Turn coat「君が金剛か」 扉の向こう側から、声がする。光を背にしているため、顔がよくわからない。それが故に、金剛は目をすがめ、目元を手で覆う。「……はい」 いつもなら、私はどんなふうに応じていたのだろうか。そんなことを、金剛は考えていた。明るく、金剛デース、とでも言っていたのだろうか。とても、そんな気分にはなれない。なれるわけがない。「君に贈り物がある」 そう言って、裏返しにしたコートを、男は放った。「そう呼ばれたくなければ、すぐに出てきたまえ。作戦を説明する」 扉が閉じ、闇が部屋に満ちる。Turncoat、すなわち、裏切り者。そう呼ばれたくないのであれば、来い。そう、男、提督は言った。金剛は、その背とコートを握りながら、しばらくうつむき、そして。 立ち上がって、扉を開いた。