――――――――――――ここはどこなのだろうか?
少女――シャルロット・エレーヌ・オルレアン――はぼんやりとそう思った。
薄暗い部屋の中で彼女は申し訳程度の大きさの灯り窓から差し込む光に浮かび上がった天井を見上げる。
天井といっても天板がはめ込まれている訳ではなく、古びた屋根板や梁がむき出しになっている。
そんな光景に彼女は未だはっきりとしない意識の中でふと子供の頃に潜り込んだ屋敷の屋根裏のことを思い出した。
――そう、あれは従姉妹が彼女の屋敷に遊びに来た時の思い出。
魔法の不得意な従姉妹とかくれんぼをして、彼女はこっそりと屋根裏に潜り込んだのだ。
結果はもちろん彼女の勝利。
あの従姉妹は結局、最後まで彼女を見つけられなかった。
年齢相応の大声で泣き喚いた従姉妹の傍には若い頃の伯父とやさしい父様――そして、心を失う前の母様がいた。
「――母さま」
思わず、彼女は思い出の中の母に声をかける。
そんな彼女にすぐ隣から声がかけられた。
「あ、気が付いた? よかった、もう3日も眠っていたから……目覚めないかと思って心配してたの」
そこにいたのは親しみやすい雰囲気を持った一人の少女だった。
整った長い金色の髪を額の中心で左右にわけ、申し訳程度に開けられた屋根裏部屋の明り窓から差し込む陽光がそのブロンドの髪をきらきらと輝かせている。
――そして、その長い髪の隙間から尖った耳が覗いている。
その瞬間、シャルロットは反射的に寝かされた粗末なベッドから跳ね起きるようにして目の前のエルフから距離を取ろうとした。
しかし、数日間眠り続けた体は彼女の思うように動かない。
そのままバランスを崩してベッドの下に倒れ落ちそうになった時、
「だ、だめですよ! まだ大人しく寝てないと――」
そう言いながらエルフが彼女の体を支えようとする。
しかし、弱っている彼女の力では大して力強くもない筈のそのエルフの体を跳ね除けられなかった――逆に言えばそこまで彼女は弱っていたということを実感させられたのだ。
彼女は再びベッドの上に押し倒される。
しかし、次の瞬間には慌てた様子でそのエルフが彼女から離れていくのが感じられた。
どうしたのか、という戸惑いと共にまともに体の動かない彼女は辛うじて顔をエルフの方向に向けた。
そんな彼女に投げかけられたのは自己嫌悪を含んだ謝罪の言葉だった。
「ご、ごめんなさい。やっぱり私って怖いですよね」
シャルロットの様子に逆に驚いたような顔にどこか自嘲の影を残した表情でエルフは呟く。
よく見れば、その姿には未だ少女の色を残しているし、あの「ビダーシャル」の発していた何処か蔑視を含んだ超越者のような雰囲気も感じられない。
「あなたは――エルフ?」
そう尋ねた彼女の声に素朴な格好が人の良さを示すような少女はあわてて答える。
「そう、エルフ。私は“混じりもの”だけど……」
その言葉の中に含まれた“混じりもの”の意味を彼女は即座に悟った。
かつて存在した人間とエルフとの交流の中で生まれた「彼ら」は人間がエルフと決別したことによって忌み嫌われる存在となり、今はほとんど存在しないとされている。
そして、人間とエルフの双方から見放された「彼ら」は“混じりもの”としてどちらからも受け入れられず、砂漠でも人里でもなく誰も入ろうとしない森の奥でひっそりと暮らしている、といわれていた。
「――すまなかった」
そのことを思い出したシャルロットは率直にそう謝罪した。
そんな言葉を聞いて、彼女の前のエルフは慌てた様子で言葉を紡いだ。
「い、いえ、私こそ……あ、そうだ。私、ティファニアって言います」
自分の名を名乗ったエルフの少女は改めて心配そうな表情で言った。
「大丈夫? 包帯、きつくない?」
「――大きな傷は直したんだけど……」そう言ってやさしく彼女が暴れた時に乱れた毛布をかけなおす。
そんな問いに黙って頷くシャルロットの様子を見て安心したのか、ティファニアはふと思い出したかのように明るい声でシャルロットに、と言うよりは自分に言い聞かせるように言って立ち上がった。
「えっと、お腹すいてません?わ、私何かとってきますね!」
そう言ってティファニアは外界へ繋がる廃材で作られたような唯一の木製の扉を開いた。
開いた扉からは外の光が彼女の視界を圧倒するように流れ込んでくる。
「……少し、聞きたいことがある――」
逆光の中に浮かぶ人影に向かって彼女は尋ねる。
それは先日、オルレアン公爵邸であのエルフと戦うことをやめなかった才人に尋ねようとしたのと同じ言葉。
そんな問いに美しいブロンドを透かしたことによって金色の光に包まれたように見えるその少女はさも不思議そうに思える表情を浮かべながら返答を紡ぎ出した。
「――困っている人を助けるってそんなに変なことですか?」
そう答えると「ちゃんと寝ててくださいね」と一言口にしてティファニアは廊下へと姿を消した。
ぱたん。と扉が閉じられると、彼女の寝かされた屋根裏部屋は再び元の薄暗い世界へと戻る。
そんな場所に一人取り残された彼女は困惑していた。
ハルケギニアでは、それまで他人の不幸は余り気にしない、という傾向が多かった。
いや、むしろ自分の安全を守る為ならば他人をどれだけ犠牲にしても良いという風潮さえあった。
それは自分たちの都合しか考えない貴族達の間だけではなく、平民達の間でも変わらない。
彼女の脳裏にかつてサビエラ村で目撃した光景が思い起こされる。
あの時、サビエラ村の住人達は吸血鬼から自分達の身を守る為に、疑わしいという理由だけで年老いた占い師を焼き殺したのだ。
彼女の中で蘇ったあの時の記憶――それに今の言葉はあまりにも矛盾しているように思えた。
それに、ティファニアの残した言葉も気にかかった。
彼女は「困っている人を助けるってそんなに変なことですか?」と言った――もしこれが「困っている人を放っておけない」ならシャルロットは困惑することはなかっただろう。
「困っている人を放っておけない」という言葉ならば、単なる個人的な正義感の表れと考えることが出来る。
しかし、「困っている人を助けるってそんなに変なことですか?」と言うのならば、それは彼女が当然と受け止めているということであり、彼女の周囲もそれを当然かくあるべきとしているとしか考えられない。
彼女の中に生まれた疑問は膨らみ続ける。
だとするならば、これまでのハルケギニアには存在しなかった“常識”は何処で生まれ、ティファニアとその周囲の人々がその“常識”を受け入れている原因はなんなのか――彼女の思考がそこまで至った時、閉じられた扉をやさしくノックする音が響く。
その音に彼女は思考を止め、意識を向けて「どうぞ」と答えた。
どうしたものか、開く扉の向こうから現れたのはティファニアではなく――数日前、無謀にも単身彼女を助けに来た黒髪の少年――才人だった。
「……ごめん、もしかして起こしちゃったか?」
彼女の為のものだろう――滋養の良いものを混ぜた小麦粥を手にした才人はそんな言葉を発した。
そんな言葉に彼女はふるふると首を振って答える。
「そっか」
そう答えた才人の顔には安堵の色がはっきりと現れる。
才人のそんな様子にシャルロットはあのオルレアン公爵邸で感じた“心配”というものを再び感じずにはいられなかった。
この数年間、一人の友人を除けば殆ど感じることの無かった他人からの気遣い。
百人を超えるの生徒がいた魔法学院で過ごした一年でたった一人しか手に入れることの出来なかったその思いを彼女はこの場所でほんの少しの間に複数の人から受けているのだ。
困惑に近い感情の命ずるままに、あの時尋ねようとした言葉が口をついた。
「どうしてあなたは私を助けてくれたの?」
今、彼女の脳裏に思い浮かぶのはあのボロボロになってもエルフに立ち向かい続けた少年の姿。
目の前の才人を前にして彼女は尋ねずにはいられなかった。
――自分が死んでしまうかもしれないのに。
――助けてほしいと望んだわけでもないのに。
しかし、そんな彼女の問いに返ってきた答えは簡潔なものだった。
「誰かが苦しんでいるのを助けるのに理由なんかいらないだろ――」
才人のその言葉を聞いて彼女はあの衝撃的な光景を前にしたときにふと考えたことが正しかったことを確信した。
彼はどんな力にも屈さない――それは自身の死という怖さを前にしても変わらない。
それが彼の信念であり、自分の知る人間を助けるために自分自身が傷つくこともいとわない。
おそらく彼はあの筒の様な『武器』がなくてもエルフに向かって立ち向かったのだろう。
――あの剣を弾き飛ばされた時にそうだったように。
そして、それを確信した彼女は思った。
ここには今まで彼女を苦しめ続けた――隙あらば王家の血を引く彼女を亡き者としようとする陰謀も、文字通り死線を潜り抜けるような努力で手に入れた彼女の力を妬む悪意も無い。
そうしたものに取り囲まれた彼女は誰にも頼らず、心を許さず、全てを一人でやってきた。
しかし、この場所、この人にはそんな陰謀も悪意もない。
ふと、彼女の目から暖かな液体が零れ落ちた。
しかし、彼女はそのことに気付かない。
今の彼女は頬を伝う暖かな液体のことよりも、冷え切っていた心の中に広がる懐かしく暖かな感情に驚いていたのだ――それはあの事件が起こって以来、久しく忘れていた気持ちだった。
安堵。
一言で表現するならばそう表現されるべき感情の命ずるまま、暫くの間才人の胸の中で彼女は泣いた。
――まるで数年もの間、閉じ込め続けた自身の感情を解放したかのように。
「あ、そう言えばこれを持って来たんだ」
目の前の少女が落ち着いたことを確認した才人はふと思い出したかのように数冊の本を彼女の前に差し出した。
「ずっと寝たままじゃ退屈だろ?」
そう思ってシエスタ達から借りてきたんだ、と才人が続けようとした時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「サイトさん?」
そう扉越しに尋ねる声をシャルロットはどこかで聞いたことがあるように感じた。
その声に応じるように才人は静かに、しかし素早く椅子から立ち上がると扉を開けて廊下で待っていた黒髪の同年代の少女に応じた。
扉が完全に閉じていないせいか、時折才人と交わされる会話の一部が漏れ聞こえてくる。
辛うじて彼女が聞き取れたのは「……水精霊騎士隊」「オラドゥール……」という単語でしかなかったが、声の調子からかなり悲痛な様子であることを彼女は理解した。
「ごめん、シャルロット。ちょっと用事が出来た――」
廊下での話しを終えた才人は優しげに彼女にそう言って扉を閉めて階下へと降りていく。
一人取り残されることとなった彼女はふと小さなテーブルの上に残された本に目をやった。
そこに置かれた本は『メイドの午後』『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』――そして『イーヴァルディの勇者』。
ハルケギニアにありふれたそうした本の中で彼女はその一冊を震えるような仕草で取り上げた。
『イーヴァルディの勇者』。
少年イーヴァルディの冒険物語。
彼女に読書の面白さを教えたその本を手にして、ゆっくりとシャルロットはページを開いた。
彼女はただひたすらにその物語を読み進める。
既に幾度となく読み続け、暗誦出来るほどであるにも関わらず彼女は『イーヴァルディの勇者』を読み続けた。
何度読み返しただろう――それすらわからないほど読み返していく中でふと気付いたことがあった。
イーヴァルディという主人公を描いたこの話の中で彼女はずっと疑問を感じてきた。
それは本来なら「勇者イーヴァルディ」ではないのかと。
しかし、違うのだ。
「勇者」とはイーヴァルディ本人のことではなく、彼の心にある衝動や決心を示したものなのだ。
そして、衝動や決心であるのならば、その「勇者」はイーヴァルディという一個人のものではなく、今を生きる全ての人間に存在している筈なのだ。
そもそもこの物語の主人公――勇者イーヴァルディ――の姿に決まった特徴は無い。
その主人公は物語の語り手によって様々な人物に姿を変えてきた。
旅をする少年だけでなく、壮年の男性であったり妙齢の女性であったりする。
ある時は神の息子であり、その妻であったりもした。
またある時には幼い少女であったりもするし、何の力も持たないただの老人として登場したこともある。
それらの異なる主人公の姿はこれまで貴族達によって平民の蒙昧さの現れだと嘲笑されてきていた――曰く、平民どもは主人公の姿すらわからない物語などを有難がっている、と。
それは始祖の使った炎の姿を追い求めるアカデミーに代表されるように、貴族からすれば理解不能なものでもあったのだ。
しかし、語り手によってそれほどまでに多様な主人公を持つ『イーヴァルディの勇者』は驚くべきほど共通したストーリーを持ち合わせている。
主人公である「イーヴァルディ」はこのハルケギニアで最も強い武器とされる「魔法」ではなく剣と槍を持った平民であるという点。
そんな主人公が平民はもちろん、魔法の使えるメイジですら敵わない巨大な竜を倒すというのだ。
巨大な竜からさらわれた娘との関係を問われた勇者イーヴァルディはこう答えている。
『なんの関係もない。ただ立ち寄った村でパンを食べさせてくれただけだ』
確かにひとつの恩義ではある。
しかし、ハルケギニアの常識からすれば果たして自らの命を危機にさらしてまで返すべき大恩では決してない。
そしてあらゆる時代、あらゆる人々によって語られた「勇者イーヴァルディ」という少年少女から老人にまで至る無数の異なる主人公の姿。
彼女はふと思った。
それは単なる語り手の語り間違いなどではないのではないか、と。
もし――無数の異なる主人公が、本当に主人公であったのだとしたら。
旅をする少年。
壮年の男性。妙齢の女性。
幼い少女。
そして、何の力も持たないただの老人。
そんな人々が「勇者」という衝動や決心を抱いたのだとすれば――
昼間に見たティファニアや才人達の姿が思い出される。
そして、彼らの仲間もおそらくそうした衝動や決心を抱いているのだろう。
彼らは才人の様にそれぞれがお互いの不幸を救うために自分達の“力”を提供することを惜しまない。
――たとえそれがどれだけ小さな“力”であったとしても。
確かに平民の“力”は「魔法」という力を持つメイジに比べれば小さいかもしれない。
しかし、その小さな力は団結することによって、個人でしかない貴族を超えることが出来る。
『いいかイーヴァルディ――力があるのに、逃げ出すのは卑怯なことなんだ』
勇者イーヴァルディが自らに言い聞かせた言葉。
その中に彼女は答えを見出した。
そう、誰にも“力”はあるのだ。
才人に助けられるまで、彼女はここで示された“力”とは他人よりも強い力のことだと思っていた。
しかし、イーヴァルディは竜を超える力があったから戦ったのではない――本来なら竜という種は生半可なことで倒せる相手ではないのだ。
それはどれだけ弱くとも、自身の持てる“力”で誰かを救いたいという強い意志。
自らの血を流してでも「敵」に立ち向かおうとするその思い。
――そんなイーヴァルディはどんな時でも直面する「敵」に背を向けない。
そして、シャルロットはふと、思い至った。
『イーヴァルディの勇者』は実在したのではないのか、と。
かつて、無数の「勇者」が居た。
彼らは少年であり、大人であり、老人であった。
彼らは男性でもあり、女性でもあった。
そんな「勇者」たちはそれぞれが持った“力”をもって「敵」に立ち向かった。
一人ひとりでは到底その「敵」に及ばないと知っているにも関わらず、「勇者」という決心や衝動を持った人々は誰か――あるいは自分自身を含めて――救うために命の危険を顧みず戦った。
そう考えればこの『イーヴァルディの勇者』がかつて何度となく焚書の憂き目にあった理由も理解出来る。
人々を虐げる「敵」からしてみれば、自身の持てる“力”で誰かを救いたいという強い意志を持った「勇者」など邪魔な存在でしかない。
それを今のトリステイン――いや、ハルケギニアに当てはめるならば、その「敵」とは支配階級である貴族に他ならない。
かつて「魔法」の“力”によって人々を守り、“貴族”という敬意を表される地位を得た彼らはいつのまにかその地位が当然であるべきだと考え始めた。
そして、何時しかその“貴族”という地位は世襲のものとなり、逆に“貴族”に敬意を払わせることをを強制するようになった――かつて人々を守る“力”であった「魔法」によって。
一対一では平民が決して敵わない「魔法」という暴力を持って現在の支配を成り立たせている彼らが剣と槍を手にして戦うこの『イーヴァルディの勇者』を嫌う本当の理由がそこにある。
――かつてトリスタニアで才人と初めて出逢った後、彼女はハルケギニアの歴史について調べてみたことがあった。
そこに書かれた歴史はそれぞれの王家や名家がいかに活躍したかを描いた、いわば一種の物語であったが、彼女はその中で所々不自然な言葉で繕われた部分があった。
それはある特定の地域や国において血筋の豊富だった名家が突然断絶していることが度々あったということである。
他者に比するもののない自家の“繁栄”を誇り、同時に王国にとってかなりの貢献を成した名家の血が途絶えたとしても、本来ならばその家名を惜しんで他家からその名跡を継ぐ者がいたとしてもおかしくない筈であるのに。
それは、つまり――
そして、彼女は一つの結論に到達した。
『イーヴァルディの勇者』は実在したのだ。
かつて人々を苦しめる「敵」を相手に戦い――そして破れたが故に焚書の憂き目にあった。
その物語を研究しようとするものは時に異端として処分され、またあるときは愚か者として社会的な地位や生命を絶たれた。
そこまでして貴族達はその“事実”をなかったものとしようとしたのだ。
それでも虐げられた人々は『イーヴァルディの勇者』を忘れなかった。
本が焼かれれば詩吟として、詩吟が禁じられれば口伝として、虐げられる人々の間で世代を超えて守り伝えられてきた。
――そこまでして守りたいもの、いや守らなければならないものがあったのだ。
そして今、彼女の直ぐ傍には「勇者」がいる。
虐げられた人々――そこには彼女も含まれる――を守るために自らの“力”を提供することを惜しまない才人やティファニア達と言った存在が。
そして、「勇者」という言葉が衝動や決心であるならば、それはこのハルケギニアに住まう全ての人々に存在し得る。
勿論、彼女自身もその例外ではない。
ずっと彼女は自分一人で戦ってきたと思っていた。
二度と父のような悲劇を繰り返さないために。
そして再び母と自分が心から自由に笑える暮らしを取り戻すために。
しかし結局、一人では何も出来なかった。
残された母が死んだ時、彼女は本当に一人ぼっちになってしまったと感じた。
だからこそ、あのオルレアン公爵邸で彼女は死を望んだのだ。
しかし、今彼女のいるこの場所では違った。
才人も、ティファニアも自分自身が持てる“力”で彼女の為に戦ってくれた。
そのお陰で彼女は今もこうして生きている。
今この場所で自分は一人じゃない。
そう、一人ぼっちじゃないことを知ったのだ。
ならば、彼女がとるべき道は――
再び一人ぼっちにならないために――私の為に自身の“力”を貸してくれた人の為に。
そして私の為に自身の持てる“力”を貸してくれた人に、さらに“力”を貸してくれるであろう無数の人々の為に。
そして彼女は自分自身に誓うことにした。
先日、私の命を救うために戦ってくれた才人の様に。
皆が自由に笑って暮せる世界を作るために。
――私は才人達と共に生きる、と。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今回もトリ革をお読み頂いてありがとうございます。
作者のさとーです。
今回のテーマはスバリ『友愛』です(笑)
最近は某国の首相のせいか胡散臭く感じられる言葉ですが、これまでに出た「自由」「平等」と並んで外すことの出来ないテーマでもありますので。
09/12/17追記。
イザベラさんがシャルロットよりも年下ではないとのご指摘を受けてその部分を修正しました。
ご指摘を受けて原作を読み返したのですが結局どっちが年上なのかわからずじまいorz
個人的におでこ姫はシャルロットより精神的に幼い?印象を受けてたので年下と勝手に想像した結果が……という感じです。
10/08/07
二回目の改定を実施