―――夢を、夢を見ていました。夢の中のわた……じゃなくて、俺は―――これは、なんだったっけ? ……あ、そうそう。確か選択授業がどうとか、そんな話だったか。00/~『これが自然の恵みだぜ!』前編~「生きのこりたい~生きー残りたい~まだぁ生きてたくーなるぅ♪」「なんて歌うたってんだよ。切実にやめてくれよ。グサグサ来るんだよ」「ぅえっ、ご、ごめん。でも君このアニメ好きだったよね? ていうか君が勧めてきたよね?」「いやいや好きだよ? もう主人公が羨ましすぎて鼻血出るほどに。……でもさ、何ていうかその……」マッチングしすぎてんだよ。俺の状況に。そりゃ生き残りてーよ。死にたくねーよ。「……。ん、わかった。それなら……、―――~♪ 君をかきむしって濁らーせた~なのに~可憐に笑うとこ―――」「―――やめてー!! もう僕の色々なものはゼロよ!! 好き『だった』とかやめてー!! 過去形やめてー!! 死亡フラグびんびんじゃないですかー!!」もうね、あの歌聴いたときはもう本気汁(涙)出ましたから。もうそれは滝の如く。「な、何だよぅ……。じゃ、じゃあ―――っもってっっけぇぇぇえ! 流星散らしてデ~イト!!」「……テンション上がって来たぜぇぇええええ!!!」「じかに稀有なファイト~エクースタシぃ~~こーがしーてよー♪」いい声してんじゃんかユーノ。「あ、そういえばエクスタシーで思い出したんだけどさ、ユーノは選択授業何にした?」『どこを・どうやって・エクスタシーで・思い出すの・ですか?』そんなこと言ったってなんかはっちゃけちゃったんだもん。「ボクは基礎物理学を一から勉強し直そうかと思ってるよ。あと考古学のほうにも面白そうな先生がいたなぁ……。今どっちにしようか 迷ってるとこ。ディフェクトは何にしたの?」「俺? 俺はなんかキャンプ? みたいなの。島で一週間過ごすだけで四単位だぜ? めちゃくちゃ熱くね?」「キャンプ? そんなのあったかなぁ……?」そう言ってユーノは小首をかしげた。やばい萌えるぜバーニンッ!! キスしていいですか? いいですか? いいんですね。そうですね。「ユーノ……キスしようぜ」「うん別にい―――っておいぃ!! 行き成りどうしたっ!? いや、いやいや、別にその、アレだけど、それはその、ほら、あれだし……」「冗談だよ。それよりほら、中の人研究会始まっちゃうぞ」「え、あ……。なんだよ、自分から言っておいて……」ユーノ……。ああ、惜しい事をしたのか俺は。いやいや、いやいやいや。―――どうなんですかっ俺!?。。。。。「え~、僕がこの授業の監督を務めるキャメル・クラッチです」「は?」「え~、僕が、このじゅ(ry」な感じで始まったこの授業。今日は説明会ということで、一つの教室を貸し切って始まった。これ、自由に座っていいのかな? いいんだよね? ということで教室の真ん中、最前列の席ににどしりと腰を下ろした。隣にはメガネ。何とも堅物そうなやつがいる。「やぁ、こんにちは。君もこの授業を選択したんだね」「……? ん、まぁそうだけど?」メガネがなにやら親しげに話しかけてくる。何だお前。誰だお前。いったいどうなんだお前。もうちょい音量下げろ。目の前に教員いるんだぞ。「ほらほら君達、ちゃんと聞いといたほうがいいぞ。島で死んじゃっても文句は受け付けないからね?」ほら怒られた。お前のせいだぞメガネ。ていうかおい。キャメル・クラッチ。流石に死にはしないだろ。そもそもお前の名前はどうなんだ? いいのかそれ? いくら目の前にCAMELがあったからっていいのかそれ。「ははは。君の顔、もしかして何も知らずにこの授業選択しちゃった?」「はい? ていうかそれを知る為の説明会なんじゃないんですか?」「む、確かに。コレは失礼しちゃったな。もう有名になってるかと思って自惚れちゃってたみたいだ」そう言ってキャメル・クラッチは困ったように笑った。ぽりぽりと頬を掻く様がやけに似合っている。有名? お前大概意味分からんな。いいからさっさと説明しなよ。「この授業はね、確かに一週間で四単位だ。それに内容も全然難しくない。……でも、六人しか受講者がいないのは何でだと思う?」言われて俺は辺りを見回した。広い教室の割にはガランとしてる。ほんとに六人しかいねぇでやんの。お前相当嫌われてんのか? どうなんだキャメル・クラッチ。「あ~アレじゃないですか? なんか、特定の人物が気に入らないとか、変な名前のやつがやってるからとか……」「ちょ、何いってるんだい君は!?」うるせぇなメガネ。名前すらないくせにでしゃばるな。扱いが難しいんだよお前。「ぷ、ふふふはははは!! 君は面白い生徒だね! さすがデスサイズ先生をぶっ飛ばしただけはある。気に入ったよ」べしべしと教卓を叩いてキャメルは笑った。そうなのだ。俺はアイツをぶっ飛ばしたのだ。正直それは誇らしいのだが、ある種の弊害も出てきている。まず、「それならあの先生に、授業の度にチクチク攻撃してくるのを止める様にいってください」授業の度に、始まる前、後。ふと欠伸を噛み殺したとき。トイレに行きたくて震えた時。そんな時、ヤツからのスフィアが飛んでくる。毎回毎回。おっと手が滑った。なんて言いながら。こなくそ馬鹿野郎と思っても相手の魔道師ランクはAA。まともにやっても勝てはしない。なので虎視眈々、ヤツの隙をうかがい痛みを我慢しながらちょっとバーストしてみるのだが当たらない。とんでもなくむかつくぜ!!「いやぁ僕にはとても無理だよ。あの先生権力あるし。僕なんかが楯突いたら一発でクビちょんぱ」「……っけ、使えねぇ教員」「き、君ね、そういうことは思ってても口に出さないでよね。……それに、別にいいじゃないか、そのおかげで君も有名人なんだし」「……」やだよ。だって皆こっち見てこそこそ喋ってるんだもん。話しかけても何か皆逃げるし。あれか? 俺と仲良くしたらデスサイズからなんかされるのか? おのれデスサイズ。「ま、この話は後でね。 こほん。えーとまずこの授業なんだけど、皆さんには無人島で一週間生活してもらいます」それは知ってるよ。だからキャンプだろ? 最高じゃねーか。「でね、一応、魔法禁止ってことで」まぁ許せる。魔法なんてあったらあんまり面白くなさそうだし。こういうのは皆で力を合わせてやるから面白いんだよね!「それと持って行ける物は無し。服から何から全部こっちが用意します」……。ま、まぁいいだろう。アレだしね、こういう時って絶対誰かゲーム持ってきたりして空気壊したがるしね!「あと、野生の獣が出るから注意してね。肉食だから」……。「まぁ要するに、頑張って一週間生き残って♪」……あいたたた~。。。。。。「君は本当に何も知らずにコレを選択したのかい?」「さっきからそう言ってんだろ?」「……規格外だね、相変わらず」「うるせーよ、なれなれしいなお前。ていうかなんだお前。誰だよお前」「あ、僕は―――」「やっぱいいわ、すぐ忘れそう」「……そうかい」一応説明会が終わって、orzな俺に話しかけてきたとなりのメガネ。……あれ? コイツって……、「お前、デスサイズぶっ飛ばした時にもいなかった?」「―――お、同じクラスなのにそれは酷くないかい!? っていうか名前くらい聞いてよ! 憶えてよ!」「うるせぇよ! メガネしてんだからメガネでいいんだよ!」まったく、なんなんだコイツは。メガネにメガネとあだ名をつけてなにが悪い。古今東西伝統的なあだ名なんじゃないのか? むしろ名誉だろうが。と、そんなことを思いながらメガネを睨みつけていると、「お~い君達ぃ」声かけられました。なんかキツネみたいな目をした女の子。それとネコみたいな目をした女の子。うん。なかなか可愛い。「こんにちは。私たちもサバイバルとったんだけどさ、説明会いたよね?」「うん。俺たちもとってるんだ。あ、俺ディフェクト、コイツはメガネね。ヨロシク」「いや僕は―――」「ヨロシク。ディフェクト君、メガネ君」「……よろしく」哀れメガネ。しかしきっとその名前がお前の誇りになるときが来る。作者がそうしてくれるさ。「私達は―――」「キツネとネコね。今決めた。それでいい」「……キツネです」「……ネコです」いいでしょ?。。。。。一週間が経ちました。ちなみに昨日、システルさんのパンツ下ろしました。そこにあったか俺の『全て遠き理想郷』。「はい。じゃあ出発するけどその前に……」そういってキャメルは手に提げていた袋をゴソゴソ。「君たちには、コレを付けてもらいマース!!」じゃじゃーんと効果音を口から出し袋から出したものは、「……首輪。この前のメイド服といいその首輪といい……この学校は本当に大丈夫か?」「ちょ、ちょっとちょっと、変な誤解しないでよっ。コレは君たちの魔法を使えなくする装置! 君たちはコレを付けると魔法は使えなくなるからねー」「え? 魔法の使用禁止ってマジだったの?」俺はてっきり冗談かと。「当たり前じゃないか。コレはなかなか優れものでね、魔道師ランクAAを誇るデスサイズ先生すら結構やばくなる代物だよ」「それじゃどのくらいやばいのかワカンネーよ」「……だって付けさせてくれないんだもん。でもかなり弱るのは確実だね」「ふ~ん。弱る、ねぇ……」「あ、デバイスは持って行っていいよ。お守りぐらいの効果はあるだろうし。ぷぷぷ」こ、こいつ、まさか性格が悪いのか。あれだ、コイツは俺たちがギャーギャー言いながら苦しむのを見て笑うのが好きなタイプに違いない。「それと~……あったあった。はいこれ、島の地図。周囲断崖絶壁で森しかないけど一応ね。食料なんかはその森の中央のあたりが豊富だよー。あと海に落ちたら死ぬものだと思ってて。まず這い上がれないから。あと、脱出ポイントはここね」そう言ってキャメルは地図を指した。あれ……? ここって……。「はい。お気づきの通り最初の、君たちを転移させるポイントとは正反対ですねー。安全策をとって崖をぐるッと周るもよし、時間をとって森を突っ切るもよし。ちなみに脱出ポイントにはリゾート気分を味わえるアイテム盛りだくさん! 食料の心配も無しだよ!!」き さ ま !突っ切るわけねーだろ。肉食獣が盛りだくさんなんだろが! 絶対森には行きません!!「リゾートかぁ……」キ、キツネさん? やめてよねその不穏な発言。俺たち魔法使えないんだよ? 獣なんかに襲われたら一瞬でペロリだよ?「はい。んじゃそゆことで……いってらっしゃーい」「あ、ちょ―――」言葉を発する前に展開される転移陣。嗚呼ユーノ。何でお前はこの授業をとってないんだ。お前がいたらきっと楽勝だったのにっ!そして俺たち六人は、跳んだ。。。。。。一日目。「はぁ……キャンプが……」「どうしたんだい?」「んにゃ、何でもない。とりあえずやるべき事は―――」自己紹介。だよね? 知らない顔が二人いるし。これから一週間だもんね。仲良くなって友達を増やそう。「ディフェクトです。一週間よろ~」「僕は―――「あ、コイツはメガネね」―――です。……よろしくお願いします」「私はキツネです。うふふ、よろしく~」「わ、私はネコさんです。よろしくお願いします、です」一応俺が知ってる顔はこれだけ。あとは、「……」「……ふひ」……?どうしたんだい。マッチョとスネオ。すげームチムチしてるからマッチョね。スネオはヘアスタイルから。「……俺は勝手にさせてもらう」「ふひひ、そゆこと。んじゃぁねえ、生きて帰れたら良いね。ふひ、ふひひ」そう言ってマッチョとスネオはテクテク反対側へ歩いて行った。安全策をとり、断崖をグルッと周っていくつもりらしい。……。えぇ~。来た早々にそれかよ。もうちょっと協力プレイしようぜ。6Pでいいじゃん。キツネさんとネコさんに了解とって6Pでいいじゃん!!「行っちゃったね。やっぱあの自己紹介がまずかったのかしら?」「いやいや、多分あいつ等は最初からそのつもりだったんじゃね? 何の躊躇も無しにスパッといったし。いったいなんなんだろ、金剛番長みたいなガタイしやがって」これだけインパクトのある自己紹介をしたのにニヤリともせずに行っちゃうなんて。まさか、アレが根っ子からの『漢』なのか……?「あの、私あの人知ってますよ?」「僕も知ってるよ。結構有名人だよね」「え、マジ? キツネさん知ってた?」「うんにゃ全然。いったい誰なのあの人」「はい、あの人は―――」ブリング・デミトリ。まるでムキムキマッチョでも飲んだかのような身体に、激しく立てた頭髪。目元に一つ傷があり、どこの番長?と思わず聞いてしまいそうなヤツ。そして彼は有名人。その周囲を威圧する容貌に似合わず、意外と優しいナイス☆ガイ。荷物を持った老婆を見るやいなや駆けつける。ネコが轢かれそうになっているのなら当然の如く助け、子どもが溺れているのなら躊躇せず飛び込む。ちなみにネコさんも車に轢かれそうになったときに助けてもらったらしい。そんな彼だが協調性は余りなく、結構マイペース。喧嘩? そりゃ日常茶飯事ですよHAHAHA☆ と言わんばかりに生傷が絶えないらしい。教師陣からも目を付けられているが意外なことに成績がよく、何とも仕様がないとのこと。「うはぁ、本物だなそりゃ。嫉妬しちゃうぜ☆」「あまり無茶なことはしないでくれよ。彼、怒ったら怖そうだし」「わかってるっつの。なんかお前ホントに扱いが難しいなメガネ」「メガネメガネ言わないでくれよ……」そしてもう一人。番長に付き従うように後を付いていったスネオ。彼は?「あ、うん。あの人はね―――」スネィオ・ホネカワ。何もいらない。ただスネィオ・ホネカワ。虎の威を借る狐、プライスレス。むしろクーリングオフ。「うわぁ、本物だなそりゃ。マジ迷惑だぜ☆」「あんまり無茶なことはやめてくれよ。彼の親、怖そうだし……」「わかってるっつの。なんかお前ホントにメガネだな」「確かにメガネだけどさ……」そんなこんなでスタートしましたサバイバル。ナイフ一本ないこの状況でどうすんだよ。。。。。。一日目。「うん。一応この地図はあってるみたいだ。このまま断崖を歩き続けても三日もあればリゾートだね。……でも問題は」「まさかそこまで飲まず食わずで行けないしね」メガネ、お前地図読めるんだね。俺にはその線だらけの絵に何の意味があるのかさっぱりだよ。「その通りだね。やっぱり何度か森に入る必要があるみたいだ。食料の確保と……水がね」「だからさっさと森を抜けようよ。大丈夫、意外と何とかなるんじゃない?」落ち着けキツネさん。俺は森で遭難したことがあるが、とても生きて帰れるとは思えなかったぞ。本気で死を覚悟したんだ。あそこで墓荒らしに遭わなかったら俺は死んでた。マチガイネ。「森は嫌だな。まずこの地図に付いてるコンパスが頼りなさすぎる。何だこれ。明らかに壊れかけてんじゃん」「はい。大切にしなきゃ、です」そう言うとネコさんは大事そうに地図を懐にしまった。今使うのはメガネのだけ。そう決めている。マジで壊れかけなんだ。もうね、ちょっとでも力入れたらペキポトンって感じ。地図を渡されて確認なんざする暇もなく飛ばされてきた訳だが……この感じだとおそらく先に行った二人は大変なことになる。だってこれ絶対最後までもたないもん。ちょっとだけど、この授業の意図が読めてきた。「じゃぁ……今日はここまで歩こう。多分だけど、この線は川を表してるんだと思うんだ。水場に行けば魚なんかもいるだろうし、食料にもありつけそうだ」そう言ってメガネは地図を叩いた。あ、馬鹿―――、ペキンポトン……。「……唯一地図が読めるお前をリーダーにしたのは間違いか? どう思うメガネ?」「確かにメガネだけどさ……」黙々と歩く。黙々と。ざざぁん、ざざぁんという崖に波がぶつかってる音しか聞こえない。誰か喋れ。何だよこの空気は。いいじゃないかコンパスくらい。そんなことでメガネを責めても何にもならないぞ。いや、別に誰も責めてないんだけどね? 何となく雰囲気がね。……俺のせいとか言うなよ。「あ、えぇと何か、何だその……アレだな、メガネ。なぁアレだよなメガネ」「……無茶振りはよしてくれよ」「何だよ、こんなんじゃ楽しくないじゃんか」「……まぁ、そうだね」「てことで、今日はどうせ水場に向けてノンストップなんだろ? せめて喋ろう」「う、うん」みんな疲れてるのは判ってるんだけどさ、ここまで空気が重いと何とかしたくなる俺は大抵コンパで盛り上げ役。一気に飲んでつぶれて誰とも仲良くなる機会がなく解散。たまに泡吹いて救急車。後、ちんこに管を通される。涙目。そんな中、ようやくネコさんが意見を出してくれた。「あの、じゃあ……しりとりなんてどうです?」「おっと来ましたか。大体小学校の下校の時にやるよね」「は、はい。ちょっと童心に還ろうかと……」「それなら『る』攻めは無しで行こう。あれやられるととてもじゃないがこの空気は変えられん」いるんだよね絶対。『る』で攻めてくるヤツ。「じゃあネコ⇒キツネ⇒俺⇒メガネの順で行こうか」「ふっふっふ。手加減しないよ、ディフェクト君」「舐めるなよキツネ。こちとらしりとりでは負け知らずだぜ。あとドッヂボールでは神様級の扱いを受けたことがある」いや俺マジ強かったんだよ。『前世』での小学生時代はモテモテだったな。バレンタインディ☆にチョコをくれた子も居たんだが恥ずかしくて受け取れず終いだったぜ。何てことやってんだよ小学生の俺。そこは貰っとけよ小学生の俺。キスの一つや二つぶちかましてやればよかったんだよ。あぁ俺はなんて勿体無いことをしていたんだろうか。「それじゃあイクですよ…しりと『り』」「り……リャナンシ『ー』」「……い、でいいんだろ? い、い、い……一角獣のホーげふんげふん!! いっかくじゅ『う』!!」「今絶対『ん』が付きそうだったよね? ……う、うまづ『ら』」「ら、ら、ら…ラインバレル!」ネコさんっ!?ま、こんな感じでテクテクと、ね。。。。。。あたりはもう薄暗い。地図で見るとこんなに近いのになかなか着かないもんなんだねぇ。「いくらなんでも咽喉が渇いたぞメガネ。ついでに腹もへった」「そうだねぇ。私もちょっと疲れてきたかも」「……です」もちろん何度か休憩は挟んだ。気温もそこまで高くない。ていうかちょっと肌寒いくらい。それでも一日飲まずで食わずなのだ。いくら魔道師だろうと女の子が体験していいような状況じゃない。「大丈夫。もうすぐ着くよ」メガネは自信満々にそういった。その際に眼鏡がキラリと光る。うん。やっぱ管理局目指してるとか言ってるだけあるわ。眼鏡光るとこが一味違うよね。なかなかいい男。うほっ。「ここがここだから……うん。ここから森に入ってすぐに水場がある」「え゛っ、森に入んのかよ……」やだ。やだやだやぁだぁ! なんか居るって絶対! 怖いよぅ。「大丈夫さ。入るといっても100mも行かない。本当にすぐなんだ」「ホントに? ホントに大丈夫? 俺マジ森怖いんだよ?」「デスサイズ先生を倒した人とは思えない言動だね……」「暗いとこ苦手なんだよ……」「はっはっは。大丈夫さ、管理局を目指してる僕にかかれば獣の一匹や二ひ―――」―――ウゥォォォオオオオオン……。何処かから聞こえた獣の咆哮。おそらく狼等のイヌ科と想定。それは俺たちの心臓をしっかりと掴んだ。「一匹や二ひ……なに?」「……一匹や、二匹全然よよよよ余裕、さ」「ふぅ~ん」所詮メガネか。「キツネさん、ネコさん。いきまっしょい?」「あいあ~い」「はい」「あ、待ってくれよ!」眼鏡は放っておいて良い。アイツは何となく駄目な香りがする。俺はワシャワシャと茂みを掻き分け、森へ。ああ、すごい自然だねこれは。むしろ暗くて何も見えないねこれは。「……。あのさ、やっぱり明日の朝にしない? 絶対危ないってこれ。獣とか来ても気付く間もなくパクっとやられちゃうよ」「ぅえ~、でも私たち女の子だよ? やっぱ身体とか洗いたいじゃん。ねぇネコ?」「うえっ? あ、あの別に私は明日でも……」「よし判った。身体を洗うんだったら仕方ないよな。うん仕方ない」ああ~、仕方ないな。そうだよねぇ、女の子なんだし身体くらい洗いたいよね! うんうん。行きたくは無いが仕方なく、そう、俺は仕方なく歩を進めたのだ。メガネが言うにはここを真っ直ぐ、らしいがコンパスがないと真っ直ぐなんて進めない。そろりと慎重に、コンパスを壊さないように地図を取り出した。水場は……ここだな。うん。真っ直ぐ。結構足をとられるからちょっと進むだけでも結構時間かかるだろうし。「よし、俺が先頭。キツネさんとネコさんが中。殿はメガネ。頼むよ」はい、としっかり返事を聞き。進めや進め。ちょっとしたドラクエ気分。俺は一歩一歩慎重に歩を進める。もう暗い。本当にいつ獣たちの活動時間になってもいいんだし、それでなくとも警戒はしすぎて困ることはないでしょ。はてさてどうなることやらね。