雑で冴えない導入編。
何でかよく分からん内に、剣と魔法のファンタジーに召喚されて魔王を倒すことになった俺。
PTは勇者(レベル5:無駄に熱い)、魔法使い(レベル:5伏線バレバレの姫)、シスター(レベル4:微笑みを欠かさない)、俺(レベル不明)の四人。
どうやら世界は邪悪なる魔王の手により、滅亡の危機に瀕しているらしい。
その魔王を倒す為には、選ばれし勇者の力を持つ者と異世界から呼ばれた人間の力が必要なんだとか。
今年25歳で、そろそろ甥っ子姪っ子達に『おじちゃん』呼ばわりされても否定できなくなりつつある派遣社員の俺が、どこまで手助けできるのかわからんが、もうやるしかないらしい。
派遣の先々で出会う新社会人達とのコミュニケーションに、世代ギャップを感じてきていた今日この頃、見た目明らかに十代後半の彼らと上手くやれるかわからないが、とにかくやるしかないらしい。
戦闘どころか喧嘩すらまともにしたことがない上に、この前久々に地元の友人と飲みに行った折、ノスタルジックな気分になって学生時代のテンションそのままに懐かしの母校の校庭にあった鉄棒で懸垂を試みた所、二回すら出来ず真面目にジム通いを考えたが、次の日になればすっかり忘れてるくらいの自己管理意識しかない俺に何が出来るか甚だ疑問だが、こうなったらやるしかないらしい。
まあ民主主義という名の社会主義に辟易していたということもあるし、モラトリアム時代に夢見ていた「いつ空から女の子が落ちてくるんだろう」「いつ俺の中の秘めたる力は覚醒するんだろう」「いつ異世界に召喚されて可愛いツンデレマスターに仕えられるんだろう」という三大願望の一つに近しい展開になっただけ良しとしよう。
招かれるベストタイミングが十年ほど遅かったが、そこは異世界だって都合があるんだ。きっと。
異世界モノ主人公が陥り易い「元の世界が懐かしいな・・・」症候群は多分大丈夫だろう。
学生時代は「こんなシケた人生でも、バカなダチがいるなら悪くねぇな・・・フッ」なんて本気で考えていたが、彼等も大人になるにつれて守るべき家族が出来、正社員の仕事があり、友人の一人や二人年単位で連絡が取れなくなっても気にならなくなるもんなんだろう。実際そうだし。
現実感なんて沸くはずもないが、とりあえず意気揚々と出発する勇者たちの後を着いていくしかなさそうだ。
さてさて、この先どんな大冒険が待ち受けているのやら。
とりあえず始まりの町から20キロ以上ある次の町へ向かう道中、平然と歩を進める勇者たちに俺はこう進言した。
「ちょ、ちょっと待った・・・そろそろ休憩しようぜ・・・?」