※この小説は現在改定版を「小説家になろう」には連載中です。
目の前には無数の旗。
眼前に広がる山々には同じく無数の旗が突き出ている・・・あー、勝家のおっさん、気合入ってるなー。
まあ、負けるんだけどね、勝家のおっさんは。
この賤ヶ岳の戦い・・・確か、佐久間盛政が中入りして秀吉がいない間に本陣落とす!って作戦で引き際間違えてやられるんだったよな。
まー、俺も端っこのほうでこそこそしておこう。
別に無理に手柄を狙うつもりもないし・・・周囲はなんか色めきたってるけど、俺は無難にやり過ごそう・・・。
朝、起きたら戦国時代にいた。
いや、びっくりした。昨日までサラリーマンだったのに。零細企業の係長補佐だったのに。
色々葛藤や悩みもあったが・・・どうにもならんもんはどうにもならん。
このまま農民の子として一生を終えるのもいい・・・日本人は土と共に生きる農耕民族なのだ・・・とか思っていたら。
どうも、家族の話を聞いてると雲行きが怪しい。
最初にそう思ったのは、母親の話を聞いてからだ。
「私の弟は、武士になんぞなりおってな・・・」
ほほぅ、俺の叔父さんは武士になってるのか。それは初耳だ。
「言ってなかったかぇ? ほれ、今世間を騒がせとる織田様んとこだ」
何ぃ! 織田とな! この時代の織田っつったら信長! 子孫はフィギアスケーター!
「何をわけのわからんこと言っとる。その、信長様んとこで働いとる」
なんと、叔父は信長の家臣だったのか・・・有名な人ならいいけど、期待できんな。俺の家、ただの農家だし。
「まったく、大人しく畑でも耕してくれていれば・・・今頃お前にも少しは分けてやる田が多かったろうに・・・藤吉郎め」
・・・今、なんておっしゃいましたかな、母上様。
「何がじゃ」
いや、叔父の名前です。
「藤吉郎じゃが?」
・・・・・え? 木下藤吉郎? それってひょっとして猿っぽいっつーか鼠っぽい顔してますかね?
「猿じゃな」
ほほぅ・・・俺の叔父は木下藤吉郎・・・後の豊臣秀吉である・・・って待てぃ!
じゃあ、俺は・・・秀吉の甥! 後の天下人の甥! 天下人の血族ってことは・・・贅沢三昧!
って、ちょっと待て。秀吉の甥?
オーケー。落ち着いて考えよう。ていうか、思い出そう。
秀吉の血縁関係を思い出そう。
伊達に司馬○太郎の小説を全て読破したわけじゃない。
信長の野○も全てやりこんだ男だ。
確か・・・・・
秀長(これは確か異父弟だったはず)
秀秋(これはねねの兄の子だ。後の小早川秀秋)
秀勝(信長の子の一人だ。養子にしてたはず)
秀次(殺生関白とか言われて腹切らされた可哀相な人だw)
秀次は甥だったはず。確か秀吉の姉の息子・・・・。
ああ、俺か。
こいつはお先真っ暗だ。