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No.40286の一覧
[0] 習作 civ的建国記 転生 チートあり  civilizationシリーズ [瞬間ダッシュ](2018/05/12 08:47)
[1] 古代編 チート開始[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[2] 古代編 発展する集落[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[3] 古代編 彼方から聞こえる、パパパパパウワードドン[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[4] 古代編 建国。そして伝説へ 古代編完[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[5] 中世編 プロローグ その偉大なる国の名は[瞬間ダッシュ](2014/09/09 17:59)
[7] 中世編 偉大(?)な科学者[瞬間ダッシュ](2014/09/14 19:26)
[8] 中世編 大学良い所一度はおいで[瞬間ダッシュ](2014/09/15 17:19)
[9] 中世編 ろくでもない三人[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:47)
[10] 中世編 不幸ペナルティ[瞬間ダッシュ](2014/09/26 23:47)
[12] 中世編 終結[瞬間ダッシュ](2014/10/09 20:55)
[13] 中世編 完  エピローグ 世界へ羽ばたけ!神聖オリーシュ帝国[瞬間ダッシュ](2014/10/19 21:30)
[14] 近代編 序章①[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:38)
[15] 近代編 序章②[瞬間ダッシュ](2016/01/16 20:53)
[16] 近代編 序章③[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:15)
[17] 近代編 序章④[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:42)
[18] 近代編  追放[瞬間ダッシュ](2016/01/16 21:57)
[19] 近代編 国境線、這い寄る。[瞬間ダッシュ](2015/10/27 20:31)
[20] 近代編  奇襲開戦はcivの華[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:26)
[21] 近代編 復活の朱雀[瞬間ダッシュ](2016/01/16 22:47)
[22] 近代編 復活の朱雀2[瞬間ダッシュ](2016/01/22 21:22)
[23] 近代編 復活の朱雀3[瞬間ダッシュ](2016/01/29 00:27)
[24] 近代編 復活の朱雀4[瞬間ダッシュ](2016/02/08 22:05)
[25] 近代編 復活の朱雀 5[瞬間ダッシュ](2016/02/29 23:24)
[26] 近代編 復活の朱雀6 そして伝説の始まり[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:33)
[27] 近代編 幕間 [瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[28] 近代編 それぞれの野心[瞬間ダッシュ](2017/02/07 22:51)
[29] 近代編 パナマへ行こう![瞬間ダッシュ](2017/04/14 22:10)
[30] 近代編 パナマ戦線異状アリ[瞬間ダッシュ](2017/06/21 22:22)
[31] 近代編 パナマ戦線異状アリ2[瞬間ダッシュ](2017/09/01 23:14)
[32] 近代編 パナマ戦線異状アリ3[瞬間ダッシュ](2018/03/31 23:24)
[33] 近代編 パナマ戦線異状アリ4[瞬間ダッシュ](2018/04/16 01:31)
[34] 近代編 パナマ戦線異状アリ5[瞬間ダッシュ](2018/09/05 22:39)
[35] 近代編 パナマ戦線異状アリ6[瞬間ダッシュ](2019/01/27 21:22)
[36] 近代編 パナマ戦線異状アリ7[瞬間ダッシュ](2019/05/15 21:35)
[37] 近代編 パナマ戦線異状アリ8[瞬間ダッシュ](2019/12/31 23:58)
[38] 近代編 パナマ戦線異状アリ 終[瞬間ダッシュ](2020/04/05 18:16)
[39] 近代編 幕間2[瞬間ダッシュ](2020/04/12 19:49)
[40] 近代編 パリは英語読みでパリスってジョジョで学んだ[瞬間ダッシュ](2020/04/30 21:17)
[41] 近代編 パリ を目前にして。[瞬間ダッシュ](2020/05/31 23:56)
[42] 近代編 処刑人と医者~死と生が両方そなわり最強に見える~[瞬間ダッシュ](2020/09/12 09:37)
[44] 近代編 パリは燃えているか(確信) 1 【加筆修正版】[瞬間ダッシュ](2021/06/27 09:57)
[45] 近代編 パリは燃えているか(確信) 2[瞬間ダッシュ](2021/06/28 00:45)
[46] 近代編 パリは燃えているか(確信) 3[瞬間ダッシュ](2021/11/09 00:20)
[47] 近代編 パリは燃えているか(確信) 4[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:04)
[48] 近代編 パリは燃えているか(確信) 5[瞬間ダッシュ](2021/12/16 00:02)
[49] 近代編 パリは燃えているか(確信) 6[瞬間ダッシュ](2021/12/19 22:46)
[50] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 1[瞬間ダッシュ](2021/12/31 23:58)
[51] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 2[瞬間ダッシュ](2022/06/07 23:45)
[52] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 3[瞬間ダッシュ](2022/12/13 23:53)
[53] 近代編 トップ賞は地中海諸国をめぐる旅、ただし不思議は自分で発見しろ 4[瞬間ダッシュ](2024/01/04 19:20)
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[40286] 近代編 復活の朱雀2
Name: 瞬間ダッシュ◆7c356c1e ID:95ce0ae2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/01/22 21:22

神聖オリーシュ帝国の首都オリヌシは、帝国最古の都市にして文化、経済、生産、科学の中心地である。豊かな漁場に支えられた食糧事情を背景にした人口によって、都市そのものを数値化した場合、首都オリヌシだけで他3都市に匹敵する都市力を発揮する。また、その港からは四方の海を越えて他文明国家の都市へと接続する航路を多数持つことから、名実ともに帝国の要と称される巨大都市だ。
そして、そのような栄光ある帝都の中央を貫く大通りに、彼らは体格の良い馬に騎乗して行進していた。

「…………」

誰もが押し黙っている。見れば、彼らは皆若かった。初々しい青年達が一様に口を真一文字に結んで、ただただ前方を見据えている。幾多の馬の蹄が舗装された道を一定のリズムで踏みならし、馬上の兵士が腰から下げている鋭剣と馬具の金具とがぶつかり合い、それらが重なり合うことで奇妙なリズムを生む。普段通りであるならば、ここは多くの人でにぎわう大通りだ。だがしかし、今はただならぬ緊張感だけが漂うだけで、出歩く人の姿はほとんどない。みな、アステカ侵攻が原因だった。唐突な開戦の一報を聞いてある者は国外退去を目論んで港へ殺到し、そうでないものは家に引きこもっていたのだ。
天災を、息を潜めてやり過ごそうとする静寂が支配する中を、馬に乗った身なり整った兵士達が粛々と進む姿は、勇壮さと緊迫感がブレンドされた不可思議な雰囲気を振りまいていた。

「近衛騎兵隊だ……」

通りに面した商店の窓から外の様子を覗いていた者が誰に聞かせるでもなく呟いた。立派な軍馬の姿とソレに負けない煌びやかな装飾を施された若者達――――全員が貴族の家に生まれた――――を見て断言したのだが、それは正解だった。
神聖オリーシュ陸軍が誇る4連隊の1つで唯一馬に乗る事が許された部隊こそ、紛れもなく今この者の前を進む青年達の正体だった。セッキョー州から産出される良馬で構成されたかの部隊は、他の部隊の数倍の速さで行軍することが可能とする。
さらに隊員が全員、由緒正しい名家出身とあって、近衛の中でも最も見栄えがする花型でもあった。
もっとも、その俊足さと武力を示した例は唯の一度もない。建国以来外国軍との戦いを行なった事がない上に、普段はもっぱら都市に駐留して警察、と言うよりも儀礼用の兵としての役割しかこなしてこなかったからだ。かつては僻地で徒党を組む賊を討伐するという事もあったが、それも今は昔。「人が切れぬ宝剣」と揶揄される事もあるほどだ。


さて、今回実に初めてその実力を内外に示す機会が巡って来た訳なのだが、彼らの顔はみな緊張で固まっていた。せいぜい泥棒を相手にするのが常のまだまだ年若い彼らには、来るべき戦いの気配に否が応でも身が固くなっていた。しかし、その中で唯一ごく自然体で余裕溢れる者が一騎。いや、むしろ不敵な笑みを浮かべていたのは先頭を行く近衛元帥だった。

「閣下……?」
「…………フン」

その隣に侍る元帥の秘書官の青年が、なぜそれほどまでに余裕があるのかを尋ねたくなり、ついつい声をかけた。元帥の顔はむしろ嬉しそうに笑いかける。

「……貴様は確か、子爵家の三男だったな」
「はい。その通りですが……?」
「運が良い。ああ、実に運が良いぞお前は」
「?」

元帥は慈愛に満ちた表情と声色でそう語りかけた。
まだ生きて四半世紀にも満たない彼は、その発言の意味する所に疑問を抱いた。彼が入営してからまだ僅か数年。その僅かな期間に決死の戦いに駆り出される事は、きっと不幸なことに違いないとさえ思った。これが平時ならば、もうしばらく軍務をこなした後、まとまった額の退職金を受け取って何らかの商売を興すのが、この部隊に配属された者達の運命であり、権利だった。だから決して運が良いハズがない――ハズであると思ったのだ。

「すぐに解る」

理解が及ばない言葉に混乱を深める青年秘書官に、そう元帥は含みを持った笑顔で締めくくる。
世間一般的に言えば、外敵を討ち払った者達は皆どこの国でも英雄や勇者として崇められる。万雷の拍手で迎えられ、花が舞う街道を整然と行進する姿は、とても胸が躍るものなのだろう。子供が出来れば、彼らに寝物語として語る自分と、目を輝かせて聞き入る子の姿がありありと見えるようだった。そして英雄としてその人生を終え、その名を歴史に刻む――――それは堪えようもなく甘美で魅力的な未来だ。…………だがそれは勝った場合だ。負ければ、その後の運命はどうなるか――――それは向こうの扱い次第だろう。

「…………はっ」

結局、副官は暫く考えた後、考えるのを止めることにした。既に元服を迎えた大人であるとはいえ、近衛元帥がどのような意図で今の言葉を発したのかを詳細に察する能力は彼には無かった。だが、彼は若者らしい実直で素直な思考で以って、少なくとも自分達が努力しなければならない事だけはきちんと理解していた。

(敵を追い払う、そして国を守る)

それが自分達に課せられた何よりも重い責務であることを再度胸に刻み、青年は再び前を向いて馬のたずなを握りしめた。ヒヒンと、馬が主人の覚悟を感じたのか、小さく嘶いた。
空は、来たからやってきた雲が天蓋のように広がっていた。




中央の大通りをゆっくりと、その姿を首都の住民たちに見せつけることで励まそうとするかのように普段以上に遅い足取りで通り抜けた騎兵隊一同は、ようやく港に到着した。船着き場には外国に向けて出発する船がいくつか停泊しているハズであったが、そのほとんどが積み込みを終えると早々に離れて行く。みな、戦に巻き込まれまいとしているのだ。そして辺りには、船に乗れなかった市民が途方に暮れている姿が多数見受けられた。その光景に多くの兵がショックを受け、自らの使命を再び強く自覚するのだった。
祖国とその民の為に戦う勇気を得た彼らの目に、銅の海鳥をかたどった神聖オリーシュ帝国の国旗を掲げた船が映る。ここから彼らはこの船に乗って一度大陸の北側、大山脈で分断された向こう側の都市テンプレへと海路で渡る。その後は陸路でセッキョーに入る予定だった。
何のセレモニーもなく、戦地に赴こうとする青年達。人生の半分も生きていない彼らがいざ行かんと覚悟を決めたその時だった。


「我々はぁ!ウルル公国から派遣された義勇軍である! それなりの扱いをしてもらおう!!」
「いや、そんな急に言われてもこっちにだって都合がある訳で……」
「聞けばお国の一大事とか。ならば我らの力が必要な時! 早々に上に取り次ぎたまえ!!」


港の一角。多くの船が出入りするかなり大きな港であるが故に最初は目に付かなかったが、そこには今の状況にあってはどうにも場違いな者達が存在し、そして場違いな事を言っていた。
まず初めに目に入るのが、半裸男の集団である。それがわらわらと、船着き場の決してせまくは無い範囲にたむろしているのだ。この連中は田舎から上京してきた田舎者丸出しでキョロキョロと辺りを見回し、ひそひそと遠目で見ているオリーシュ人達にメンチを切っている。はっきりいってどこかの蛮族が集団で紛れこんできましたという体だ。
次に、そんな彼らの側に立って、黒眼黒髪の服をしっかり着こんだ少年がいる。外見は一番まともであるが、言っている内容がぶっとんでいた。曰く、自分達は義勇軍であるから、国の上層部にかけあえと言っている。それなりに分別がつく年頃であるにもかかわらずのこの発言内容には、周囲の大人達が痛々しいものを見るような視線を向けていた。
近衛元帥率いる騎兵隊がこの戦意を滾らせてしかるべきという場面で出くわしたのは、そんな異常な人間とソレを囲む野次馬達だった。

「あれはなんだ?」
「聞いて参ります。――――おい! 何の騒ぎだ! ええいそこをどけ!元帥閣下の御前だ!」


秘書官が馬を走らせ、騎乗したまま野次馬によって作られた人垣をかき分けるようにして入って行った。突然現れた近衛騎兵に慌てた野次馬がバラバラと道を開けていく。するとほどなくして人間の壁を突き抜ける。そこには、やはり理解に苦しむ珍妙な光景が広がっていたのだった。





「元帥閣下の御前だ!」




一度は逃げ出そうとした山本。彼が目の前の港付き役人に何とか上層部との取り次ぎを頼もうと食い下がっていた丁度その時、それはまさしく天の助けのように現れた。
唐突に聞こえて来た元帥という単語が、何とか戦場に向かえる立場を得ようと考えている所に聞こえて来たのだった。

(だ、誰? でも元帥ってかなり偉い階級だったな……それが御前――――よっしゃ勝った!!)

何にどう勝ったのかはもちろん山本独自のセンスから飛び出した戯言なので聞き流す。
重要なのは、山本の無茶な願いをかなえられる人が現れたと言う一点のみである。
無茶な願いとは即ち、山本とその愉快(?)な仲間達の参戦許可である。
というのも、再び自らの手勢とでも言うべきモヒカン達を手に入れた山本ではあったが、早速喜び勇んで戦場へと助太刀にはせ参じようとする訳にはいかず、思わぬところで障害にぶち当たった。……正確には常識と言う名の壁になのだが。

当然だが、首都に妙な連中が現れて、それがいきなり戦争の援軍に現れたとして、はいよろしくお願いします助かりました、とはいかない。国家権力を無視して勝手なことをした挙句追放処分にされた苦い経験からその辺りの事を学んだ山本は、許可を取ることを覚えた。
そこで手近かな所にいた役人にその辺りの取り次ぎを頼んだ訳なのだが……当然難色を示された。
こんなものは良く考えれば当たり前の反応なのだが、戦うんだい! と意気込んで丁度いいくらいに脳みそが暴走している山本にはそれが分からなかった。結果、騒ぎは大きくなり、押し問答を繰り返す羽目になってしまったのだった。

さて、ではなぜそもそもオーストラリア、もといウルル大陸に残してきたモヒカン達がここに入るのかという根本的な疑問に触れる。答えは簡単、彼らもまた追放されたと言うだけの話だ。
ウルル公国側にしてみても、下手に地域住民と仲が良いモヒカン達の処遇に困っていた。討伐する訳にもいかず頭を捻っている彼らの頭に、その解決方法は唐突に閃いた。

「あいつらを兵力として輸出しよう」

一言で言えばこれであった。ウルル公国政府はまず、彼らに対して言葉巧みに兵士にならないかと誘いをかけた。その際、給料だの待遇だのを餌にしたのだが、肝心の配属先を巧妙に隠ぺいした。そしてあれよあれよという間に彼らモヒカンズもまた船の上の人となる。そして最後に彼らが聞かされたのは、「オリーシュが給料払うからそっちで面倒見てもらえ」という投げっぱなし極まりない宣告だった。
対してモヒカン達は、そもそも自分達の境遇というものに対して理解が及んでいない。族長にカタですら、狩り場の場所が変わったようなもの程度にしか事態を把握していない体たらくである。

そう言った諸々の事情を異国の地で軽くヒャッハーしていたモヒカン達から聞きだした山本は即座に「義勇軍」という言葉を閃き、さもウルル公国が公式に出した軍隊であると言う風な口調で自分達を売りこんだのだった。
その際、自然と態度や口調は煉獄院朱雀に戻っていた。物言いはやたら尊大になり、加えて背後にたむろする半裸のモヒカン達から発せられる圧力によって、結果押し問答になったものの問答無用でしょっ引かれる事だけは無かった。ここでも山本のオリ主、というよりもペテン師としての才能が垣間見えたのだった。




「――――ということのようです」

秘書官は山本達の事情を持ち帰り、自分が見た状況など含めて報告した。すると近衛元帥は、古い記憶を掘り起こすように過去にも同じような例があったことを思い出した。
まだ子供のころに受けた、歴史の授業での話である。

「確かに同盟国から兵が派遣された事が大昔にもある。最も、当時は使い道もなく即座に解体してしまったようだがな」

それは当時、偶々手に入った物資を都市国家との交易品にと回したら、唐突に同盟締結を申し込んできて、かつこちらが要求してもいない兵隊を献上品の如く差し出してきたという珍事件だった。それは当時の皇帝を大いに混乱させたと記録が残っている。
ちょっとした笑い話のようなものであるが、平和な時ならば荷物でしかないものも今の様な緊急時には宝物並みの価値がある。

「会おう」

元帥は即決した。身元不明な者達との会見にやや否定的な感情を抱いていた秘書官も、こう断言されてしまえば否やはない。
だが、なにはともあれ、である。
このように、色々適当かつ大雑把で場当たり的な手法であったが、一応山本は配下の兵力とそれらに参戦許可を与えられる立場のある人と顔を合わせる事に成功したのだった。








「参戦を許可する」
「ハッ!」

謁見直後でのスピード感あふれる許可が出た。この事に、山本はさも当然という風をしながらも内心でガッツポーズをしていた。

(よっしゃ! 序盤で出て来る話しが分かるお偉いさんはやっぱいいぜぃ!)

そして、かなり失礼なことを考えていた。
山本はやっぱりどこかの時代劇で将軍が国王から何かを受け取るかのような姿で、膝をついた。一瞬、この姿はオリ主としてどうなんだろうとは思うものの、いずれは歩くだけで国民総出で歓待されるような超絶ヒーローになるのだからまあいいかと思った。――――しばらく鳴りを潜めていた病気が、絶賛ぶり返していた。
しかし、山本を調子に乗らせるような展開は、さらに続く。苦労が嘘であったかのように、トントン拍子で事が進み、それらが全て転生者としての特権であるかのように思わせた。



「武器と馬も用意しよう。もちろん、船も。――――さあ、この命令書を。これを持って行くといい。作戦はそこにかいてある通りだ」
「ありがたく」

なんと元帥が直筆で、その場で山本達即席義勇軍に対して物資の融通と移動手段、そして直々に作戦を授けたのだった。この事態に、周りの近衛騎兵のメンバーが驚きの声を上げる。先祖代々自分達だけが独占していた軍馬を、よりにもよって蛮族風な他所者にポンと授けたのだから、無理もない話だ。

しかし、やっぱり山本はそれをさも当然のごとく受け止める。加えて、「お任せ下さい!」と良い笑顔で断言するのだった。

「早速我らの見せ場が出来たぞ! 遠き異国に諸君らの名を刻みこめ!」

さらに、拳を天に突きだして、モヒカン達を盛り上げようと声を上げる。モヒカン達は「お、おう……?」と良く分かっていないようだったが、山本は気にしなかった。
その場の勢いでどうにかなるという、割と洒落にならない病気を再発している身。とりあえず行けば何とかなると、かなり危険な思考だった。やはり、少々の牢屋生活ではオリ主思考は抜けきれなかったようだった。


「では早速出発します元帥閣下――――あ、それで我らの船はいずこに?」
「ああ、それならアッチの……ちょうど一番左は時の船がそうだな」
「どうも!」


こうして、武器に戦場に行くための足も貰えるとあっては、山本はホクホク顔でその命令書を受領。その際そこに書かれている文章を確認もせずに安請け合いをしてしまう。山本は近くに控えていた秘書官に自分達の乗船する予定の船がどれかを尋ねると、颯爽とモヒカン達を引き連れて、指定された船へと乗り込んでいった。

「うわっ?! 何だテメエら!」
「元帥閣下の命令書である! 控えおろー!」

乗船する前にちょっとしたもめ事があったものの、水戸黄門の印籠の如き元帥直筆の命令書の効果により、山本達はそのまま嵐のように出立していったのだった。









「よろしかったのですか?」

半裸のモヒカン集団が残していった混乱の余韻が徐々に薄れる中、秘書官は言外に彼らが信用できるかという意味を含ませた。常識的に考えたら、かなり危険な賭けであると言わざるを得ない。彼らがアステカ側のスパイでないという証拠は無いのだから。
それに対して、元帥は何ともないように答える。

「もちろん。何よりも数が今の我らには必要だ。それに――――元々戦力にはカウントしていない」
「え……?」
「連中が乗った船は一度都市テンプレで補給を行なった後、大陸の北限、つまりアステカが上陸したポイントまで行くように指定してある」
「それはつまり」
「そうだ、ヤツらが担うのは陽動だ。端からこちらの戦列に加える気など毛頭ない。連中にはせいぜい孤立無援の状態で敵の背後にいてもらえればそれでいい」

山本の確認しなかった命令書にも、「敵後方にてかく乱、および背後からの奇襲を敢行せよ。なお、降伏は認めない」とばっちり書いてあったのだが、当然それは確認されていない。あわれな山本、捨て駒となる。

「これでアステカの進軍が鈍ればそれで良し。そもそも――――あのような間抜けな連中が敵の間諜であってたまるか!」

ハッハッハと大笑いする元帥。秘書官は、内心で山本達の行く末に同情するも、「まあ自業自得だしな」と思った。普通確認すべきものを確認しないバカに、そこまで情けをかけるほど彼もまた甘くは無かった。
そして、いい加減自分達も本来の業務に戻らなくてはとも思った。瞬間、秘書官の頭から山本達の事は追い出される。

「それでは我々も――――」
「うむ! こちらはこちらで急がなくてはな――――」

ひとしきり笑った元帥は、秘書官の言葉に従い、馬を歩かせる。正面に控えた輸送船の元まで、やはり先頭に陣取る。
だがその数瞬後。
悠々と肩で風を切り、背筋を伸ばした威風堂々としたたたずまいが――――乾いた音と共に唐突に崩れた。

グラリ、と身体が傾いたかと思えば、元帥は力なく港の石畳の上に倒れ込む。その時になって、ようやくすぐそばにいた秘書官は事態を察した。

「っ!! 狙撃だ! 閣下をお守りしろ!!」

さっと、馬を盾にするように動きだす兵士達。
秘書官が音のした方向を見れば、これから乗船しようとした船の上にはフードで顔を隠して銃を構えている人間がいるではないか。こちらに向けられた銃口からは煙が漏れ出し、いましがた射撃したばかりであることを如実に示していた。秘書官は下馬すると倒れた元帥へ身を寄せ、息があることを確かめ胸を撫で下ろす。と同時に叫ぶ。

「その者を捕えろ!」

とっさに船の乗組員に向かって命令を下すも、狙撃手は船の上を走り水夫たちの制止を難なく振り切る。さらにその手に持っていた銃を放り投げるとそのまま海面へと飛び込んだ。そして、身に着けていたフードが浮かんできただけでいずこかへと姿を消してしまうのだった。


「探せ! そう遠くへは行けないハズだ! 必ず下手人をひっ捕えろ!!」
「グゥッ……! ぐ、軍の指揮を――――――」
「ッ! ダメです!喋っては傷が……!」

目の前で元帥が狙撃された事に対する動揺が広がる。そんな中、元帥は力をふり絞ったと言う風に今後の指示を出す。

「隊は、このまま現地へ…………」
「傷は浅いです閣下! お気を確かに!!」

それを最後に、がっくりと力なく肢体を投げだした。胸からの出血で出来た小さな水たまりに腕が落ちる。まるで絶命したかのような様子に、部下達は大いに慌てた。そしてこれがアステカ側からの暗殺者であるという結論に行きあたると、皆がその卑劣さに怒りを覚える。
「仇を討て!」と誰かが叫べば、誰もがそうだと答える。近衛軍だけでない。その時港にいた全ての者が、アステカの行為に対して非難の声を上げた。
その場はたちまち、アステカ討つべしの熱気に包まれたのだった。


「…………?」

そんな中、唯一人元帥の近くにいた秘書官だけが、その熱に感染していなかった。彼は唯一点、狙撃された元帥の胸元をじっと見つめていた。そこには服に空いた穴がある。血も流れている。だが、破れた布の奥に、肝心の傷口が見えなかった。

「っ!?」

それに気付いた秘書官の手首が、急に強い力で握られた。その手首を握った手は、今しがた凶弾に倒れたハズの元帥閣下のものだった。

(このまま船の医務室に運びこめ。誰も我に近づけるな)

声を低くして発した言葉は、周囲の熱狂に紛れて秘書官以外の耳には届かなかった。
秘書官はぎょっとした顔を見せる。続けて、近衛元帥は先に見せたものよりも圧倒的に邪悪な笑顔を浮かべながら言う。

「言っただろう? お前は運が良い、とな」

獲物を前にした肉食獣のごとき笑みに圧倒された秘書官は、ただ頷くしか出来なかった。





「ヒヒヒ、首尾はいかがなもので?」
「全て順調だ! だがコレを見ろ! 血の匂いがべったりとついて臭くて敵わん!! 一体何なんだこれは!」
「獣の血ですからねえ、ヒヒッそりゃあ匂いもありましょうや」

その後、秘書官が苦労して元帥の身体を輸送船の医務室まで運ぶと、そこには待ち構えていたかのように船医が出迎えた。年齢不詳の妖怪変化のようなしわくちゃで不気味な雰囲気を垂れ流す老人だった。老船医は歯が抜けた口をもごもごしながら、先ほどの茶番の経過を事細かに元帥から聞いている。
特に、秘書官が駆けつけて来る他の隊員をけん制し、苦しい訳を駆使してどうにか倒れ伏した元帥を単身病室にまで連れ込んで来た際の情景には特に気に入ったらしく、梅干しのような顔を更に皺だらけにして笑うのだった。

「イヒッ、イヒッ、お前さんも大変だったねえ、この人の芝居に付き合わされたんだから」
「はあ……」
「おい、それよりも落馬した際肩を強く打った。手当を頼む」
「はいはい。じゃあ失礼しますよっと」

老医師は手慣れた様子で元帥の服を脱がし、患部を観察する。そして、戸棚の中から取り出した怪しげな瓶の中身をごってり塗りたくると、手慣れた手つきで包帯を巻き始める。その最中、ずっと秘書官は今の現状に関して聞きたい事を聞くタイミングを窺っていた。それを察したのか、元帥は新しい制服に着替えながら秘書官に話しかけた。

「なぜ、こんなことをしたのかという顔だな」
「――――はい。このような味方を騙すようなことまでして、そこまでして士気を上げる必要があったのかと……」
「なに? 何を言っているんだお前は?」
「イヒッイヒヒヒヒ! この若者はあんたみたいにひねくれちゃいないんですから、ちゃんと説明してやらにゃあ理解できませんよ」
「ッチ! いちいちうるさい奴だ」

元帥は苛立ち混じりに部屋にある病人用のベッドに腰かけると、「そもそもだ」という前置きと共に今回の一件について語り始めた。

「お前、大前提としてセッキョーを今の兵力で守りきれると思うのか?」
「それは――――無理だと思います」

戦力差の話は、すでに広く知れ渡っていた。多くの兵力が太平洋上の各地に分散し、セッキョーの防衛に回せる兵力は圧倒的に寡兵。たとえ都市に防壁を築いて防衛に専念したとしても、こちらが兵力を結集させるまえに都市は陥落する事だろう。これが現状を踏まえた上での正確な未来予想図だった。

「そうだ無理だ。だが、逆に言うと連中はセッキョーしか陥せない。チートもテンプレも海沿いで、こちらにはすでに何隻ものフリゲート艦が砲身を陸に向けている。連中がノコノコ近寄ってくれば、一斉射撃で粉砕できる。なら、ここは派遣部隊の帰還を待って奪還の兵を送る方が得策だ」
「では、なぜ素直にそうしなかったのでしょうか……?」
「バカ者! そんなことして何の得がある?」
「え……?」
「ヒヒ! お若い人。この人はね、英雄になりたいんですよ。それでこんな茶番を演じたんでさあね。敵の凶弾に倒れた元帥が命からがら生還し、奪われた都市を奪還する――――って筋書きでさ」

「なあ――――っ! それでは、セッキョーで敵を待ち構えている他の近衛連隊はっ!? いやそもそもこの騎兵隊も閣下は一体どうしようというのですか!?」
「まあ、我の代わりに誰が総指揮をとるかによるが……ほどほどの所で撤退だろう。で、セッキョーは陥落と」
「~~~~!あなたって人はっ英雄だなんてそんな幼稚な!!」
「幼稚!? 幼稚だと貴様っ! 貴様も自分が死んでないだけってことに気付いていないバカ野郎の一人か!」

元帥は秘書官の胸倉をつかみあげるように迫った。老船医があまり大声を出すと周囲に声が漏れますよと忠告するが、激昂してほとんど聞こえてはいなかった。

「我が!――――生まれたときには既に兄は皇帝だった! 我は物心つく前に近衛の家に入れられ、皇帝を近くで衛ることが自分の使命なのだと散々教育されてきた! だが、納得出来る訳がない! 一生誰かの添え物で、生涯脇役をやらされる未来なんざ反吐が出る! それはお前も理解できるハズだ!!」
「――っ」

瞬間、脳裏に浮かんだのは、幼き日の一場面。三男が、家督を継承できずいずれは長男の為に家から出なければならないという事を唐突に理解してしまった日だった。近衛連隊に入れさせられたのも、結局は自分の食いぶちを自分で稼がなければならなかったから。そして――――いざという時に家督を継げるよう箔を付けさせるのが目的だった。
何から何まで誰かの思惑に乗せられる人生。一度はおかしいと思うも、自分以外にも同じような境遇の者を見てきて、いつしかそれが当たり前のモノだと受け入れてしまっていた。その事実に気付いて秘書官は、身体が震えるような気がした。

「お前もお前の為に生きろ。あがけ。それが出来ないならお前は既に死んでいる! 過去にいた多くの者はそうせざるを得なかったが、この戦争は天祐なんだ! 天が我に、自らの運命を切り開けと与えてくれた好機だ! それを出来る者が古今なんと呼ばれるか知っているか? 英雄だ!!」

唐突に、目から熱い何かが溢れて来る。急に視界が開け、そこには何処までも広がる未来と言う名の荒野が広がっていた。きっとそこは困難が溢れているだろう。だれかが用意したレールの上にいる方がどれほど楽なんだろうか。だが、未知に向かって突き進み、自分の力だけで切り開く世界のほうがどれほど価値があるのだろうか。全て自力で何事かを達成した時の美酒はどれほどの味だろうか。おまけ扱いされていた三男が、英雄として称賛されたのならば――――それは、どれほど甘美なことだろうか。

「――――――――」

気がつけば、秘書官は跪いて頭を垂れていた。

「義古家三男、義古マサカズ――――私も英雄に成りたくなりました」
「うむ」
「イヒヒッ悪いお人だ」


多くの思いを乗せて、戦いは始まる。その果てに誰が何を得て失うかは、今はまだ誰にもわからない。









あとがき
遅くなってスイマセン。これからは定期的に上げていくんでよろしくお願いします。エターだけはしないです、はい。


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