とっても男らしいです」

 今は亡き塩太郎の父が運営していた鎮守府内にある一室。塩太郎はそこに設置された白く大きなベッドの上に優しく押し倒され、陽炎はその上から覆い被さるようにしてまたがっていた。

「とはいえ、坊ちゃまはまだ坊ちゃま」

 そのまま陽炎は片手で胸元のリボンをするりと解き、白いシャツのボタンを上から順にひとつ、またひとつと開け始めた。
 新ブインに着任している現在よりもはるかに小さく、幼い塩太郎の顔に顔を近づけて陽炎は囁く。

「夏太郎坊ちゃまはいずれはこの牧場を継ぐお方。それに相応しい者になるべく今日は、いえ、今日から――――」

 塩太郎からは絶妙に見えない位置で陽炎が己のスカートの中に手をやり、下に動かす。塩太郎には、スカートの中から何か小さい布が陽炎の肌をこすれて動く微かな音が聞こえた。

「――――今日からこの私、陽炎の身体を使って雌の扱い方を学んでいただきます」

 陽炎が解いたリボンがするりとベッドの上に落ちると、白いシーツに包まれたベッドはいつの間にか陽炎型駆逐娘の3番艦『黒潮』の手を覆う白い手袋になっていた。隣には同2番艦娘の『不知火』もいた。

「若旦那、ほんに、ほんに申し訳ありません!!」

 手袋の持ち主である黒潮は両の目から涙をボロボロと流しながら、震える手と声で、リボンを握るその手をそっと差し出した。リボンは所々が黒く焦げ、全体的に薄汚れていた。

「ウチが、ウチらが到着した時にはもう船はッ、陽炎はっ……、もうこんだけしか……!」
「……今まであの航路に、深海棲艦が出た事なんて一度も無かったのです。だから、牧場所有の小型客船単独で外洋に出てからの “出張のお仕事” も、今まで何も問題は……」

 塩太郎がリボンを受け取ろうとして手を伸ばした途端、不知火と黒潮の姿が音も無く揺らいで消え、巨大な鋼鉄の艦の姿に変わった。見上げる塩太郎からは船腹の一部しか見えなかったが、何故かそれが陽炎型駆逐艦の一番艦『陽炎』だと確信できた。
 続いて周囲の景色も切り替わり、何処かの軍施設の明かりが消えて人気の無いウェルドックになった。少なくとも、有明警備府でも新生ブイン基地のそれではなかった。
 どこかの鎮守府所属の陽炎が、羞恥のあまり消え入りそうな声で呟いた。

『そ、その……司令官にだって見せた事無いん、だけど……あなたの為なら、私……ちゃ、ちゃんと見せるから……その、私の……艦コア』

 塩太郎が陽炎の艦内に入ろうとして手を伸ばした途端、陽炎の艦体は無音の大爆発を起こして火に包まれ、巨大な金属製の靴によって踏み砕かれた。
 見上げるほどの大巨人。超展開中の駆逐娘『陽炎』だった。

『メーデー。メーデーメーデメーデー……こちら、新生ショート、じゃなくてウェーク島泊地、第7、懲罰勤務艦隊所属……、陽炎です。メーデー……ウェーク島は、未知の深海棲艦の出現により――――』

 巨大である以外には、直前まで出てきた陽炎と変わりなかった。キツネ色の髪を黄色いリボンで短いツインテールにまとめ、白いシャツの上に鼠色のブレザーを着て居たのも同じだった。違うところといったら、そのブレザーの左胸には、燃え盛る炎の柱を背後にして額に『Hell's Wall』の意匠化文字を刻んだ頭蓋骨のワッペンが1つだけ縫い付けられていた事と、背負った艤装を含めて全身ボロボロで今にも崩れて沈んでしまいそうな損傷を負っていた事、そして、やはり大破した艦艇状態の陽炎型駆逐艦『不知火』『黒潮』を始めとして、何隻かの艦艇を停泊用のアンカーチェーンで曳航していた事くらいだった。

『誰か……誰か、助けて……2人を『ぴょいッ!』』

 何の脈絡も無く比奈鳥ひよ子准将が奇声を上げつつ、陽炎の壊れかけて煙を噴いていた艤装を蹴破ってエントリー。彼女の頭頂部からは何故か細長い獣耳が、尻からは長い毛に覆われた細長い尻尾が生えていた。
 床や艤装の破損個所からは盛大なスモークと花火が連続して噴き上がり、どこからともなく大音量のBGMが流れ始め、ひよ子が彼女と同じ獣耳&尻尾を生やした女の子達および半死半壊状態であるはずの陽炎と共に笑顔で歌って踊り始めたところで塩太郎は目を覚ました。因みにひよ子のポジションはバックダンサーだった。

「……」

 塩太郎はベッドの上で仰向けの姿勢のまま、まぶたを開き、しばし夢の内容を反芻した。
 そして。

「……ぴょいって何だよ」

 そして、考えても分からなかったので、尿意の命ずるままトイレに行って用を済ませると、そのまま総員起こしまでのわずかな時間を二度寝し始めた。



「うひゃあ!? え、何処ここ!?」

 ちょうどその時、新生ショートランド泊地に所属する駆逐娘の『陽炎』は奇声を上げつつベッドから跳び起きた。
 そしてここが、陽炎本来のねぐらの新生ショートランド泊地の駆逐雑魚寝部屋の壁でも天井でもない事に一瞬気が動転し、お隣新生ブイン基地にある自分の個室である事に気が付き、最後に今しがたまで塩太郎に艦コアのメンテナンスをされていたのが夢だったと理解して、ため息を漏らした。

「……あ、そっか。今の夢って、昨日の定期メンテの中でシてもらった事だったじゃん。全部」

 この陽炎は、他の陽炎や陽炎型とは違って、艦娘達の魂の座である艦コア周りに特殊な事情があるため専用のメンテナンスを必要としており、南方海域の中でそのメンテを行える奴がいる最寄りの拠点がここ、新生ブイン基地だけだったからという訳である。

「いつもの事だけど塩太郎さんのメンテ、凄かったわぁ……けど、塩太郎さん。もとい夏太郎さんが他の娘の艦コアの整備する時も、あんな感じにシてるのかな? ……むぅぅ」

 何か嫌(や)だな。陽炎はそう小さく呟くと、部屋の外から微かに聞こえるトイレの水が流れる音を聞きながら総員起こしまでのわずかな時間を二度寝へと費やし始めた。



 ちょうどその時、深海棲艦側の南方海域における最前線拠点、人類側呼称『コロンバンガラ・ディフェンスライン』では、軽巡棲鬼と神通、配下の駆逐&軽巡種数匹らが、息も絶え絶えの満身創痍と言った有様で、朝日を背にして何とか生還した。
 神通に施した再洗脳処置の浸透具合と、隼鷹に蹴り千切られた己の両足替わりに接続した新造のクルージングユニットの試験航行も兼ねて、護衛もつけずにうろつきまわっている人類側の輸送艦を二隻、沈めに出撃してきた帰りである。
 いつぞやの時と同じく、完膚なきまでの返り討ちである。

「甘く見ていた訳ではなかったのですが……ゲートウォッチ級快速戦闘輸送艦『エメリア・E・ウィンドゴッデス号』に『エメリア・B・チェスプレイヤーズ号』まさか呼ばれ方が違うだけで同一艦だったとは……」
「コノ世ニアンナ艦ガアルダナンテ……悪夢ダワ」

 今回は留守番だった副官の重巡リ級が配下の輸送ワ級らに概念接続。格納嚢胞内での治療の準備と栄養補給用のゼリー(※デブと糖尿持ちにはお勧めできません)の用意をさせた。

「マサカ他ノげーとうぉっち級モ、全部アンナノトカジャアナイデショウネ……マ、デモ」

 首から下を格納嚢胞の中にすっぽりと納めた軽巡棲鬼が、別のワ級から伸ばされた触手を口に咥えて件のゼリーをじゅごごごご、と飲みつつ何気ない表情を装いながら神通の方に視線だけを向けた。

(マ、デモ。神通ガ味方ヲ沈メヨウトシタ時モ、コレトイッタ拒否反応示モ無カッタシ、違和感モ感ジテナカッタヨウダシ、洗脳ハ今度コソ完全ニ完了シタミタイネ。ソレガ確定シタダケデモ御ノ字ネ。コレナラ、ころんばんがらノ管理・指揮ヲ副官ニ一任シテモ大丈夫ソウダシ、ヤットBNF作戦デノ、私ノ担当個所ノ詳細詰メニ注力出来ルワネ)



「5%(逆鱗)とは何なのか~♪」
「天鱗はどこなーのーかー♪」

 ちょうどその時、夕張と明石は明石の自室に集まって徹夜でゲームをやっていた。

「悩めども剥ぎ取れぬ~♪(導きの)青い星~♪」
「悪魔のよーうーな、悪魔のドロ率♪ こーのクエに、溢れてー、いるよー♪」

 ここしばらくはコロンバンガラからの攻勢も無く、精々が偵察機同士の小競り合いだけで済んでいるために、出撃任務の他に整備も担当している彼女らのシフトにもだいぶ余裕が生まれた結果、2人ともまとまった休みが取れたので、協力して積みゲーの一部を消化していたのである。何故かクリア条件に誓約を課しながら。
 いわゆる『○×でクリアするまで寝れません』チャレンジである。だが、どうも彼女達に途中リタイアからの熟睡という選択肢はなかったらしい。

「く~じ~けそ~ぉ~でも~♪ 迷いそ~ぉでも~♪」
「剥ーぎ取るよー必ずー♪ 本当のーレア泥……また厚鱗ン゙ン゙ン゙ン゙!!!!」

 その結果がこの苦行である。



 ちょうどその時、目隠輝は夢を見ていた。
 ここから歩いて5分の所にある、かつて輝がいた、旧ブイン基地での出来事だ。

 6日目:深海棲艦について

『では講義を始める』

 戦艦ル級との交戦で大破した深雪が完全復帰を果たしてから数日後。鼻から牛乳を噴きだした輝きゅんが近くの小川で顔を洗って出直した後でのブイン基地203号室での事だ。
 まともな士官教育どころか艦娘の基礎知識くらいしか教えてもらえなかった輝に対するブイン基地有志による今日の補習授業は、井戸少佐が担当だった。
 この時点で輝は、これが夢だと気が付いた。
 いつかの正月の時に見た初夢と内容がまるで同じだったし、やっぱり井戸少佐の肩にある桜の数が、1つではなく3つだったからだ。この頃はまだ少佐だったのに。

 ――――この人、TKTの重要人物なのに、なんで海軍の少佐なんてやってるんだろ。

 輝は薄ぼんやりとそんな事を考えていたが、そんなことなど露知らぬ夢の中の井戸は『今日の講義の内容は大体この通りだ』と言ってOHPで投射したスライドを指揮棒代わりの天龍の持っている大太刀(っぽいチェーンソー)で指さしながら講義を始めた。
 輝と深雪の座るちゃぶ台の上に置かれた紙媒体の各種資料は、井戸自身が203号室の片隅に積み上げられた書類の山の中から引っ張り出してきた代物だ。
 白い壁に投影されたスライドが切り替わる。そこには、今日の講義の目次が映し出されていた。

 1:深海棲艦とは?
 2:深海棲艦の世代ごとの違いは?
 3:深海棲艦のお肉の味って?
 4:深海棲艦 = 沈んだ艦艇が変異したものであると仮定した場合、計算が合わない件について。

 5:艦娘が深海棲艦になる時


『なぁ、司令官』

 その講義のあった日の夜。二階の204号室、輝と一緒のタオルケットに包まった深雪が照明の消えた天井を見つめながらポツリと呟いた。

『昼間も言ったと思うけど、もしも……もしも、私が沈んじゃってさ。司令官の前に化けて出ちゃったらさ。その時はちゃんと沈めてくれよ?』
『深雪』
『あの映像にあった龍驤さんみたいなことになるのなんて、絶対嫌だぜ?』
『深雪!』

 多分、深雪は冗談でそう言ったんだと輝は今でも思っている。笑ってたし。だが、真意を確かめる機会はもう無い。
 だから輝は、これが夢と知りながらも叫ぶ。

「――――そんな怖い事言わないで!!」

 その叫びと共に、輝は夢から覚める。
 本日の総員起こし当番の奏でるラッパの音色と共に、新生ブイン基地に朝が来た。





 その日の朝食時、新生ブイン基地の食堂には、何とも言えない空気が漂っていた。

「……」
「……」
「……」

 ひよ子は夢から覚める夢(※筆者注釈:あれホントに現実感薄れるから下手な悪夢なんかよりずっと怖いんです)を見た事に。塩太郎と輝は過去のトラウマに触れる夢を見て。秋雲は気になっていたアニメの再放送を見た結果、放心を通り越して封神状態となっており、明石と夕張の睡眠時間は二時間弱だった。
 因みに翔太と皐月、スルナと榛名、そして吹雪は、お隣新生ショートランドのメンバーに混じって定期巡回中である。

「作戦完了です! 吹雪以下4名、帰還しまし……え、何かあったんですか?」
「吹雪ちゃんおかえり……ちょっと夢見が悪くて、ね」

 少し陰のある口調でひよ子が返事を返す。プロト19や北上らもあまり夢見は良くなかったらしく、ひよ子らと大体似たような雰囲気をにじませていた。この中でまともなのは吹雪達と一緒に食堂にやって来た陽炎と丹陽に、寝ても夢を見ない派の不知火くらいのものだった。

「19もちょっと嫌な夢見たなのー……ひよ子ちゃんと一緒に石のような物体抱き抱えて『1チェイン、2チェイン、3チェイン、マックスチェインでエナジーマックス』って呟きながら深い海の底にゆっくり沈んでく、っていう夢だったなの」
「あたしも見たような感じだったね。こっちはひよ子ちゃんと離れ離れになる夢だったね……何でかは知んないけど2人でゲロ吐きながら」
「えっと……そ、そうだ。テレビでも見て気分変えましょう!」

 何だかよく分からないけど、これはちょっと重症そうだ。そう思った吹雪が話題と気分を変えるべくテレビのリモコンを点けた。

「あ、ほら、秋雲さん、ちょうど始まりましたよいつも見てるアニメ」
「ま」
「?」
「まああ……」

 昨夜秋雲が見ていたのとは全く違う、ほのぼのとした作風とシナリオのアニメだったのだが、アニメであるというだけで秋雲のトラウマスイッチが点灯したようだった。

「ま゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
「え、あの。どうしちゃったんですか秋雲さん? 秋雲さぁん!? 司令官さんどうしましょう!? って、まだ落ち込んでる!?」

 突如として秋雲が発狂し、基地に残っていた面々の半分は依然として意気消沈。

「ど、どうすればいいんですかぁ~!?」

 新生ブイン基地に、吹雪の情けない悲鳴が木霊する。












 同時刻。
 深い海の底にある “それ” の元から泡のように静かに浮かび上がる最中のその艦。その艦内のどこからともなく少女の声が響いてきた。

『あはは司令官、次はあそこにワープしようぜ、秩父山中……で、B7以外の送圧パイプを全部封鎖だな?』

 夢でも見ているのか、支離滅裂な寝言を楽しそうに、時折寂しげに呟いていた。

『了解だぜ。ユーザーコードがちょいちょいのチョイで、パスワードがホイホイホイのホイっと。これで妖精さんシステムが再起動するんだよな。これで……これで、さよなら、なんだよな……うん。分かってるって』

 浮上するにつれて周囲の水の色が黒から黒に近い青、深い青、ネイビーブルー、青、水色へとゆっくりグラデーションしてゆく。

『んじゃあ雪風。司令官の事、よろしくなっ』

 そして最後に、輝く水面色を突き破って大気の下へとその姿を現した。

『……んあ?』

 海面に浮上し、艦体のそこかしこから排水しながらその艦はその場に留まったままだった。まるで、寝起きの人間が現状を確認しているかのようだった。

『夢? けど何か妙に現実感あったなぁ……って、司令官乗艦ってないじゃん! 探さねーと……ってあ、そうだったそうだった。司令官はもう脱出させたんだった』

 その艦がスクリューを駆動させ、移動を開始。機関系はボロクズ同然の状態で長期間海の底にあったとは思えない、外見と同じく新品同然にまで再生していた。その側舷には『IN:DDみゆき(KM-UD)』と白ペンキで書かれていた。
 特Ⅰ型駆逐艦娘『深雪』

『そうそう、だんだん思い出してきたぜ。この辺りなんかめちゃくちゃ平穏そうだしもう完全に日が昇ってるって事は、脱出用ボートはもう安全な場所まで辿り着いてるだろうし。さぁて、深雪さまもそろそろ、輝を迎えに行くとすっかぁ!』

 かつて、旧ブイン基地に配属された輝の秘書艦を務めていた艦娘、その本人であった。





 本日のNG(毎回毎回投稿間隔が開きまくりで申し訳ありませんお詫びと言っては何ですが誰得の登場してたり登場してなかったりするキャラ達の設定公開します)シーンその1


 塩柱 仁夏(シオバシラ ニナツ)

 沖縄防衛戦でのひよ子の活躍を聞き、有明警備府に転属願を出してやって来た女子整備兵。ひよ子に強い憧れを抱いており、彼女の事を『ひよ子お姉さま』と呼んで慕う。
 普段はごく普通の女の子だが、ひよ子の前や、ひよ子に関する事になると謎のハイテンションと化す。
 精神に強い負荷が掛かると同体積の塩の柱と化す謎の特技を持つ。

 飛び出せブインに登場する塩太郎こと、塩柱夏太郎の最初期ボツバージョンです。
 当初はこれで行こうかと思ったのですが、白井黒子(とある科学の)めいたテンションの上下差有りすぎ系百合キャラとか自分書けねーよ。と思い、キャラ設定と名前を多少弄って現在の塩太郎になりました。もう一つのボツ案では塩太郎の妹として兄妹同時に着任というのも有りましたがこれもボツに。
 実はゴトランド登場回のボツ案ではゴトの代わりに彼女がやってくる予定でした。で、塩太郎に『妹? 自分、一人っ子なんですが……』と言わせそこから不審に思い始め、というのも考えていましたがこれもボツに。

 おそらく、形を変えても彼女の出番はないと思われまする。


 目隠輝(没バージョン)

 輝君は、自分が正気だと言っています。多分そうなんだと思います。
 けれど、深海棲艦に恨みを持っている提督達の正気の度合いは、判断が難しいです。

             ――――――――『練達の』とは言い難い提督、比奈鳥ひよ子


 ひよ子は胸のむかつきがおさまるか、輝が何か別のことを言うかするのをじっと待った。無駄だった。
【中略/Syncopate】
 ひよ子は北上達を弔うべく、Erehwyna島を第二のアイアンボトムサウンドにした。

             ――――――――『練達の』とは言い難い提督、比奈鳥ひよ子の顛末。


 深海棲艦の子という理由だけでじゅうぶんだ!!

             ――――――――目隠輝からレ級のレナへ。


『嗚呼、栄光のブイン基地』最終話にて、深雪のタオルケットを手に復讐を誓う直前に、ちょっとだけ考え直してから復讐を誓った輝君が辿ったIFルート。

 深海棲艦を根絶やしにするには、ただ普通の提督として戦うだけではそれは成し得ない。もっと深海棲艦の事を真摯に学び、効率的に駆除せねばならない。と考え、独自研究に乗り出した。
 教科書代わりに利用していた、井戸の残した資料から『海軍の井戸少佐 = TKTの井戸水技術中尉』である事を見抜き、それ及び独自の研究結果を手土産に九十九里浜のTKTへ訪問。見事二代目井戸水の偽名が与えられた。
 その後、目隠輝は書類上、軍の機密施設に許可なく侵入したため射殺された事(※検死及び火葬時はクローンを用いて擬装)になった。以降は名と身分を変えて各戦線を転々しながら深海棲艦の調査・殲滅に励み、戦争終結に大きな貢献を果たした。
 ひよ子と再会したのもだいたいこの辺りであり、目的のためなら手段を選ばなくなってきたのもだいたいこの辺り。
 調査・研究以外にもいろいろと製作しており、中でも『人造提督メタスラン・アドミラル』はその代表例である。あるのだが、それは、ひよ子のDNAデータを無断で使っている事からひよ子や丹陽が彼と袂を分かつ理由の大きな一つとなった。

 評決の日作戦の最中に深海棲艦の中心的存在、中枢棲姫と邂逅。メカのメカクレの血が騒いだのか、彼女の艤装の機械的造形美・機能美に心を奪われ、すぐ隣にいた別の提督を始末して口封じをするとそのまま深海棲艦側に寝返った。
 なお輝は中枢棲姫ではなくその艤装の美しさに一目惚れしたのであり、その事に対して、自身の美しさに惚れたのだと勘違いしていた中枢棲姫自身は嫉妬に駆られるも、中枢棲姫の艤装自身は姫じゃなくてこの人専用の艤装になれないかなーと思うなど、割とまんざらでもなかったようだ。

 その後、何やかんやあって首をはねられ、両目が宝石になったり、純銀製の連装砲ちゃんでタイムマシン作ってみたり、ちょっと大きめの盃片手に人類は十進法を採用しましたのポーズ取ったら小大陸1つが消し飛んで氷河期が訪れたりもしたけれど、これ絶対輝君のキャラじゃないよね。どう考えてもアーギヴ暦元年生まれで享年4205歳のプレインズウォーカーだよね。という理由でボツになりました。



 智風庵 灯花(チフウアン トウカ)

 軽巡洋艦娘『天龍』の素体となった少女の名前。今話では『灯花』の3単語のみ登場。
 とびだせブインにも天龍の登場予定があり、その中で人間だった頃の名前を言うシーンを考えてあるのですが、そこでようやく『そいえば天龍が人間だった頃の名前とか考えてなかったな』という事に気が付きまして、急遽として決定いたしました。

 名前の元ネタは洋楽バンドの『アース・ウィンド・アンド・ファイアー』より。
(地風&火 → チ フウ アンド カ → チ フウ アントゥ カ → 智風庵灯花)


 プロトタイプ改二

 特定の艦娘ではなく、改二型艦娘そのもののプロトタイプ。要は概念実証機。テストベッドには当時最も多く生産・流通しており、最もデータの集まっていた睦月型のうち12隻が用いられた。
 最もデータが集まっていたとはあるが、それでも不明な点や、改造によって浮き彫りになった問題点は多くあり、結果として改造された12隻全ての精神や人格に異常をきたした。
 彼女らから得られたデータは否定的な物が多くあったがそれでもなお有用であった事と、政治的な事情から、改二型改装計画にはGOサインが出された。
 以下はプロトタイプ改二へと改装された睦月型それぞれの簡単な紹介。

 睦月:
「にゃしぃ……にゃしいぃぃぃ!!」
 如月:
「行きましょう、長月ちゃん。私たち二人に勝るものなど、この世にあってたまるものですか」
 弥生:
「要らないです、心なんて……それで勝てるっていうんなら!!」
 卯月:
「司令官が何を考えてるのか、うーちゃんには理解るぴょん。この先どうなるのかも……でも、やってやるぴょん! あなたの望むままに!!」
 皐月:
「正面からいくよ司令官。相手が素のままなら、小細工なんて不要(い)らないよッ!!」
水無月:
「戦争だよ! 水無月達にはそれが必要なんだ!!」
 文月:
「雑兵だらけ~。ねぇ、しれーかん。こいつら……殺っちゃって、い~い?」
 長月:
「司令官、ひとつ聞きたい。私達が全ていなくなった時、あんたはどうなる?」
 菊月:
「卯月、仕事は見届けた。後はこの菊月に任せてもらおう」
 三日月:
「何てひどい冗談なの、司令官。あなたも、私も、勝つためにお人形さんになったっていうのに、それでこのザマ!! ……でも、何が望みだったのかなんて」
 望月:
「あんたらの戦いなんてこっちは興味ないのに……はぁ、マジめんどくせー!」
 夕月:
「艦体大破。作戦の継続は困難」
司令官:
「執筆の意味が不明です」

 もう何番煎じかも解らないネタだし、ゾディアック深海棲艦は某所とかに既にあるし、ならばきっと筆者が知らないだけでゾディアック睦月型も既に世に出ているはずという事で、没になりました。





 本日のNG(悪い意味でヤバそうなら感想欄にてご一報ください。消しますので)シーンその2

(これまでのあらすじ)

 中央トレセン学園に在学するエアグルーヴが学園の廊下を歩いている時、ふと何気なく外に目をやってみれば、少し遠くにあるグラウンドで2人のウマ娘が併走しているのが見えた。
 一人はエアグルーヴも良く知る生徒会長、G1七冠の絶対皇帝シンボリルドルフ。
 もう一人は少し前に高知トレセン学園から転入してきた桜色の髪をしたウマ娘ハルウララ。
 コース終盤になって先行するシンボリルドルフを追い抜き、ハルウララがゴールするのが見えた。
 エアグルーヴは素直に感心した。併走トレーニング、しかもダートの短距離とはいえ、あのシンボリルドルフを差し切るとは大したものだ。会長が『ウララちゃんは別だ』と言って高知まで直々にスカウトしてきたのは伊達ではなかったのだ。何でアグネスデジタルを同行させたのかは今も謎だが。
 グラウンドではシンボリルドルフがどこかに走り去り、すぐに着替えて戻ってきた。7つの勲章を胸に付け軍服をイメージした、シンボリルドルフ専用の勝負服。G1レース時にのみ着衣を許される不退転の代名詞。そしてそのまま別のコース(芝 2500 右回り 良バ場)のスタート位置に並ぶ二人。因みにウララは練習用ジャージのままだった。

「それは流石に大人気無いぞシンボリルドルフゥ!!」

 女帝突然のシャウトに近くにいたウマ娘達は驚愕するも、それによってグラウンド上の2人の存在に気が付き、次々と野次ウマと化す。
 そんな彼女らの事など知る由も無いハルウララとシンボリルドルフは同時にスタート。レース展開は先程と同じくルドルフが先行し、ハルウララが追いかける構図。
 そしてまた、先程と同じく最終直線でハルウララがシンボリルドルフを抜き去りゴール。ルドルフが勝負服を着ている以外に違うところといったら、ついたバ身差が倍以上になっていた事くらいのものである。
 この意外な結末にエアグルーヴ達どころかグラウンドまで押しかけてきていた野次ウマ軍団が大喝采を上げる。エアグルーヴも『半端(パ)ねぇ。ウララちゃん、いや、ウララさん本気(マジ)半端(パ)ねぇッス』とキャラが崩壊していた。
 そして当のグラウンドでは、シンボリルドルフは野次ウマやってた何名かと再びレースを開始。メイクデビュー以前どころか本格化すら来ていない娘も何人か混じっていたが彼女らにすら大差で敗北。そしてショックのあまりシンボリルドルフはテイエムオペラオーめいた大きな笑い声を上げつつ仰向けにぶっ倒れて気絶して保健室に担ぎ込まれ、ウララちゃんとルドルフのトレーナーはそれに付き添い、2人のタイムを計っていたウララトレーナーは険しい顔をしてストップウォッチに残された数字が異常に遅い事に言い知れぬ不安を抱いていた。

 その日の深夜のトレセン学園。誰もいないはずのグラウンドのコースから、誰か、あるいは何かが走っている音がしたので見に行ったら誰もいなかったという怪談話が立った。

 シンボリルドルフがぶっ倒れ、自身のトレーナーとエアグルーヴ以外の誰にも姿を見せないまま過労による長期療養に出たと表向きには発表され、それと入れ替わるようにシンボリルドルフの双子の妹がトレセン学園に転入し、ハルウララやライスシャワーと仲良くなり、そこを取っ掛かりにして他のウマ娘達ともよく話したり遊んだりするようになった頃より後の日の事である。
 クラシックレース菊花賞。
 三冠バ目指してミホノブルボンは先頭を進んでいたが最終直線でライスシャワーに抜かされた。ならば抜き返すまでと再加速したその瞬間、全身を原因不明の奇妙な脱力感が襲った。
 それはブルボンだけでなく、前方にいたライスシャワーもそうだったようで一瞬よろけるもすぐに体勢を整えた。しかしライスシャワーが崩れそうになった体勢を戻すべく強く踏み込んだ結果、小さな芝土の塊がえぐれて剥がれ飛び、それが後方にいたミホノブルボンの目に直撃した。
 それによって辛うじて保たれていたミホノブルボンの体幹は完全に崩れ、最高速度に乗ったまま転倒し、内ラチに顔面から衝突。ラチが変形するほどの衝撃で跳ね返され、ターフを数回バウンドして、関節が無い場所でも関節が曲がっているうつ伏せ姿勢になったままピクリとも動かなくなった(※ゴア表現違反)
 この時点でレースは中止。
 これは純粋に不幸な事故であるとして、ライスシャワーは史実のように悪役呼ばわりされることは無かったが、自分は疫病神どころか他者に死をもたらす死神なのでは? と半ば本気で思い込み始める。そして、一部のミホノブルボン狂信者らも彼女と同様の妄想に憑りつかれ、行動を開始した。

 その日の深夜のトレセン学園。誰もいないはずのグラウンドのコースから、四本足の何かが走っているのが遠目に見えた。近くで見ようとしたがいつの間にか消え、たまたま近くで夜間見廻りをしていた学園長秘書の駿川たづなさんに見つかってお説教された。という怪談話? が立った。

 ミホノブルボンが目を覚ますとそこは、どこかの病室であった。
 見覚えのない窓の外の景色。見覚えのある専属トレーナー。
 ミホノブルボンが目覚めた事を泣いて喜ぶトレーナーだったが、事情の説明中に表情が曇った。転倒・バウンド時の開放骨折はもとより内ラチへの顔面強打で脳機能の一部、よりにもよって歩行に関する部分に損傷を負ってしまったのが致命傷だとの事。

 ――――ウマ娘ミホノブルボンはもう、走れないのだ。

 その事実に静かに涙を流して泣きあう二人。突如として着信音を鳴り響かせるトレーナーのスマホ。画面を操作するよりも早く接続された回線の向こう側から不審人物は言う「話は聞かせてもらったよ。人は、人によって滅びる。それが必然だ」と。
 若干の電子音が混じった男の声は、海外のとある有名トレーナーの名前を名乗った。
 その名前はトレーナーもブルボンも知っていた。
 再起不能級の大怪我を負った、あるいは大病を患ったウマ娘達を、幾人もターフの上に舞い戻した事で知られる生きた伝説である。だが同時に極度の人間嫌いで誰もその姿を見た事が無く、おまけに帰ってきたウマ娘達は皆どこか、何かが違っているような気がするとの証言も挙げられる事のある、一定の警戒を要する人物でもある。
 彼は言う。僕はミホノブルボンのファンの一人だよ。彼女がもう一度走れるようになるための手伝いがしたい。人間に可能性なんて存在しないけどウマ娘は例外だよ。と。
 トレーナーは悩む。そしてミホノブルボンの意思を聞き、翌日に男の指定した番号に電話をかけた。
 彼女を信じて送り出す別れの日。ミホノブルボンはトレーナーに告げた。
 菊花賞の日、あの事故が起こる直前、身体の中にあるウマソウルが抜けた、あるいはそれが薄まったような感覚がした。その直後にあの、不明な脱力感に襲われたのだと。
 トレセン学園に戻ったブルボンのトレーナーは聞き込み調査を開始。すると菊花賞をブルボンと共に走ったライスシャワーもまた、ミホノブルボンと同じタイミングで同じ感覚に見舞われたのだという。
 そして同日。ウマ娘ゴールドシップが本日のトレーニングメニューとしてアスファルト整地用のロードローラーをWRYYYと曳きながら坂路を駆け上がっている途中、件の脱力感に襲われ、ロードローラーごと坂路の下までずり落ちた。幸いにも怪我は無かったもののゴルシは大層悔しがり、腹いせに鯖を釣り上げるべく「ガチャは悪い文明!」と叫びながら大量の石を用意したところで飽きたので「何処だアタシだけの命を響く石ゥゥゥ!!」と叫びつつトレーナーの自室のベッドに潜り込んで枕やシーツに自分の匂いを擦り付けてからタコのマリネを作りに台所へと向かった。

 その日の深夜のトレセン学園。ゴールドシップの専属トレーナー阿夫利 伴(アフリ バン)は夕飯に食ったタコのマリネの極上の味を思い出しながら、さて飽きっぽいゴルシの次のトレーニングメニューは何にすんべと考えつつ、気分転換にとあるグラウンドの近くを通りがかったところ、全裸でグラウンドを徘徊する駿川たづなと遭遇した(※エロ表現違反 1回目)

 違うんです違うんですそういう趣味じゃないんですこれにはキチンとした訳がと顔を真っ赤にしたたづなを余所にゴールドシップ専属トレーナー阿夫利 伴(アフリ バン)はふとひらめいた! これはゴルシとのトレーニングに生かせるぞ。と。
 翌日。ブルボントレーナーは他のトレーナー達にも声をかけて学園内のウマ娘達へ不明な脱力感に関する聞き取り調査を行い、皆で一度集まって数字をまとめていると、とあるトレーナーが1つの事実に気が付いた。
 ウマソウルが抜けたようだと感じられる不明な脱力感。それを感じたウマ娘が現れたその日の夜に、誰もいないはずのグラウンドのコース上に奇妙な4本足の生き物が走っていたという話がほぼ必ずといってもいいほどに上がっていた事に。
 ある日の夕方、ウマ娘アグネスデジタルは寮の浴場の中で血の涙を流しつつ心の中だけで慟哭していた。何故だ、何故ウマ娘ちゃん達を感じ取れないのだいつもなら目を閉じていても耳や鼻から感じられるし調子の良い日なら肌に飛んで来た水滴からでもウマ娘ちゃんの体調不良や未病や生理周期なんかの何もかもを一切の間違い無く感じ取れるのに、と。因みに無言のまま血涙を流しつつ普段通りの仕草でお風呂に入ってるデジタルを見て他のウマ娘達は割と距離をとっていた。

 その日のトレセン学園。夜中にトイレに行った帰りに好奇心に駆られて夜の学園内を徘徊したのは良いものの、部分部分が予想以上に暗くなっている上に何処かの阿呆が次のウィニングライブで歌う予定の『奉神御詠歌』をほど良い音量で流して深夜の特訓に勤しんでいるおかげで怖くなってその場から動けなくなって半ベソかいていたトレセン学園の理事長、秋川やよいは、ゴルゴル星からの指令電波の入りが急に悪くなったので交換品が届くまでの間に使うアンテナの代用品はカツオとカンパチとしめ鯖とダイハツスズキのどれがベストだろうかと頭を悩ませつつ歩いてきたゴールドシップと一緒に未決裁書類がまだ山と残っている理事長室まで帰る事にした。
 その途中、最近噂になっているグラウンドのすぐ横を歩いていると、全裸に棒状の猿轡を噛まされ家畜用の頭絡を付けられた上にヨツンヴァインになってグラウンドを徘徊する駿川たづなと、彼女の上にまたがり乗って尻を短い鞭で叩いているゴールドシップ専属トレーナーの姿があった(※エロ表現違反 2回目)

 やよいは「激務! 休めっ……、休めっ……!!」と普段から多忙なたづながストレスのあまり精神がおかしくなったのかと純粋に心配し、ゴールドシップは普段通りにハジケリストの仮面を付けようとするも、理性も感情もぐちゃぐちゃになってしまって言葉に詰まりブギーポップめいた半泣き半笑いのような表情のまま無言でボロボロと泣き出してその場を走り去り、ゴールドシップ専属トレーナーはふとひらめいた! これはゴルシとのトレーニングに生かせるぞ。しかしこんな時でもそんな事を平然と思いつく自分は頭がどうかしていると他人事のように考えつつゴルシの後を追って駆け出し、駿川たづなは違うんです理事長これそういうプレイじゃないんですこれにはキチンとした訳がと顔を真っ赤にして弁明しようとし、何とかゴルシに追いつき皆の前で事情を話すからとゴルシを説得して戻ってきた2人を交えてこの情事の理由を話し始めた。
 ウッドチップの上に正座し、トレードマークの緑の帽子を脱いだ駿川たづな改め、ウマ娘トキノミノルは言う。
 ここ最近、ウマ娘達を襲う謎の脱力感。それを起こしている犯人は確かに自分であるが、決して意図しての事ではないと。

 トキノミノルは、今生でも破傷風と右足の裂蹄と左足の腫れに悩まされ、日本ダービーを最後にターフを去って十余年。その間に破傷風も右足も左足も完治したものの、既に引退した身であるためにターフの上には戻れず、だが今でも未練たらしく、時々夜中にこっそり抜け出してはグラウンドにあるコースの上を走っていた。
 近年のトレセン学園には事実上の初陣であるメイクデビュー戦でも『領域』の入り口に至ったウマ娘達が入学・在学しており、彼女らの走りを見ていて、少し前にふと思った『自分も久しぶりに『領域』に戻って全力で走ってみよう』と。
 するとどうした事か、自分の中にあるウマソウルに外側から同質の何かが流れ込み、一時的に昔の走りと姿を取り戻す事が出来た。
 それが最初の事件の日――――シンボリルドルフが併走トレーニングでボロクソに負けまくってテイエムオペラオーめいた笑い声を上げてブッ倒れて保健室送りになった日の夜の事であるという。
 意識して『領域』に戻って走ったのはそれが最初で最後であるが、ウマソウルに外側から何かが流れ込む感覚はそれからも間を開けて何度もやって来て、その度に何処かのウマ娘がウマソウルから生ずる余熱を吸い取られて一時的な急性スランプとでもいうべき症状に苛まれ、その度に自分はかつての姿と走りを徐々に取り戻していった。
 少し前にはもう、2400メートルを走ってもかつての姿を維持できるほどに力を取り戻してきており、ウマ娘の姿に戻って服を着ようとした直前にゴールドシップ専属トレーナーに見つかってしまい、その口封じのためにかつての姿になった自分に乗ってみませんかと誘惑し、トレーナーはトレーナーでこれはゴルシとのトレーニングに絶対生かせると謎の確信を経て2人で夜の秘密の調教を始めたのもちょうどこの頃だったのだという。

 トキノミノルは言う。自分が吸い取っているのは他のウマ娘がウマソウルから生ずる余熱のようなものであり、吸われた側は急激な脱力感と一時的な急性スランプとでもいうべき症状に陥るが時間経過で回復はする。だが、自分自身では吸い込み発動のONOFFの切り替えが出来ず、万が一レースの最中のウマ娘がこの能力の対象になってしまったら一大事である。ミホノブルボンの時のように命だけは何とか、となる可能性の方がずっと低いのだ。
 トキノミノルのウマソウルが、本能的にそうしているのだ、乾死寸前の人間が水を飲むのを止められないように。と駿川たづなは言う。
 ならばトキノミノルのウマソウルに、その本能に理解らせてやればいい。レースに勝って格付けを済ませ、勝手に吸い取らないようにしてやれば良い。とゴールドシップ専属トレーナー阿夫利 伴(アフリ バン)は言った。彼曰く、たった今閃いたそうだ。

 かくして今ここに、ウマ娘達の未来と安全なレースを賭けた戦いが始まった。



『――――と、いう訳で始まりました。第一回『ウマ娘ゲーム本編プレイしてたら何か二次創作書きてーなと思い上記のあらすじという名の妄想を思いついたは良いけれどこのあらすじ内だけでもゴア表現違反x1、エロ表現違反x2、更に以下に続く出走ウマ娘達のパドックお披露目実況シーンでエロ表現違反x1に、公式に無い設定を生やすなx1という二次創作ガイドライン違反5冠を達成してしまったのでウマ娘の読み切り短編は上げません!(CV:ここだけ和氣あず未)ていうか書いてませんのであげられませんですので出走ウマ娘達のパドックお披露目実況だけで何卒ご了承くださいステークス』本日は実況の私と』
『解説の私でお送りいたします。なお、ここでは人気読み上げはあえて省略させていただきます。ご了承ください』
『それでは早速各ウマ娘の紹介と行きましょう』

『まずは1番、シンボリルナチャン』
『長期療養中のシンボリルドルフ双子の妹さんですね。現在はダートの中距離を中心に活躍しており、巧みなレースコントロールと鋭い末脚から『砂のシンボリルドルフ』と呼ばれているそうです。ハルウララちゃんと性格もよく似ており、私一番の推しウマ娘です』
『前回の有マ記念は繰り上げ1着と惜しい結果でしたね。ところで、シンボリルドルフ氏が長期療養に出る直前に見聞きしたのですが、トレセン学園の保健室でエアグルーヴが『お労しや会長……』と呟きつつ涙を流し、当のシンボリルドルフのトレーナーは『太り気味、なまけ癖、寝不足、肌荒れ、メグリムジャーのいずれでもなく幼児退行じゃと!? ルナがそこまで追い詰められていたんに気付かんかったちょは……おいは恥ずかしか! 生きておられんごっ!!』と叫んで切腹し始め、グラスワンダー氏が『介錯しもす!!』と叫んで嬉々として薙刀を振り回して保健室の中にエントリーしていったのですが、あれは何だったのでしょう』
『世の中には知らなくてもよい事があると思いますよ。因みに、偶然部屋の外を通りかかったエルコンドルパサー氏のムーンサルトプレスによりトレーナーの切腹は未遂で終わり、グラスワンダー氏の介錯もまた、偶然通りかかったタイキシャトル氏のリボルバー拳銃による銃撃パリィにより未然に阻止されましたのでご安心ください』

『続けて2番。ラダーンノヤセウマ。……事前に情報は得ていましたが、凄い勝負服ですね』
『マチカネフクキタルにツインターボ、勝負服に大きな背負いものを背負ったウマ娘は少なくないですが、黄金のフルプレート騎士鎧一式をおんぶしたウマ娘というのは流石に初めてです』
『事前の登録情報によると、あの黄金樹を模したフルプレート騎士鎧は『ツリーガード君』と言うそうで……ああっと! 場外から飛来物! 巨大な槍がツリーガード君の脳天を貫いたぁ!!』
『あれは貴腐騎士の槍ですね。重力属性をエンチャントされた』
『これは妨害行為によるレース中止かぁ!?』
『将軍の慟哭が砂丘から聞こえてくるのでセーフです』
『ツリーガード君の取れ掛かった首が揺れています。衝撃で腕も揺れています。さながら『自分は無実であります!』と必死に釈明しているようにも見えます』

『3番。ニシノフラワー。出走取消です』
『出走取り消しの理由ですが、なんでも筆者が『バクシンオー育成中のライバルキャラとして出て来た時はあんまり気にならなかったのに、いざ自分のチームにお迎えした後は何故かあの勝負服がR戦闘機のB1-A3ジギタリウスⅢに思えてしかたない』と考えている事にショックを受けたから。だそうです』
『ツインターボ貯金の半分切り崩してまでお出迎えしたのに何考えているんでしょうね、作者は』
『4ループ目のバイドシード波動砲でも咲いているのでしょう、きっと』

『4番。スーパークリーク。こちらも出走取消です』
『何でも、前日夜に知人の託児所から緊急のヘルプが入ったとの事で、深夜便の飛行機でヤーナムのメルゴー託児所へ向かったとの事です』
『ファンの方々も、とても残念がっているのがここからでもよく見えますね。気持ちはよく分かります』
『一千人の吸血鬼のオッサン共が声を揃えて『代行!』『代行殿!』『託児所所長の代行殿!』『ママせんせー!!』とエールを送る恒例行事、見たかったのですが仕方ありません』

『5番。ウマムスメサダミツ』
『白いサラシに黒い足袋、川口狂走の四文字が背中に踊る白い特攻服、重量80トンの金属製木刀に小脇に抱えたヘルメット。彼女の今まで通りの勝負服ですね』
『ヘルメットを被っていないという事はまだ勝負服は完全に着替え終わっていないと、あ、今被りました。今完全に勝負服を着替え終わりました。ところで、あのヘルメットとコードで繋がれている腰の四角い箱は一体何なんでしょう』
『トラック用の24ボルトバッテリーだそうですよ。なんでも、正規バッテリーの代用品だとか』
『どうやらウマ娘宇宙のディジット達の技術力は、汎用性あるいは冗長性という点において破壊魔宇宙の彼らのそれを大きく上回っているようですね』

『6番。タキギカマキノオー……これまたすごい勝負服の娘ですね』
『燃えるようなと表現される性格や走り、あるいはそういう『領域』を持つウマ娘はいますが、本人ごと物理的に燃えているのは流石に初めてですね』
『因みに筆者は『薪の王』と書いて『まきのおう』と読む派の人間だそうです』
『実にどうでもいい情報ですね』

『7番。コビトノヤミノオー。6番タキギカマキノオーの双子の姉妹です』
『こちらはごく普通の黒いシスター服風の勝負服ですね。人間性が黒く燃えてたり闇に湿っていたりもしていません。ごく普通の黒いシスター服風の勝負服ですね』
『普通のシスターさんは金属製のガントレットやグリーヴを装備しないし背中に大小一対のデスサイスも背負ってないのが普通だと思うのですがそれは』

『8番。キングヘイロー。出走取り消し以前に、有マ記念での民間人暴行の現行犯で一年間の出走資格停止処分中です。彼女のトレーナーもまた、同レースにてレース妨害行為により1年間のトレーナー資格停止処分です』
『一体何をやったんですか? 二人は』
『ええ、簡単にまとめますと。有マ記念にて大差で16着になりそうだったキングヘイローに向かってトレーナーがレース場全域に響き渡る大声で応援。この大音量とその内容がレース妨害行為と判定されました。その応援を聞いたキングヘイローは最終直線で15人全員を抜き去り一着でゴールした後、そのまま減速せずにトレーナーに向かってドロップキックを繰り出し、これが暴行の現行犯として判定されました』
『いったいどんな事言ったんですか、彼女のトレーナー』
『それはこれを見ている読者の方々が各自で『キングゲイナー』『ゲイナー君愛の告白』あたりのキーワードを検索していただくのが最も早いかと思われます。あの時も海外マスコミが来ていたので世界同時中継でしたし』
『有マの後、キングヘイローの御母堂がSNS上で『愛と勇気、感じられたのね』『式の日時が決まったらすぐに教えなさい。それに間に合うように勝負服(ドレス)仕立ててあげるから』と謎のコメントしていましたが、これと関係あったんですね……』

『9番。アグネスデジタル』
『何があったのでしょうか、耳を絞り、次の10番が出てくる地下道の入り口を殺気立った目で睨み付けております』
『仲の良いウマ娘達の間に割って入った男性トレーナーを見る目とも言いますね。シンデレラグレイの世界線にいても全く違和感を感じさせない眼光です』
『やる気は絶好調そうですし、次行ってみましょう』

『10番。キタハラジョー……え? あっ、し、失礼しました! 10番、キタハラジョーンズ』
『ハンチング帽に細面の中年男性、どう見ても中央トレセン学園の北原譲トレーナーですね』
『チームスピカの創設者で、現在はダイワスカーレットの専属トレーナーをしており、ごく稀にアグネスタキオンの専属トレーナーと共に発光していると聞いているのですが……何故彼が選手としてここに? 観客席からもどよめきが聞こえています。あと、その泥だらけのジャージ(白地に紫)は勝負服なのでしょうか』
『勝負服ですね。キチンと登録届も受理されています『魂焦がすスーパースター』という名称で登録されています』
『あ、今ウマッターに更新ありました。一級オグリキャップソムリエのノルンエース氏によると、あの白地に紫のジャージはオグリキャップのカサマツ時代の練習着との事。具体的にはシンデレラグレイ第一巻の表紙でオグリが着ていたアレとの事です』
『アグネスデジタル、ものすごい形相で詰め寄り、叫んでおります。えぇと読唇術によると『なんで本物のオグリキャップさんのジャージ着てるんですか! 本人に許可取ってるんですか!?』と叫んでおります。何故本人の物だと分かったのでしょうか』
『観客席に当のオグリキャップがいて、その表情がレース場の大画面にアップで映っているのですが……なんというか、その、とてももの凄く嫌そうな表情です。耳もベッタリと倒れ、これ以上ないくらいに絞られています』
『タマモクロスが引退発表を宣言した時も、ここまで辛そうな顔も耳もしていませんでしたね……おや、キタハラジョーンズ、ポケットの中から何やら光る試験管を取り出して……?』
『一気飲みです! 人類には表現不可能な色に輝く液体を、です!!』
『アグネスタキオン専属トレーナーと共に光っている事が稀に目撃されるそうですから、おそらくあれはアグネスタキオンが生成した何らかの薬品なのでしょうが……ここまで堂々とドーピングをするとは大したものですね』
『発光が収まって……え?』
『……変身、しましたね』
『光が収まったキタハラジョーンズ、オグリキャップと瓜二つの姿です』
『少なくとも集団幻覚ではなさそうです。アグネスデジタルが混乱して何か呟いています。読唇術によると『この体臭、そしてウマソウルから生ずるオーラの余波、実際ウマ娘ちゃん! しかし大気中に微かに残る加齢臭は数秒前まで確かにヒト息子だった証! トレーナー=サン! マスター・トレーナー=サン! 私はどう解釈したらいいんですか!? 道を教えてください!!』と叫んでおります』
『アグネスデジタル専属トレーナーがウマッターに一言アップしましたね『何事にも尊みを感じられるようになるのが一番だ』との事です』
『観客席のオグリキャップは先程とはうって変わってものすごく幸せそうな笑みを浮かべて尻尾を振っています。一方その隣のベルノライト氏の『どうしよう、オグリちゃんの性癖が分からない』と言わんばかりの虚無的な表情が印象に残りますね』

『11番、ミホノブルボン。先日のレースにて完全復帰を証明しました』
『治療とリハビリのため、海外のチームに一時的に移籍して、先日日本に戻ってきたそうです』
『そのチームのトレーナー、パーソン・タワーズ・ファウンデーション氏と通信が繋がっております。海外の紛争地域からの無線通信ですので接続状況が不安定なため、ご清聴願います』
【やぁ、おはよう】
【ミホノブルボン。少し触れただけで電子機器は例外無くアウトとか、流石に想定の範囲外だったよぉ! 何とかしたけど】
【今まで所属したウマ娘達の治療経験を統合し、作り上げたリハビリメニュー、鬼畜と言われた坂路一日5本トレーニングをこなしたあの娘のド根性、そして、この回復速度。こっちも想定の範囲外だったよ!】
【ライスシャワー。僕からすれば、イカレてるのは君の(ことを悪く言う連中の)全部だ。僕は君に挑戦する。そして証明する。君に(悪役だの死神だのと呼ばれる)可能性なんて存在しない事を】

【いや。俺はそうは思わん。ライスこそが(みんなのヒーローである)可能性なのかもしれない】
『12番、ライスシャワー選手の専属トレーナーさん。勝手に放送機材ハッキングしないで下さい』
【証明してみせよう。ライスにならそれが出来るはず、ってアレ? ライスちゃーん? 何処いくのー!?】
『……ライスシャワー選手、泣きながら走り去ってしまいました』
『『やっぱりライスはみんなのヒーローになれる可能性なんて存在しないし、ライスが死神になっちゃう可能性なんだぁー!』と泣き叫んでいましたね……』
『言葉足らずは駄目ですね』

『13番。ヒナドリヒヨコ。パプワニューギニア独立国はブイン島、ブイントレセン学園からの留学生です』
『ライスシャワー選手の手を引き、共にパドック入りですが……あれは何かの儀式でしょうか。しきりに自分の耳と尻尾を触っています』
『まるで何の前触れも無く人間がウマ娘に変身して、たった今それに気が付いたかのようにも見えますね』
『自らの意思で変身したキタハラジョーンズとは正反対ですね』

『14番。トキノミノル……トキノミノル、ですよね?』
『パドック入りした時はウマ娘の姿でしたし、そこでいきなり服が破けると困るからという謎の理由でストリップショーを始めた時(※エロ表現違反 3回目)もまだウマ娘の姿でしたから、ARMSの完全変態みたいなプロセスでウマ娘の形を逸脱した今でもトキノミノルだと思いますよ』
『トキノミノルが変身? 変態? を遂げたこの、4本足の大きな怪生物は初めて見ます。耳と尻尾はウマ娘のそれと同じですが……会場のウマ娘達は、何故でしょう。この怪生物を見て皆同じ表情をしています『すごく納得がいった』という表情です』
『よく分からないのですが、今回のレース直前に、ウマ娘のトキノミノルからここでコメントを読み上げてくれと依頼されていたので読み上げます『生涯無敵は四本足に戻った』との事です』
『この言葉を聞いた途端、会場入りしているレース賞金会の一部が泣き崩れ、慟哭しているのがここからでもよく見えますね』
『レース賞金会とは一体何でしょうか?』
『非合法組織です。健全で清潔で尊くあるウマ娘ちゃん達のレース、その着順に賭け金を掛けて利益を出し、その一部をURAに寄付金と言う形で送りつけたり、ウマ娘本人の口座に直接振り込んでいる非合法組織です。日本ダービーを優勝したウマ娘には、本人が拒否しても口座に2億円が振り込まれたそうです』
『そう言った手合いはすぐにでもウマ娘警察に制圧されそうな気がするのですが……』
『一説によると、URAに寄付金として流れている額が年間予算の3割に相当するそうで、URAは大々的にバッシングは出来てもそれ以上のアクションは取れない、と噂されています(※賞金会の存在を含めて公式に無い設定を生やすな 1回目)』



『さて、全ウマ娘、全ウマ娘? ゲート入りが完了しました……スタートです!!』
『このレースの結末がどうなるのか。それ以前の問題として、此処はどこのレース場なのか、芝かダートかそれとも土のダートか、距離も天気もバ場の状態も客の入り具合も筆者は全く何も考えておりません。すべて読者の皆様方の想像に丸投げしております』
『それでは液晶の向こう側の皆様。さよなら、さよなら。さよなら』

(今度こそ終れ)


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