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No.4017の一覧
[0] アレな使い魔(ゼロの使い魔・憑依系)[例の人](2008/09/04 19:03)
[1] プロローグ~A long time ago in a galaxy far,far away~[例の人](2008/08/30 14:39)
[2] 第1話~キスまでの距離~[例の人](2008/09/04 19:06)
[3] 第2話~An old maid, an old maid~[例の人](2008/09/04 19:15)
[4] 第3話~栄光への脱出~[例の人](2008/09/04 19:23)
[5] 第4話~EAT-MAN~[例の人](2008/09/05 18:05)
[6] 第5話~宴の支度~[例の人](2008/09/11 07:50)
[7] 第6話~Street Fighter~[例の人](2008/09/16 21:49)
[8] 第7話~宴の始末~[例の人](2008/09/21 13:29)
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[4017] 第2話~An old maid, an old maid~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/09/04 19:15
俺は大草原に置き去りにされた後、仕方ないから歩いて学院に向かった。
ルイズちゃんから俺へ課された愛の放置プレイの一環だと思えば辛くない。
愛だからこそ、試練だと思って歩く。
愛ゆえに、人は悲しまねばならぬ。
愛ゆえに、人は苦しまねばならぬ。
こんなに辛いのなら、愛などいらぬ!
お師さん、俺に愛と温もりをもう一度……。
とか、どうでもいい事を考えながら俺は歩いた。
歩いて歩いて歩きまくった。
時々迷ったりもして、結局着いたのは大体一時間少々してから。
かなり長い距離だったが、ルイズちゃんに会うためならば苦にならない。
俺の行く手は何人たりとも遮れないのだ。
そしたら今度は学院手前にある門の辺りで、イカツイ体格の衛兵さんに声をかけられた。
明らかに僕体育会系ですって顔してる衛兵さんだ。
こういう人は口より先に手が出るので、慎重に対応しなければいけない。

「おい、そこのお前。ちょっと待て」
「フヒヒ!? な、何でしょう!?」

慌ててはいけない。
思わず反射的にフヒヒとか言ってしまったが、まだ慌てるような時間じゃない。
仙道さんは何とかしてくれないから自分で解決だ。

「ここから先はトリステイン魔法学院の私有地だ。許可なく立ち入る事はできんぞ」
「あ、えと、いや、俺は関係者ですから!」
「関係者だぁ?」

明らかに不審そうな顔でこっちを見る衛兵さん。
野郎に見つめられても全然嬉しくない。
むしろキモイ。
不愉快この上ない。
男は死ね。
俺以外の男はこの世から消えろ。
あ、そうだ。
男で思い出したが、今後ワルドに会ったらその時は速攻で亡き者にしてくれる。
婚約者だとかふざけんなよ。
ルイズちゃんは俺だけのもんだ。
腕じゃなくていっそ、その首を切り落としてくれるわ。
首は塩漬けにした後でシルフィードの餌にでもしてやる。
……でも正面から戦うのは、ガンダールブの力でもさすがに厳しいな。
原作でもかなり苦戦してたみたいだし。
となると、絡め手でいくのが上策か。

「ふーむ、作戦は……」
「お前が関係者なら、名前は何て言うんだ? 一応上に問い合わせてやる」
「毒殺……。いや、アルビオン行く途中で魔力切れになった時に、船の上から空に落とせば……」
「おい、聞いてんのかお前? おい、コラ」
「クク……。さすがにあの高さから落ちれば助かるまい……」
「聞こえないのか、おい」
「これでルイズちゃんは俺だけのもんだ……」
「おーい……」
「あ? 何だよ?」

ごちゃごちゃうるさいやつが目の前にいる。
怪訝な顔をしてこっちを見ている。
何だこいつ?
俺とルイズちゃんの幸せ家族計画を邪魔する気か?

「だから、名前だよ、な、ま、え! お前の名前を聞いてるんだよ!!」
「え? 俺の名前?」

あ、そうか。
思い出した。
この人衛兵だった。
いかんな、ちょっと考え事に没頭しすぎていた。

「俺の名前。つまり貴方はそれが知りたいんですね?」
「さっきから何度もそう言ってるだろうが!」
「名前、か……」

俺は遠い目をして空を見つめた。
そして、軽く微笑んで告げる。

「名乗るほどの者ではありませんよ」

……決まった。
この台詞、ずっと前から言ってみたかったんだよな。
きっと、男が死ぬまでに一度は言ってみたい台詞ランキングの上位に位置する言葉なはずだ。
ちなみにこの他にも「ここは俺に構わず先に行け」や、タバコを片手に「あともう少しだけ眠らせてくれ……」等様々なバリエーションが存在する。
男なら誰もが憧れる渋い台詞なのだ。
だから俺だけじゃないよ?

「ふざけんなよ……」

あ、やべぇ。
衛兵さんがプルプルと産まれたての仔馬のように震えだした。
今にもテレビの前のみなさんが号泣せんばかりの震えっぷりですよ。
これはきっと怒り心頭ですね、分かります。

「お前……」
「また会おう、明智君!!」

俺は高笑いをしながら、衛兵さんが何か言う前に学院の敷地内へと走り去った。
出鼻を挫かれた衛兵さんは、固まったまま動けない。
見事に逃走成功。
こちとら逃げ足だけは結構自信があるんだぜ。
ざまーみろ、体育会系め。
貴様のような足の臭そうな男といつまでも付き合ってられるか。
やっぱり、どうせ話すならかわいい女の子とがいい。
うふふ、捕まえてごらんなさぁい!
あははは、待てよこいつぅ!
俺は脳内でルイズちゃんと追いかけっこする姿を妄想しながら逃げた。
しばらく走って、気がつけば俺は塔と塔の間にある中庭にいた。

「しかし、これからどうしよう?」

立ち止まってふと考える。
よくよく考えたら、俺ルイズちゃんの部屋知らねーよ。
塔がいくつかあって、どれが本塔でどこが住居だとか分かんねーよ。
どうすんだよこの状況。
どうすんだよ、俺?
そう思っても俺は慌てない。
現実世界では、普段からエロゲばっかりやってた俺である。
何か困った時は頭に選択肢を思い浮かべて考えてみるのだ!
三択もあれば十分だ。
というわけで、いってみよう。
まずは一番。関係者っぽい人を探して聞く。
そして二番。大声を出してルイズちゃんを呼ぶ。
最後に三番。犯人は美樹本さん。

「もちろん犯人は美樹本さん!!」

俺は中庭で叫んだ。
しかし返事はなかった!

「分かってたよ……」

とりあえず俺は、誰か人がいないか探して歩き回る事にした。
中庭をあっちに行ったりこっちに行ったりと、右往左往しながら歩き回る。
……誰もいない。
だだっ広い学院だし、エンカウント率も低いのか。
いや、もしかしたらただ単に授業中なだけか?
授業中だとしたら、下手すればあと一時間くらいは人がいないやも知れぬ。
十分ほど歩いて、さすがにどうしようかと思い始めた頃。

「おや、あれは……?」

俺は学院の裏手にある森に向かってこそこそと移動する人影を発見した。
金髪の巻き髪に、フリルのシャツ。
遠目でも分かるあの姿は間違いない。
ゼロの使い魔界のヤムチャポジションと噂のあいつは……。

「おーい、ギーシュ!」

俺は彼の名前を呼びながら走り寄った。
ギーシュがびくりと反応して振り向く。

「な、何者だい君は!?」
「いやぁ、久しぶりだなギーシュ!」
「え? だ、誰? 僕の知り合い……かい? 見たところ君は平民のようだが……?」
「何言ってんだよギーシュ! 俺だよ俺! 俺、俺! あの時の俺だよ!!」

ギーシュの肩をバンバン叩く。
いかにも親しげにやるのがポイントだ。
それにしてもこいつ、バラを胸ポケットに挿すとか無駄に腹立つな。
裸に剥いて尻に挿し直してやろうか。

「授業をこそこそ抜け出してどこに行くんだギーシュ? もしかしてデートか? この色男! 死ね」
「な、何故それを!? し、しかも最後死ねとか言ってなかったかい……?」
「はははは」
「笑ってごまかすなよ!?」

どうやらデートは図星のようだ。
こそこそしてるって事は、恐らく相手はケティちゃん辺りか……。

「ところでギーシュ、ちょっと聞きたいんだけど!」
「だから君は誰なんだい!?」
「いや、俺だよ俺! そんな事より、ルイズちゃんの部屋ってどっち行けばいいんだ?」 
「え、ルイズ? 彼女の部屋に君は用でも……。あれ、そういえば君はルイズに召還された使い魔に似ているような……」
「黙れ。聞かれた事だけに答えろ。無駄口叩くな。モンモランシーに言いつけるぞ」
「ひぃッ!? ル、ルイズの部屋だったね!? あの塔を上って……」

こうして、見事ルイズちゃんの部屋への行き先をゲットした。
場所さえ分かれば話は早い。
塔に入って石造りの階段を四段飛ばしくらいで駆け上がり、俺はすぐにルイズちゃんの下へと向かった。
塔も階段も石造りだけあって、やたら足音が反響する。
大声を上げたら反響音が凄そうだ。

「フハハハハハハハ!」

試しに大きな声で笑ってみたら、山彦のように俺の声にはエコーがかかった。
……意外と爽快だ。
いや、笑ってないで急がねば。
ルイズちゃんが俺を待っている!

「到着~!」

階段を上り、廊下を走り抜け、見事ルイズちゃんの部屋の前まで辿り着いた俺。
この扉の向こうにルイズちゃんがいる。
ルイズちゃん、ルイズちゃん。
俺のルイズちゃん!
あぁ、心臓の鼓動が早鐘の如く鳴り響く音が聞こえる。
感動のあまり口から尿が出てきそうだ!

「ルイズちゃぁ~ん!!」

ドアのノブに手をかけて、ゆっくりと回して……。

「あれれ?」

ドアは開かなかった。
どうやら留守のようだ。
留守なら仕方ない。
戻って来るまでゆっくり待つか。

「とでも言うと思ったか? 待てねーよ!!」

俺は心の中の声に罵声を浴びせると、ドアから少し距離を取って離れた。

「アンロックゥ!!」

叫びつつ、ルイズちゃんの部屋のドアにタックルする。
割といい音がしてドアは開いた。
これぞ俺流魔法アンロック。
決して強引にドアを開けただけなどとは言ってはいけない。
お兄さんとの約束だ。

「突・入!」

開脚前転をしながら部屋の中へと勢いよく転がり込む。
中央で三点倒立をして、数秒経過してから立ち上がる。
開けたままだったドアを閉め、鍵をかけ直す。

「ふぅ……」

俺は額に流れる汗を腕で拭った。
一仕事を終えた後の、男の汗だ。
部屋に入ったからには、後はルイズちゃんを待つだけだ。
俺は古来よりの作法に則って、彼女を迎える事にした。
──そして数十分後。

「きゃああああああッ!?」

ベッドの上で全裸で正座していた俺を見て、帰ってきたルイズちゃんが悲鳴を上げた。
ちょっと興奮した。


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