さて、どんな方法があるかな。魔法でやるなんて楽しくない。もっと、きつい感じの。釘とか針とか。その辺のを爪の間に差し込んだりするのも効果的ですよね。気持ち悪くて出来そうも無いですけど。何の話かって?そりゃ、「キャメルのお仕置きですよ」『普通には・終わらせ・ませんよ』「くそ、これが女の教員なら……」『穴という・穴に・色んなものを・流し込んで・やれる・ものを……』仕方ねえ。俺には単純なお仕置きしか思いつかない。やっぱこういうときはユーノを頼ろう。ユーノに泣きつこう。うえぇぇええんっ! 腕が折れちゃったよユーノん!! とか言ってみよう。く、くくく。キャメルめ、命はねーぞ。ユーノのお仕置きを喰らってしまえば、貴様など……欠片くらいなら、残るかなぁ?「……腕、どんな感じですか?」「おお、大分痛くなくなってきたよ。ありがと、ネコさん」いま俺はネコさんに治療してもらってる最中。よかった。ネコさんが治癒使えてホント良かった。まぁ、骨折は簡単に治らないからホンの気休め程度だし、実際にいま痛い。でもやらないよりマシでしょう。「はぁ、それにしてもそんなバケモノみたいなのが居るんだね、この森」「クマーな。遭ったらまず逃げる事を考えてね。子供だったらいいかも知んないけど、親が出てきたら死ぬから」「でもよくそんなのから逃げて来れたものね?」「はじめの一歩読んでたからな。いまの俺はブライアン・ホークに勝てる」クマーに勝てたんだ。きっといけると俺は確信してる。あの上体反らしは俺には通用せんぞ。「ブライアン・ホークって……魔法使いでもなんでもない、ただの物理の先生じゃないか。何か恨みでもあるのかい?」「……俺らの学校にはブライアン・ホークがいるんだね……はは」マジであの学校なんなんだろ。変に特殊なやつ多くないか?頼む。頼むからマトモな教員を用意してくれ。特にデスサイズとキャメルは即刻クビにしたほうがいいと思うよ、俺は。だってあいつら、ほんとに死んじゃうじゃんか。授業で。ほんっとに、死んじゃうんだぜ? 問題になってもなんら不思議じゃねーよ。マスコミ殺到だよ。校長辞職だよ。「はぁ、まったくね……とりあえず、生きて帰んなきゃね。キャメル殴るにしたって、こっから出なきゃどうしようもないか」……よし、もういい。右手を握り締めた。ぷらぷら振ってみるが、やっぱり痛い。全然、完全に治ってねー。いや、わかってた事なんだけどね。治癒の魔法って、ホントに外傷を治すって感じだもんね。内部にまで届かない。ユーノがやってくれるとネコさんより効くんだけど……居ない人を想っても、意味がないか。「シェル」『イエス』「今の俺は、ちょっとカッコいいな」『勘違いも・甚だしいです。マスターは……』「き さ ま ! !」『ちょっと・ではなく・超・カッコイイです』「……結婚しちゃう?」『夜の仕事は・任せて・ください』いざ、森。暗い。怖い。行きたくない。クマーが出るし、他の獣だって。決して安全じゃない。……でも、行かなきゃね。番長居るだろうし、スネオ居るだろうし。「ネコさん、右をお願い」「はい、任せてください」「キツネさんは真ん中」「はいはい。置いて行かないでよ?」「分かってるよ。んで、メガネ。お前先頭な?」「……理由を聞いても?」「デバイス組で両サイドを固めて守る。身体強化が出来るお前が走って全体を引っ張る。何も出来ないキツネさんが真ん中でひいこら付いて来る。何か質問は?」「無い、です……」「よし」フォーメーションはこんな感じ。三角形の中にキツネさんが居る感じですな。マジ役立たず。デバイスくらいもってこい、お前ら。そして、かなり走る事になるだろうから体力ない人が真ん中。俺はネコさんのほうが体力的に劣るかと思ってたが、意外な事にネコさん、スポーツ少女なのだ。バリバリ動いてる系なのだ。キツネさんはこっちも意外な事に、茶道とかやってた。聞けばどっかのお嬢なんだとさ。はぁ……なんでそんなのがこんな授業とったよ、ホント。「いいか~、まず自分の命最優先な? 特にメガネとキツネさんは誰かを助けようとかしなくていいから。ひたすら走って。それが一番ありがたいから。 んで、はぐれて、そこに危険がなかったらそこから動かないように。なんか居たら逃げて。助けに行くのは、それが許されてるのは俺一人だから。まぁ、安心して遭難しちゃってオッケー。自殺以外なら絶対助けるから。 ……さて、それでも死んじゃったら、そんときゃ恨みっこなしだかんね。おっけ?」「了解、ですぅ……」「大丈夫だって。悲観的過ぎだよ、ディフェクト君」「いや、そのくらい考えてても間違いじゃないよ。それほどに彼が撃退したクマーは危険なんだ」クマーも怖いが、魔法が使えない二人を連れての夜森も怖い。まじキャメル性格死んでんな。アイツ本気で殺してやりてえ。帰ったら憶えとけよ……。「んじゃあ、ぶっ殺す!」「ブッちぎる! ですぅ!」「ファッキンベイベー!!」「……何なんだこれ……?」気合の入る言葉だよ。空気読めよメガネ。そんなだからメガネなんだよ。ほれ、なんか言ってみろ。気合の入る言葉。「なんか無いの?」「え、えぇと……メ、メガネェェェエエエ!!!」『死んで・しまいなさい』その通りだと思った俺は勝ち組。00/~『これが自然の恵みだぜ!』後編~そして俺たちは一歩森に踏み込んだ。しかしその瞬間、「クマー」「―――出てくるの早ぇよ!!」『―――fist explosion―――』どんッ!さっきのと一緒のヤツかどうかは分からないが、とりあえずファーストフォームで眉間に魔法を叩き込んだ。「―――げふぁっ!!」妙に生々しい苦悶の声を上げ、どっか飛んでいくクマー。「……」『……』うん。俺は悪くない。出てきたあいつが悪い。俺の事食えるとか思ってた奴が。右腕がじんじんと熱を帯びてくる。いてぇ。やっぱいてぇ。「よし、走れメガネ」「り、了解!」出発進行!隊列はそのまま三角形で走り始めた。キツネさんとネコさんが何かひそひそ言ってるけど聞こえない。虐待とかまったく聞こえない。ひそひそひそひそ。聞こえない。「あ、あ~、しかし楽勝だったな。クマーでも、やっぱり子供だな!」『魔法さえ・使えるのなら・大した事は・無い・ようですね!』ひそひそ。「いやぁ、素手では骨折するくらい頑張んなきゃいけなかったけど、やっぱ偉大だな、魔法!」『そう・でしょう! 私の・有り難さが・分かりましたか?』「愛してるぜぇ!」『……マスター・結婚・しましょう』ひそひそ。「……」『……』ひそひそひそひそ。「いい加減やかましいんじゃ貴様らぁあ!!」『クマーの・餌に・してしまい・ますよ!!』走れや走れ。夜の森では大したスピードは出ない。けどまぁ、このスピードで行けば何とかクリアは出来るはず。「疲れた人ー」「はぁ、はぁ、もう、限界、だよ私っ!」「はいは~い、限界とか言える人はまだまだ行けま~す!!」「はひぃ……っ!」キツネさんを責めるぜ。ネコさんの分まで責め倒す。Sの人間を犯す。コレはたまらんでごわす。かれこれ一時間って所でしょうか。ジョギングよりも少しだけ速いくらいのスピードなんだけど、それでもキツネさんにはキツイみたい。キツネさん以外は身体強化使ってるしね。ドンマイ。デバイス置いてきた君が悪い。スピードはこれ以上早くできないけど、もうキツネさんが潰れるまでこのまま行こうかと思ってるんだ。「がんばれキツネさん! 何でだよ! 諦めんな、追いかけろよ! ダメなんだってそんなんじゃ! もっともっと、もっと熱くなれよ! ほら行ったぞ! だから追いかけろって! 取れないところに落としてないよ!」「だぁっ!! ちょっとうっさいよ!!」「はいは~い」こんな感じで励ましながら走ってるんだ☆わしゃわしゃと先頭のメガネが茂みを掻き分けながら先導しつつ、それに付いていってます。んでついに、「もう、だめぇ……」キツネさんが後ろに倒れた。前に向かって倒れるようならまだ走らせるつもりだったんだけど、後ろに倒れるって事はホントにアウトな訳なのです。あとは任せろキツネさん。がっつりと荷物のようにキツネさんを担ぎ、さぁさぁ走れ! メロスのように!キツネさんの肉が中々良いアクセントになって、とてもやる気が出てくるんだ。隣走ってるネコさんからの視線が痛いけど、そんなの気にしてちゃいけねぇ。俺はもうクマーには会いたくないし、一刻も早く番長たち助けなきゃだし。ネコさんが担ぐより俺が担いだほうが早い。てか番長何処にいるんだろうか。このままゴールしちゃったらどうしよう。一応探しに行ったほうが良いよね?「おいリーダー!」「はぁ、はぁ、なに、かな?」「番長たちはどうなってると思うかね?」「たぶん、死んで、るんじゃ、ないかな?」「え、マジで言ってんのか?」「っはは、っはぁ、冗談だよ!」そしてメガネは一度振り向きニヤリと笑った。おう、なかなか根性あるじゃないか。いいぞメガネ。そういうの好きだぞメガネ。良い冗談だ。こういう時は体力よりも精神的な物の方が先に参っちゃうしね。そんだけ軽口叩けるってことはまだまだいけるね、メガネ。「ネコさん、大丈夫?」「大丈夫です。キツネさんを担いでも余裕があるくらい大丈夫です」「いや、それは止めとこう」「……っ、レンジャー!!」ネコさん大分キてんな。訳わかんないこと口走りながらスピードアップしましたよ。そんなに担ぎたかったのかい? やらせはせんよ! キツネさんは俺が担ぐ! ここで恩を売っておいて、そしてテクを伝授してもらうんだい!「おっしゃ、まだまだ、行けるぞ!! レンジャー!!」「レンジャー!!」「キツネさぁあん、好きですぅう!! レンジャー!!」「れへぇ、れんじゃぁあ……」寝とけ、キツネさん。レンジャー!!走るよ俺は。俺は走るよ。トータルで10時間経過。もう朝ですよ。時間的にはフルマラソンよりも全然多いんだけど、距離はまったく。第一森の中だし。そんなに早く動けるかっての。そして未だクマーにあっていない(最初以外)ところを見ると俺たちは多分運が良い。「かはっ、川、はっけ~ん……」「や、やぁっと、休憩、ですぅ……」結局メガネも潰れました。キツネさんが潰れて、多分それから3時間は走ってた。しかも先頭で。メガネの野郎相当の体力馬鹿だぜ、実際。デバイス無しの身体強化。サポートが無いんだから消費する魔力も多かったろうに。よく頑張ったよ。ちなみにメガネはキツネさんよりも体重が軽いのでネコさんが担いでます。とりあえず肩からぶらぶら担いでいたキツネさんを下ろす。適当な木の身体を預け、そしてなんとなしにバイタルチェック。「……む、心拍数が低い、危険な状態だ!!」「ひぃ、イヤですキツネさん!!」「冗談です」「……」「うん、ゴメン。だからそこまで睨まなくても良いじゃないか。そんな目をしてるとキツネさんに嫌われちゃうぞ」「……」「……よし、俺は川に危険が無いか見てくる。二人を起こしててくれ」逃げました。ネコテラコワス。あの目はヤバイ。なんかグルグルしてた。うちゅうのほうそくがみだれようとしてた。「おーこわこわ。キツネさん早めに何とかしないとほんとに下克上されちゃうよ」呟きながら茂みを掻き分け、さらさらと流れる川発見。うん。綺麗だ。これ飲める。ってか今までも結構飲んでた。腹下したらキャメル殴る。とりあえず不快な汗を流すべく両手を水につけ、ぱちゃぱちゃ水遊び。やべえ~、超気持ち良い。ヤベェよこれ、これヤベェ。最近の子供はおいしい?って聞かれてもヤベェって言うらしいけど……ヤベェ。「あ~、すんげぇ気持ち良い。もうここから一歩も動きたくない。俺はもう単位落としても良いからここから一歩も動きたくない」『あり・ですね』「だろ? いやいや、四単位如きで張り切りすぎたよね。こんなことなら普通の授業とっとくべきだよ」『まぁ・クマーも・殴れましたし・中々・よかったのでは・ありませんか?』「余計なフラグは立てるな。その発言はかなり危険だ」『クマー・クマー・クマー』「ちょ、おま」なんてシェルとじゃれ付いている時だった。川に足をつけて悦ってる俺の背後、そこでがさがさ物音がしたんだ。ええ、僕はとても嫌な予感がしました。なぜかって? それはこの状況が一日目と酷似していたってのもある。シェルは余計なフラグを立てるしね。けど、それ以上に、影だ。俺の身体をすっぽりと包んでしまう、その影。親クマー。脳裏にはそんな言葉しか出てきませんでしたよ。殺されると思ったかって? いえいえ全然。何しろ僕には融合装着型デバイス、シェルブリットが付いていますから。負けるなんて微塵も思わなかったですよ。何しろシェルは空気を読んで、影が僕の身体にかかった瞬間にスタンバイ・レディ。後ろから、ぐぅ、と声が聞こえた瞬間には衝撃の、「―――ファーストブリットォ!!」『―――fist exp―――ちょちょちょぉぉおお!!』「……ぐ、ぅ、コイツの、回復を……」「ありゃ、ば、番長!!」そこにいたのは番長(俺の中では)ことブリング・デミトリさんでした。。。。。。さて、運良く合流できた俺達。けどスネオが死にかけ。番長も傷だらけ。ネコさんが額に汗掻きながら必至に必至に回復魔法かけてる。……死にかけってのは言いすぎたな。大怪我って所だ。外傷で運が良かったねスネオ。中身を傷つけてたら間違いなく死んでたぞ。これはやっぱ死にかけでいいのかな?「……ネコさん、代わるよ。ちょっと休んでて」「いえ、私がやります。私は戦えないから、この位……」「そっか……じゃあ、お願いしようかな」「任せてください!」ネコさん、戦闘は苦手らしい。一応攻撃魔法は使えるけど下手糞なんだとか。ロープレ的に言うとバリバリ動いちゃう系の白魔導師なのだ。そんなのいねぇか。それにしてもだ、この傷は親クマーにやられたとみた。番長たち遭遇しちゃったんじゃないのか、親クマーと。命からがら逃げてきたのか?「番長」「ブリングだ」「ブリング」「なんだ」「敵は何だったんだ?」「分からん。図体のデカイ熊みたいなやつだ」「何でやられた?」「スネィオがまだ生まれたばかりの熊を何処かからか見つけてきた。それに怒ったんだろう」「ほんとに余計な事しかしねぇのな、スネオ」「スネィオだ」「スネィオ」しっかし、いくら見つけたからって普通パクるか? クマーの赤ちゃんだぞ? どうなるかなんて分かりきってると思うけどなぁ。スネオはよほどの馬鹿か、紙一重の天才だな。親クマーの一撃を喰らって生きているところを見るとなかなか運はいいようだけど……使えねぇよなぁ。流石に戦えないよねぇスネオ。「番長」「ブリングだ」「ブリング」「なんだ」「デバイス持ってきてる?」「ああ、一応な」……いけるかな? 一応テープレコーダー持ってきちゃったんだけどさ、これ聞かせたら……、「スイッチオン」「……?」『あー、あー、聞こえてるかな? キャメル先生だよ。これを聞いてるって事は着いたんだね、リゾートに。おめでとう。 はい、これから君たちに第二の試練を与えまーす。これからスタート地点に戻りましょう! これ聞いた時点でタイムリミット発動だからね。三十時間以内に戻ってくださーい。一応コテージにはカメラあるから、君たちが来た時間なんかも分かってる。ずるしちゃダメだよ? ああ、目に浮かぶな、君たちが“無理だよ!”とか言ってるのが。でも大丈夫。デバイスは持ち込み可能って、僕言ったよね? 持ってきてない人は残念無念。持ってきてた人はラッキッキー! この音声を最後まで聞いたら君たちは『飛行』以外の魔法が解禁されまーす。魔法使えるんだから、楽勝だよね? それじゃ、がんばってねーん』何回聞いてもいらつくな、これ。「何だそれは」「キャメルの遺言。俺が遺言にする」ダメか。そりゃそうだよね、こんな裏技でいけるんなら誰も苦労しないっての。ちくしょう。首輪さえ外せれば、番長の首輪さえ外せればかなりパーティーが強化されるのに。レベル99のNPC参入って感じなのに。インパクトの飛影くらいに反則っぽいのに。だって見た目からして強そうじゃん。顔面に傷があるんだぜ? これで強くないなんていったらそりゃ嘘だ。いいな~いいな~。俺もそのくらいガタイが欲しいなぁ。2m越えるとか最早人がゴミのようだろう。「あ、そういや番長は授業クリアする気ある?」「ブリングだ」「ブリングは?」「スネィオを病院に連れて行きたい。授業などどうでもいい事だ」「そ。んじゃ一緒に行こうね、今度はちゃんと」「……ああ、そうだな」それにしても何で番長はスネィオをこんなになってまで守ってやってるんだろうか。なんかあるのかな、この二人。……まさか……いや、いやいやいや、まさかね、うん。まさかまさか、ホ、ホ……。いや違うさ。この男の中の男みたいな奴が、まさかね……。「ねぇ、ホモ番長」「ブリングだ。ホモじゃない」「そっか、良かったよブリング」ホモじゃないようです。……良かった。ほんとに良かった。とりあえずメガネとキツネさんを起こそう。そんでちょこっとだけ休んで出発だ。地図的には半分を越えた所だし……うん、普通に間に合いそうだ。番長たちがめちゃくちゃ足遅かったりしたらアウトだけど、そんなことは無いだろう。さぁさぁ、スネオの怪我が治り次第行きますよ。番長もしっかり準備しててね。怪我は治ったみたいだが結局目の覚めないスネオは番長が担いでます。この中じゃ一番力持ちだしね。ちなみにキツネさんは目覚めてるけど走れそうに無いです。足が言うこと利かない……って言ってました。だから俺が担いでるわけなんだけどさ、「うぅ……ネコぉ……」「大丈夫です、大丈夫ですキツネさん。私が絶対守りますから」「愛してるぜぇ、ネコぉ……」肩の付近でいちゃいちゃされるとたまったもんじゃない。しかもキツネさんちょいちょい笑ってるしね。ネコさんおちょくられてるのに真剣に答えてる。なんていうか……もう勝手にしてって感じだよね。五人だぜ? まぁスネオは目が覚めてないから四人みたいなもんだけどさ、そんな中、衆目があるのにここまでできるか? さっきから耳元でチュッチュチュッチュうるせぇんだよ!!「ちくしょう、俺にもユーノがいればこのくらい……」『張り合わないで・下さい』「そういえばユーノ君はこの授業とらなかったんだね。君たちっていつも一緒にいるイメージあるんだけど」「おう、ユーノはなんか物理学とるとか言ってた。アイツの脳みそってめっちゃ硬そうだよな。考古学者になりたいって聞いたことあるけど……」「へぇ、管理局には入らないのかな?」「さてね、将来どうなるかはわかんないよ。メガネは局に入りたいんだ?」「公言してる通りさ。僕は武装隊に入りたいんだ」「ふぅん……」無理だろうがな! 残念! 原作知識舐めんじゃねぇぞ! ふはははは~☆……けど体力は合格かもね、メガネ。ちょっと休んだだけなのにもう回復してやがる。やっぱ凄いんだねぇ皆。俺だったら絶対走れてない。今はシェルが良い具合に魔力の配分決めて強化してくれてるけどさ、シェル居なかったら身体強化すら禄に出来ないぜ、俺は。まぁ、それを言うなら本物の化け物は番長だけどね。強化なしでガンガン進んでますよ。人一人抱えてガンガン進んでますよ。藪なんて何のその、邪魔な木なんて何のその。お~い、自然破壊は程々にしとけよ? 本物だぜ、本物の漢だぜ。そして、わっしゃわっしゃとひたすら真っ直ぐに進み続けている番長の足がぴたりと止まった。「ぅ……あう、うああっ!!」「落ち着けスネィオ、俺だ」「うあっ、ブ、ブリング……?」「ああそうだ」番長は険しかった表情を一度だけ緩めてスネオを地面に下ろした。少しだけふらつきながらスネオは立つと、「お、お前ぇえ! なんで僕を守らないんだ! 役立たず! 役立たずだお前!」「ああ、すまん」げしげしと番長にローキックを。おやおや? え、何? こういう力関係なの? 番長 < スネオなの?虎の威を借る狐っぽいなとは思ってたけど、もうそのまんま貰っちゃってるわけ? 借りてるんじゃないんだ?俺らが驚きに包まれている間にもスネオは番長を蹴る。殴る。叩く。すげぇ、なんだこれ。愛の鞭か? 番長にとってはご褒美なのか?……んな訳ないよね。「ちょ、ちょっと待てって、番長はボロボロになりながら俺たちのトコにお前を持ってきたんだぞ? 有難うぐらい言ってもいいんじゃない?」「お前は黙ってろよぉ! こ、ここコイツは僕のモンなんだ! 僕がどう扱ってもい、い、いいだろう!? ふひ、そ、そうだ、お前は僕のモンなんだよ!!」「……スネィオ、確かにお前が怪我をしたのは俺にも責任がある。だがそれを治してくれたのはあいつ等なんだ。あいつ等にだけは礼を言ってくれ」「うるっ、うるうるうるさいんだお前! 黙ってろよ!」うるうるうるさいんだな、よく分かりました。……歪んでやがる。スネオ、歪んでるよぉ……。唯我独尊系かよ、コイツ。メガネ完全にドン引きだよ。白い目で見てるよ。キツネコさんは我関せずを通してやがるが。なかなか良い性格してんね、二人とも。しかし流石にムカつくだろこれは。番長殴れよ。殴っていいよ。絶対役に立たないからぶん殴ってよこいつ。昏倒させてやってよ。アンタがやらないってんなら俺が、「ぴーぴーうるせぇよスネオ」「僕はスネィオだ!」「うるせぇなスネィオ」これ以上バイト数増やしたくないからお前らの過去とかは聞かないけどさ、いくらなんでもそりゃないぜ。ありがとうとごめんなさいは言えた方がいいと思うよ、まともな大人になりたいなら。……もう手遅れかな。「お前さ、そんなんでいいのか? 番長はお前を守ってくれたんだろうがよ、それを殴る蹴るってねぇ……性格悪いのが垣間見えてて気持ちわりぃんだよ。助けてくれた人に、ネコさんと番長にありがとうくらい言いやがれ」「だまっ、だ黙ってろって言ってるんだよ、そんなこと僕は頼んでない! マ、ママに言いつけるぞお前! 子供の癖に生意気だ!!」「あぁん!? デスサイズをぶっ殺す予定の俺様がママ如きに屈するとでも思ってんのかテメェ!!」「ぼ、僕のママは理事と懇意なんだ! お前なんかっ、お前なんかすぐに退学だ!!」「このっ、その前にお前殺してクマーの餌にしてやらぁボケが!!」拳を硬く握り、しかし振り上げたそれははスネオに届く前にメガネに止められた。と、止めるんじゃねぇメガネ! こんなクソガキ、修正してやるんだ!! ムカつくだろ? あり得ないだろ!? 人間以下だろコイツは! さっきまで自分が蹴ってた番長の後ろに隠れてるんだぜ?「……気持ちは分かるけどさ、止めといたほうが良いよ。君が退学になるのはもったいない」「なんだよ、殴らせろよ! 退学なんてなりたくないけど殴らせろよ!!」「すまん、本当にすまん……」「番長が謝る事なんて無い! 俺はスネオに言ってんだ!!」俺はスネオに御免なさいと有難うを言わせたいんだよ。ネコさんは必死になって治してくれてたんだよ? それをこんな態度とるとかあり得ちゃいけないでしょ、これ。「わ、私は気にしてないから良いですよ……?」「……皆人が良すぎるって。俺だけ悪者みたいじゃんか」「ディフェクト君の気持ちも分かるけどね、そんなの殴ってたら拳が汚れちゃうよ?」流石に空気を読んだのか、今まで口を出さなかった二人も俺を止める。ここで殴ったら俺は本当にエアクラッシャーになっちゃうので仕方なしに握り拳を解いた。「ふひ、ふひひ、なんだよ、偉そうな事言って結局殴れないんじゃないか!」「あーあー聞こえなーい!」……ち、ちくしょう。腹の虫が収まらねぇ! なんか殴りたい。なんか殴りたい!! メガネちくしょう! 殴らせろちくしょう!とまぁ、相当に腹が立ってたわけだ。思えば、俺のそんな気持ちを嗅ぎ取ってきたのかもしれない。その時俺は本当に何かを殴りたかった。ストレスの発散をしなければ髪の毛が抜け落ちるかと思ったんだ。だからってねぇ……。「ぐゥ、グルル……」「うそぉん……」あ、騒ぎすぎですか? ここら辺縄張りでした? ごめんなさいね、すぐに帰りますから……。「グルァァアアアアアアア!!!」「なして出てきたかお前ぇえ!!!」親クマー、出現!!「逃げ―――」るが勝ちとは言いますが、それは逃げ切れたらの話なのです。逃げ切れないでむしゃむしゃ食べられちゃったら、そりゃ向こうの勝ちだよね。ちらりと見た感じ、推定2.5m。俺らより足が速いの確定ですよ。だから俺は逃げ―――、「―――るか馬鹿ヤロウ!!」『ファーストフォーム・セットアップ』クマーが振り上げた前腕はスネオを狙っていた。番長がスネオの前に立つが、そりゃダメだ。俺はクマーがその狂爪を振り下ろすよりも早くジャンプ。「んだりゃあ!!」構築しかけのファーストフォームで顔面をぶん殴った。ごつんと固い感触。腕が痛い。骨が。魔法は撃てなかったがバリバリ身体強化し、力いっぱい殴ってやったのだ。しかしそれでもクマーは少しだけ涎を撒き散らしただけ。その前腕は依然番長(の後ろのスネオ)に。「うわああ! 嫌だ嫌だ!!」スネオがやかましい中、クマーの腕は振り下ろされた。。。。。。「血が止まらん……」『大丈夫です。早めに・病院に・連れて行けば・死ぬことは・ないでしょう』クマーの魔法爪はしっかりと番長にヒットした。首から胸にかけて大きな三本ラインが出来ている。そこから血がドピュドピュ出てるんだが……これホントにマズイって。いや、むしろ番長のほうから当たりに行ったようなものなんだけどね。スネオが背にいたから。んな奴守る価値無いのに、馬鹿なことしちゃって。ん? クマー?いるよ、目の前に。ネコさん結界の中に逃げ込んだ俺たちの真ん前に。ふざけた事に結界には手を出さず、ネコさんの魔力切れを狙ってやがる。ごろんと横になり、薄目を開けてこちらを観察していた。番長の傷をどうにかこうにか治癒してるんだけど……やっぱ俺はダメだな。なかなか治らん。ユーノだったら絶対一発なのに。「ディフェクト君、僕が」「はいはい、囮になるとかそんなのいいから。まったく必要なし」「でも、この状況はマズイ」「大丈夫、何とかするから。だから少し黙っててくれ、集中が切れる」治癒魔術、意外と集中してなきゃならないんです。しかも俺の魔力はすぐ切れちゃうし、一刻も早く番長の傷を治さなきゃならん訳ですよ。小さく深呼吸しながら治癒を。キツネさんはネコさんの腕を取りながら一生懸命がんばれ、がんばれって。いいね、ネコさんも気合入るだろうさ。結界の維持は割と魔力喰うしね。しかもクマーが目の前にいるわけだし、正直怖いだろう。メガネもメガネで一生懸命打開策を考えてるし、囮になるとか言い出す所見ると結構肝が据わってる奴だ。しかし、だがしかし、「……くそう、ちくしょうっ、こんな授業とるんじゃなかった、とるんじゃなかったぁ……、うぅ、いやだ、死にたくない……」ええその通り、スネオです。いい加減我慢も限界どころか天元突破しそうなんですが……。もう結界の外に放り投げても良いんじゃないかな?「何でこんなことになるんだよ、何でこんなことになるんだよ」二回言うな。「ブリングのせいだ、アイツが僕の事弱いと思ってるから、ブリングのくせに、守っていい気になってるんだ……勝手に怪我して、怪我なんて、馬鹿みたいだ……。ああ、くそ、こんな授業とったから……」血管が切れる音ってさ、“ブチ”じゃないんだぜ? なんかね、“みちっ”とか“めちゃっ”とか。初めて聞いたけど、そんな感じでした。番長の傷もちょっとよくなり、何とか出血も抑えて、「おらあっ!!」骨が相当に痛かったんですが、本気で殴りました。ええ、スネオをです。スネオはぎょ、と何語か分からない言葉を吐き出しながらその場に倒れ伏した。鼻血を出しながら、驚いたような顔の隣に白い何かが……歯かな?流石に今回は皆切羽詰ってるんで止められるようなことも無かったです。「な、ななにをするんだ! 僕のマ、マ、マママママは理事と―――」「さっき聞いたよ、お前のマママママママの話は。ちゃんと憶えてる」「退学だぞ! 退学にビョッ!!」もう一発。結界の中は狭い。スネオもそれを分かっているのか、転げて避けるような事は無く、必至に結界内に留まろうと踏ん張っていた。涙目で見上げてくるスネオの胸倉を掴み上げ、「お前も学校に入学できてるんだからそれなりには魔法使えるんだろ? 存在がウンコだからってクソの役にも立たないバカで居続けなくてもいいんだよ?」「うる、うるさいんだ……お前ら、皆、皆っ! そっちが勝手に期待して、それで勝手に離れていったんじゃないか!!」「知らないよ、そんなこと。お前の過去に興味は無いし、あんまり知りたいとも思わないし。俺って人に甘いところあるからさ、そういうの知っちゃったらいいよいいよって言っちゃいそうなんだもん」「そ、そんな勝手なことで人を殴るなよ! 結局気に入らないだけなんだろ!!」「変なこと言うね、お前。気に入らない以外に人を殴る理由ってなんだよ」いやまぁそりゃボクサーとかだったら別だけどさ。「ちくしょう! ちくしょう! こんな授業とったから、ブリングが、ブリングが……! 勝手に守って、勝手にやられたんだ、僕のせいじゃないんだ……!!」「一度こうと決めたら、自分で選んだんなら決して迷うな。迷えばそれが他者に伝染する。選んだら進め。進み続けろ! ……これさ、俺がリスペクトしてる人が言ってたんだけど……凄いだろ? ええおい? 進み続けるんだぜ? お前もキンタマ付いてるんだったらさ、ちょっとくらい……」「うるうるっ、うるさい黙れ黙れぇえ!! 放せ! 僕に関わるなあ!!」胸倉を掴み上げていた左腕を弾かれた。スネオは崩れ落ちながら、髪の毛を振り乱しながら言う。「僕には何も出来ない!! だって魔法も使えないんだ! ふひっ、そうだ! あんな熊みたいな奴、お前らが倒せよ!! 魔法が使えないんだ、僕は!! 僕は何もしない! してやるもんか!!」「……お前……」こいつもうダメだ。何があったらこんな、なんでこんなシンジ君みたいになっちゃってるんだよ。いや、妙に強情な分シンジ君より酷いかも……。コイツはアレかな、関わらないほうがいい人種かな? 俺、何がどうあってもスネオと仲良くなれそうに無いよ、マジで。番長は何でこんな奴と付き合ってるんだろう。人の縁ってのは不思議なモンですなぁ。捨て置いた。未だブツブツ何か言ってるスネオを。うん。関わるまい。こんなことより番長だ。もうちょっと治癒かけてやろう。「あれ? 目ぇ覚めてんじゃん」「……痛いな」「そりゃあね、まだ完全に治ってないし」番長が怪我の事を言ってるんじゃないって分かってたんだけど、まぁ、スネオもなんか可哀想だしね。頭が。「……後はいい。自分で出来る」「いやいや、アンタ魔法封じられてるから」「そうでもないようだ」番長は身体を起こすと無造作に巻いてある首輪を握った。少しだけ力を入れたかのように見えれば、次の瞬間、「むんっ」ブチ。……うそぉ? 俺めちゃめちゃ力入れてもビクともしなかったのに。て言うか鋼鉄製なのに、千切れましたよ?「さっきの熊の攻撃でな、少し傷が入っていたようだ」「いやいやいやいやいや!! 傷!? そういう問題かな!?」「お前たちは魔法に頼りすぎだ。魔法を鍛える以前に、まずは身体を鍛えろ。そうすれば熊の一撃をまともに喰らっても死なん」「……お恥ずかしい限りです……」き、鍛えろってもなぁ、俺が本格的な筋トレ初めていいのって後八年くらいは待っていただかないと……。まぁなんにせよクマーを撃退する算段が付いたわけで、よきかなよきかな。……スネオは狂ったみたいにブツブツなんか唱えてるけど。「リーダーよ」「……何だい?」「ちょっと行ってくらぁ」「そうかい。僕に何かできればいいんだけどね、役立たずみたいだ」「おう、最初っから分かってたこった」「酷いね君!」ホントの事だし。俺は結構正直者なんだよ。「キツネコさ~ん、ちょっと行ってくっからね、結界の維持お願いね!」「はうぅ……もう限界が近付いてますぅ!」「ああ、気にしなくて大丈夫だよ~。この子限界限界って言ってからが凄いんだから」「……それはどういう意味で?」「ん~、大体いつもこれからベッドが酷くなるって感じ」「え、それは所謂潮ふk」「ぎゃー! 何言ってるですか! さっさと行って下さい!!」とりあえずマジでテクの伝授を頼みたい。教えてくれ、キツネさん!!「だ、そうです番長」「ブリングだ」「ブリング」「スネィオ、行ってくる。結界の中から出るなよ」スネオから返事は返ってこなかった。駄目な顔してやがる。とても駄目そうな顔してやがる。番長とスネオ。こいつらに何があったかは知らないさ。けど、ここでこんなになってちゃ駄目だ。皆怖いんだよ。恐ろしいんだよ。けど選んだんだ。だから文句も出ないだろ? 俺に力が無かったら文句たらたらだと思いますがね。だから強制はしない。ただ一つだけ、「選んだら進め。進み続けろ、だ」俺の目玉は進み続けるために前に付いてる。だったら行こう。セットアップ。結界から一歩を踏み出した。そしてクマーはのっそりと身体を起こした。表情など読めるはずも無いのだが、何となく哂った様な気がする。やっと出てきたか、と。喰われに出てきたか、と。っは、馬鹿め。逆に喰ってやるわ、熊野郎。牽制か、クマーはいきなり襲ってくるようなことは無かった。ジリジリと、円を描くように俺たちの距離は縮まりる。一秒が十秒にも二十秒にも感じた。ぐるる、と咽喉を鳴らすクマーの口から涎が滴り落ち、それが合図となり、行くぞ、と足に、力をいれ―――、「行く」耳に聞こえる声に虚を付かれた。出そうとした足がびくりと止まる。無造作。俺は格闘の師事を特定の誰かからきちんと受けたことは無い。授業で習って、それをまだ子供の自分なりに、動きやすいように改変し、そこからまたユーノに見てもらい形作る。そんな『なんちゃって格闘技』しかしていない俺が言うのもなんだが、番長の歩の進め方、それはあまりに無造作だった。最初の位置から動いていない番長は、ずん、ずん、ずん!その歩幅を如何なく発揮。大股に歩いて行きクマーの攻撃制空圏内に入って行き、クマーも呆気にとられたように動かなかった。ひょ?「守るべき者が守られている。今の俺は強いぞ、獣」番長に脅威を感じたのか、クマーは後ろ足で立ち上がり自身の体を大きく見せようと両腕を振り上げた。でかい。番長もでかいが、それ以上に。「グルゥアアアアアアアアアア!!!」咆哮。耳を劈くソレには俺も一瞬からだが固くなるのを感じた。けど、やっぱり番長は、番長だ。「それがぁ、どうしたぁぁぁああああああぁぁぁああああああぁぁああああああああああああ!!!」あは、アンタ最高!!あんなに巨体を、さらに大きく見せているクマーが、その威がなんとちっぽけなことか。なんだか俺まででかくなった様な気分。虎の威を借る狐。分かるわその気持ち。俺の背中に輝く三枚の羽。番長の右腕にいつの間にかセットアップされている……なんだろうか、アレは。「シェル準備は?」『いつでも』そして俺がこそこそと隠れながらクマーの背後に立つと、ついにクマーの前腕が番長に向かって振り下ろされた。魔力の軌跡を残し番長に。肉の打つ音。轟音ではないものの、あまり耳にしたくない。番長はもろに喰らっていた。左の肩に深々と爪が刺さって、しかしそれでも番長は凶悪に笑う。瞳が語っていた。この程度か、と。ハードボイルドだ。やせ我慢だ。痛くないはずが無い。「……アルトアイゼン」番長は静かに呟く。突っ込みません。勝つまでは。位置的に見えないが、番長がクマーの腹部に拳を添えたようだった。同時に俺も、「行くぞ」背中の羽は一枚ではなく、その三枚が時間差を置き、全てはらはらと崩れ落ちていく。「止められるなら……止めてみろ。リボルビングステーク!!」番長が放った魔法。クマーの腹部で光が走った。どぱぁっ!! どぱぁっ!! と断続的にそれは続き、びくんびくんとクマーの背が跳ね上がる。悪あがきか、番長の首筋に噛み付くが、それでも魔法を放つのを止めなかった。ばちゃばちゃ水っぽい音がするのが気持ち悪い。番長は顔面を血に染ながらも凶悪な笑みをさらにさらに深く刻み、俺と目が合った。殺せ。あいあい了解。そしてアクセルフィンは全て砕け散った。衝撃も、撃滅も、抹殺も、全部この手に詰め込んで、「……トリプルフィンモーションっ!」背中で爆発が起こった。思わずつんのめりそうになるのを押さえながらチャージ・アタック。三乗の黄金を軌跡に、その速度は最高潮まで。セカンドフォームの加速を越えるか超えないかの速度。ぎしりと体がきしみ、クマーの後頭部に向かって、「死んじゃいなぁ!」『―――fist explosion burst―――』くまー の あたま が ぶっとんだ!。。。。。ぱちぱちと焚き火を囲む俺達。……俺はイヤだっていったんだけどね、番長が聞かないんだ。喰え。いらない。喰え。……いらない。喰え。いらねぇって言ってんだよ!喰え。だからっ!喰えええええええええええええええええ!!!!了解!!くらいだったかな、大体。これクマーだぜ? もしかしたらプレシアが召喚した奴かもしれないんだぜ? 半端なく食いたくねぇ。けど番長に言わせると殺したんだから食うのが当たり前、だそうです。いや、もちろん全部じゃなくてね、一口でもいいって言ってんだけどさ……。ええいママよ。プレシアママよ。「いた、いただきまぁす……」もそりと一口だけ口に含んだ。途端に広がる獣臭。くさい。肉も硬い。まず、い。これは、かなり不味いよ……。「どう、ディフェクト君……?」「た、助けて……こ、これ」人が食っていいもんじゃねぇよって言おうとした時なんだ。またもがさがさと茂みが。もういい。これ以上はもういい!瞬間、身構え拳を前に突き出した。しかし、「きゅぅ」出てきたのはまだ子クマーにも成りきれていない幼クマーだった。わかります。何もかもが分かります。しかしごめんなさいは言いません。幼クマーは焚き火と、その上に吊ってある肉の塊を一瞥するとこちらに背を向けと茂みに戻っていった。「ディフェクト君、今のって……」「……うまい」「え?」「超美味い!! 御代わりだ番長!!」「ブリングだ」「御代わりだブリング!!」そんなこんなな無人島。「これが自然の恵みだぜ」「お前が言うのかよ……」番長自重。