――――――――――――「『トリステインで叛乱を煽動している黒髪の男を消してこい』だとさ」
そう言ってプチ・トロワの中に存在する一室でイザベラはぶっきらぼうに命令した。
無論イザベラとて「無能王」と評されている父親の言っていることをそのまま信じているわけでは無い。
名目上とは言え、ガリア王国の秘密工作部隊たる北花壇騎士団の長を務めている彼女である。
(……今度は何考えてるんだろうね、あのクソ親父は)
内心でそう思いながらも口には出さない。
いや、普段は思ったことを口に出す彼女であっても、今彼女の目の前にいる「北花壇騎士7号」の前だからこそ決して出そうとはしない。
何よりも、この従姉妹の前では自身が無能だと絶対に思われたくなかったのだ。
彼女はいつも北花壇騎士団の命令について説明を与えられない。
そう、彼女は父親であるジョセフと北花壇騎士団をつなぐ、単なるメッセンジャーでしかなかった。
そんな彼女の不満は今度の両用艦隊の出撃命令と共に出された彼女への指令によって頂点に達そうとしていた。
その思いが先日のグラン・トロワでの情景を思い起こさせた。
「ああ、イザベラか――お前に北花壇騎士団の長として命を与えようと思ってな」
先日、急遽召し出された彼女に対して、それがジョセフの告げた最初の言葉だった。
口調こそ軽いものの、ぶっきらぼうなその言葉には娘のことを全く気にかける様子もない。
そんないつもどおりのジョセフの様子に、イザベラは一人歯噛みした。
「ああ、あれだ。そう、トリステインで叛乱を煽動している黒髪の男を消してくるのだ」
思い出すのも億劫だ、とでも言いたげに告げる王の言葉はそんな彼女をさらに困惑させた。
トリステインではアルビオン侵攻以来、平民による大規模な叛乱の前兆とも言える様々な事件が起こっていた。
2ヶ月前には王都であるトリスタニアで数百名もの死者を出す大きな騒乱が発生し、つい先日は王軍の補給所を襲うまでになったと彼女は報告を受けていた。
このままなら、そのうちトリステイン王権は倒れるのではないか、と思わせるほどの状況下で何故いまさら叛乱組織に打撃を与えようとするのか――目の前の王は他国に恩を売るほどお人好しの人間ではなかった筈なのに。
「しかし、お父様――」
暗に「トリステインが滅びるならそれは構わないのでは?」と尋ねた彼女に対して父である王の答えはいつもながら意味のわからない言葉だった。
そして、彼女の言葉を聞いた瞬間、ジョセフの顔は何処か期待するような表情からどこか哀れむような表情へと変化したことに彼女は気付いていた。
そうして、最後に彼女の父はこう言って彼女との会話を終わらせた。
「もう良い、理解出来んのならば黙っていろ。王勅は以上だ、下がれ」
グラン・トロワをまるで追い払われるようにして退出した彼女の機嫌は最悪であった。
嘲笑されるのはまだ良い――哀れまれることが一番彼女にとっては腹立たしかったのだ。
そして、彼女は今『北花壇騎士7号』の前にいる。
才能の無い、と評された彼女とは異なって幼い頃から周囲にその才能を評価され、羨望の目で見つめられてきた少女。
とある事件をきっかけとして、そんな彼女と少女の立場は大きく変化したが、それでも少女の誰からも称えられたその才能は変わらない――いや、彼女と少女の差は広がるばかりだった。
命令を聞き終えて下がっていく、かつての遊び相手であり――従姉妹であった少女の背中を見て、彼女は唇を噛んだ。
いつもの様に、少女に罵声や嘲笑を浴びせても、もはや一時的な優越感に浸ることも出来ない。
いや、彼女の機嫌は直るどころか悪くなるだけ。
――惨めだった。
決して彼女は認めようとしないが、先程まで無抵抗――いや、無反応の少女を辱めていた彼女自身がそう思っていた。
誰からも理解されず、誰からも認められない。
だからこそ、目の前の従姉妹――『北花壇騎士7号』に嫉妬した。
辛うじてマシだったのは、彼女はそれでも魔法が使えたこと。
王族として――オルレアン家が廃嫡された今となっては唯一の王位継承者として認められている彼女ですらそんな状況なのだ。
無能王と評され、マトモな魔法の一つも成功したことの無い彼女の父ほどではないが、彼女もまた十分以上に自らの「無能」さを恨めしく、そして憎んでいた。
そんな思いを抱えながらも他者を気遣える聖人君子の様な人物はどの世界にもごく少数しかいない。
――そして、残念ながら彼女はその多数派に属していた。
「ああ――このッ!」
そう叫んで彼女は傍らの侍女に手にした「標的」についての資料を投げつけた。
そんなイザベラの行為と同時に、周囲から彼女に対してさらに哀れむような視線が寄せられる。
それがさらに彼女の機嫌を悪化させるという悪循環を招いていく。
行き場の無い怒りのままに、まるで駄々をこねる赤ん坊の様に暴れ続けるイザベラ。
そんな彼女がが投げつけた資料を覗き込むものが居たとすれば、次の様なことが読み取れただろう。
『――標的の特徴は、黒髪。そして妙な動きとポーズをとることが多いという未確認情報あり』
「大体あんな小娘の言うことなんて、わざわざおねえさまが聞く必要なんてないのね~!」
トリスタニア上空で自らの背に乗った少女に向かって青い飛竜が話しかける。
しかし、先程からその背に身を預けている少女は無言のままだ。
そんな主人にぶつくさとなにやら文句を言いながらも、その風韻竜は主人たる少女の指示した場所に到着したことを告げる。
そんな風韻竜に無言で感謝の意を示すと、彼女は必要最小限の語句で簡潔に次の指示を与えた。
「上で待ってて」
そして少女――『北花壇騎士7号』ことシャルロット・エレーヌ・オルレアンは自らの使い魔たるシルフィードから飛び降りる。
周囲は既に真っ暗で、月明かりを頼りにおぼろげに浮かぶ自身が先程選んだ待ち伏せの場所に、彼女は落下の勢いを利用しながら、必要最小限の魔法を駆使してふわりと着地した。
その彼女の姿を目撃したのは彼女の使い魔ただ一匹。
かつて夜遅くまで人々で賑っていた王都トリスタニアの繁栄はもはや無い。
人通りの無い王都の中で彼女の選んだ場所、それはとある民家の屋根の上だった。
トリスタニアの何処にでもある安っぽく、明らかに傷みの激しい屋根の上で、彼女は街路に対して屋根の尖った部分を盾にするようにして、姿を隠すと同時に頭だけを出して様子を探ることにした。
そして、彼女が降り立った頃には未だ登っていなかった二つ目の月が彼女の頭上に昇る頃――
少年は再び彼女の前に現れる。
彼女の視界に一群の人間の姿が写った。
7~8人程の人数で、街路の周囲に警戒しながら駆ける様にして行動し、時折、立ち止まりながら目立つところにビラを貼り付け、そしてまた次の場所へと向かっていく。
その誰もがローブや頭巾で目立たないように顔を隠していた。
――そんな中に彼女は見つけた。
一人、背中に剣を抱えた少年らしき人物が彼女の眼下を気付かずに通り抜けようとしたとき、僅かに黒い髪が風になびいていることを。
ハルケギニアではほとんどいない黒髪。
それを見た彼女は詠唱を完了していた『ウィンディ・アイクシル』を放つと同時に全力で屋根蹴って宙を舞った。
襲撃に最初に気付いたのはデルフリンガーだった。
魔力を吸収するという特性を持つこのインテリジェンス・ソードは、同時に周囲の魔力の動きにも敏感だった。
「相棒、敵だ!」
その声と共に、才人は襲撃者の方向に体を向けつつ、デルフリンガーを抜こうとした。
しかし、「敵」の方が早かった。
襲撃者は魔法を放つと同時に全力でそれまで自分の居た屋根を蹴り、一直線に彼に向かって体当たりした。
彼女の放った『ウィンディ・アイクシル』は唯の牽制。
本命は彼女の手にした一本のナイフだった。
彼女に「何故メイジが刃物を持つのか」と聞かれれば、彼女はこう答えただろう。
『そのほうが合理的』
魔法至上主義に陥りがちな貴族は刃物を携帯するのを嫌がる傾向があるが、彼女にとっては何の抵抗も無い。
いや、むしろ接近戦闘において刃物は魔法以上に有効な場合がある。
それは彼女がある「ナイフ」に出会った経験から学んでいた。
「うっ!」
屋根から全力で飛び出した襲撃者の体当たりを正面から受けて、才人は一瞬息を詰まらせた。
肺の中の空気が押し出されると同時に、一瞬の間才人の体の自由を奪う。
そのまま、才人は襲撃者に圧し掛かられるように倒れ、尻餅をついた。
彼が数秒後に意識を向けた時、才人の目に映ったのは空に浮かぶ白い満月と、その光を遮る襲撃者の上半身だった。
しかし、目の前にいるにも関わらず、逆光となった月明かりと垂れ下がった前髪によってその顔をうかがい知ることは出来ない。
それでも微動だにしない一切の感情を排したようなその姿に、才人はまるで人形のような印象を抱いた。
才人の首には襲撃者の手にしたナイフが当てられている。
襲撃者が少しでも手を動かせば、才人の喉は一瞬で切り裂かれるだろう。
そして、その状態では才人自身や周囲にいる才人の仲間が反撃に動くよりも確実に早く実行に移せるだろう。
才人はその瞬間に備えて覚悟した。
しかし、数秒――もしかしたらそれ以上かも知れないが――経過しても、予期していた瞬間は訪れない。
(……なんで)
そう思った瞬間、才人は自らに馬乗りになった襲撃者の体が強張っているように見えた。
そして、自身の首に当てられたナイフが必要以上に堅く握り締られていることにも気付く。
相変わらず月の逆光と前髪に隠れて表情は伺えないが、目の前の襲撃者は明らかに動揺しているように思えたのだ。
才人がそう思った次の瞬間、襲撃者は押し出すようにして声を発した。
その小さな声は才人が先程人形のようだ思ったその影とは異なって、どこか感情の篭った声だった。
「―――」
その一瞬の隙をデルフリンガーは見逃さなかった。
「相棒、今だ!」
デルフリンガーの声に一瞬全く場違いなことを考えていた才人は咄嗟に反応した。
馬乗りになった襲撃者の腹を全力で蹴り上げる。
その衝撃で襲撃者の体がふわりと浮き上がり、才人の首に当てられていたナイフも薄皮一枚かすっただけで、彼の首を掻き切る前に殺傷範囲から外れる。
(軽い!?)
才人は蹴り上げた瞬間の感覚に戸惑いながらも才人は全身の筋肉を使ってバネのように立ち上がる。
しかし、襲撃者も只者ではないらしい。
襲撃者は一瞬の間に体勢を立て直し、今度は一転して距離をとった。
手にした武器もまたナイフから杖に持ち替え、さらに魔法の詠唱を行なおうとする。
才人もまたデルフリンガーを構えなおし、襲撃者を睨みつけ――
「……あれ?」
そんな気の抜けた声を発した。
そこで杖を構えていたのは、かつて“この世界”に召喚されたばかりの才人に道を教えてくれた少女だった。
忘れようも無い。
数ヶ月前にも才人は彼女に魔法を突きつけられていた。
それでも最後に彼女は『魅惑の妖精』亭への道に迷った彼を助けてくれた――そして、『魅惑の妖精』亭にたどり着けなければ、才人もまたこうして生きていくことも出来なかっただろう。
しかし、初対面のトリスタニアで珍しい少年に突然声をかけられた時に見せた脅しとは異なって、先程の攻撃は明らかに才人を狙った攻撃だった。
一瞬でも遅れれば、才人の命は無かっただろう。
そして、そんな彼女の行動とは矛盾する先程の一瞬の躊躇。
だから才人は尋ねずには居られなかった。
「なんで俺を襲うんだよ? 教えてくれよ!」
しかし、才人の問いに帰ってきたのは先程までの冷静さ取り戻したシャルロットの冷たい声だった。
「命令だから」
その声は才人に告げたものであったが、何処か口にした彼女自身に言い聞かせるような響きがあった。
「誰の命令だよ!?」
「……」
シャルロットは答えない。
返答の代わりに繰り出されたのは鋭利な風の刃だった。
その攻撃をデルフリンガーで受払いながら、才人は大声で尋ねる。
「もしかして、あの時俺を助けてくれたのも命令だったとか言わないよな?」
才人のその質問は彼女の心を揺さぶった。
そう――先程、絶好の機会に才人の喉を掻き切ることが出来なかったのは、あの日の光景が脳裏に浮かんだから。
夕日に包まれたトリスタニアの路地で、彼女にもはや得られないかつての感覚を思い起こさせてくれた少年の姿があったから。
揺れる心の動揺を打ち消すように彼女は更なる詠唱を行い――魔法を放つ。
「くっ!」
辛うじて魔法をかわした才人が毒づいた。
「相棒、なんか心が震えてねーな」
そんな才人の様子にデルフリンガーが彼?なりの視点で助言する。
しかし、デルフリンガーは知らない――目の前の襲撃者が、才人にとってこの世界で「二番目に助けてくれた人間」であるということを。
「あたりまえだろ!」
もし襲撃者が彼の見知らぬ人間であれば、才人は容赦なく反撃に転じただろう。
あるいは、彼の知人に害を与えようとする人間であっても。
しかし、たった今才人の命を奪おうとした「敵」は彼にとって知人――いや恩人とも言える相手だった。
突如としてハルケギニアに召喚された彼を助けてくれた相手――それがたとえ道案内程度でも――いや、だからこそ自衛の為とはいえ、理由も知らずにそんな相手を傷つけようとは思えなかったのだ。
「でもよ相棒、あっちはそろそろ決着をつける気みてーだけどな」
デルフリンガーのその言葉に才人は再び襲撃者を見つめた。
そう、シャルロットは内心の動揺を無理矢理に押さえ込むかのように、彼女にとって最大の攻撃魔法を唱え始めた。
この戦いに終わりを刻むべく紡がれた魔法の名は『アイス・ジャベリン』――彼女の得意とする『ウィンディ・アイクシル』の上位魔法だった。
小さな少女の周りに空気中の水蒸気が収束し、その武装たる鋭利な氷柱を形成する。
しかし、形成されつつある氷柱はこれまでの「矢」よりも遥かに巨大――まさに「投槍」の名に相応しい代物だった。
その氷の投槍を前にして、才人もまたデルフリンガーを構えなおす。
そして、シャルロットが杖を振り下ろそうとした瞬間、才人は心から叫びながら跳んだ。
「理由を教えろよ!?――シャルロット!」
その叫びに彼女は動揺した。
彼女のほかは数人しか知らない、彼女の本当の名前。
人前では誰も呼んでくれない――いや、呼ぶことの許されない名前。
その呼び声を聞いた彼女の次の行動への対応が一瞬遅れてしまう。
それでも『アイス・ジャベリン』は既に振り下ろされた彼女の杖に従って猛烈な勢いで迫り来る少年に向かって放たれる。
放たれたジャベリンは才人の手にしたデルフリンガーによって砕かれる――それは彼女も織り込み済みだった。
一本目の影に隠れるようにして至近距離から放たれようとする二本目こそが彼女の本命だった。
「うぉおおおっ!」
しかし、彼女の詠唱がほんの少し遅れた――わずかな動揺がその遅れにつながったのだ。
未だ完成していないその本命の『投槍』をデルフリンガーでなぎ払いながら、才人はシャルロットにその勢いのまま体当たりする。
ガンダールヴのルーンが生み出す常識離れした勢いのままに、二人はもつれ合うようにして地面を転がった。
そして、なんとか立ち上がろうとするシャルロットの目前にデルフリンガーの刃が突きつけられた。
それはまるで先程までの才人と襲撃者の状況をそのまま入れ替えた様。
それでも彼女が新たな魔法を紡ごうとすると、才人は両手で握ったデルフリンガーを彼女の喉に突き立てようとして振りかぶり――
ドスン、という衝撃音が響く。
――しかし、その刃が彼女に届くことはなかった。
才人の握ったデルフリンガーは、彼女の首のほんの少し脇の地面に深々と突き立てられていた。
「……どうして?」
そんな彼女の問いに才人は答えない。
ただ、悲しそうな目で彼女の顔を見つめている。
彼の行動は、絶好の機会にも関わらず彼の首を掻き切ることが出来なかった彼女の躊躇とは似て非なるもの――少なくとも彼女にとってはそう感じられた。
剣をそれほど深く地面に突き立てたのでは次に素早く振るうことが出来ない。
そう思った直後、才人の行動はさらに彼女の常識を超え――彼女の目が大きく見開かれる。
その視線の先では、ゆっくりと、力が抜けるようにして才人がデルフリンガーから両手を離したのだ。
「……なんでだよ」
ポツリと押し出すようにして呟かれたその声はシャルロットに大きな衝撃を与えた。
かつて、彼女は彼の正体について尋ねたことがあり――それを信じた。
それは彼にとっても同じだったのだろう。
彼は自分の命を顧みることなく、彼女の行為の理由を知りたがった。
――それは、この期に及んでも彼女を信じ続けたということ。
「わたしは――」
そう、言葉を紡ごうとした直後、彼女の視界に動く影が見えた。
「きゅいぃぃ~!!!」
風斬り音とともに現れた巨大な風韻竜――シルフィードがその気の抜けた咆哮と共に才人を襲おうとしている。
その咆哮に気付いたのか、彼女の視界から才人の姿が消える――とっさに横に飛びのくことによって避けたのだ。
しかし、シルフィードの目的は才人への攻撃ではなかった。
――シルフィードの真の目的は才人に組み伏せられていたシャルロットの救出だった。
切磋に飛びのいた才人を一顧だにすることなく、シルフィードはそのまま擦れ違いざまに彼女のマントを咥えて上空へと飛び去っていく。
ぐんぐんと高度を上げていくシルフィードの影がトリスタニアの夜空に消えるまで、才人達はその姿を呆然と眺め続け――後に残された場所には、彼女の傍に突き立てていたデルフリンガーがぽつんと取り残されていた。
「おねえさま、大丈夫だったのね~?」
シルフィとっても心配したのね~!と、先程彼女の危機を救ったシルフィードの気遣う声がする。
そんな気遣いに「ありがとう」と答えながらも、彼女の思考を支配していたのは先程の少年のことだった。
――どうして?
(どうして彼はわたしを殺さなかったのか――わたしは彼を殺そうとしたのに)
最後に彼女が放った『アイス・ジャベリン』は確かに殺意を持って放ったものだった。
明確な殺意を放たれても、彼は彼女を傷つけようとはしなかった。
そう、彼に圧し掛かられたあの瞬間、彼は確実に彼女を殺せた筈なのに――
――どうして?
(どうしてそこまで彼はわたしを信じようとしたのだろうか――)
わからない。
その思いを胸に、彼女は少年のことを考え続ける。
そんな時、声が聞こえた。
「あの黒髪、おねえさまになんてことするのね! 今度会ったらシルフィが食べちゃうんだから!」
ぷんすかと、そんなことを口走るシルフィードの頭をシャルロットは手にした杖でポカリと殴りつけた。
「な、なんでなのね~!?」
シルフィードの困惑と悲鳴に近い声が響く。
その声を聞きながら、彼女自身も何故だろうと思った。
「わかったのね! もう食べないのね!?」
気が付けば、シルフィードが泣きそうになりながら必死に謝っている。
どうやら無意識に暫くの間シルフィードの頭を殴り続けていたらしい――あわてて彼女は殴るのを止めた。
そして、再び黙りこくることとなった主人に半ば無視される形となったシルフィードの声が虚しくトリスタニアの夜空に響いた。
「明日のご飯はお肉にして欲しいのね~~!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今回もトリ革をお読み頂いてありがとうございます。
作者のさとーです。
お待たせしました~!
みんなのアイドル、タバサさんの登場ですw
……実に20話振りという久々の登場ですけど(汗)
これ書いてる途中に何故かシルフィードの口調が桃鉄の貧乏神に思えて仕方ありませんでしたw
「お姉さま!オルレアン公屋敷を500万エキューで売っちゃうのね!」
なんと シルフィード は オルレアン公屋敷 を 500万エキュー で うってしまった!
※盗作問題について
09/6/15日付けでROM猫◆48342247様より本作品の10話がコピペされているとご連絡頂きました。
私の方でも確認させて頂きましたが、確かに10話前半部分のコピーであるようです。
しかし既にROM猫◆48342247様によって削除依頼が出されておりますので、管理人の舞様による削除手続きがなされるかと存じます。
またコピペをされた方はそれまでの経歴から見て皆様の反応を見て楽しむ愉快犯の様です。
従いまして、読者の方々におかれましても安易に挑発に乗らず、粛々と舞様の削除を見守って頂けると有難く存じます。
最後に、ROM猫◆48342247様、迅速なご連絡及び削除依頼有難う御座いました。
10/08/07
二回目の改定を実施