――――――――――――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは首都ロンディニウムの議会議事堂、その一室に居た。
彼女の隣に居たのは、彼女の婚約者たるワルド。
表向きは死んだことになっている彼らは、改めて自分達の所属する「国家」の最高指導者と会見するためにここにいたのだ。
そして、彼らの待つ絢爛きらびやかな宝飾に飾られた部屋には革命の象徴である三色旗が飾られていた。
「神聖アルビオン共和国護国卿、オリヴァー・クロムウェル様の御成ぁり~!」
護国卿とはアルビオン王朝亡き後、王権の代わりに国家の最高統治権を担う担当官職として作られた役職である。
その護国卿に就任したのは片田舎の司教であった男であった。
うだつのあがらない風采に野暮ったい神官服。
その傍らには顔が隠れるほどのローブを纏った女性が付き従う。
かつて、王の座所として作られた玉座にクロムウェルはゆっくりと腰を降ろすと、前に控える彼女達に視線を注ぎながら口を開いた。
「良く参られた、ワルド子爵そして……ミス・ヴァリエール殿」
そして、クロムウェルはワルドに視線を向けると、先の皇太子暗殺についての手柄を褒め称えた。
「ワルド子爵。このたびのウェールズ皇太子暗殺、そしてアンリエッタの恋文の件、見事であった」
そんなクロムウェルの言葉に対し、ワルドは頭を下げたまま答えた。
「いえ、さしたる難題ではありませんでした故、そのようなお気遣いは無用に存じます」
「いやいや、ウェールズ皇太子と言えば、あの若さでトライアングルという使い手。それを敵地で討ち果たすことが出来るのはハルケギニア広しと言えども貴殿くらいの者であろう」
そう称えるクロムウェルに対し、ワルドは光栄至極とばかりに頭を下げた。
そんなワルドの反応を確認したクロムウェルは、次に興味の対象をワルドの傍らにいた少女へと向けた。
「さて、ミス・ヴァリエール殿――」
そう言ってクロムウェルはワルドの傍らで黙り続けるルイズに視線を向けた。
「――特にあなたはトリステイン王族に連なる血統の方と聞き及んでおる」
その言葉にルイズは反応した。
彼女としては自身の生まれを否定することも、自身の能力を否定することも無い。
――彼女が否定するのは彼女を否定するモノだけだった。
「あら? 王族に連なる血縁はお気に召しませんかしら?」
彼女は逆に問いかけた――それが一般にはとてつもない非礼であることを知りながら。
それは目前の男がどの程度の男かを確かめるためでもあった。
――もしクロムウェルが怒りの余り彼女を処罰することが出来るのであれば、それは彼がこのレコン・キスタで逆らうことの出来ない唯一の超越者であるということ。
だとするならば、目の前の男は彼女にとって倒すべき「敵」ということになる。
と、同時に彼女もまたクロムウェルにとっての非服従者、すなわち「敵」であるということになる。
もし、そうでないとしたら――
「ルイズ――!」
そう挑発的に答えたルイズを制するようにしてワルドが声を上げた。
しかし、そんなワルドを窘めたのは苦い顔をしたクロムウェル自身だった。
「いや、あなたはワルド子爵の婚約者として此度の任務の実現に大いに貢献したと聞いておる――それに王族に連なる血統といえば、正当なる始祖の血縁。あなたほどの方がレコン・キスタに居られれば、聖地の回復も近いことであろう」
その言葉にルイズは内心ほくそ笑んだ。
自分達の手で「正統なる始祖の血縁」を滅ぼしておきながら、王族の血統であった彼女を誉めそやす。
それは彼らが担ぐべき「神輿」を探していることに他ならない。
ならば当然、神輿を担ぐ理由が必要となる。
――そう、おそらくはレコン・キスタは王権の崩壊後の明確な方針が無い。
「聖地の回復」などという誰もが否定しない大目標を掲げる一方で、王から権力を奪った後のことについてなんのビジョンも存在しなかったに違いない。
そう思い至ったルイズは目前の神輿である男の背後に何があるのかと思った。
一方、その言葉は傍らで控え続けるワルドにとっては不可思議だった。
普段はプライドの高いクロムウェルが何故ここまで好機嫌なのか、何故ルイズの無礼を通り越した発言に対して彼女を持ち上げるような発言をするのか、と言った疑問だった。
彼のそんな疑問は謁見が終わり、奥の間に下がろうとクロムウェルが立ち上がった瞬間に頂点に達した。
「――誠に失礼かと存じますが、閣下が私にお命じになられた理由として挙げられた『彼女の力』とは一体何なのでしょうか?」
「……」
思わず問いかけられたワルドの質問に対し、クロムウェルは答えない。
いや、答えられない。
彼もまた、目の前の傲岸不遜な美少女がどんな価値を持つか知らなかったのだ。
それを知るのは彼の背後に控える「彼女」だけ。
――沈黙を続けるクロムウェルの代わりに答えたのは先程からじっとルイズを見つめ続けていた女官だった。
「貴方が知る必要はありませんわ――子爵」
口元を僅かに歪めてそう言い放つと、女官はクロムウェルと共に奥の扉へと姿を消していく。
後に残されたのは閉ざされた扉を見つめ続けるワルドと、そんな彼の姿を冷ややかな目で眺めるルイズの姿だった。
クロムウェルとの謁見を終えた彼女は、ここロンディニウム近在の諸侯を集めたパーティに招かれた。
既にトリステインとの戦いが開始されているにも関わらず、彼らが首都に留まっている理由は、より遠隔地の諸侯が自身の領地で軍を編成して集結するのを待っていたためであった。
王権が滅びた後も、アルビオンの統治体系の根幹は封建制であった。
貴族階級たる各貴族の所領は王権派貴族の処断によりその所領を増し、教会の所領もまた維持されていた。
しかし当然、王が滅びた以上、王という最大諸侯の編制する「王軍」はもはや存在し得ない。
代わりにレコン・キスタの主力となったのは、各地の諸侯が率いる諸侯軍だった。
しかし、傭兵を主力とする王軍に対し、徴収兵を主力とする諸侯軍の動員速度はきわめて遅い。
さらに各地の所領で編成された軍が首都に集結するのにも時間がかかる。
それはアルビオンに成立した「共和政」というものが有力諸侯の寄り合い所帯に近いためでもあった。
「おお、子爵殿――」
そう言ってワルドに近づいたのは首都近郊に所領を持つ40代の伯爵だった。
そしてそのまま、なにやら談笑を始める二人。
その間、ルイズは一人考え続けた。
――彼女の意識は先のクロムウェルとの会見での発言に集中されていた。
唐突に発せられたワルドの焦りを含んだ質問とそれに対するクロムウェルの反応。
一見、上位者の驕りとも思えるクロムウェルの反応に彼女は気付いていた。
クロムウェルもまた、『彼女の力』が何なのかを知らない。
彼女の力について彼女以外で知っているのはクロムウェルの背後に立っていた、あの女官だけ。
形の上とは言え、この国の最大権力者すら知らないことを知っている女――そう、あの女こそがクロムウェルという神輿、いやレコン・キスタそのものを牛耳る存在なのだろうか?
……いや、それはただの思い込みに過ぎないのかも?
そんな彼女の思考は突然に中断を余儀なくされた。
「失礼。ワルド殿、この女性を紹介して頂けないでしょうかな?」
唐突に声が聞こえた。
彼女が考えていた間に傍らのワルドと伯爵の話は終わったらしい。
そんな声に応じてワルドもまた上機嫌で答えた。
「ええ、ご紹介しましょう。彼女は私の婚約者のルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです」
「ほう、ヴァリエールと言えばトリステイン一の高名な貴族。そこなご息女で在らせられるあなたはさぞ強力な『使い手』なのでしょうな――」
そう言って伯爵はルイズの方に視線を向ける。
そんな伯爵の質問に対して、彼女はまるで茶化したかのように笑顔で答えた。
「……伝説の『虚無』の系統ですわ」
そんな彼女の一言に伯爵は良く出来た話を聞いたかのようにして笑った。
「はっはっは、ご冗談がお得意のようで――おっと、申し遅れたが私は火のトライアングルでしてな」
そう言って、さらに問い続けた。
それは他者の実力を知っておくという貴族独特の社交辞令の一つでもあった。
そんな伯爵の重ねた質問に対して、ルイズは笑顔を保ったまま答える。
「いいえ、私系統魔法は使えませんもの」
しかし、その目は笑ってはいない。
ルイズはただ、冷ややかな目で目前のトライアングル・メイジを眺めていた。
「――失礼」
その視線に耐えられなかったのか、貴族はさっと立ち去っていく。
このハルケギニアで『虚無』とは失われた系統。
その使い手は唯一人、レコン・キスタの代表であるクロムウェルだけの筈。
そして、彼女は「系統魔法」が使えない、と自ら言ってのけた。
そんな言葉の意味するところを察して、男は去り際にひっそりと一言呟いた。
「いくら名門の血筋とは言え、魔法もロクに使えないものが……」
しかし、そんな言葉も今の彼女には気にならない。
今のルイズにとってはそんな儀礼には何の価値も無い。
当然、「ゼロ」の少女にとってはトライアングルやスクウェアといった区分には興味はなかった。
――力の無い貴族連中が作り上げたハルキゲニアの社会制度は私を認めることはない。
かつて、魔法学院の庭での誓いが思い出された。
しかし、その為の手段として接近したこのレコン・キスタの内部では未だに彼女の拒絶する「区分」が厳然として存在している。
それはその組織の構成員が区分を求める貴族達であるから。
護国卿とやらも所詮はそうした連中に担がれた神輿に過ぎない。
ならば――
そこまで思い至り、彼女は僅かに口元を歪めた。
「平民達が、まさかこんなことを起こすとは……」
トリスタニアの王宮で、そう呟いたのは財務卿だった。
周囲には急遽集められた、トリステインの政治を司る高級貴族達で溢れていた。
「そんなことはどうでも良い! 問題はどうやってこの事件で傷ついた王政府の威信を取り戻せるかということだ!」
軍務卿の大声が大広間に響く。
その声に普段から居丈高な振る舞いで有名な貴族が吠えた。
「――簡単なことだ、あの愚昧なる平民どもに今一度我らの力を示してやれば良い!」
そう叫んだ彼の金襴緞子で知られた王都の屋敷は、先日の騒乱の中で焼け落ちていた。
彼の威勢の良い言葉に続くようにしてそうだそうだ、と周囲の貴族から賛同の声が上がった。
しかし、そんな同意の声を遮るようにして響いたのはマザリーニの声だった。
「いけませんな、そんなことをすれば再びあのような騒乱を招くことにもなりかねん」
トリステイン最高の政治権力を握る彼の発言に真っ向から反論できる人間はほとんど居ない。
一転して沈黙した大広間の中で、マザリーニの意見に反論したのは以外にも集まった貴族の中では下級に位置する貴族だった。
「貴族たる我々の威信を示さなければ王都の治安維持は不可能です!」
彼は現在の王都警備隊の長として、治安回復と維持のためには貴族の権威回復が必要であると主張したのだった。
実際に取り締まりに当たるのは平民である衛士だが、犯人を捕らえ、治安を守らせるといったものの根拠となっているのは「貴族」という権威による正統性である――それが今回の騒乱で泡と消えてしまったのだ。
それは彼が職責を果たす上で、必要であると考える最低限のものだった。
「なに、我々が平民風情の相手をする必要はない。平民相手ならあの……先日殿下が創設なされた、あの平民連中にやらせればよいではないですかな?」
そんな彼の意見を聞いていたある貴族がふと思い立ったかのようにして発言した。
彼の言う「平民連中」とは新設されたばかりのトリステイン銃士隊のことであった。
アルビオン侵攻に伴う戦時体制の中で、特にアンリエッタの肝いりで作られた新設護衛部隊。
その兵員の全てが平民出身の女性であり、魔法ではなく銃を主に装備する部隊として編制されている。
その貴族はその部隊を王都の治安維持の為に使用してはどうか、と主張したのだった。
「それはいい考えですな、平民相手ならあの粉引き風情でも十分でしょう」
名案だ、とばかりに周囲の貴族達が一斉に賛同する。
銃士隊を治安維持の担当として据え付ける――平民の不満の対象は自分達貴族ではなく銃士隊に向けられる。
万が一損害を出すことがあったとしても、そこで失われるのは自分達とは関わり無い平民なのだ。
「……しかし、あの戦時特別税はやはり重過ぎるのでは?」
大広間の中の空気が銃士隊による王都の治安維持に決まりかけた中、財務卿が再び発言する。
彼は気付いていた。
――治安維持の担当をこれまでの貴族による王都警備隊から平民主体の銃士隊に移管する。
それはこの問題の本質をわざとぼかしたものに他ならないことに。
治安維持の担当を替えたくらいで今回のような事件が起こらなくなる、ということはない。
それは行政機関の中での業務の移管であって、王国と平民との関係には何の変化も無いのだ。
そして、王国の財務を預かる彼としては、今回の戦時特別税は余りにも重過ぎると考えていた――しかし、最終的には侵攻に必要な軍事的・財政的な要求が優先され、統治に関する要望は軽視されていたのだった。
そんな財務卿の発言の真意を理解したのか、軍務卿は慌てたようにして必要以上の声で叱責する。
「いまさら戦いを止めろとでも言うのか――もしやこの戦は殿下の勅命によって決まったことをお忘れか?」
これ以上は反逆罪に触れる、という可能性を示唆して彼は財務卿の発言を阻もうとする。
彼の一族はこのアルビオン侵攻に多大な投資をしているのだった。
そんな事情を財務卿は知っている。
しかし、財務卿もまたこの王宮で政治家を務める程の男、ただ答えるだけでなく少々当てこすって見せた。
「もちろん存じておりますとも……しかし、軍人の方々にはもう少し節約と言うものをですな」
そう彼が言ったのは戦費として計上した額の一割以上が、戦地に居る貴族の享楽の為に使われているという事実だった。
実際に戦場に居ながらにして、上級貴族はそれまでの本土での暮らしと変わらない生活を送っていたのだった。
そこには彼らの世話をする使用人や嗜好品なども含まれ、それらは全て軍の物資や金、すなわち戦費によって賄われていた。
「それは戦場で戦う我らへの冒涜だぞ!」
財務卿の発言に対し、軍務卿が遮るようにして大声で反論する。
その声に同調したのか、一族を戦場に派遣している貴族達が一斉に反対し、大広間は喧騒に満たされた。
「皆様、お静かになされい!姫様の御前でありますゆえ」
マザリーニの声が響く。
その声には前半部は叱責するような、後半部はまるで諭すような響きがあった。
宰相の一喝で静粛を取り戻した貴族達が一斉にアンリエッタを注視する。
そして、注目された当の本人たるアンリエッタは玉座に掛けながら、いささか疲れた顔をしていた。
「もう結構です……それに銃士隊は私の近衛ですわ。諸卿の意見は参考にさせて頂きますが、決めるのはわたくしです」
そう言ってアンリエッタは広間に集結した宮廷貴族達を解散させた。
「姫様」
誰もが退出し、がらんとした大広間の中でぽつんと佇むアンリエッタに声を掛けたのはマザリーニだった。
そんなマザリーニの声にアンリエッタはそっけなく答えた。
「なんでしょう」
「銃士隊を王都の治安任務に出して頂きたいのです」
単刀直入にマザリーニは用件を切り出した。
それは先程の論争の中で、唯一宮廷貴族達の間で合意に近いものが得られた意見だった。
「いえ、彼らはわたくしの護衛ですわ。王都の警備などに回している余裕はありません」
しかし、彼女はその提案を直に拒絶した。
彼女がそれまでの魔法衛士隊に代わる近衛を組織した理由は唯一つ。
――貴族は信用できない。
彼女の血縁であるテューダー王朝を滅ぼしたアルビオンでの貴族の叛乱や、今回の戦役を巡る貴族達の利権争いを直に見てきた彼女としては、もはや宮廷貴族など信用に値するものではないと改めて実感させられたのだ。
「護衛ならば魔法衛士隊が居るではありませんか」
そんな彼女の思いに対して、気付かぬフリをしながらマザリーニは答える。
しかし、アンリエッタはにべも無く拒絶の姿勢を示したまま、何も答えない。
彼女としては信用ならない貴族に常に付きまとわれることが「不安」なのではなかった……彼女は貴族が付きまとうことに「我慢」ならなかったのだ。
それが今回の銃士隊設立の遠因ともなっている。
沈黙を続ける彼女の内心を推し量りながらも、マザリーニは続けた。
「だからこそ、なのです。今、姫様に対する貴族達の信頼を確実なものにするためにも、なにとぞ彼らの意見を取り入れる姿勢を示して頂きたいのです」
政治家としてのマザリーニは王国の非常時――アルビオン侵攻や今回のような騒乱――であるが故に、王国の軍事・統治を担う貴族とアンリエッタの関係が円滑でなければならないと感じていた。
彼からすれば、あのアルビオンでの叛乱も数年前のモード大公事件によって、王と貴族との関係が悪化したことがきっかけであるとすら思っていたのだった。
だからこそ、彼はアルビオンの轍を踏まないために進言したのだった。
「あのような者たちをどうして信頼せよと言うのです!?」
その言葉にアンリエッタは秘めていた感情を顕わにする。
彼女が生まれてから毎日のように見聞きしていた貴族達の権益を巡る謀略の数々。
そして、彼女の愛したアルビオン皇太子ウェールズが同じく貴族達の叛乱によって命を失ったこと。
後者は直接的には何の関係も無いのだが、目の前で自らの利益を貪る貴族達を彼女はいつしか無意識のうちに同一視しつつあったのだ。
「王族たるものは、お心の平穏より、国の平穏を考えるものですぞ――」
そんな彼女の隠された本音を聞きつつも、マザリーニは優しく諭すようにして言った。
そのマザリーニの声に、アンリエッタは憮然として、黙り込む。
そして、数秒間の沈黙を置いて、か細く、搾り出すかのような声で答えた。
「わかっております」
そう答えた彼女は、もう見たくも無いと言わんばかりにマザリーニからあからさまに顔を背けて、自身の護衛隊長である銃士隊の隊長を呼んだ。
「アニエス――アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン」
「はっ、御前に」
そう答えたのは、先ごろ王宮に登用された一人の女性だった。
その胸にはかつての薄汚れた胸当てではなく、今は繊細な装飾の施された光り輝くようなプレートメイルがあった。
「あなたと銃士隊にはこれから、わたくしの護衛だけでなく王都の治安警備にもあたって頂くことにしました……大変ですが、よろしくお願いしますわね」
「はっ、了解致しました」
そこまで指示を終えると、――これで宜しいですわね、と彼女はマザリーニの方へ向き直った。
当のマザリーニは感謝の言葉を述べて退席していく。
ぽつんと大広間に残ったアンリエッタは傍らで控えるアニエスに向き直り、何かを望むような声で告げた。
「銃士隊には王都警備隊と同等の権限を認めます。それから――」
彼女は『サイレント』の魔法を唱える。
ここから先は彼女とアニエスとの間にだけしか知られてはならない。
だからこそ彼女は王が臣下に命ずるのではなく、まるで友人の様に話しかけた。
「――アニエス、あなたに一つ頼みたいことがあります」
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今回もトリ革をお読み頂いてありがとうございます。
作者のさとーです。
ワルドって微妙な存在ですよね?
原作ではルイズの力を知っている様なそぶりの一方で、クロムウェルの偽虚無も信じてるっぽい感じでしたし。
そもそも片手を失ってどうやって風竜に乗ってたんでしょう?(さらに杖を使ってたしw)
……気合、でしょうかね?
10/08/07
二回目の改定を実施