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No.4017の一覧
[0] アレな使い魔(ゼロの使い魔・憑依系)[例の人](2008/09/04 19:03)
[1] プロローグ~A long time ago in a galaxy far,far away~[例の人](2008/08/30 14:39)
[2] 第1話~キスまでの距離~[例の人](2008/09/04 19:06)
[3] 第2話~An old maid, an old maid~[例の人](2008/09/04 19:15)
[4] 第3話~栄光への脱出~[例の人](2008/09/04 19:23)
[5] 第4話~EAT-MAN~[例の人](2008/09/05 18:05)
[6] 第5話~宴の支度~[例の人](2008/09/11 07:50)
[7] 第6話~Street Fighter~[例の人](2008/09/16 21:49)
[8] 第7話~宴の始末~[例の人](2008/09/21 13:29)
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[4017] 第6話~Street Fighter~
Name: 例の人◆9059b7ef ID:6d7552d7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/09/16 21:49
俺ってカッコイイ。
もう一度言おう。
俺ってカッコイイ。
女の子のピンチに颯爽と登場するヒーロー。
それが俺。
これはもう、シエスタちゃんは俺に惚れるしかないんじゃね?
惚れさせてしまえばこっちのもの。
後は薔薇色の生活が待っている。
La vie en roseってやつですね。
うほッ!
こいつはおいしすぎるイベントだ!
燃えてきたぜ!

「そこの金髪糞坊主! か弱い女の子をいじめるとは笑止千万! シエスタちゃんに代わって俺が相手だ!!」

俺はシエスタちゃんとギーシュの間に体を割り込ませると、食堂中に聞こえるように大声で宣言した。
声を聞きつけて、一体何事かと、ちらほら人が集まってくる。
これで第一の布石は打った。

「才人さん!? ど、どうして……?」
「女の子を助けるのに理由なんていらないよ。ここからは俺に任せておくがいいさ」
「でも……」
「デモもストライキもないよ。さぁ、シエスタちゃんは下がって。俺が全て解決してあげよう」
「才人さん、ありがとうございます。本当にありがとうございます……」
「いいっていいって。気にすんな」

何度もお礼を言うシエスタちゃんを後ろへ下がらせ、改めてギーシュに向き直る。
ギーシュは何も言わない。
どうやら、事態が急展開すぎて付いていけていないようだ。
情けないやつめ。

「おい、いつまで固まってるんだギーシュ?」
「……ハッ!? き、君は一体……?」

俺が声をかけると、ようやくギーシュは動き出した。
反応速度が鈍いな。
噛ませ犬の小物臭がプンプンするぜ。
やはり俺の相手ではないようだ。

「俺か? 俺は俺だよ。俺、俺」
「そ、その物言いは……。確か、先日会ったような……? いや、間違いない。やはり君はルイズの使い魔の平民では……」
「細かい事は気にすんな、二股坊主」
「……なッ!? ふ、二股だって!?」
「文句あるのか? そんなんだからフラれるんだよ」

ギーシュの友人達がどっと笑った。

「そうだぞギーシュ! 確かに二股してたお前が悪い!」

ギーシュの顔にさっと赤みが差した。
体は小刻みに震えている。
怒ってますねー。
これは確実にギーシュ君は怒ってますねー。
いいぞ、どんどん怒れ。
第二の布石完了。

「き、君が何者かは今は置いておこう。それよりも、だ。聞き間違いだと思うんだが、君はさっきのメイドに代わって僕の相手をするとか言ってなかったかい?」
「聞き間違いではないぞ。その通りだ」
「……それはつまり、貴族である僕に対して喧嘩を売っていると解釈してもいいのかな? 見たところ平民の君が、この僕に」

ギーシュは、低い声で言った。
俺は顔の前で、チッチッチと人差し指を振りながら答える。

「喧嘩? それは少し違うな」
「どう違うと言うんだい?」
「喧嘩じゃなくって、俺はお前に決闘を申し込んでいるんだよ!」
「なッ!?」

ふははははは!
ギーシュよりも先に決闘を宣言してやったぜ!
ちょっとだけ快感だ。

「平民風情が貴族に決闘を申し込む? 正気かい、君?」
「グダグダうるせーよ。俺が怖いのか? 受けるのか受けないのかどっちかさっさと言え」
「……どこまでも失礼な平民だね。あの『ゼロのルイズ』に相応しい使い魔だよ。いいだろう、決闘を受けよう。無礼な平民に礼儀を教えてあげようじゃないか。ちょうどいい腹ごなしだ」

ギーシュは勢いよく椅子から立ち上がった。

「さ、才人さん、殺されちゃう……。貴族を本気で怒らせたら……」

ギーシュの剣幕に怯えたシエスタちゃんは、走り去っていってしまった。

「……計画通り」

走り去るシエスタちゃんの背を見ながら、俺は小さく呟いた。
最後の布石も完了した。
これで俺がどこでどんな手を使ってギーシュに勝とうとも、シエスタちゃんは後で『結果』だけを知る事になる。
そのために、あえて大声で煽って少数ながらもギャラリーを集めた。
条件は全てクリアされた。
完璧で一部の無駄も隙もない作戦だ。

「では、君との決闘場所はヴェストリの広場で……」
「決闘を受けたなギーシュ!? 今すぐ決闘開始だ!」
「え? ちょ、ちょっと、君? だから、まずはヴェストリの広場に……」

ギーシュが何か言っているが気にしない。
決闘はギーシュが受諾した時点で既に開始されている。
俺はいつだって常在戦場の心得だ。
原作通りにヴェストリの広場まで行って、ちんたら決闘なんてやってられるか。
そもそも俺に宿っているガンダールブの能力は、召還当初のゴタゴタで未だ誰にもバレていない。
広場で決闘なんてしてしまったら、教師陣に能力が発覚してしまう。
わざわざ衆人環視の人目の中で、己の力を宣伝するなど愚の骨頂である。
切り札は最後の最後まで伏せておき、効果的な場面で使うからこそ真価を発揮するのだ。
よって、この金髪坊主はこの場でこっそりと、かつ速やかに処刑決定です。
食堂の一角の、ちょっとした喧嘩騒ぎ程度で終わらせてやる。
俺は素早くギーシュの背後に回り込むと、さっきまでやつが座っていた椅子の背もたれ部分を掴んだ。
その瞬間、自分の身体能力が上昇するのを確認。
体中に力が漲ってくる。
恐らく十キロ以上はあるであろう、重厚な造りの椅子を片手で軽々と持てるすばらしさ。
予定通りだ。
ガンダールブのルーンとは『武器の使用法をマスター及び、武器を使用する者の身体能力を底上げする事』である。
この場合の武器とは、文字通りの武器や兵器だけではない。
対象物を持った者がそれを『武器』だと強く認識さえしていれば、その効果は発揮されるのだ。
分かりやすく言えば、喧嘩する時にバットを持ったヤンキーは、そのバットを使って野球をしたりはしない。
バットは凶器として使用され、その身を返り血で染めるだけだ。
中には釘バットのように、最早野球が一切関係ないようなバットすら存在する。
本来の用途とは違っていても、バットは目的次第で武器に早代わり。
つまり、普段プロレス番組で椅子を武器として使用されている場面を見慣れている俺からすれば、椅子だって立派な武器なのだ。
屁理屈だって?
そんなもん知るか!!
現にルーンの効果が発揮されてるんだから問題ない!
事前にルイズちゃんの部屋で色々研究してた成果なんですけどね。
思い込みさえすれば、どんな物でも武器となるって素晴らしい。
まぁ、その思い込んで強く認識するってのが中々難しいんだけども。
それはともかく、俺は掴んだ椅子を片手で持ち上げると呆然としているギーシュに向かって振り上げた。

「オラァ!」

気合一閃。
ギーシュは椅子を顔面で受け止めて後方へと吹き飛んだ。
衝撃で椅子はバラバラになり、木片が辺りに飛び散る。

「まだまだ行くぞー」

別のテーブルから椅子を持って来て掴み、倒れたままのギーシュへと近付く。
ギーシュはモーゼの十戒のように割れた人垣の真ん中で、盛大に鼻血を垂らしながら呻いていた。

「き、君ぃ!? 卑怯らろ!?」

鼻血のせいか、それとも歯でも折れたか。
呂律が上手く回っていないのが滑稽極まりない。

「ほぅ? まだ意識があるのか。こいつは重畳。しっかり止めを刺してやろう」
「あ、ああ……何をするれろ!?」

再びイスを振り上げ、倒れたままのギーシュに追撃を──。

「馬鹿犬! あんた、ここで何やってんのよ!?」

追撃をしようとして、静止した。

「その声は僕のルイズちゃん!!」
「私はあんたのもんじゃないわよ!?」

声がした方に振り向くと、そこにはルイズちゃんが仁王立ちしていた。
思いがけない場面でのヒロイン登場に、俺は興奮してきましたよ。
おっと、椅子を持ったままじゃかっこつかないな。
椅子を下ろして、ルイズちゃんに爽やかに微笑みかけてみる。

「いやぁ、今日もかわいいね! ルイズちゃん!」
「そんな話はしてないわよ! 何で部屋に閉じ込めておいたあんたが、食堂で喧嘩してんのよ!?」
「ノンノン。これは喧嘩じゃなくて決闘だよレディ? アンダスタン?」
「喧嘩も決闘も一緒でしょうが!?」

あ、やばい。
ルイズちゃんが何故だか知らないけど怒ってるぜ。
怒られている理由はさっぱり分からないが、何とかしなければ。

「ルイズちゃん」

俺は真剣な声でルイズちゃんに呼びかけた。
じっと、目を見つめる。

「な、何よ……」

うろたえるルイズちゃん。
かわいい……。
このまま食べてしまいたい。
揉んだりこねたりしたい。
舐めたい吸いたい。
未発達な体を、思う存分俺が……。

「そ、そのおっぱいを……」
「はぁ?」

……って、そうじゃない。
おっぱいは違う。
思わず言ってしまったが違うんだ。
真面目にしなければ。

「えーと、実はね。ここに倒れているギーシュとかいうアホ貴族が、俺に喧嘩売ってきたんですよ。しかも平民だの、ゼロのルイズにお似合いの使い魔だの、ルイズちゃんは貧乳だのと言いたい放題。これはもう、俺はルイズちゃんの使い魔として名誉のために戦わないといけない場面でありまして」
「わ、私が、貧……乳……?」

額に血管を浮き上がらせて、静かに怒るルイズちゃん。
地響きが聞こえてきそうな雰囲気だよ。
背中から変なオーラが立ち昇ってるよ。

「い、いや、僕は別に貧乳は言ってな……」
「噴ッ!」
「ゴフゥ!?」

ギーシュが何か言おうとしていたので、とりあえずボディに蹴りを入れておいた。
あばら辺りに割といい角度で入ったようで、顔を紫色にしてギーシュは悶絶している。

「あら? 今、倒れてるギーシュが何か言いかけなかった?」
「気のせいですよ、ルイズちゃん」
「そう……。とにかく、ギーシュが私を馬鹿にしたのはよく分かったわ」
「ルイズちゃんを馬鹿にするなんて許せませんよねー」
「平民が貴族に勝てるはずないし、あんたの事だからどうせ不意打ちでもしたんでしょうけど、それは別にいいわ。この際だから、喧嘩するなら徹底的にやってしまいなさい。私が許可するから」
「ラジャーです!」

ルイズちゃんからお許しが出たので、このままギーシュの息の根止めてくれようぞ。
二股野郎に天誅だ。
そうだ、これは天の裁きなのだ。
ただでさえ彼女いる分際で他の子に手を出すとか、マジで死ねよギーシュ。
あぁ、もう腹が立ってきた。
この世の女は全員俺のもんだ!
俺が最強だ!
最強の俺にこそ女の子はなびくべきなのだ!
俺は未だ倒れたままのギーシュに馬乗りになると、マウントポジションをがっちりとキープしつつ両の拳を固めた。

「ちょ、やめ……ギャアアッ!?」
「波動拳! 波動拳!」

適当に叫びながらギーシュの顔面を殴る。
ギーシュが何か言ってるようだが気にしない。
あれは幻聴だと思う事にする。

「昇竜拳! 昇竜拳! 昇竜拳!」
「ぴっぺ、ぷぅ!?」

幻聴を無視して拳をぶつける。
殴る。殴る。殴る。
美形の男は人類の敵だ。
憎しみを込めて殴り続ける。
時々ビンタも混ぜる。
ギーシュの口からは北斗神拳で秘孔を突かれた雑魚キャラのような、そんな感じの変な声が聞こえてくるけど気にしない。
俺は最強だから気にしない。

「覇王翔吼拳!!」

某サカザキさん家の超必殺技で締めだ。
俺の拳がギーシュの顔面に陥没した。
ギーシュの体は一度大きく痙攣し、やがてピクリとも動かなくなった。
口から泡まで吹いている。
蟹みたいですね、ギーシュ君。

「うわーい、勝ったぞー。ばんざーい」

立ち上がって万歳三唱だ。
勝利のポーズ、決め!
拳から赤い液体が垂れているけど、これはきっとケチャップだから問題ありません。
それに、一応手加減したからまだギーシュ君は生きてます。
だから問題ありません。
だから問題ありません。
大事な事だから二回言いました。

「おっと、一つ忘れていたぜ」

倒れているギーシュのポケットから薔薇の形を模した小さな杖を抜き取る。
そしてギーシュをうつ伏せにして、準備完了。
杖を先端からギーシュの尻に向かって、思い切って刺してみる。
挿すとも言う。
ズブリ、と嫌な音がして杖は一気に根元までめり込んだ。
具体的な場所はあえて伏せるが、とにかくめり込んだ。

「アッー!!」

ギーシュの切ない悲鳴が、食堂に響き渡った。
……さて、後始末をしておかなければ。

「おーい、誰かここの金髪坊主をモンモランシーちゃんのとこに運んであげなさい!」

俺の言葉に、ギーシュの取り巻き達が慌ててギーシュを担ぐと、人垣の向こうに消えていった。
尻に薔薇の形をした杖を挿している男を担ぐ貴族とは、何ともシュールな光景だ。
ギーシュの怪我は、水の秘薬とかでどうせすぐに全快するんだろうなぁ……。
さすがはファンタジー。
ビックリな世界ですね。

「それにしたって、私が貧乳ですって……? うふ、うふふふふ……」

背後ではルイズちゃんが怪しく笑ってるが気にしない。
あれは気にしたら負けだ。
そんなこんなで、とりあえず決闘は俺の勝利で終わったのだった。
シエスタちゃんフラグ、見事ゲットだぜ!


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