【第12話 おっさんは嫌われもの】
<< 彩峰慧 >>
11月12日 夕方 国連軍横浜基地 シミュレーターデッキ
白銀少佐の訓練は厳しい。
屋上での印象から、やわな男じゃないとは思っていたけど、2度目の対面から人が変わったように厳しかった。
本当にこの人が、あの日、わたしの胸を真顔で小一時間も揉んだ人と同じ人物なのか、今でも疑わしい。
このご時世、軍に男女の区別はない。
世間ではともかく、女を殴る男は、軍では珍しくないと聞いたけど、実際に目の当たりにするのはこの人が初めてだ。
今まで私たちは、神宮司教官から厳しく叱咤されたことはあっても、直接暴力をふるわれたことは殆どなかった。
あっても本気ではなく、頭への拳骨や、蹴りを腰やお尻など、ダメージのない所に当てる程度だった。
神宮司教官の恐さは、心理的なものが大きかった。
だから、平手とはいえ、このように本気で顔を殴る上官は、正直怖い。
格闘訓練とは別。これは、一方的に“殴られなければならない”のだ。避けたり反撃したりは問題外。
殴る人が弱ければまだいい。でも、今、私たちの前にいる白銀少佐は、私たちよりもはるかに鍛えて練り上げた体から、容赦なくその腕を振るう。
──そして、おびえる私たちを前に、少佐はその表情を微塵も動かすことなく──もう何度目になるかも覚えていない──その掌を、頬に叩きつけたところだ。
──神宮司教官の。
…………………………
(数時間前)
<< 榊千鶴 >>
11月12日 午後 国連軍横浜基地 シミュレーターデッキ
「全員、シミュレーターから降りろ」
やはりか──という気持ちがあった。
今日から、シミュレーターでの連携訓練が始まった。
いつか教練に来るだろうと思っていた白銀少佐は、この日から参加することになった。そのことを、午前の座学の後、神宮司教官から伝えられた。
今度は何を言われるのかと、内心身構えてた私達を無視するかのように、少佐は淡々と今日の演習内容を説明し、シミュレーターへの搭乗を命じた。
最初に行なわせたのは、私と彩峰の連携。
今までは5人ということもあり、私と彩峰が直接組まないと言うやり方で、私達の不和をごまかしてきたが、直接2人で組むと、案の定、彩峰の先行に私が怒ることで、演習中にもかかわらず、言い争いになった。
──結局、目も当てられない結果に終わり、白銀少佐にシミュレーターから降りるような指示を受けたのだ。
これから、きっと殴られるのだろう、と覚悟を決める。
「神宮司」
「は!」
私の思惑とは異なり、白銀少佐は私達を一瞥もせず、神宮司教官を呼んだ。
呼ばれた教官は、少佐の前で新兵がするように、背筋を伸ばしている。
「訓練兵について、俺の命令を覚えていたら復唱してみろ」
「はい、『総戦技演習までに、使い物になるようにせよ』とのご命令でした!」
「貴様、こいつらが戦術機を駆るにふさわしいと判断したのか?」
「はい、規定の水準は満たしていると判断しました!」
「今、こいつらのゴタゴタで珠瀬が死んだな。味方殺しを前線に送る気か?」
「はい、そうではありません!戦力足りうると判断しました!」
「では、配属先の部隊に、チームワークの“いろは”を教えてもらうつもりだったのか?」
「はい、そうではありません!自分は、連携の大事さを常に教導しております!」
「では、貴様はそれを訓練兵に浸透させられない程度の無能だということか、神宮司?」
「はい、申し訳ありません!」
──想像もしなかった展開に──何も考えられなかった。
神宮司教官が、白銀少佐に詰問されている。
睨みつけるでもなく、淡々とした少佐の言葉に、教官がやや上を向き、きびきびと答える形で。
「手を後ろに組んで、歯を食いしばれ」
少佐のその言葉に、思わず息を呑む。──まさか!?
指示通りにした神宮司教官は、その直後、少佐に平手で殴られた。
御剣とは違い、てのひらだったけど、それが、御剣を“撫で”た時よりも、はるかに威力があるのだけはわかった。
──格闘訓練の時、あの彩峰の攻撃が当たっても、全くひるまないほどタフな教官が、よろめいたのだ。
「ご指導、ありがたくあります!」
神宮司教官は、足をふらつかせながらも、すぐに気をつけをし、礼の言葉を口にした。──口の端は血が滲んでいた。
「よし。では全員、シミュレーターに搭乗しろ」
少佐は何事もなかったのように、次の指示を出した。
「お待ちください!」「俺は命令をしたんだぞ?」
御剣がたまらず発した制止の言葉に、白銀少佐は、間を置かず命令の催促で返した。
けど、これは……!
「非は我等にあります。ならば、我等を殴るのが筋ではありませんか!」
私も同意見だ。殴られるのは嫌だけど、教官が代わりに殴られるなんて耐えられない!
少佐は黙って御剣をじっと見て、
「神宮司」
──ふたたび、教官の名前をを呼んだ。
「は!」
「貴様、コイツ等に、上官の命令に従うようには教えていないのか?」
「はい、少佐。そうではありません!軍における初歩として教導しております!」
「そうか。──手を後ろに組んで歯を食いしばれ」
なッ──!
そして、また少佐の平手が、教官に叩きつけられる。
「全員、シミュレーターに搭乗しろ」
さっきと同じ言葉──いや、命令を、少佐は口にした。
皆、あわてて搭乗した。
それは、これまでの訓練生活の中でもっとも機敏だったと思うほどの動作だった。
…………………………
「全員、シミュレーターから降りろ」
まただ……。こんな精神状態で、連携なんてうまくいくはずがない。
私と彩峰だけでなく、全員、動作がバラバラだった。
もう、どうしたらいいのかわからず、気付けばまた彩峰と怒鳴り合うことになっていた。
そんなとき、御剣の声が耳に届いた。
「珠瀬、何をしている!」
「い、いやです!降りたら……教官が……神宮司教官が……」
珠瀬はシミュレーターに篭ってしまっていた。
彼女の気持ちはわかる。珠瀬の性格なら無理も無いけど、──でも!
「愚か者!そなたがそのような態度をとれば、余計に神宮司教官が責められるというのが、まだわからぬのか!」
「うう~……」
そうだ。これは 珠瀬の命令無視になる。そしたら、また教官が……。
泣きながら、半ば御剣に引きずられるように出てきた珠瀬。
「神宮司」
「は!」
そしてまた、同じやりとり。
──今度は、2発。
何も言わなかったが、全員が理解した。
私と彩峰のいさかいと、珠瀬の命令無視で1発ずつ──。
けど、少佐はそれで終わらせてくれなかった。
立ち上がろうとした教官の腹を──そのつま先で蹴り上げた。衝撃に再びうずくまる教官。
──お願い、もう、やめて……!
「訓練ごときで泣きじゃくるような惰弱が、目が飛び出るほど高価な戦術機と、釣り合うと思うのか?」
「──はい、も゛うしワけ、ありません……ご指導、ありガたくあります……!」
さすがにすぐに立つことができず、呼吸も苦しい様子だったけど、教官はくぐもった声で答えた。
…………………………
この日、神宮司教官は、もう何回殴られたか、蹴られたかわからない。
私たちは全員、声が漏れないよう、嗚咽を無理やりかみ殺し、ただ無言で涙を流すことしかできなかった。
──声を漏らせば、また教官が殴られるからだ。
「よし。これで本日の演習は終了とする。一同解散!──おい貴様等、誰かそこの能無しを医務室へ放り込んでおけ」
──言われるまでもない!
少佐の終了の言葉と同時に、崩れ落ちた神宮司教官に、全員でかけよった。
…………………………
<< 珠瀬壬姫 >>
11月12日 夕方 国連軍横浜基地 PX
「なによ、あれ!無茶苦茶よ!」
「本当だよ!あんなやり方ってないよ!」
神宮司教官を医務室へ運んだ後、衛生兵の方に、やんわりと追い出された。
その後、PXに着くなり、榊さんが怒鳴った。鎧衣さんもそれに同調する。
気持ちは私も同じだ。あの後、涙はおさまったけど──その後にきたのは怒りの感情。
「榊、鎧衣、よせ」
「冥夜さん!」「御剣!貴方、なんとも思わないの!?」
「──腹立たしいのは私も同じだ」
「なら!「ここでわめいて、どうなるものでもあるまい!」」
榊さんの言葉にかぶせるように、御剣さんが一喝した。
「少佐の意図は明白だ。我等の不始末を教官に被せ、見せしめにしておられるのであろう」
それは、みんなわかったこと。いくら私達が、軍人として無様だったからといって、ひどい……!
「──だが、少佐は間違った事は、ひとつも言ってはおらぬ」
「「──え?」」
その言葉に、榊さんと鎧衣さんの怒気が抜ける。
「総戦技演習に受かっておきながら、入隊直後の新兵でもやらないような仲間割れ」
榊さんと彩峰さんが苦い顔をする。
「上官命令を無視──これは私にも言えることであるが」
私のこと。──しかも私は、泣いてしまった。あんな、駄駄っ子のように……。
「それと、榊と彩峰のいさかいについても、2人を特定していなかった。──あれは、我等全員を指していたのであろう。不和を放置したという点では、皆、同じようなものだからな」
──私も、気付いてはいた。気付きたくなかったけど……榊さんと彩峰さんのケンカの時は、いつも私達3人は遠巻きから止めるだけだった。少佐が神宮司教官を責めながらも、間接的にその事を言っているのは、みんな気付いたと思う。
「そのことで神宮司教官を責めるのも……まことに悔しいが、間違ってはおらぬ」
「どうして?」
これまで無表情で黙っていた彩峰さんが、初めて口を開いた。
「最初に、少佐が教官に、命令を復唱させたであろう。神宮司教官は、我等を使い物にしろと命令されていた。それがこの無様な結果──。また、我等の管轄は神宮司教官にある。ゆえに、我等の不始末は、神宮司教官の不始末となるのは、組織的に見て当然のこと。それに我等は──白銀少佐の直属ではない。白銀少佐は、部下がやらかした失態に対して、部下に責任を取らせた──ただそれだけだ」
理屈で言えばそうかもしれない。でも、私は……
「あんなやり方、好きになれません……」
「壬姫さん!?」
無意識に、声に出ていた。
鎧衣さんが驚いていた。私も──人を嫌うような発言をした自分に驚いた。
「私とてあのようなやり方は好かぬ。だが、軍とは好き嫌いでどうこうなるものではあるまい。今わかるのは、我等がここで愚痴ったところで、明日、教官が同じ目に遭うことは避けられぬということだけだ」
みんな、その言葉にうつむくしかなかった。
…………………………
<< 神宮司まりも >>
11月12日 夕方 国連軍横浜基地 医務室
「傷はどうだ、軍曹。──ああ、起きるな。そのままでいい」
眼を覚ますと、私が伏せていた寝台のそばに、白銀少佐がいた。
訓練終了後、気力で立っていた私は、崩れ落ちるように失神した。
少佐から、平手や蹴りをさんざん受けたせいだが、始まる前は失神するとは思わなかった。──予想以上に効いたのだ。
白銀少佐は、体格はそれほど目立ったものはないが、力の使い方が上手い。
この人とは格闘訓練はしていないが、彩峰を軽くあしらった事や今回の事で、格闘においても遙かに上の実力があることが、理解できた。
本当に──なんでも出来る人だ。
医務室へはあの子たちが運んでくれたのを、ぼんやりと覚えている。あの子たちはここにいない。
少佐は後から来る手はずだったので、訓練前に穂村という衛生兵に、もしこのような状況になったら、医務室から追い出すようにお願いしていたからだ。
──もしもの時を考慮してだったが、その布石は役に立ったようだ。
「さすがに少々痛みますが、問題ありません」
「そうか」
少佐は謝らない。当然だ。これは私が志願したことだし、謝られても、私は対処に困るだけだ。
少佐はこのような時、自分が楽になるだけの言葉は吐かない。──強い人だ。
「これであの子たちが真剣に考えてくれれば、安いものです」
「──そうか」
少佐は先ほどと同じ言葉を発した。けど、込められた感情はさっきよりも多かったように感じた。
──そして、私たちは、無言で見つめ合っていた。おそらく少佐も、この“作戦”を提案したときのことを考えているのだろう。
…………………………
「小細工のたぐいだが──」
数日前、連携訓練の目処がたったところで、少佐が私に命令ではなく、提案をしてきた。
その内容──あの子達がわずかな不始末でも起したら、私を叱責するという──を聞き、確かにあの子達には有効であるように思えた。
「単なる嫌われ教官であれば、ただ喜ばすだけだが、叱られるのが軍曹であれば、アイツ等も少しは必死になるだろう。きっと、今までのように、うやむやで終わらせることはないはずだ」
たしかに、私とあの子たちの関係を考えれば、有効な方法だと思う。──しかし、足りない。
「提案してもよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「叱責だけではなく、軍隊式の“修正”も付け加えるべきではないでしょうか」
言葉だけは生ぬるい。少佐はなんだかんだで甘いところがあるから、これは私から言い出さなければならないだろう。
──それに、これは、私が受けるべき罰だという気持ちもあった。結局、私は少佐の期待に応えられなかったのだから……。
私の提案に少佐は少し考え込み、答えた。
「──そのやり方は、俺も考えないでもなかったが……やるからには手加減できないぞ?」
手加減がわからないほどあの子達は素人じゃない。徹底的にやるからこそ効果があるのだ。
「かまいません」
「跡が残るかもしれないぞ?」
「そのときは、──貰ってくださいますか?」
ルール違反で叱られるのは承知で、ほんの少しだけ“私”の部分を出してしまう。
「何を言ってる?」
呆れたような少佐のその言葉に、一瞬、心が凍りつくかと思った。──が、
「“まりも”、お前はもう、俺が貰っている。今さら傷が残る程度で手放してもらえるとは、思わんことだ」
「は……はい……」
続けて発せられたその言葉で、涙で視界がぼやけた。
その言葉の内容も、とても嬉しかったが、この、完璧なほど公私に厳しい人が、勤務中なのに名前を呼んだ。
私のために少しだけ、自らに課した掟を、曲げてくれたのだ……。
──本当に、この程度の怪我など、安すぎる──
私は、頬にひとすじ、涙が伝わるのを感じた。
…………………………
<< 御剣冥夜 >>
11月13日 午前 国連軍横浜基地 教習室
昨日、さんざんに殴られた神宮司教官は、午前の座学をいつも通り進めている。
腫れ上がった頬に張ってある湿布が痛々しい。
教官は、昨日少佐に指摘された点については、一言も触れなかった。
──それが、一番堪えた。
自分たちで考え、解決しろということだろう。
それに、昨日のことは、何度も教官から指摘を受けたことだ。
いまさら繰り返して言うこともない、という含みもあるだろう。
──早急に、なんとかしなければ……!
私はいつしか、これまでにない必死さで、対策を考えていた。
…………………………
<< 神宮司まりも >>
11月13日 夜 国連軍横浜基地 神宮司まりも自室
今日の展開も、昨日と大した違いはなかった。
あの子達が失態を犯し、少佐が私を殴り、あの子達はやるせなさに涙を流す。
昨日と違う点は、全員、泣きながらも怒りの目で少佐を見ていたことだ。──昨日は驚きがまさっていたのだろう。
失態を犯すのは同じだったが、必死でなんとかしようとしてるのはわかった。この様子だと、予想より早く解決するかもしれない。──それは嬉しいことだが、残念な気持ちもある。
「まりも、まだ痛むか?」
「少しね。でも、大丈夫よ。これくらい、私の訓練兵時代は日常茶飯事だったんだから」
少佐──武は、昨日から連日、夜は私の元へ来てくれている。
解決するまではここに通うつもりと聞いて、私は少し(本当に、ほんの少しのはずだ)、あの子達の問題解決は当分先でいい、と思ってしまった。
「口の傷、また切れてしまったな」
「平気だって──あっ」
──ぺろっと口の端の傷を舐められた。
これだ。彼は、2人きりになると、あっという間に私を骨抜きにする。
彼が夕呼とも関係を持ち、他に何人も女がいるのも知っているが、そんな事は些事と思うようになっていた。
「武、今日も──優しくお願い」
「ああ」
こうなると、私達が交わす言葉は短くなる。
昨日、今日と相手をしてもらっているが、昼間の行動を償うかのように、優しく抱いてくれる。
いつものちょっと野性的な抱き方も好きだけど、これもまた別の次元で、格別に良い。
ふと、『厳しく殴った後、優しく抱く。それがヤクザの手口なんだって』と、昔、夕呼から聞いたことを思い出した。
図らずとも、今の状況がそうだが――この落差、結構クるわね……。
「武……」
そして、私はこの若い上官に、全てをゆだねた。
…………………………
<< おっさん >>
昨日と同様、優しさMAXモードで、まりもを何度もイかせてやった。今、まりもは、安心した子供のように、眠りについている。手慰みに、そのおっぱいを左手で適当に揉みながら、今日の事を考える。
まともにあたるとゾンビな女だが、こういう搦め手から攻めると、性欲以外の部分が満足するのか、あっさり落ちることがわかった。──精液に拘るところは変わらなかったが。
“前の”世界では気付かなかったまりもの弱点を、今回の作戦で気付けたのは僥倖だ。
──もはや、まりもは俺の敵ではない。今後、スケジュールで苦労することもないだろう。意図しなかったが、これは207の問題解決と優劣つけがたい戦果だ。
「ふっ……一昨日の柏木の事といい、俺の行いはよっぽど良いようだな」
207といえば、アイツ等にはずいぶん嫌われたようだ。今日のアイツ等の目は怒りに満ちていた。──同時に、必死さが見てとれた。
たしかに、まりもの言うとおり、予想より早く解決に向かうとは思う。叱責だけよりは、よほど効果があったようだ。
「だが、少々早まったかもしれんなぁ」
効果が高い分、嫌われ方も大きかったようだ。あれは憎しみに近いものがある。
まりもの覚悟に押される形で、提案に乗ってしまった所はあったが……いや、起こったことをぐだぐだ言っても仕方がない。アイツらを一流の衛士にすることが第一優先。それは元々考えていたことだ。
「まあ、厳しくしておいて好かれようなどと、ムシの良い事は考えちゃいない。せいぜい憎んでみるがいいさ……」
むしろ、俺は教官など嫌われてナンボだと思っている。まりものように、敬愛されつつ畏怖される存在が稀有なのではないだろうか。
寂しさが全く無いといえばウソになるが、アイツ等は、怒りを力に変えることができるやつらだ。その力で、きっと、俺を見返すことが出来るだろう。
ふと、まだぐっすり眠りこけているまりもを見て、昨日からの行為の最中に感じた、小さな違和感を思い出した。
「目がいつも以上にイってしまってたが……変な趣味に目覚めたんじゃないよな?」
いくばくかの不安を感じつつ、俺はまりものおっぱいを揉むのをやめ、そこに顔をうずめて、寝ることにした。
そしてその不安は、翌日に的中する。
行為中に、照れながら「武……私の顔、ちょっと強めにぶってみてくれる?」というまりもの発言に背筋が凍るとともに、開けてはいけない扉を開いてしまったことを理解させられるのは、また別の話になる。