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No.39139の一覧
[0] 【習作】「1999年4月6日」(東京アンダーグラウンド)[蚕](2013/12/29 16:18)
[1] (ルリ起床~銀之助との登校)[蚕](2013/12/29 16:24)
[2] (発明品披露~RFC暴走)[蚕](2013/12/29 16:21)
[3] (再会~シエルピカチ○ウ)[蚕](2013/12/29 15:50)
[4] (ジジイ無風~04とルリの手料理)[蚕](2013/12/29 18:25)
[5] 酒とバトルと扇情カメラマンテイル ~飲酒は二十歳になってから~[蚕](2013/12/29 16:04)
[6] まつりのあと[蚕](2013/12/29 18:39)
[7] 変わらず輝く満月の下で[蚕](2013/12/29 16:12)
[8] おまけ 「グラウンド・ゼロ」[蚕](2013/12/29 18:08)
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[39139] (ルリ起床~銀之助との登校)
Name: 蚕◆2f9dba57 ID:56ca2c0c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/12/29 16:24
 ☆

 その部屋の障子戸には、「チェルシー&ルリの部屋」という札が掛けられている。

「『関係者以外の立ち入りを禁ず』か……」

 ピシッと学ランを着こなした留美奈は、その文面を前に立ちつくしていた。

 チェルシーは女性のプライベートに関してはとても厳しい部分がある。その厳しさといえば、ふつうの人間ならばキョーフ症に陥るくらいである。すなわち問答無用の鉄・拳・制・裁。

 まだ可愛らしいと思われる小学生くらいの男の子でさえ被害にあったことがあるのだ。

 好意的に抱きついただけでボッコボコだった。

 普通の女性ならむしろ喜んでなでなでくらいするのではないだろうか。

「ん、んなとこで突っ立ってる場合かッ。ちょっとルリを起こすだけだ。それに金髪も許可したんだ……ル、ルリ、入るぞ?」

 なんだかんだ言いながら、乙女の園の禁断の扉を、ゆっくりと開けていった。

 留美奈は久しぶりに目にしたが、そこは自分の家にあるふつうの和室なのである。タンスや鏡台などが増えているが、それも元々ウチにあった家具だ。

 でも、その部屋の中央には――

「ルリ。朝だぞーっ」

 ふかふかの布団に包まれぐっすりと眠る、お姫様がいた。

 大変心地よい眠りに就いているらしく、まったく反応がない。すーすーと静かな寝息をたてて、穏やかな睡眠を貪っている。その寝顔は、布団にもぐりこんでいて分からない。

 多少寝返りを打ってはいるが、さすが元巫女というべきか、寝相は良いようだった。

「いつかの金髪のアレはひっどかったよなァ……」

 ――ゾッ。

 どこからか殺気を感じるような気がしたので、それについて考えるのはよしておく。

「ルリー、ルリ? 起きろよ、ほら」

 しゃがみこんで、枕元で呼びかけても起きる気配がなかった。

「まったく。お姫様がこんな気持ちよさそうに眠ってるのに、起こそうとするのが間違いだぜ」

 でも、今日は特別な日だ。障子からルリに向かって注ぎ込む陽は、そのことを祝福してくれているように思える。この光を、ルリはずっと求めていたのだ。

 そうだ、閉め切られたこの部屋が悪い。

 これでは風も感じられない。

 留美奈は立ち上がり、縁側の障子戸を全開しにかかった。

 すぐさま、光はこの部屋にサッと差し込み、緩やかな風が掛け軸や活け花をそよと揺らした。

 むぐ、と布団の中身が動く。

「いい天気だぞォ、ルリ。早く起きなきゃもったいないっ」

 言いながらもう一度、枕元についた。

「ぅ、ううん、むぅ……」

 もぞ、と寝返りを打つ。白い素肌が現れて、陽射しに輝いて見える。長い睫毛は閉じられたまま。ほっぺたが赤くなっていて、可愛らしかった。

 愛しいルリの寝顔。

 留美奈は不覚にも、ドキっとしてしまう。

 頭をブンブン振って、そういう感情を一旦追い出す。

「朝ごはん、冷めちまうぜ……」

 恥ずかしかったがルリの身体を揺らして、眠りにトドメをさそうとした。

 ぎゅうっ。

「えぇっ?」

 ルリの肩にそっと触れていただけの手が、いつのまにか両手のなかに包まれていた。

 温かくて、柔らかい――。

「る、るみなしゃん……」

「はっ、はいッ?」

 寝起きの舌っ足らずの声。そして留美奈の手はだんだんとたぐりよせられ、やがて、額にそれをすりつけて、

「んふふ~るみなしゃんの、てぇ……」

 しあわせそうな声で鳴く。

 そしてその時のルリの笑顔ったら。

 笑顔ったらッ!

 どきどきどきどきどきどきどきどき。

「や、や、や、」

 ヤベェよこれっ!?

 留美奈は心の中で叫んだ。

 女の子には起こされるのが定番でサイコーだと思っていたが、起こすのはもっとスゴかった。

 完全無防備のルリが目の前にいた。

 そしてそのルリは、自分にじゃれついてきてるわけで――

 どーにかならない方がッ、おかしいっつうのッ!

 再び心の中で叫ぶ。

「いや、だめだ。なんとかしないと。そうだ、この手が悪い」

 ずっと見つめていたいルリの笑顔に、ここは留美奈も目をつぶる。

「よし、せぇので行くぞ……イッ、せぇ、のッ!」

 ぱっ。

「ふぅ……」

 手は無事に帰ってくる。だが――

「ルミナさん……?」

「おっ。起きたかル」

「どこにもいかないでルミナさんッ!」

 抱擁。

 墜落。

「もう二度と、ルミナさんが死んでしまうところを見たくないんです!

 せっかく、せっかくまた会えたのに、もう、離れ離れになってしまうのはイヤです……っ」

 のしかかられ、ルリの重さを感じつつ、それを聞く。

 驚く程の力で、抱きしめられていた。

 留美奈も、ぎゅっと抱きしめ返した。その身体の小ささを、両腕でしっかりと感じる。

「まったく、どんな夢を見てたんだか。どこにもいくわけねェじゃねえか」

「死なないで、ルミナさん……」

「死ぬもんか。寿命が来たって生き続けてやる」

 何度も何度も死にかけて、それでもお前を追いかけ続けてきたんだ。

 そしてようやく手に取ることができた、ちっちゃな手、華奢な身体、だけどこの上なく温かくて大切な存在――ルリ、お前を。

「死なないで……」

 むくっ、と。

 覆いかぶさったまま顔だけを持ち上げるルリ。

 留美奈の眼に差す陽の光を、ルリの顔が遮る。

「へっ?」

 ルリの目は閉じられたまんまだった。

 というか、その作業を行う際は、目をつむっておくもんだって聞くね、うん。

 唇が、軽く突き出されており。

 それがだんだんと、近づいてきているような――。

「ちょっ、えっ? ルリ? こんなとこで、」

 驚くが、どうしてか顔を動かすことができない。

 唇にじっと、見とれている。淡くぷっくりつやつやとした、柔らかそうな対の花弁。

 寝起きにもちろん口紅はなく、剥かれたまんまのきれいな生々しさがある。

 記憶がある。この唇の感触を、自分は知っている――?

 色素の欠けたような不思議な色の髪の先が、甘やかな匂いとともに頬をスッと撫でて、

 留美奈はそっと眼を閉


 ヴァリヴァリミシミシベキベキグシャリ。


 明らかに近くで聞こえた不穏な物音に留美奈は慌てて身を起こした。ルリを抱きしめたまま。

 障子戸の隙間から、こちらを覗く二名の視線があった。

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……」

 低音で唸るチェルシーと、

「ひいいいいいいいいいい……ッ」

 ダバダバ涙をこぼしながらおびえるメガネの少年――五十鈴銀之助。

「なんでお前らがここにいるんだよッ!?」

 チェルシーの握力によって障子の一部は壊滅しており、

「もしかしたらと思って来てみたらルリ様になんてことさせてるの……覚悟はいいかしらァこのエロガキ……ッ」

「いやちげーからッ! 俺はルリをなだめようと抱きしめてだなあ、そしたらまあ、良い雰囲気になっちゃってこんなことにッ、なー、ルリっ?」

 そう。真っ当なキスなのである。必死で弁明しつつ腕の中のルリを見る。ルリは――

「すぅ、すぅ……」

 気持ちよさそうに寝ていました!

「ね、ねぞうがワルかったのかナ?」

 ヴァキッ、ボキッ、ゴリュッ。

 チェルシーは拳を鳴らしながらこちらへ近づいてくる。ルミナはずるずると後退する。

「っていうかおかしいだろッ? ルリが上だったの見てたよなっ? ねぼけて抱きついてきただけで、俺は何もやってねえってッ? 事故だよ事故ッ! お前が怒る必要がッ」

「そんなことどうでもいいわッ! よくわかんないけどムカツクのよ!」

「ハアァ――――ッ!?」

 それを言われたらおしまいだった。チェルシーの拳に重力が収束されていくのが見えた。

 ああ、顔面めがけて飛んでくるよ。

「ジオ・インパクトッ!」


 ――――――――、


 とっても、ヘビーな朝食だった。


「リフジンダー……」


 ☆


「ほんっと、金髪と一緒に住んでたら身体がいくつあっても足りねえぜ……」

「あはは……」

 目覚めてまだ一時間しか経っていないのに、三ヶ月は漂流したような顔つきになっている留美奈に、幼なじみ、銀之助は力なく笑うしかなかった。

 二人は登校中である。家もそこそこの近所なので、たいていの日は二人連れ立って学校に行く。今日から新学期ということで、高校二年生としては初めての登校だった。

「そういや銀之助、今朝は家に来るのがやけに早くなかったか? 俺まだ朝飯も食ってなかったんだぜ?」

「よくぞ聞いてくれたよルミナっ!」

 銀之助は腰に手を当て、胸を張る。

「なんだ?」

「ふっふっふっ、ルミナはきっと覚えてないんだろうな。今日がいったい何の日かッ」

「あー、スーパーの特売日だったっけ?」

「スーパーの特売日は毎月20日と30日ッ!」

「……」

「聞いて驚くなよルミナ。今からちょうど一年前のこの日、僕たちは地底人に遭遇したんだ!」

「……わあお」

 得意だった銀之助はガックリとなる。

「あれ。リアクション薄いねぇ?」

「まー、とっくに知ってたからな」

「知ってたなら言ってくれよォ! めちゃめちゃ恥ずかしいじゃないかッ!」

 ガクガクガクガク。

 襟を掴まれ揺さぶられる。

「で、それでウチに早く来たってのか?」

「うーん。まあそれだけでも十分な理由になるけどね。だけど今日は、ルミナたちにいち早く見せたいものがあったんだ。それでウチに用意してたんだけど……」

「例によってドタバタのせいで見せる暇がなかったってことか」

「そういうこと……」

 よほど残念だったのか、うなだれてしまう。

「ふうん。でも朝っぱらからお前の発明なんか見せられてもなァ……」

「あっ。言ったな、ルミナ?」

 ギラリとメガネが眩しく輝く。

「だってなあ……雑魚にならたしかに役に立つかもしれねぇけど、師兵クラスが相手じゃそういう小細工は通用しないだろうが」

「おいおいルミナー、ここは地下世界じゃないよ? あれからもうだいぶ経つのに、頭の中はまだ地下世界のまま?」

「……かもな」

 ほんの数ヶ月前に見た景色を思い出すがすぐに打ち切る。

「じゃあ、何を作ったか教えてもらおうじゃないか?」

「ふっふっふっ。今回のは本当にすごい発明なんだ。時間を作ってそのときに発表しよう。そうだな、今日の放課後に、ルリさんとチェルシーさんを、本堂の前の庭に集めておいてくれよ」

「俺だけじゃなく、あいつらも?」

「うん。みんなに見せたいものだからさ」

 銀之助は意味深に笑った。

「きっと驚くと思うよ、ルミナ?」




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