―――夢を、夢を見ていました。夢の中のわた……じゃなくて、俺は―――。これは、高等部に飛び入りして一月が経とうとした時かな。00/~『俺を誰だと思っていやがる!』前編~「ディフェクトー! 朝だよ!学校だよ!」「ぅあいあーい」つかなんかテンション高くねえかユーノ。俺はのっそりとベッドから身体を起こした。今日は高等部に入学してから初めて実戦形式の授業がある。ああ、そのせいか、ユーノのテンションは……。「ん~……! おはよーさんユーノ。毎日毎日ご苦労な事です。わざわざ寮から起こしに来るの大変じゃねぇの。無理しなくていいよ?」そう。ユーノは有ろう事かわざわざ俺のために、学校のすぐ近くにある寮から起こしに来てくれるのだ。もうねsneg?状態なわけですよ。……ユーノが女だったら。ふぅ、なんで男なんだよw「そ、その前に君はそのガンガンに元気凛々パワー百倍な前を、隠したほうが、い、良いんじゃないかな…?」キャー、何てリアクションをとるユーノ。何だキサマ、犯されたいのか。いいのか。こっちの準備は完了してるんだぜ? 俺のビッグマグナムは太いんだよ? 硬いんだよ? ビンビンなんだよぉぉおおおお!!!!「……冗談はさておき」俺はズボンをはきながらユーノに言った。うん。目を開けたときからの疑問だったんだ。いや、そういう趣味って言われたらそこまでなんだけど、でもおかしいよね?「お前、何でメイド服?」スカイテンプルにでも行くつもりかと。猫のうんこ踏め!。。。。。「って事で、何かね、今日の実習はこの格好でしなきゃならないんだって」「そっかぁ。でも男子にもこれってあんまりだよね……?」学校に着き、教室を開ければそこにはカオス。どぅひん、何これぇ☆皆メイド服。男も女も、やせもふとも、似合っても似合ってなくても、メイド一色。『テラキモスw』「ば、シェル、ちょっと黙っとけ。みんなの顔を見ろよ。皆自覚してんだよ。これねーわ……って思ってんだよ!」もうね、みんなの顔見たらわかる。特に男子。君らは絶望病か何かか? あんまり窓のほう近づくんじゃないよ。『あいきゃんふらい』されても困るよ。いやいや、かわいそうなやつらだ。俺のように可愛く生まれていたら全員似合っていただろうに。これもフェイトの、つかアリシアのおかげか。有難うアリシア。可愛く生まれて有難う。もう死んでるけど。「にしてもディフェクト……君、異常なくらい似合うね」「だろ? 自分でもびっくり、はしてないけど異常だなこれ」うん。異常。似合いすぎ。女装は散々システルさんにさせられたけど……俺、可愛くね? やべ、ドキドキしてきた。やばいやばい、スカートじゃ隠し切れないって! ポジション直せないって! 大変な事になっちゃうYO☆「どうしたの? 急にそわそわしだして」「いや、あれだよあれ。お前にもわかるだろ? 男の子のアレがあれでアレなんだよっ」「トイレ? 行っておいでよ、授業はまだ始まらないんだし」「……一緒に行かないか?」「何言ってるんだよ、恥ずかしいなぁ……」っち、まさかオカズにされることを読んだのか?いやそんなはずはない。俺の身体が異常なだけで流石にユーノには精通は来てないでしょう!?ああもう、毎日毎日システルさんがあんな格好やこんな格好して寝るからだ! だから俺に悪影響が出たんだ! そうだ、そうに決まってる! くそぅ、今度パンツ下ろしてやる。あ、やばい、想像したら……。「えと、ちょっとトイレいってくるね!!」「え、あ、うん。早く帰っておいでよ?」「はいはーい!!」そして俺は脱兎の勢いでちょこちょこと内股でやや前かがみながら廊下を爆歩。トイレへと向かっていった。「うわぁ、可愛い。今の子誰?」「ああ、なんて言ったかな。飛び級してきた子だよ。えぇと……ディフェクト・プロダクト、だったかな」「……? へんな名前ね。それになんか男の子みたいな名前」「……男、らしいよ」「ホントに? ぷぷ、皆に教えてやろう。絶対このネタ飛びついてくるわよ。あの格好って事は、ヘルカスタム先生の初授業を受けるわけよね?」「だろうね。可哀想にね、俺も初めての授業では随分やられたよ」「あの先生ちょっとサディストはいってるしねー。けどまぁ仕方ないんじゃない?」「あの子、ホントに大丈夫かな?」「ちょっと心配かもね……」この二人、広報部員。彼と彼女の手によって本日のデスザイズ・ヘルカスタム式スパルタ授業は多くの人物に観戦される事になる。もちろん俺は知らない。何でかって?トイレでシステルさんかユーノかで迷ってるんだよ!! はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……。『(あ…また・成長・してます。+0.3。―――記録完了)』……ふぅ。。。。。。「え~、私がデスサイズ・ヘルカスタムである」「は?」「……え~、私がデスサイズ・ヘルカスタムである」「はぁ?」「っごほん! 私が、デスサイズ・ヘルカスタム、で、あるっ!」「それはないわ」デスサイズ・ヘルカスタムだと?舐めてんのかちょび髭。おいちょび髭。お前なんてちょび髭で十分だろちょび髭。大体なんだそのちょびっとだけ生えた髭は。だからちょび髭なんて呼ばれるんだよちょび髭。その辺わかってンのかちょび髭。わかってないでちょび髭?「ふむぅん。この私に向かってその挑発的な態度。なかなか肝が据わっておる。気に入った。直々に指導してやろう」「いえ、遠慮しとくでちょび髭」「ぶふぅ! ちょ、何言ってるんだよディフェクト! いくら髭がちょびっとしか生えていないからってそれは言い過ぎでちょび髭!」『ユーノ様・落ち着いて・ください』「ほ、ほほぅ、君もかね。今年の飛び級生徒はいささか元気があり過ぎるようだ。私がしっかりと指導してあげよう。憶えておくのだな、小娘ども」な、なにを言っているんださっきからこのちょび髭は。おいこらユーノ! お前がちょび髭なんていったせいで一緒にいた俺まで目を付けられてしまったじゃないか!しかも小娘て。僕達男ですから。完全にアンタわかってませんから。そして何より、その瞳。俺は知っている。その瞳を。ああ、知っている。それは、その瞳は―――、あんた、俺等に欲情してんでしょ?うん。完璧に。アレはあれだ。俺が寝ているシステルさんによく向ける視線だ。それのせいで起きるもんね、システルさん。急いで寝たふりしてる俺は神。それにしても……この身体に入って結構経つけど、慣れるもんだね。今までだったらそんな視線受けたらファーストブリットだったよ。よかったねちょび髭。ちゃんと感謝しろよちょび髭。お前は俺にその視線をくれやがったときからもう犯罪者だからな。おれ? 俺は良いんだよ。だってぼくななさいなんだもん♪「―――ふん、視線一つ逸らさんか。なかなか面白い。お前たちは最後だ。後ろに回っていろ」「うぃ~」「は、はい!」ユーノ、何そんなにびびってんだよ。これは授業なんだぜ。多少の怪我はするかの知れねーが絶対 死にはしねーよ。おお、おお。皆もばっちり緊張しちゃってまぁ、肝っ玉の小さい事で。「あー、諸君らに言っておく。以前この授業で魔道師としての道を断たれたものがいる事は知っていると思う。手加減をするつもりはもちろんある。しかし、これをただの授業とは思わないで欲しい。私を殺す気で向かってきて良い。 私は所謂、管理局崩れの人間だ。こういう場では、徹底してやるように、との学長の言葉ももらっている。諸君らには是非、頑張って欲しい物だ」そしてちょび髭はちらりとこちらを向いた。……え?聞いてませんよそんな事。知りませんよそんな事。てか学長、落ち着いてものを考えろ。お れ な な さ い だ ぞ。やばくね?「ユ、ユーノクーン、ちなみに魔道師の道を断たれたってのは……?」「あの先生の息子さんらしいよ。自分で叩きのめしたらしい……」……手加減する気なくね、それ?あえて言おう。俺、死んDAAAAAA!!『マスター』「ん? なに? 俺今どうやって逃げようかスッゲ悩んでんだけど……」『……ヤツは・やけに・あの・ちょび髭に・プライドを・持っている・ようです』「ん~、だろうなぁ。ガキがちょび髭って言っただけでちょっとキレ気味だし……」『ですので……ごにょごにょ』「ほほぅ。ならそこで……ごにょごにょ」『なるほど。流石・マスター。でしたらそこには……ごにょごにょ』「くくく、見える。ヤツの生殺与奪を掴んでる俺たちが……」『もはや・敵では・ありません』「おーい、ユーノ―――」。。。。。「―――ぐぅわぁぁああ!!」俺の目の前をぶっ飛んでいく生徒A。飛んでいく際にメイド服からいやなものが見えた。彼は管理局入りを目指しているらしく、えらく気合を入れて突っ込んでいったのだが秒☆殺。いやいや、もうちょっと頑張ってよ君ら。もう少年の域を出ようとしている歳なんだよ君らは。それなのにアンタ。気合入れれば良いってもんじゃないっての。砂とかかけろ。目潰し☆その辺に転がってるやられた生徒を盾にしろ。人人(にんにん)プロテクション☆その辺りの俺技を授けてやっても良いから、頼むから、ちょび髭をもうちょっと疲労させてください。現在ちょび髭は全体の三分の二。約二十人の相手をしてきた。「ふぅ…。いささか私も疲れたな。この辺りで―――」すかさず、「いやぁ、やっぱり管理局にいたってのは伊達じゃないなぁ。この調子だったら休憩なんて挟まずに全員やっちゃいそうじゃないか、シェル?」『イエス。やはり・管理局にいた・という・実績は・残る物・ですね。先ほど・ちょび髭・などと言ったことが・大変・申し訳ありませんね』「ホントだよね。……だけどここで休憩を挟むようじゃやっぱりそれは……。いくら管理局でもちょび髭だよな?」『イエス。確かに・言えていますね。少し・疲れが・見えてきたようなので・ここであの先生の・真価が・問われる事に・なるでしょう。ちょび髭 or ダンディ髭』「―――休憩など、はさむ必要もないな。さて、次の生徒 来たまえ」「ハ、ハイ!」「あ、頑張ってくださいね。あのちょびひ―――先生は疲れ知らずですから自分が出来る最大の魔法をどんどんぶつけていったほうが良いですよ」「あ、……うん、有難う。そうだね、これは授業なんですもの。自分に出来る最高の魔法を叩き込んでやるわ」はい。がんばってね。どうかちょび髭をガツンといわしたってください。マジ期待してますから。「キャーッ!!」俺の足元に転がってきた少女A。彼女は管理局になど興味が無いという、この学校では珍しいタイプの娘だ。転がり込んでくる際に凄くいいものが見れた。この少女、かなりいい戦いをしてくれた。とにかく避ける。ちょび髭も疲れで若干集中力が落ちているのもあるだろうが、それでも凄く戦い方がうまかった。よくやったぞ少女。君には後でひえピタをやろう。アイツのスフィアを喰らったわき腹に張っておくのだ。現在二十八人が倒れた。次の次、ユーノ。次の次の次、俺。「ふうぅう……。いやいや、これほどの相手を、連戦で相手に出来る者など、管理局にも、そうは居るまいな。 さて、ここまで一気にやってきたのだ。授業の時間にも余裕があり過ぎる。そろそろこの辺りで―――」すかさず、「いやぁ凄いよな管理局は。あ、元……か。管理局も年々と力を入れてるって話だし最近じゃこの位やってのけるヤツなんてザラにいるんだろうなぁ、それこそ休憩なんて挟まずに。なぁシェル?」『イエス。最近では・管理局・全体の・魔道師ランクも・上がってきているので・正しく・そう・言えるでしょう。あのちょびひ……先生は・そんな・管理局の中で・揉まれた・人材・ですからね。たかが・三十戦など・余裕のよっちゃン・でしょう』「だよなー。これで全員に勝った日には俺、髭生やしちゃうよ。あの超ダンディな感じの髭。まじリスペクトの対象にしちゃうよ」『イエス。三十戦を・勝ち抜いた者が・生やして・いるのですから・それは・それは・お似合いに・なるでしょう。―――しかし……』「そうだなー。勝てなかったら唯のちょび髭だよなー。あーどうしよっかなー……? 三十戦を連勝していったヴィクトリー髭、将来生やしたいんだけどなー、それってやっぱ休憩挟んだらなんかちがうよなぁ……シェル?」『イエス。それは所謂・ちょび髭・ですね。負け犬の証・とも言われて・います。やはり・モノホンの・管理局でないと・無理・という事でしょう』「―――さ、さぁて、行ってみようか。休憩などまったくいらんな。次の生徒、来たまえ」「うっす!」「あ、頑張ってくださいね。あなたは……デバイスを見る限り、接近戦使用ですか?」「お、俺にも何かアドバイスをくれるのかい? 君と話していったやつらが皆いい動きするもんだからさ、俺も何か聞いて行こうと思ってたんだ」「あはは、そうですかね。まぁ、僕から言えるのは常に動き回ってくださいという事だけです。僕も接近戦が主体なので大体わかりますよ。つらいですよね、近づく間もなくマルチロックファイアは」「そうなんだよ。けどあの先生は遠距離戦が得意だからね」「そういう時はまず開始と同時に奇を衒うのが得策なんじゃないでしょうか? たとえば……ごにょごにょ」「―――ごにょごにょ!? ごにょごーにょ!!」「ごにょ! ごにょにょ!!」「さっさと来たまえ! 何をごにょごにょやっている!?」俺たちはちらりとちょび髭を見た。「―――っぷぷぷ。ごにょごにょ……」「ぷ……。ごにょ、ごーにょ!」「えぇい!! 貴様ら―――」「それじゃ、行って来るよ!!」「はい。気をつけて」ちょび髭キレ気味w「―――うわぁぁああ!!」俺の頭上、斜め上をかっ飛んでいく、新しく人人プロテクションになった人。最後の仲間がやられた。あーあ、せっかく『人人プロテクション☆』を授けて、さらに相手の精神に揺さぶりをかける『ごにょごーにょ♪』まで実践したのに負けるなんて何やってんだよ。あそこは投げなきゃ、人人プロテクションを。その程度で罪悪感なんて感じちゃ、めっでしょ。「はぁ、はぁ! すぅぅぅぅはぁぁぁ……」しかしよくやったぞ名も知らぬ男B。お前は確実にヤツの体力をこそぎ取った。本当によくやりました! お前になら後でこの格好をしたまま『にぃや』って言ってあげてもいい!「さ、さぁて……もう最後なのだが、それの前にちょぉぉっとだけ―――」「いやぁやっぱり管理局じゃ―――」「―――っく!」「……。どうしたんですか、セ・ン・セ?」「い、いやなに、ちょっと、そう、あれだ。私はトイレに行ってくる。その間、君等は気を失っているものを起こしてやっていてくれ」「あぁ……そっかぁ。けどセンセ、さっきのヤツに手間取ってたみたいなんで時間もあんまりないですよぉ?」そうなのだ。さっきの彼。すっごい長く戦ってた。そのせいで時間は後十五分程度しか残っていない。「い、いやいや、君たちはまだ子どもじゃないか。次の機会にしても良いのだぞ……?」「そんな、センセのお手を煩わすような事は……。ですので、二人とも一度にどうですか?」「いや、それは……」「ほら、まだ僕たち子どもですし。管理局に勤めてたセンセならやれますって」「しかしだね、管理局にも、その……」えぇいまどろっこしいやつだ!次の機会になったら勝てる気しないんだよ! お前絶対ドリンクとか飲んでくる気だろうが!!てっかてかのビッカビカになって戻ってくる気だろうが!ばれてんだよ!しかたない……。俺は小さな手でむんずと、座り込んでいるちょび髭のちょび髭を握りこんだ。そして一発だけぺけん、と軽いビンタを食らわす。「い、今殴ったねっ!」う、うざ……。―――ぺけん!「に、二度もぶった―――。おy」「―――さっさとウンって言えや、このちょび髭野郎……」『キ○タマ・毟り取りますよ…』しっかりと目線を合わせた上で。。。。。。「さぁてユーノ。アイツが便所から帰ってきたら一発かましてやろうかね」「うん。大体あの先生の行動パターンは読めた。これで行き成り魔力が回復してた、とかの予想外な出来事がない限り勝ちは見えると思うな」そう。ユーノには敵戦力分析を頼んでいたのだ。いくらちょび髭でもそこはAAランク。あそこまで疲労させても勝てるかどうかは五分五分なのだ。そこでユーノの分析能力発動。こいつ、頭がいいのだ。ずば抜けて。もうね、どこのコーディネーターかと。ディスプレイ見ずに端末操ってますから。片手でタイピングしてますから。お前そのうちガンダム作るんじゃね? なんて思っています。いえ。割と本気です。そんなあなたに聞きます。「……便所で魔力を回復できる可能性は?」「さすがに無いんじゃないかなぁ……。ボクにも経験あるけど、失った魔力はそう簡単に回復できるもんじゃないよ」「まぁ、たしかに」そう。俺のように稀少技能があれば何とか回復は出来るだろうが、ユーノいわくちょび髭に稀少技能は無い。「こりゃ、マジで勝ったな」「だね」『戦いとは・戦う前に・勝者が・決まって・いるものです』何でお前がわかったような口を利くのかがわかりません。「とりあえず皆を起こそう。アイツをボコるとこを見せてやろうぜ」「……あいかわらず性格が悪いなぁ」いやいや、いい性格してんでしょ。「いや、すまん。待たせたようだな」「本気で遅ぇよ。もう授業終わっちゃうだろがちょび髭」「……っふ、なになに、君たち二人を片付けるのには一分もかからんよ、小娘」なんでコイツこんなに自信満々なんだ?魔力は回復した様子も無い。疲れも取れてるようには見えないんだけど。なんだ……、なんかすっごーく嫌な予感がするよね。これは別にニュータイプじゃなくてもわかる。コイツ、絶対、何かやらかす気だ。「お前、絶対なんかやらかす気だろ?」「いやはや、教師に向かってお前とは……。そういえば貴様、先ほどはなかなか面白いことをしてくれたな。私は管理局時代にも誰にも殴られ―――」「―――衝撃のぉ」「―――た事は―――」「ファーストブリットォォオオ!!!」「―――なかったっぎゅにぃぃぃいいいんっ!!!」「ちょ、ディフェクト! 何やって―――」殴りました。いや、素の拳なんだけどね。だってちょび髭のくせに五月蝿かったんだもん。後悔はしてない。むしろスッキリしている。こんな自分が好きだ。「もういいごちゃごちゃうるせえ! 男が口先ばっかでぺらぺら喋ってんじゃねぇ! 俺はいいけどお前はダメっ! さぁやるぞ、これからは口じゃなくて『拳』で語ってみやがれ!! セットアップ、シェルブリットォオ!!」『イエス。起動・します』「―――っもう! ボク知らないからねっ!」とか何とか言いつつしっかりと俺のサポートをしてくれる気でいるユーノ。うん。今度、アッ――!しよう。決めた。ぎり、と奥歯に力を込める。シェルブリットは俺の身体に寄生し、侵食をしながら育つデバイス。現在侵食率は11%とかなり低レベル。まともな攻撃はたったの三回しか出来ない。……コイツほんとにデバイス?だからこその策。相手を体力的に疲労させ、さらに魔力をなるべく枯渇に近づけさせる。面白いように嵌ってくれたちょび髭は間違いなくバカ。みしみしみし、と拳が壊れるかと思うほどの圧力が俺を襲った。侵食線(今のところ腕全体に伸びている、シェルの根の目視できる部分。俺が勝手にそう呼んでいる)から一気に力があふれ出し俺の右腕を覆っていく。「ん、ぎ…ぃ」痛い。キツイ。潰れちまいそうだ。それでも、「―――ッくぞコラァ!」『了解』「サポートはボクがする! ディフェクトは何時も通りに!」わかってるさユーノ。俺は何時も突っ込んでるだけだもんね。お前には凄く助けられてるぜぃ☆―――そしてユーノは右手でこめかみをトントントン、トントントン。リズムよく叩く。「こ、この大馬鹿者がぁ! もう許せんぞ!」『笑止。最初から・私の・マスターは―――』「―――許してもらおうなんて思ってねぇンッだよ!」「っちぃ!」言いながら拳を振るった。当然の如くちょび髭には避けられるのだが、これでいい。ここはグラウンドだ。遮蔽物はない。俺の場合、こんな場所で戦う時は絶対に相手から離れない。そんなことすれば、その次の瞬間に俺オワタ。俺は射撃が出来ないのだ。いや射撃に向いてないのだ。だから距離を開けられればその瞬間に防御と回避しか出来なくなる。よって俺は常にちょび髭に張り付いて戦っていた。しかし、「っは、なる、ほど、なっ! しゅ、うちゅ、適っ正がた、ンか!(訳・なるほど。あなたは集中適正型だったのですね)」何言ってるのかわかんないけど表情を見るに、気付いたのか?にやにやとむかつく野郎だ。この、この、このこのこの!! ……一発くらい当たれってんだ!!俺の拳は空を切るばかり。かすりもしない。そういえばコイツは疲労は酷い様だが怪我の一つもしていない。これまで三十人ちかくと戦ってきてるくせに! これがAAランクか!「そ、ならっ! ば、何もほっ、怖くな、ぁあ!い!(訳・それでしたら私はあなたの事が怖くはありません)」「だ、から! さっきから、何言ってんのか、わかんねぇんだよ!!―――フィストッ!」『―――explosion―――』業を煮やした俺は戦闘が始まって始めて攻撃魔法を使った。ずどぅん!とミサイルでも落ちた様な轟音と共にもうもうと立ち上る土塊と砂埃。それらは俺たちの視界を完璧に塞ぎこみ、ちょび髭に格好の機会を与えてしまった。やべ、外しちゃった☆―――ユーノはまだ、トントントン。「ふ、はあはははは、はぁはぁ! やはり、この程度っ! 苦しい時に、はぁはぁ、大技に逃げるようでは、はぁ、私には勝てんな!」「そすか」その声は10mは離れたところから聞こえた。ずいぶん疲れてんねあんた。まぁ、おれのせいw「食らいたまえ。私の技を……」ギュゥゥゥウウと明らかなチャージ音。ちょ、その音。さらにかなりの魔力がここの周囲全体に集まっていくのがわかった。なんだよお前、全然魔力持ってるじゃねーかよ。疲れてんのは唯の疲労かよ。「―――いけ」声と同時に放たれた俺にとっては極大とも言える魔力。頭上に覆われた魔法陣からスコールのような、それでいて完璧に一つ一つに操作が行き届いている魔力弾が振ってきた。これは、俺、終わったかもわからんね。何でこんな馬鹿魔力持ったやつがAA程度で納まってるんですか?俺は光に包まれ―――、―――トントントン、…トン!「一歩前進後一歩右移動後しゃがみ込んで後転した後に地面にうつ伏せ右手を腰に!」―――。何も考えない。唯実行に移せばいい。それだけで、俺は一歩前進した。第一陣、と言っていいのだろうか。ほぼ同時に来ているのでわからないが、とにかく最初に来たスフィアが俺の後ろ髪に触れながら地面に突き刺さった。それから一歩右へと移動した。後方と前方、それと右斜め上から飛来したスフィアはそれぞれの身体に触れるか触れないかの距離を疾走し、地面へ突き刺さった。さらに俺はしゃがみ込む。と同時に全周囲攻撃とでも言えばいいのだろうか。ちょうど人間の成人だと、頭と腹。その辺りを数十のスフィアが弾丸のように飛び交った。同時に後転。ちょうど上を向いた時に、先ほどまでいた場所にレーザーのような細い、しかし極限まで凝縮した攻勢魔力が降りかかっているのが見えた。そしてそのままうつ伏せ、腰に手をやる。狙い済ましたかのようなスフィア。それはシェルブリットに激突し、多少の衝撃はあるものの唯その場で破裂した。……すげぇ。マジで来た。実行に移したのはこれで二回目だが…すげぇよユーノ! もうホント愛してる! お前にだったらアッ――!されてもいい!!俺はゆっくりと立ち上がった。風が一陣。フィストエクスプロージョンとちょび髭のとんでも技によって張られた煙幕がはれていく。そこには驚愕の表情の、デスサイズ・ヘルカスタム。「な、ぜだ……。完全に、捉えたと……そんな、フェイクまで加えたと言うのに! それを、……きっさまぁあ!!」「ふんっ……―――俺を、」そこでちらりとユーノを振り返った。にっこりと笑い、「―――ボク達を……」「「―――いったい誰だと思っていやがる!!」」はい。自重できませんでした。「―――っ!!、…! ―――――!!! おぎゃ…。すまとら…!?(訳・そんな馬鹿なことがあるわけがありません。あの魔力弾の全ては私が制御していました。全てを読むなどある筈がないのです)」コイツはなにをいっているんだ。早く何とかしなきゃ。しかしユーノはしっかりと理解したようで、ふふ、と俺には絶対に見せないような残酷な笑みを浮かべた。たまにこういう風になるんだよね、ユーノ。コイツね、仲がよくなったらいいんだけど、他人にはとことん冷たい。そんなとこがある。うまく表面上には出してないけど。腹黒。と言うよりスイッチか。今、ばっちり入ってる状態。「―――先生。あなたはボクに手の内を見せすぎた」「すぽ、ぽ…!!(訳・そのような馬鹿なことがあるわけはありません)」もう一度ユーノはトン、と軽くこめかみを押した。「あなたが発した言葉の一語一句」トン。「あなたが見せた表情」トン。「あなたが見せた動き」―――トン。「三十人分、全て記憶している」「―――プルコギィィィイイイイ!!!(訳・プルコギが食べたいです)」そこでユーノはゆっくりと目を閉じ、天を仰いだ。「―――記憶 記録 展開 判断 発想 発祥 計算 創造」……。「心の底からの! 本気の言葉! 本気の表情! 本気の行動は!! それはあなたの真実の一片《ピース》!! 断片を知ることであなたの全てを透し見る! 魔法と同じくこの七年の間にボクに培われたボクの能力!! ―――仙里算総眼図!!」ユーノ自重。初めて言うが、ユーノ自重。