試験の結果待ちの今、特に何もすることがなく、適当にアースラの艦内を掃除。そう、俺は意外と義理堅いんだぜ? 大分お世話になってるからその位するさ。っていうか、今のトコ民間人な俺を次元航行艦に置いてるってのが信じられんね。まぁたしかにフェイトの姉弟ではあるんだが、それでも普通じゃないね、リンディさん。いいひと過ぎ。俺はちょっと苦手だけど。ぎゅと雑巾を絞って、そして隣を見れば、「おやおやフェイトや、雑巾はそうやって絞るんじゃないぞ?」「ほぇ?」バケツにじゃぶじゃぶ雑巾をつけて、フェイトはなんと雑巾を横絞りにしてやがるのだ。なっちゃいねぇ。まったくなっちゃいねぇな。雑巾の絞り方すら知らねぇってか。かわいすぎんだろうが常識的に考えて。「そうじゃなくてね、こうやって、縦にしてこう絞るんだよ」「こ、こう?」「そうそう。どうだ、そっちのほうが力入る気しねえ?」「うん、入る気する」にこにこへらへら笑っているフェイトは、ほんと、お姉ちゃんでよかった。こうやってまったりしながら人生をこのまま終えてもいい気がしてきましたよ。ふへ、うへへ、ニートなりてぇ。エースが始まるのは十月の中旬とか、確かその辺だったからね。これはなんか妙に覚えてんだよね。たぶんシグナムの冬服に妙に萌えたからだと思う。んで、今は七月。だからヴォルケンリッターがリンカーコア集め始めるのはまだあと三ヶ月くらい先ってこった。夏休みですよ。俺にとっちゃ今は夏休みなんだよ! いいだろちょっと位ゆっくりしても! 目覚めて速攻で管理局入り何だぜ? 考えらんね。もう何も見えねえ。俺、こんなにがんばる子だったっけ? だらだらするために使われる原作知識も可哀想ですなぁ。実際エースとか俺がすること無いからね。もう全部ユーノ頼みだからね。俺は管理局入って、フェイトの色々を助けて、ユーノから色々教えてもらって、んではやてんトコいく。そして美味しいトコだけ持っていく! それ、だけ、だぁぁああ!「キタコレ」「兄さん?」「お、ごめごめ。よし、この廊下終わったらご飯食べに行こうぜ」「うん!」ピッカピカにしてやるぜい!06/ビギンズ・ヒア「んで俺はそこで言った訳だ。“走るでクマー!”」「う、うんうん!」「あのときのメガネったらなかったな。了解でクマー! とか言いながら全力疾走だからな。笑いをこらえるのが大変だったぜ」「でもでも、メガネさんは頑張ったね。兄さんを背負ってずっと歩いたんだよね?」「そうなんだよ。なかなか根性あるやつでさ、なんか俺の学校生活の思い出にはやたらとアイツが出てきやがる」そうなんだ、とにこにこしながらミートソーススパゲティを食べているフェイト。唇がミートソース色になってる。しかたないぜ。しかたない可愛さだぜ。「くち、ソース付いてるぞ」「ん、……ん、取れた、かな?」「いやいや、舐めて取れるようなモンじゃないって。フェイトの舌にもミートソースさんはいらっしゃるんですよ?」「んぅー、……と、取れた?」「いやだから……」つい、と唇を突き出してくる。「……お……」「兄さん?」まて、相手は姉だぞ。妹だぞ。何を考えてるっていうんだディフェクト。お前は鬼畜にも劣る馬鹿だってのか。……うん。いや待て。たしかに俺は馬鹿だが、それは駄目だろ。姉弟なんだぞ! 実の、母親の股から生まれた訳ではないが、それでも確実に血が繋がっている姉なんだぞ!『ナプキンが・見当たり・ませんね』なんて事だ。ナプキンが無いなんて、何てことだ。なんという情報提供だ!だったら何でフェイトの唇についているミートソースを舐めとってやればいいというんだ。……なんだって? おいおいちょっと待ってくれよ。舐めとってやればいいなんて、そんな事はやめておけよ。それは違う。俺は馬鹿だけど、ば、馬鹿だけど……。だが待て。俺はいつの間にフェイトの肩を掴んでいるっていうんだ。またか。またシェルの仕業だってのか!「にい、さん……」何故か。ああまったく分からないが、何故かフェイトが目を瞑った。正直ミートソースで口汚して何やってんだよってところなんだが、それすらも可愛いんだ。……うん。おかしいですよ、ディフェクトさん。はい止め止め。こんなまともじゃない事してたら俺の頭ホントにおかしくなっちゃう。はぁ、ホントに何やってんだろ。そろそろ一発ヌいとかなきゃね。溜まり過ぎて脳がなんかおかしくなってんだよ。ああよかった。大丈夫大丈夫。俺はまともな人間だ。うん、まだ大丈夫。「あぶねぇあぶねぇ」一息つこうぜ。そうだぜ。そうなんだぜ。───むちゅ☆……? な、なんだってー!どうしたっていうんだ俺! まて、待つんだ俺! これが、これが俺の望んでいた事だって言うのかああああ! うあぁあああ! んあぁぁああああ!……はい。そんなこんなで久しぶりにフェイトと……挨拶? なんだこれ。最早挨拶にすらなってねえじゃねえか。馬鹿か俺。俺馬鹿か。ぺろぺろとミートソース味のフェイトの唇を堪能して、「何をしているッ!」「ごろっぽ!」ごす! となにやら鈍器のようなもので後頭部を殴られた感触。か、角が! なんかの角が刺さった! いってえ!「人前で……、食堂だぞここ。馬鹿か君は」「つい今しがた自覚したばっかだよちくしょう!!」俺の蛮行を止めてくれたのはクロノでした。ちくしょう、ちくしょう! お盆の角は痛かったけど許してやるよ! まさか俺も自制しきれないだなんて思わなかったんだよ!いつの間にかなんだ。いつの間にかむちゅなんだ!俺が本物の変態になった瞬間に引き戻してくれたんだろう? そうなんだろう!「お、終わり?」「……フェイトさんや、兄さんを誘惑するのは程々にしておくれ。そのうち俺ホントに捕まっちゃうよ?」「そしたら一緒だね。私も捕まっちゃったし……、えへへ」「……」ぼくのおねえさんはたぶんへんたい。板を、立ててこようかって、そう思ってるんだ。俺だけで埋まっちゃうと思うんだけど、そうしようかなって。そんな俺の心情を読んでいるのか、クロノはほとほと呆れたといった調子。「君らはほんとに……、どうなんだ実際。いいのかそれ?」「いいわきゃねえだろ! そのくらい俺もわかってんだよ! だけど姉弟の自覚もほとんど無ぇのにあんな顔したフェイトが目の前にいてみろ! どうだ! さあどうなんだ!」「どうだって言われてもな……」「うんごめん。多分誰も何も言えんね」「わ、私はいいよ?」「……」俺にどうしろってんだ!「いやまぁ……そうなのかな? 君たちはまだ九歳だからな……、けどそろそろ他の目を気にしてくれ」「うん、いや、これはマジでごめん。アースラでの俺の評価が地に落ちる前に何とかする」「……私はいいのにな……」ぼそぼそと口の中だけで呟くフェイトのそれはまったく聞こえません。ああまったく聞こえません。いやいや、俺もそろそろ何とかするべきだと思ってたんだよ。せめて人前ではしないとかさ、そんな約束をしてもいいだろ。俺が変態って呼ばれるのはあんまり良くないけど我慢してやる。しかしフェイトだよ。フェイトが変態とか俺以外に言われるのはムカつく。フェイトも学校とか行くだろうしね。中学校の卒業までは地球に住むんだろうし、アリサとかすずかとかにハブられたらどうすんだよ。お姉ちゃんの学校生活を心配するのもお兄ちゃんの役目なのです。日本語がおかしいのはあんまり気にスンナ。ユーノが色々と説得を試みてるみたいだが……いまいち分かってるのかいないのか。フェイトってアホだしね。アホの子フェイトだからね。アホの子結構可愛いよアホの子。よし、目標は学校に通うまでに軽度のアホの子にしてやることだな。「兄さん?」「ん、任せとけ」「うん?」「俺がお前を実生活に耐えうるアホの子にしてやる」「あ、アホじゃないもんっ」「そんな筈は無い!」「そんな筈あるよぅ!」少しだけむくれながら言うフェイトは、うん、アースラで生活するようになってからちょっとずつだけど感情を表に出すようになった気がする。よきかなよきかな。いい変化だと俺は思ってる訳だ。ネガティブフェイトは卒業だね。ポジティブフェイトに成れとは言わないから、普通のフェイトになりなよ。そしてフェイトの膨れたほっぺを突付きながらサバ味噌定食をパクパクと。俺の指をモグモグし始めたフェイトは見なかった事にする。「ディフェクト、このあと何か用事は?」「ん~、結果待ちだから得にすること無いんだよね。言えば暇である、と」「じゃあちょっと訓練に付き合ってくれ」「断る。断固たる決意を持って断る。断固ディフェクト」「……なんでだ」「痛い。きつい。苦しい。勝てない。……お前と訓練しても俺が全然楽しく無いじゃんか!」マジ手加減とかしてくれないからね、クロノ。いつも本気で頑張ってる子を見るのは……、おじさん、ちょっと疲れちゃったよ。「フェイトとやれよ。お前一回負けた事あんだから」「いや、なんて言うかな……。相手にならないんだ」「……? マジで? お前そんなに?」「ああいや、そういう意味じゃない。フェイトはちょっと手加減しすぎるんだ。こっちが怪我しないように」「……そうなの?」ちょぽ、と俺の人差し指をフェイトは解放し、「ま、前にやったときに凄い怪我させちゃったし、なんかちょっとやりにくい……かも」そしてまた俺の指をしゃぶり始めるんだが……美味いのかな?クロノはちょっと苦笑いでうどんの汁をすすり、「てことで君だ」「断固ディフェクト」「相手がいないんだ。付き合え」「まだ居る。ユーノが居る」「相手にならないよ」「どういう意味で?」「簡単に勝ちすぎる」「……マジか」「マジだ」「嘘付くなよ。俺、ユーノと戦った事無いけど正直勝てる気しないぞ」大体あんなやつにどうやって勝てって言うんだ。拳を振ればまず当たらないだろ。魔法を使えば避けられて、そんでバインドに引っかかってお終い。そんな予想しか立てられんよ、俺。「相性の問題だろうね。君は多分勝てないと思う。フェイトもちょっと難しいだろうな。なのはだったら……、ぎりぎり勝てるかな?」「ん? 遠距離って事?」「というよりも魔力弾をどれだけ正確に動かせるか、って事かな。最近のなのはは凄いぞ。うかうかしてられない」「なのはが凄いのは前からだけど……、ああ、そっか。逃げ場なくして落とせば……うん、実際ユーノの身体能力そんなに高くないしな」「反面、君みたいな戦闘スタイルには強いだろうね。基本的に『待ち』のスタイルだからな、ユーノは。だから君たちが組むと厄介だよ。君が突っ込んでる間に色々と準備して、君が下がればユーノの罠か、それとも考え付かないような魔法か。結構無茶苦茶だよ、アイツも。 なのはのスターライトブレイカーあったろ? あの時“君ごと落としてもいい?”って念話がさ。まぁ最善だったから僕ごと落とせって言ったけど……、まさか味方を巻き込む作戦を躊躇なしに出してくるんだもんな。敵に回したくない参謀タイプだよ」「俺はタイマンでも勝てないけどな」ふむ。考えてみればユーノ自身は魔導師としてそこまで強い訳じゃないのかな?クロノが言うように『読まれる』前に落とせる程の実力を持ってる相手だったらもしかしたら簡単に勝てるのかも。ストライカーズのなのはとか……たとえが悪かったな。あのなのはには勝てるやつ居ねぇや。まぁ実際にクロノ勝ってるみたいだしなぁ。んー、何か釈然としないものを感じるな。ユーノの防御魔法は結構な強度だと思うんだけど……。「なぁ、ユーノ本気だった?」ちょっとした疑問。そんなに簡単に勝てるような奴じゃない。多分。俺の言葉にクロノは困ったように笑って、「さぁな。だけどアイツが本気で勝ちに来たなら勝負にならないと思うよ」「はてさて、それこそどういう意味で?」「ユーノは『戦闘』をしないだろ? どっちかって言うと勝利条件に重点を置くし、だからユーノと本気で戦う事になったときは、その時はもう負けてるんじゃないか?」「あん?」「ん、だから例えばユーノが敵だったとして、今この場で倒さなきゃなんないとするだろ? 僕がユーノと対峙してデバイスを向けたとする。そうするとユーノは防御魔法を使う訳じゃなくて、アースラを落とそうとするよ。自分だけは転移してたりね。盤上で戦ってる将棋の駒を将棋盤ごと消す、みたいな」「……ああ、何となく……」「怖い奴だと思うよ、まったく」な、なんか想像しちまったじゃねえか……。怖い。ユーノ超怖い。しかも簡単に想像できるってのが余計に怖いな。旗立ってね? これなんかのフラグじゃね?まて、いやおかしい。なんだって俺がユーノと戦わなくちゃなんないんだ。いやいや、ありえねえ。絶対やだ。ただでさえ勝てないのに、そんなユーノと敵対する事になってみろ。死ぬぜ。簡単に消えちゃいますぜ、俺。「……ねーな」考えれば考えるほどねーや。ユーノは俺のモンじゃ! 誰にも渡さん! ユーノいなきゃ俺は何にも出来ねえ!! うんうん。ユーノは俺の嫁……、じゃなくて、よ、嫁じゃなくて、何だ、ユーノはどのカテゴリに住んでるんだ!?……ないない、ユーノがフラグとか無い! 絶対無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い! 無いったら無いの!頭を悩ませながらサバ味噌定食を食べつくし、そしてついに中指までしゃぶり始めたフェイトは多分アホの子。「……フェイト、俺の指美味しい?」「にいはんのあひがする」「そ、そうか」ふぅ。落ち着くんだ俺。そうだ、素数を数えよう。素数は孤独な数字、それは俺の心を落ち着かせてくれる……。……このアホの子はどうやったら治るのかな?「あ、ディフェクトー」「ギョッ!」あ、現れやがった!「な、何? ボクの顔何か付いてる?」「お願いだ! 俺を殺さないでくれ!」「ちょ、なに、何の話!?」「よせ、やめるんだユーノ! 俺は死にたくねぇよぉお!!」いやなフラグ立てちまったんだよぅ! ゆーの! ゆーの! 俺のそばにいるんだユーノ!ああ駄目だ、どんな事をしてもフラグになっちまう! どうなってやがるんだ、ちくしょう、ちくしょう!「……何これ、どうしちゃったの?」「君の怖さを知ったってところじゃないのか?」「は? ボク、ディフェクトに何かした?」「さぁな」「ゆぅぅぅうううのぉぉおおおおお!!!」「だから何なんだよっ!」もう分からん!ユーノがどっかいくとか分からん!『……思い起こせば・これがユーノの幸せそうな顔を見た・最後の瞬間だったのである』「たまにゃ黙ってろテメエ!!」。。。。。ヴィータからの告白を受け、その苦悩を感じ、そして気付けなかった自分に腹が立った。庭先に立ちふっ、と短く息を吐きながら木刀を振るが、その剣は猫をも殺せまい。軟弱な、迷いがあるものだった。少しだけイライラした調子でシグナムは自身の掌を見、そして何度か開いたり閉じたり。今まで何人の人間を殺してきたか、ヴィータ同様シグナムも覚えていない。むしろそのような事を気にしたことも無いし、そもそもがそういう存在なのだ。小さな疑問が浮かんで、殺したからどうしたと昔のように言えないのは何故だろうか。「……そうか。そうだな」もちろん決まっていて、主のせい、おかげである。今の主のせいで殺しは出来なくなったが、今の主のおかげで殺さずにすむかもしれない。気が付かなかった主の変調。隠そうとしていたのであろうそれは、ヴォルケンリッターにとってはとても悲しい事である。主の剣となり、盾となり、そして戦うのが彼女たちの存在意義。主が危機に立たされれば己の身を削ってでもそのために働く。働きたい。なのに今回の主である八神はやては隠していたのだ。ずっと一緒にと言ったのは はやてだった。それ以外は望まないといったのは はやてだったのだ。忠実にその思いのままに暮らして、気が付いたらこちらが望むようになった。一緒に居たいと思うようになったのに、ここに来てそれは最大の裏切りではなかろうか。腹が立つし、寂しくて悲しい。主の言う“ずっと”はいつまでだったのだろうか、と。ヴィータの話を聞けば、主は自身の麻痺が進行していることに気が付いていたのだ。「……」いつの間にか硬く握り締めていた右手をゆっくりと木刀の柄へ。上段に昇り、振り下ろす。びゅ、と風を切る音がなんとも不細工で、それは今のシグナムの心を表しているようだった。リンカーコアを集める事に疑問は無い。やらねばならない事だ。しかし、殺さずというのはどうであろうか。ヴィータの言い分は分かる。実際に殺さずにすむのならそれに越した事は無い。だが、666ページを埋めるにはかなりの数のリンカーコアを集める必要がある。人間から抜くにしろ、魔獣から抜くにしろ、誰一人殺さずというのは可能だろうか。おそらく、不可能である。たしかにコアを抜けばすぐに死ぬということは無い。だが、抜かれた人間は衰弱する。そこから回復できるかどうかはその人物次第なのだ。魔導師という人種の、その内臓のようなものを抜き取るようなもの。正直な話、死んで当たり前のような気さえする。ヴィータの意思は最大限尊重したいと思う。しかし、「難しい、な」抜き取って、そこで治癒でもかけろとでも?馬鹿なことだな、とシグナムは首を振った。そんな事をしていては間違いなく管理局に捕まってしまう。魔導師を狙うのだ。管理局を相手にするのは当たり前で、組織を相手にするのは非常に気を遣う。襲った相手からこちらの容姿や戦い方なども漏れるだろう。だが、殺してしまえばそうではない。アフターケアも何も考えなくていいのだ。「……くそッ!」似合わない言葉を吐きながら、もう一度剣を振る。不細工な風斬り音は更に苛立ちを増長させ、シグナムは木刀を放り投げたい気分に駆られた。殺してしまうのが一番楽で、一番主が安全な策である。「私は、どうしたらいいのだろうな……」ふと呟いてしまったそれ。しかしその独り言には返事が返ってきた。「んー? シグナムは私のそばに居ってくれればそれでいいんよ」「っ、あ、主。すみません、気が付きませんでした」「くそー言うて木刀振っとったね。うまくいかんの?」「それは見苦しいところを。なかなか難しいものです」「んふふ~、そんなシグナムにええ言葉を教えたろ」「はい?」はやては一度だけこほん、と咳払い。何を言われるのだろうか、とシグナムは少しだけ緊張し、まさか自分たちの考えが読まれているようなことは無いだろうかと妙な心配まで。「シグナム……」「は、はい」「ドントシンク、フィ~ル……ほぁたあっ!!」「……は?」ぽかん、と珍しくシグナムは口を開けた。「あ、あれ? はずしてもうたかな?」「……すみません、もう一度よろしいでしょうか。次は笑います」「あかんあかんっ、それはあかん! 同情するなら笑いをくれ!」ぎゃー、と叫びながら家の中に逃げ帰っていくはやてを見、シグナムはくすりと笑った。考えるな、感じろ。ふむ、なんとも難しいような、簡単なような、何とも言えない言葉である。「そう、だな。……行動した後に考えるのも、たまには悪く無いのかもしれない」