「……知らない天jっあぶ! ……セーフ、セーフだろ今の。うん完全にセーフだな」目を覚ますとそこには一面に煌びやか~な、もうどこぞのお城のような天井が。馬鹿みたいに広い部屋にぽつんねんと一人で寝ています。なんだろねコレ。夢か。はぁ、とため息をつきながら身体を起こした。畜生め、何処を見ても煌めきやがって。何だあの宝石は。一個くれ。「あ~わけわかめ。夢かコレ、夢だろコレ?」「夢だよ。超夢」「っぅわ、びびったあ~!」居なかった筈。そこには誰もいなかったはずなのに、声を意識した瞬間に一人の男が立っていた。うん。なかなかイケメン。茶髪の陸サーファーな感じ。「何用じゃ、イケメン。ワシはプレシアをボコりに行かねばならん」「……いや、君こそ何用じゃ。ソッチが勝手に来たんだよ」「え、マジ? んじゃ帰る……どうやって?」てか今更ながらここ何処よ。マジ意味ワカンネ。プレシア殴ってたらいきなりお城とか意味ワカンネ。「ここは……なんていったらいいかな……。えーと、宝冠のナカ? でいいと思うけど」「なんで疑問系?」「いや、だって僕にも良くわかんないしね~」……なんじゃそりゃ。お前そこは、私はここの管理人。君には特別な力を授けよう、とか言って現実に帰してくれるべきじゃない?ほら、よくあるじゃん、憑依系とか転生系の二次で。ここは俺がリリカルに来た理由を教えてくれるべきだろお前。「そんな都合よく行くわけ無いじゃん。アニメじゃあるまいし」「ですよねー」アニメじゃないってか。「ねえジュドー」「?」「いや、お前の事だよ」「え? いや僕の名前は―――」「ジュドーでいい。うん。決まり」「……ジュドーです」「うん、それでさジュドー、質問をしてもいいかね?」「はいはいどーぞ」「まずさ、シェルって何?」まずはココからだろ。あの変態デバマスのシステルさんにわけ分からんとまで言わせたシェルブリット。この謎を解けば無事に無印最終回を迎えることが出来る。「茨の宝冠でしょ?」「だからその茨の宝冠ってのが意味わかんねぇっての!」「ぅえ、知らないの!? っかー、そうだよねー、自分で思ってるほど有名でもないかぁ……」「え、なに? そんなに有名なのシェルって」ユーノですら分けわかんないって言ったんだから有名なわけない。ただ貴様の自意識が過剰なだけだろ。「いやいや、昔の文献とか読んだら有名なはずなんだけど……いや、どうだろうなぁ。もう残ってすらないかもなぁ。そうだよなぁ、君たちにとったらドンだけ昔やねん!って感じだろうなぁ」「……古代文明の遺産、とか?」「そうだねぇ、まぁその辺りが落としどころかな。……それにしても古代かぁ、急に老け込んだ気がするなぁ」俺は驚かないぞ。うん。全然驚かない。だってある程度予想してたし。シェルがまともなデバイスじゃないなんて分かりきってたことだし。ただロストロギア指定されてたらアボーンですな。頼む。頼むから文献とか残ってんじゃねぇ。謎のデバイスでいい。分けわかんないデバイスでいいから。俺は管理局には入りたくないんです。取り外しできないから俺ごと持ってくに決まってますよ、管理局は。「えええ、え、えええ~と、とと、じゃ、じゃじゃじゃじゃ(混乱)」「何を言っているのかな?」「ままま、まさか、ロストロギア指定になんか、さ、されてはいないよね?」「ロストロギア、ねぇ。その辺はわかんないよ。僕がコレを使っていたのは……それこそ古代の話なんだろうしね。今の世界に興味はないから」なんですと?「は、ちょ、まっ!! え、なに? お前シェル使ってたの!?」「うん」事も無げに言いやがって。じゃあ何だ、俺の行く末はジュドー、お前か?「茨の宝冠はね、もともと偉~い王様の、その家系図の端っこーぉぉおおの方に位置するある御貴族様の、その奴隷の一人が作ったものなんだ」「嘘だろそれ」「まあね」このヤロウ。「冗談はさておき。宝冠が出来たのは戦時中でね、王様と王様が戦ってる時に出来た」「はあ? 何言ってんだよ、意味が―――」「まぁ聞きなよ。それでね、片方の王様は物凄い守りでさ、もう片方の王様は攻めあぐねてた。全然突破できない。首を奪えない。攻めはたいしたことないのになんで防御ばっかすごいんだよあのヤロウ! ……そして王様は考えたんだ。よし、俺も守りに入ろう。ってね」「……その王様は紙一重だな、色々と」「悪い人じゃないんだけどね。それで茨の宝冠が出来た。王様は思ったものさ、これで俺の負けはない。じわじわと追い詰めてぶっ殺したらぁ……って」「でも決着はつきませんでしたーってオチ?」「お、よく分かったね、知ってたの?」「いいや」シラネーけどさ、守ってる人に対して自分も守りに入るとか……勝つ気ないじゃんそれ。つかその王様は結局何がしたかったんだろうね。「それでもう飽きちゃってさ、兵隊さんたちももうよくね? とかいって帰っちゃうし。だから和解しちゃった」「馬鹿か王様」「いやいや、悪い人じゃないんだよ? それにしてもアイツさ、握手する時めちゃめちゃ力入れてきやがんの。かなり殺伐とした和解宣言になっちゃってさ……ふう、王国民に示しがつかないよ」「キング・ジュドー。お前の話はもういいから、茨の宝冠の話をしておくれ」貴様の身の上話などどうでもいいわ! 男の過去なんかに興味はない。俺が知りたいのはシェルの謎だ。「ん。茨の宝冠は君たちで言う所のデバイスとは一味違ってね、何とその身体を侵食して成長するんだ」「知ってる」「あれ? ん~、じゃあ防御力がすごい」「知ってる」「ん~? それなら……」「いや、こっちから質問するんで答えてください」「おっけ~」こいつマジ殴りてえ。お前が! 教えてくれるまで! 殴るのを! やめない! ってやっちまいてえ。さて、なにを聞くか。聞きたいことが多すぎて迷っちゃうな。まぁ、まずはコレかな。「侵食が100%になるとどうなる?」「僕が表に出る。……筈だったんだけどねぇ、君のお姉ちゃんが行っちゃったよ」「そうなると俺はどうなる?」「消える。……筈だったんだけどねぇ、ココにいるんだもん。不思議だよ。 大体君、勘違いしてるみたいだけどさ、茨の宝冠ってつけた瞬間にまず死んじゃうはずなんだよね。宝冠だよ、宝冠。その名の通り、冠さ。腕じゃなくって、ココ、額につけるんだよ」そう言ってジュドーは額を指した。心底呆れたように言うその姿はなんとも腹立たしい。何が冠だアホめ。こんな宝石みたいなのデコに付けても全然冠じゃねぇっての! 大体俺に言うな。プレシアに言え。バーカバーカぷげら!「まず死んで、というか脳死状態になって、体の機能が低下したところで侵食するんだよ。君みたいに殆んど侵食も進んでないのにセットアップするなんて、馬鹿の所業だね。相当痛かったんじゃない?」「ぱねぇよ。相当痛かったよ。泣きそうだったよ」「だろうねぇ……」はい、そういうことなのね。だから死に掛けていた時にグングン侵食率がアップしていたわけだ。コレは大方予想通りだな。別に何のこっちゃない。ええと、他に聞かなきゃいけないことといえば……。「……シェルは? 宝冠の管制人格だったAIは?」「AIなんて言っちゃかわいそうだよ。君の元になった人の、それの派生人格だ。『これからは私が王だ! 貴様の女たちは貰ったー!!』とか言いながら、ついさっきアリシアと一つになって表に出てったよ」「あのヤロウ! てかいいのかアリシア! あんなのと一緒になっちゃっていいのか!?」「まぁ、もともと一つだったわけだし。誰かさんの影響で随分ゆがんだみたいだけど」何だ貴様。俺のせいだといいたいのか。俺のせいなわけないだろう。アイツはもともと素質があったんだ。レズとしての素質が。フェイトもアルフとイチャイチャしてるし。はやてとだって『挨拶』してるし。うん。何も俺のせいじゃないな。「……って、あれ? 大丈夫なのアイツ? デバイスサポートないじゃん。プレシアをギタギタにしなきゃなんないのに」「もともとこのデバイスに管制人格なんてついてないよ、AI自体はあるけどね。本来なら僕自身が使用者になるんだから、使い方なんてもう隅から隅まで知ってるし。まあ、あの娘たちも大丈夫でしょ、管制人格やってたくらいなんだから。君みたいに無様な魔法を使うこともないんじゃない?」「やかましいわ! 魔法なんざ殆んど何にも使えねっての! アホーアホー!! へたれデバイス!」「使えるよ。君は使用法を知らないだけさ」「じゃあ教えてよ」「今知ってどうするんだよ。君もう入れ替わっちゃってるんだよ? 実質、死んじゃってるんだ」「あ、あはは……やったー……、へ、へへへ」シェル、頑張ってね。お前は死んじゃダメだよ。魔法なんざきっと使えないだろうけど。加速して、それで殴るだけだろうけど。「大体、君のお母さんも相当アレだね、もうバッシャバシャ無茶苦茶にアリシアの記憶転写してきてさ、おかげでこっちにわんさかアリシア生まれるし。着眼点は良かったんだけどね、惜しかったよ。僕絶対に女になんかなりたくなかったし、誰がアリシアクローンなんかに寄生するかっての」「実際俺にしてんじゃんかよ」「だって君、男じゃないか」「いや、そーだけどさ……ってかそうだよ、プレシアが言ってた血統がどうとかって、アレは何?」思い出した。宝冠を起動させるには血統が必要だって。それがなくて起動していて、尚且つ自我を保っていて、さらに生きてる俺を見て、プレシア悶えてた。スッゲ気持ち悪かった。最高にハイってやつだー! ってなってた。「その通りだよ。僕は僕の血族にしか寄生しない。別に出来ないってわけじゃないんだけどね」「じゃあなんで俺に憑いた貴様」「僕じゃなくて君の言うシェルに聞きなよ。こっちにアリシアが生まれまくってそれを消す作業に忙しくてさ、そのアリシアからまた派生人格が出てきて、そのまた派生人格が出てきて……切りがなかったよ。ちょいと目を離したらシェルが茨の宝冠の管制人格になってたんだ。それでアリシアクローンβに寄生されちゃった。僕も、まぁ男だしいいかって思ってたら今度はプレシアが無理やり引っぺがすし……。その繰り返しの果てに出来たのが君。プレシアが諦めてくれてよかったね」そして俺が憑依しましたー、って感じになんのか。結局俺の憑依が一番の謎じゃね? もうコレは、テンプレですご了承くださいとしか言えんね。「なぁ、俺があのまま普通に生きてて、侵食が終わる前に体が治ったらどうなったと思う?」「何も変わらない。侵食は随分遅くなるだろうけど、それでもいつか100%に達して僕かアリシアか、はたまたシェルか、誰かが表に出てたよ」「そですか……」はぁ。なんか考えてたのとちと違うけど、これはこれでありか。シェルの事だ、万事うまくやってくれるだろう。はやての事とかマジ頼むよ。絶対に頼むよ。「ジュドー、お前これからどうすんの? 役目をシェルシア(シェル+アリシア)にとられちゃったんだろ?」「そうだね、僕はもう消えるよ。表に出る楽しみも無くなっちゃったし、僕もよほど長く生きてるからねぇ……」「じゃあ俺も連れてってよ」「あれ、いいの? 『ディフェクト・プロダクト』ではもう表に出ることはないだろうけど、次の茨の宝冠使用者には成って代われるよ?」「いやぁ、もう憑依にはコリゴリでして」俺はもう疲れたよパトラッシュ。後はシェルが何とかしてくれんだろ。俺も大分楽しんだし、色々かましてやったし、十分充実してたよ。「……ふ~ん、わかった。じゃあ行くよー」そしてジュドーは右手をかざした。魔力でもなんでもない、ただの光が集まっていく。心臓の鼓動が高まる。とくん。とくん。不意に、その右手が動いた。―――っ!「―――あああ! タンマタンマ! ちょっと待って!」……すぅはぁすぅはぁ……!やべぇやべぇ、この俺としたことがびびっちまったぜ……! やるじゃねぇかジュドー。怖いじゃねえかよ。「……よし来い!」「よ~し、それじゃあ、いっくよー!!」そして今度こそその右手が―――、「―――っ! ちょ、ま、ストップ! タイムアウトー! タイムタイム!」「も~、なんなんだよ!」「うるせえ! なんか予想以上に怖いんだよ!!」「何だよそれ、こっちは早く往生したいんだから早くしてよ!」そ、そんな事言ったって怖いもんは怖いんだよ! ……やっぱり無しだ。うん。無し無し! そんなに死に急ぐことないよ。ここでしばらくお話でもしてようぜ!! 「あれだ、やっぱ死ぬのなしにしよう! 死んじゃだめだよどう考えても! 考えるんだ! 俺は戻りたいぞ! いろんな人と○○○したいんだ! お前も無理とか言ってないでもっと考えろ! 俺を表に出せ! もっと熱くなれよ! しゅぅぅぅううぞぉぉぉおお!!」「だぁあ! うるさいなあ、もうイッちゃえ~っ!」「―――ひょ?」そうして俺は光に包まれた。16/~無意識母性~「アリシア……のはず、ないわよね。そう、そんな筈はない」「ううん、そうだよ。私だよ。アリシア・テスタロッサだよ」そうしてアリシアはゆっくりと一歩踏み出した。背後でアルフがそんな、と口ずさんだのが妙にクリアに聞こえる。局員も警戒しているのか、一触即発の雰囲気。ぴりぴりと肌をさす感覚に、久々の、本物の生を感じた。「なんで、あなたが? 記憶の転写は、失敗だったはず。アリシアに成りえるはずがないのよ」「失敗なんかじゃない。お母さんがいっぱいいっぱい送ってくれたおかげで、補完しあって、穴ぼこだらけだったのを綺麗に思い出したよ」アリシアしか知らない記憶。アリシアとプレシアの思い出。心が温かくなるような、そんな情景。その全てをアリシアは覚えている。その全てを思い出すことが出来る。「……、そんな筈は、ないのよ。F計画では、不完全な……」しかしプレシアがそう簡単に信じるはずもなかった。自身の失敗を悟っているプレシアは、ゆっくりと頭を振りながら続ける。「いくら茨の宝冠が有ろうと、それに現れたのは、そう、不完全な、別物だった。何回消しても、何回記憶を転写してもっ! そう、そうなのよ、あなたがアリシアであるはずがない!!」自身の答えに満足したか、プレシアの顔から動揺は失せ、またも不敵に唇を歪ませた。「そんなことないよ……」「黙りなさい、正解は私の中にある。私が捨てたあなたがアリシアであってはいけないのよ」その言い草に、その笑みに、アリシアの胸が疼痛に苛まれた。アリシアであってはいけない。では、ここにいる自分は何なのだろうか。アリシアだった頃を思い出し、そのアリシアと一つになり、記憶を取り戻した、この『私』は一体誰なのだろうか。そんな答えはとうに出ていて、「私は……」「消えなさい」瞬間、プレシアからスフィアが飛んでくる。数は三。大して魔力も込められているように見えないそれは、「―――っこの!」突如として現れたアルフが張る障壁によって防がれていた。っぱん、と軽い音を残し魔力が霧散する。フェイトを抱えたまま、右手をかざし障壁を張っていた。抱かれているフェイトは左手だけで、その豊満な胸にぎゅうぎゅう押し付けられている。む、む、と少し苦しそうな声が。「アルフ……」それは自然と口から出ていた。アルフ。アリシアの『妹』、フェイトの使い魔。主を決して放さないその姿に一瞬リニスを思い出した。そのアルフが、非常に苦々しい表情で、しかしその視線には嘘は無く、「―――、何、やってんだいアンタは!」「……ごめん」「止めたいんじゃないのかい!? アンタの、本当の母親だろう!?」「うん」アルフは完全に理解しているのだろう。今、『ここ』にいるのがディフェクトではない事に。「あたしゃそろそろ我慢の限界だよ。使いな、これの代金分くらい働いてやる」そう言ってアルフは自身の首を叩いた。首輪。知っている。ディフェクト・プロダクトが、自分をシェルと呼んでいた、その人物が送ったもの。馬鹿な人間だった。俗物で、底辺で。それでも身体の調子が悪くなるほどに『シェルブリット』に対する信頼は厚くなり、身体を明け渡すその瞬間まで諦めなかった男。『―――俺が死んじゃったら、よろしく。マジよろしく。色々大変だと思うけど、MAJIでよろしく!』うん。馬鹿な男だ。思い出しながらつい、アリシアは笑ってしまった。「戦わなきゃね。顔向けできないや」首を回して局員を一瞥。事情が理解できていない局員にはディフェクトが狂ったようにしか見えないのだろう。それぞれ怪訝な顔を向けていた。だが、そこで空気を読むほど馬鹿でもない。局員たちが理解を示すまで待ってはいられない。「……アリシア・テスタロッサです! これから母を止めます、協力お願いします!!」アリシアが叫ぶのと同時にアルフが大きく飛び下がり、局員の一人にフェイトを預けた。さらに落としたら殺す、と凄むのも忘れず。そんなアルフの様子に思わず唇は歪み、笑いが出てくる。「っふふ……行くよ、母さん」「私を母と呼ぶな」嫌悪感を隠さず、プレシアからまたもスフィアが飛んでくる。先ほどと同様、あまり魔力は込められてはいない。瞬時に障壁を張る必要もないと思い立ち、身体強化。迫るスフィアを紙一重で避けた。顔面の真横を通った魔力で少しだけ肌が痺れる。目の前にいるプレシアは、母と呼ぶなと言う。さらに攻撃も仕掛けてくる。しかし、威力が足りない。アレは本気ではない。故意にそうしているのか、それとも無意識にそうなっているのか。どちらでもかまわない。今のうちだ。本気を出されると困ることになる。「―――行きます!」戦闘開始。倒す必要は無い。動けなくしてしまえばいいだけ。故にデバイスは展開しない。今、魔力を無駄に消費して戦うことは出来ない。身体強化。それで十分だった。己の分身、己自身と言える『茨の宝冠』。その『根』は体中に、100%張り巡らされている。筋肉繊維の一本一本。神経を巡り、シナプス回路を通って、脳へと。だからこそ、身体強化だけでいける。巡るその『根』が既に見えないデバイスのようなもの。駆け出したその足は確かに地面を破壊した。Accelerationと比べればもちろん加速は劣る。しかしその分、柔軟な動きと足捌き。根を通して伝わる電気信号で『意識的』に肉体を操作できる以上、本気でないプレシアの攻撃を避けるのは簡単で、その背後を取るなど、楽勝というヤツだ。「バーストエクスプロージョン!」掌を打つ。魔法を放つ。しかし当然の如く障壁に阻まれたそれは轟音を残し爆発。右腕にビリビリと衝撃が響いた。痛い。『久しぶり』に痛覚というものを感じ、それはそれで幸せだった。毎回毎回こんな魔法を使っていた人物は、やっぱりとんでもない馬鹿だ。「その程度で―――」ニヤリと唇を歪めながらプレシアは笑った。こんな顔をさせたいわけではない。もっと、もっと……。「うおりゃぁああ!!」背中越しにアリシアを見るプレシアの前方から、アルフが吶喊。歯噛みする。自身の考えに腹が立つほどにプレシアは冷静だった。「この私を、倒そうなんてね」背中に目でもついているのか。アルフの攻撃までもプレシアは軽々防いだ。障壁ではなく、結界。その姿を包むように展開された。「甘いわ。弱いわよ、あなた」そんなことは最初から分かっているのだ。結界は強固。何度拳で叩こうが、ビクともしない。地力が違う。大魔導師とまで言われたプレシア・テスタロッサ。方や今の今まで戦闘などこなした事のない『アリシア』。負けなど目に見えている。しかし、それでも勝たなければいけない。止めなければならない。やるべき事が、ある。そのためには、「―――アルフ!」「分かってる!!」アリシアは叫んだ。シェルの思い出にアルフの特性は記録されている。接近戦を好み、主と共に突っ込んでいくその姿は使い魔としていかがなものかとも思うが、それを帳消しにするほどの戦闘センス。得意とする魔法は身体強化、スフィア形成、及び発射(あんまり当たらない)、そして―――、「ッバリア、ブレイクゥウ!!」アリシアには見えていた。アルフの魔力がプレシアの張った障壁を侵食していくのを。対象の障壁を打ち崩すそれは、大きくレベルの違うプレシアの結界すらも破壊した。しかしそれでもプレシアには慌てた様子すら見えない。薄い笑みを貼り付けたまま。しこたま殴ってやろうと拳を振り上げたその時、「―――あなたに私が『殴れ《殺せ》《倒せ》《犯せ》《侵せ》』るのかしら、ア・リ・シ・ア?」心臓が、一つだけ大きく跳ねた。ぴたりと止まった拳。アルフには分かっていた。『アリシア』の考えがどうあれ、恐らくプレシアを倒すことは出来ないだろうと。そうではないだろうか。アレがアリシアだとするならば、会いたかったのはプレシアだけであるはずがない。アリシアだって、シェルブリットだって、自分が娘だと理解したのなら、会いたくなるのは道理だろう。そして現実、会えた。当たり前だが『死んで』以来初めてであろう邂逅。先ほどは発破を掛けたが、そういう問題でもないのか、拳が動く気配はない。しかし、「あたしにゃ関係ないんだよ!」アルフはバリアブレイクで消費した分の魔力をフェイトから吸い上げる。魔力光で輝く拳をアリシアの代わりとばかりに放った。ち、と一つだけ舌打ちをし、冷めた目でこちらを捉えるプレシアに背中が粟立つ。びくりと肩が跳ね上がり、踏み込んだ足は自分の意思に反し後退を選んだ。(―――う、っわ)だん!と足を踏み鳴らし、一息に十メートルの距離を開け、自身に起こったことを分析、する必要すらない。怖い。怖ろしい。ただそれだけだ。アリシアに対面する形でこちらに背を向けているプレシア。アルフはプレシアが振り向くのをじっと待つしかなかった。そして先ほどの後退がただ一つの正解だと気付く。プレシアの左手。そこにはどす黒い意志を感じる魔力が光っていた。嗅覚が捕らえる、死のニオイ。「……なかなか優秀よ、あなた」そう言うプレシアは既にスフィアを放っている。バラバラと雨のように降り注ぐそれは、いずれも必殺といえるほどに魔力を込められていた。四方八方に飛んでいくそれを憎憎しげに捉え、「―――ッチクショウ!」プレシアに褒められた危機察知能力がざわりと反応。回避を余儀無くされる。縦横無尽に走り回り、かわせるものはかわし、当たると確信したものは障壁を張った。アルフは鋭くプレシアの背後に視線を送る。そこには肩を抱いてぷるぷると小さく震え続けるアリシア。弱々しく。ただ弱々しく。泣いているのだろうか。それとも先ほどのフェイトのように痛々しい微笑でも浮かべているのか。助けてあげたい。しかし敵があまりに強大なのだ。よけるしかないスフィアは徐々にその動きを修正し、自分に合わせてきている事が分かる。これでは、当た―――、「―――使い魔さんっ!」やや渇き気味の破裂音の後、プレシアの放ったスフィアが砕け散った。局員の、その中でも一番若い男が正面に迫ったスフィアを自身の魔力弾で相殺。次いで障壁を張った。頭から血を流し、それでもデバイスは下げない。なかなかの根性だ、とアルフは口角を吊り上げる。「ありがと」「いえ。……我々の攻撃(射撃)ではジュエルシードを反応させてしまいます。お願いできますか?」言いたいことは分かる。プレシアを肉弾戦で仕留めろということだろう。プレシアの周囲に浮かぶジュエルシード。それは輝きを放ちながらゆらゆらと存在を主張している。次元震。つまりはそういうことだ。局員の格好を見れば分かるのだが、局員は全員、完全に射撃型だ。もちろん射撃だけしか使えないわけではないだろうが、しかし接近戦が出来るわけでもない。やるのならアルフの方がマシだと判断されたのだろう。残っている局員を見れば障壁を張りつつ、アルフ自身が預けたフェイトを守っていた。攻撃面での援護は期待できない。もし攻撃の為に放ったスフィアがジュエルシードにぶつかりでもしたら大惨事。嫌な状況だ。パキリ、と音がして、管理局の障壁もあまり長くは持たないことを悟る。「あの馬鹿。こんなときこそアンタの出番だろうに……」脳裏に浮かぶのは一人の少年。アリシアの、ディフェクトプロダクト。接近戦が得意だといっていた。先ほどのアリシアの動きを見れば、それはその通りなのだろう。(ちく、しょう……)何も出来なかった。ディフェクトは言っていたのに、自分はアリシアクローンで、『色々な大切な物』、そのためにプレシアを倒すと。しかし自分は、アルフは結局何も出来なかった。プレシアの、フェイトの言うとおりにジュエルシードを集め、そしてそれが攻撃の手を緩めている原因。つん、と鼻腔の奥に広がる痛み。アルフは思わず緩んだ涙腺を指で撫でつけ鼻を啜った。「使い魔さん?」「っ、何でも、ない!」「……出来る限りの援護はするつもりです。お願いできますか?」「やったろうじゃないか。あたしのご主人様の……ご主人様達の為にも!」後悔なんてしたくない。よく言ったもんだと、心底アルフは思った。ぐるる、と咽喉を鳴らし、身体の隅々に魔力を通していく。身体強化。これまでよりも強く。速く。プレシアを殴ってやるのだ。フェイトを泣かせて、ディフェクトに重い運命を背負わせた。許すことなんて一片もない。アルフは大きく息を吸い込み、その顔によく似合う獰猛な表情を刻んだ。「―――ぶっ殺してやる!」そのアルフの声が聞こえた時に、アリシアの肩はようやく震えを止めた。同時に自分自身に活を入れる。何をしているんだ、私。こんなことをしている場合ではないだろう、と。アリシアの正面にはプレシアの背中が見えているのだ。プレシアは依然ニヤニヤした表情でアルフを迎え撃っていた。懐に入られれば自分が不利になると分かっているのか、とにかくスフィアを放ち続けた。指向性を持ったスフィアは速度を上げながら、軌道を修正しながら、そのどれもがアルフに迫っていく。しかしアルフは記憶に残っている映像よりも断然に俊敏だった。攻撃に一つも当たっていない。フェイトが眠っている今、フェイトの魔力は全てアルフへと流れている。動かす足に全力で強化を使用。足場を破壊しながら細かく移動を繰り返していた。それでも当たりそうなものにはフォームチェンジ。当たる面積を小さくしギリギリのラインで避ける。そしてその太い四足で大きく踏ん張り、「―――ゥウォォオオオオォォォオオオオオン!!」咆哮が響いた。同時に狼状態のアルフから金色の魔力が放たれる。フェイトのサンダースマッシャーに匹敵しそうなほどに魔力の込められたそれは、しかしプレシアが掲げた右腕に軽々阻まれた。「―――うわぁあぁ! 何やってんですか使い魔さん!! ジュエルシード暴走しちゃいますよ!!」管理局員が何か叫んでいるがここまでは聞こえない。アルフが、妹の使い魔があそこまで頑張っているのに、そんな考えが頭をよぎる。こんな場面で、震えるなど。それを押さえる為に力が必要など愚の骨頂ではないだろうか。頭をよぎるのは馬鹿で可笑しなあの人。「くく、随分反抗的なことね。私はフェイトの母親よ?」「ふざけんじゃないよ! あの子に母親らしいことなんて何一つしなかったお前が言うことか!!」戦闘中にも拘らず、一撃を送り送られアルフとプレシアはその間に会話をはさむ。「はっははは、それもそうねぇ!」「笑ってんじゃあ、ないよぉ!!」接近しきれないアルフは金色のスフィアを作り出すとプレシアの足元に向かって放った。しかしそれを至極簡単に相殺させるプレシアの技量は大魔導師と呼ばれるにふさわしいもの。「笑わずにいられないわ! あの子はデキソコナイなのに、あの子が作る使い魔は優秀なんですもの。ああ、こんなことなら……」「―――このッ!」その表情すら読めた。狼の姿をするアルフの、その表情が。恐らく分かっているのだろう。プレシアが口に出す、その言葉を。言わすまい、言わすまいと攻撃の手を緩めることなくアルフは次々と攻撃を仕掛けているが、それらはプレシアには掠りもしないのだ。分かる。プレシアの次の言葉が。それは簡単に予想できるもの。アルフが必死に攻撃している理由だって、分からないはずが無い。「―――こんなことになるなら、『創る』んじゃなかったわ! くひゃっははぁ、あぁははははは!!」それは狂笑とでも言えばいいだろうか。非常に演技くさく、まるで舞台俳優のように大きく、高らかに哂う。アリシアに殴れないわよね、と問いかけた時と同じ、いやもっとそれ以上にその笑顔は汚い。またも肩が震えだした。「……くそ、こんチクショウ! フェイトだって、ディフェクトだってっ! 選べるんならアンタみたいな親は願い下げに決まってんだろぉ!」アリシアには見えている。スフィアを避けるその瞬間、攻撃を仕掛けるその時に、アルフの瞳から涙が流れていた。面白いほどに真っ直ぐなその性格。『自分』の為に、主の為に戦っていることなど一目で看破。震える肩。力の入らない拳。引きつるように動く腹筋。「創るんじゃなかった創るんじゃなかった創るんじゃなかったぁあ!! くは、あぁぁあっははははははぁぁああ!!」プレシアが大きく笑う。アリシアは―――。……。創るんじゃなかった。フェイトも。ディフェクトも。ここに在るアリシアも。プレシアはそう言っている。そんなこと、そんなことは……。そんなことには、「―――最初に・気付け・このっ・メスブタ・がぁあッ!!」『笑い』で引きつる肩を気合で正し、力の入らない拳は根性で固め、痙攣を起こしていた腹筋は叫ぶことによって止めた。アルフとの戦闘に集中し、既に自分は攻撃できないと思っているであろうプレシア。その余りに余りな笑顔がツボにはまり、思わず笑いに走ってしまったのだが、それはそれでいい具合に勘違いしてくれたものだ。「え?」間の抜けた声。正面にいるプレシアから。遅い。馬鹿め。握りこんだ拳を必殺の力を込めながら腰を入れ込み、幕ノ内君すら真っ青の右フックを放った。「―――いぎ、ぇっ!」みしみしみしぃ……!半分ほどまで右拳はめり込んだ。背後から右のわき腹に刺さったそれはあばら骨をへし折り、その先の肺すらも破壊するかのように猛威を振う。「死っ!」もう一発。足の指に力を込めた。ぎゅぎゅ、と自身のマスターの趣味全開で買ったブーツが鳴る。右腕を引くのと同じ動作。その延長で、脳からの電気信号を神経の変わりに『根』で通し『動くようになっている』その腕で、『左』の拳を振う。「っぐ、がぁあ!」しかしさすが大魔導師といったところだった。同じ攻撃は二度喰らわない。拳は当たる前に障壁に阻まれた。信じられないのだろう。プレシアの目には驚愕が浮かんでいた。「―――なんであなたが、」私を攻撃できるの? といった所だろうか。ふん、とアリシアは鼻で笑った。出来るに決まっているだろうこの勘違いの○○○○ヤローが、と心中。プレシア自身が否定した存在。アリシアであるはずが無いと結論付けた存在。しかし、人間だ。プレシアは良くも悪くも人間なのだ。娘の死を思い、それを取り戻そうとするのも人間。そのために手段を選ばずに殺人を『犯させる』のも人間。憶えている、シェルブリットの記憶。彼女は、プレシアは一度も自身の手を汚してはいない。廃棄品は全て魔獣のお腹の中へ。たまに生き残った存在はリニスが片付ける。それは何故か。怖いからに決まっている。自身の娘と同じ顔をした存在を殺すのが。そんなプレシアが、目の前に自身の娘と同位体の存在がいて、それがさらに記憶を持っていると言っている。それを簡単に殺せるはずがない。始めからそう踏んでいたのだ、シェルブリット・アリシアは。事実、プレシアは一度も攻撃を『避けて』はいなかった。彼女ほどの技量があればアルフの攻撃を避けるのは簡単だったであろう。そのくせに全て障壁で弾く。防ぐ。なぜであろうか。答えは当たり前のように用意されていた。彼女の後ろにアリシアがいたからだ。それが意識的になのか無意識的になのかは分からない。恐らく後者であろうが、それでも随分、何処までも『人間』だ。対して、アリシアはどうか。記憶は取り戻した。『アリシア』と一つになり、実際に母との記憶もある。―――それがどうした。既にアリシアには関係なかった。優先順位。そういうものだろう。ロジカルに、機械的に。何処までも『茨の宝冠』らしく。「アルフ・分かっている・でしょう!」アリシアは、大きく声を。その声に、聞き覚えのある『音声』に、アルフが大粒の涙を流しながらも太陽のようにまぶしい笑顔を作り、何となく、向日葵のような使い魔だなぁ、とどうでもいい感想を抱いてしまう。「ああ、ああ! 当然だよぅ!!」その姿を人型に変えながらアルフが駆けた。そして跳躍。軽々とプレシアの頭上を越え、その青く光る宝石を二つ手にとった。音を立ててアリシアの前に着地するとそのまま呆けているプレシアをよそにアリシアを小脇に抱えプレシアとの距離を稼ぐ。「……アンタねぇ、なんで言わないんだよぅ」「鼻水・すごい・ですよ」「これは嬉し鼻水だからいいんだよっ!」「さすが・マスターと・共に・過ごした人は・言うことが・違います」苦笑しながらアリシアは優しく大洪水を起こしているアルフの顔を拭ってあげた。実に可愛い使い魔である。「ああ、アンタのマスターは最高だよ。だからさ」「ええ・分かって・います」託されるジュエルシード。青く、内包されている魔力で願いを叶える宝石。アリシアはそれを包み込むように両手で握った。その時になってようやく、「―――ア、リシア、じゃないのよ。そうよね、そう……」理解していたはずだろうとは言えなかった。母性。無意識。本能。それは『理解』の外の出来事だ。「……私は・幸せ・でした。大好き・でした。貴女を・世界で一番。アリシア・テスタロッサは・お母さんを・愛して・いました」でした。いました。それは既に、『今』ではない。命を落としたその時に、もう失ったもの。失うべきだったもの。失って然るべきもの。「だから・私は―――」―――止めてみせる。しかし、キャストに自分の名前は映し出されてはいない。アリシア・テスタロッサの場面はない。だって・私は―――、「―――茨の宝冠・管制人格・シェルブリット。あの人が・くれた・名前。あの人が・私だけに・贈ってくれた・私だけのもの」アリシアは、シェルブリット・アリシアはゆっくり言葉を紡いだ。「だから・願いを・叶えなさい・ジュエルシード……」そこまで言って、ようやく局員たちにも伝わったのか。ヤメロ、ダメ、バカ。非常に面白い表情を晒してくれる。く、と咽喉を鳴らし、似合わない笑みを浮かべた。100%に達した今、人格が入れ替わった今、分かる事がある。侵食率100%と同時に自動展開されるはずだった魔法。本来なら『茨の宝冠の男』と入れ替わるはずだったのだ。目が腐って、何の面白みにも欠ける男。しかし、当たり前だが、シェルブリット・アリシアがそのような男に『この体』を自由にさせるはずもなかった。展開される魔法に、『アリシア』と『シェルブリット』のパーソナルパターンを強引に混ぜ込み、一つに。そして意識浮上。今の自分が何者か等、そのような『人間』らしい思いはない。ここに在る、ここに居る自分が、自分。それだけでよかった。主がくれた名前さえあれば。そして、掌にある力の塊。次元干渉系ロストロギア、ジュエルシード。魔法など、『デバイスに記録されている魔法』など、所詮データ。それを再現できないはずがない。猫ごときの『意志』を汲み取り『大きくした』ジュエルシードに。犬ごときの『思い』を汲み取り『強くした』ジュエルシードに。人間の『恋心』を理解し、物理的に『離れられなくした』ジュエルシードに。『茨の宝冠管制人格』であるシェルブリット・アリシアが『想い』を明かし、『再現』の手法を提示し、表に『浮上』させる『人格』。まさかジュエルシードに、その程度のことが出来ないはずが、無い。「パーソナル・パターンの・チェンジ。……私の・マスターを、表にっ、ッ出せぇ!!」―――ドンッ!!途端に、シェルブリット・アリシアの手のひらから光があふれた。いや、それは最早『光』に収まるものではない。二つのジュエルシード。その魔力は『膨大』と言う言葉すら小さく見えるほどの、青。青が世界を支配した。殆んど暴走に近い魔力の奔流。物理反応すら起こしそうな勢いで青く。「―――私のっ・マスターを・かえせぇぇぇえええええええ!!」握りつぶすようにジュエルシードを包み込む。右腕が共鳴を起こしたように震えた。途端に襲う眠気。前後不覚になる感覚。膝に力が入らない。意識を失う。それを実感できた。それと同時に勝手に動こうとする口に少しだけの驚き。共に安心? 信頼? 親愛? その全て。口が、滑る。「―――なぁんでっ! システルさんのパンツ下ろしがっ最後なんだぁぁぁあああああ!!」馬鹿・マスターめ。分かってるっての、そんなこと。