18/ブレイブ 二日。長ぇ。たった二日で俺の心臓は大分消耗されてるよ、マジで。 アレから二日である。もうヴォルケンがいつ暴走すんじゃねぇかとハラハラドキドキ。こんなことならさっさと殴り合ってた方がいいよ。心労でつぶれちゃうよ。 と、ユーノに言ったところ。「そんなに馬鹿じゃないよ、彼女たちは。これほど管理局に警戒されてたら、そうそう動けるものじゃない。主に及ぶ危険を考えれば、今はまだ動くべきじゃないと判断するさ」 ふむ……。ユーノが言うとホントに説得力があるな。むしろそうとしか考えられなくなってくるな。「でもまぁ、決戦は早いほうがいい。だいぶ焦れてきてるのも事実だろうし」 おう……、ユーノが言うとホントに説得力があるな。むしろそうとしか考えられなくなってくるな。 というのが一時間前のことである。 いよいよだろうし、準備も要るだろうし、クロノの執務室へとお邪魔します。 ぷしゅ、と空気の抜けるような音と共に扉が開いた。「……」「……」「ごめん。ほんとごめん」 恐らく俺の目玉がおかしくなってるだけで、それは事実ではなかったはずである。あのクソ真面目なクロノくんが仕事中にそんな事するはずはないし、おちゃらけてはいるが、バリバリ仕事をこなすエイミィも、そんな事するような人間には思えない。 うん。俺の目玉がおかしいだけ。俺の目玉がおかしいだけ。たまたま口から出て行ったごめんもシェルがなんかしているに違いないそうに違いない。 エイミィはぽりぽりと頬を掻いていて、クロノは実に重いため息をついた。オヤジかと思った。「ほら、いいと思うよ、そういうの」「い、言っちゃやだよ?」「……」「……」 沈黙は一瞬。そして俺は風になった。チーターも真っ青の加速だった。執務室から一歩出て、廊下を爆走した。「クロノとエイミィがキ───」 叫ぼうと思った瞬間。 ごす! となにやら音がした。 何の音かと思ったら俺の頭にデュランダルが突き刺さった音だった。あふん。「それで、何の用だ」「俺ちょっと病院行ってくるから」「なに? そんなに強く殴ってないだろう」「ちっげーよ! 身体の調子見に行くんだよ!」「そうか。行ってこい」 な、なろぉ……、すでにボロってる俺にあんな衝撃を与えておいて、よくもまぁそんな平然と……。 いや、よそう。ここで俺のあふれ出すプァワゥを使うべきじゃないな。これはシグナムまでとっておくべきだな。 そうだよ。シグナムだよ。俺の相手はシグナムに決定したよ。 なんでかって言うと、俺、空戦で来られると絶対やばいしね。唯一俺の戦闘パターンに付き合ってくれそうなのがシグナムってわけ。あいつも近距離適正だし、バトル中毒だし、『待つ』ってがらじゃない。ここでやっと原作知識が役に立ったわけだよ。まぁ、遠く離れてあの伸びる剣でびゃるんびゃるんやられたらお終いなんだけどさ……へへ。 んで、クロノ。コイツはシャマル担当。 おう、分かるよその疑問。なんでってなるよね。その理由はユーノにある。ユーノがシャマルと戦いたくないんだって。俺的にはなんだか噛み合いそうで、結構いい組み合わせかと思ったんだけど、『補助の魔導師がやり合っても決着なんかつかないよ』 だ、そうです。 言われたらなんとなく想像はつくな。ばしーん、回復。ずどーん、回復。じゃらじゃらー、回復。どきゅーん、回復。うん。終わらないね、これ。てことでクロノくんだよ。珍しく文句の一つも言わずにオッケーだった。 そうなるとヴィータがユーノの相手なんだけど、これは正直やばい気がする。いくらユーノでもやばい気がする。ほら、クロノが言ってたじゃん。ユーノは遠距離とか中距離とかから狙い撃ちにされたらまずいって。こんな妙なところでフラグ立っちゃってるんだってマジで。ヴィータとかまんまだよ。アイツもそこそこ突っ込んでは来るけど、今度の戦闘はさすがに警戒してるだろ。……特攻隊を。 ヒュー、こいつぁなかなか厳しい戦闘になっちゃいますぜ、ユーノきゅん。 と、言ったところ。『じゃあ早く終わらせて助けに来てよ』 だ、そうです。 いや、なんだかんだで俺のほうは早く決着つきそうだけど、俺がヴィータの相手したって絶対あいつ空から降りてこないよ。一回戦ってるし、近距離の適正型だってばっちりバレてるし。クロノ頼んだ。マジ頼んだ。「……お前、マジでユーノ頼んだぞ」 言うと、クロノは力強く頷いて「任せろ」。 かなり心強いんだが、コイツの漢魂はほんとどうなってるの? 本物なの? 本当に漢になっちゃったの?「しかしなんだ……」「んあ?」「君たちは、本当に仲がいいな」「ああ、学校に通ってるあいだ俺たちとメガネだけだったし、飛び級」「それにしてもだよ」「そうか?」「そうだ」 笑うようにクロノは言った。「まぁ、ユーノのことは任された。出来る限り早く終わらせて、援護に回る」「おうサンキュ」「……ただ、あいつの気持ちも汲み取ってやれ」「ほわちゃ?」「……、……いや、何でもない。予定通りだ。全力でいく」「おう!」◇◆◇ 病院病院レッツラゴー。 転送転送レッツラゴー。「うう~、寒っ! 何これ雪降るんじゃねぇの?」 夜。光る街頭。しんと静まっている町並み。テクテクと歩きながら向かう先はもちろん病院。 えぇと、たしかこっから右に曲がって、まだ歩いたっけか。昼と夜とじゃ全然違うからわかんないなぁ。 きょろきょろと辺りを見回し、なんかそれらしい建物は───、「お、あったあった」 見つけましたぜ、海鳴大学病院。 いやいや嘘とかついてねぇよ。クロノにもちゃんと言ったじゃねぇかよ、身体の調子みに病院行くって。なんも嘘じゃねぇよ。 正直 はやての具合が気になってね。心配と言い換えてもいい。苦しむ姿とか見たくないけど、知りたい。どうなってるんだろうか。原作がJAL世界一周の旅に出てるからさ、そういうところも変わってるんじゃないかなぁって。 ヴォルケンと鉢合わせても はやての傍なら絶対に戦闘にはならないし、もし戦闘になったとしても、もう色々決めちゃってるわけだし、ちらっと顔見るくらいなら罰は当たらんだろ。 深夜。お見舞いの時間なんかとうに過ぎてるこの時間。はてさてどうやって進入しようかと考えて、当然のごとくその問題にぶち当たった。 ああ、病室が分からん。おい、病室が分からんぞおいぃぃぃ!「馬鹿か俺!」『なにを・いまさら』「こっそりと集めたお見舞いの品々! どうすんだこれ!」『御自分で・処理・されては?』「悲しすぎるぜマイ・ソウル」 ちぇー、と唇を尖らせながら小石を蹴りつけた。つもりが、暗くて地面に足が刺さった。いてえ。 あ~あ、なんか はやてが好きそうなものいっぱい買ってきたのに。入院ならではの物とか沢山用意してきたのに。ありえねぇ。思い出せよ俺。ほら、きっとアニメで何号室とかあったんじゃねぇのかよ。なんかすずかとかアリサとか色々来てたじゃねぇか。あのとき何号室とかいう場面があっても不思議じゃない思い出せない。うん思い出せないちっとも思い出せない。 悟ったね。あんなトコちまちま覚えてるような脳みそじゃねぇや。「ん~……」 帰るか、それとも救急用の窓口に預けるか。 ……明日の昼にしよう。さすがに非常識すぎるな。あん? 俺も常識ぐらい知ってるよ。ただそれを守らないだけだよ。今回は はやてに迷惑がかかるから仕方なくだよ。 はぁ。ため息一つ。名残惜しいけど、まぁ馬鹿が悪い。俺は悪くない。 くるりと病院に背を向けて、「……わお」 えらい美人がそこに居た。 えらい美人はすばやくその右手を伸ばしてきた。当然ながら俺はえらい美人の右手を跳ね除ける。だが次の瞬間に今度はえらい美人の左手が伸びてきた。おっとやべぇぞこりゃやべぇ。このえらい美人えらい怖ぇ。 えらい美人の左手は、しかし俺を殴りつけるでもなく口を塞ぐだけに終る。ちょ、なに、なんなのっ。「私は通信妨害の手段を持たん。だからお前を信用するしかない。仲間は呼ぶな。……いいか?」 思ったよりも冷静だった。爆裂灼熱それこそ烈火のごとく怒り狂ってるかとも思ったんだけど、やっぱ冷静だよ、シグナム。 もが、と俺は頷いて、するとシグナムの手がゆるむ。警戒しているのか、やけにゆっくりと、変な真似をすればぶち殺すといわんばかりに。 歩け。そう言われた。さてどこに。そばの公園に。 俺の後ろを一定の間隔をあけて付いて来るシグナムからは、今のところ敵意は感じない。 公園に着くとベンチを指し座れと促してくる。別段構えた様子もせず、俺は適当に腰を下ろした。まぁ、目の前に仁王のごとく立つシグナムはちょっと怖いけど。「背もたれの奥に腕を回せ。両足は開いて水平に伸ばせ」 きちーよ! 新手のプレイかっ! 妙な体勢の正面ではなく、やや斜めくらいのところにシグナムは移動。「えと、喋ってもいいのこれ?」「妙な真似はするなよ。首と胴が離れることになる」「おそろしやおそろしや」 シグナムに変わった様子はなく、ただじっと見つめてくるだけ。 さぁ、一体全体どういうことなんだい。俺は一回蒐集されてるから二回目はないぞ。それともアレか、殺す気か。さすがにそれは逃げるぞ、俺。「お前」「あん?」「名は、何という」「ディフェクト。ああ、妙な名前とか言うの無しね、自分でもよほど痛感してるから」「ディフェクト……、プロダクトか?」「うん」「妹は、フェイト・テスタロッサ」「そう」「主の……友人か?」「おう。はやての友達だ」 まぁ、はやてから聞いてても何もおかしくないしな。俺のこととか、フェイトのこととか。「一度だけ、聞いたことがあった。八神家の妙な習慣が、最初はちょっと、な……」「挨拶くらったか」「夜の御勤めだ」「……それは知らん」 夜の御勤め? そこはかとなくエロスな匂いがするんだが、どういったことなんでしょうか。 あれか、はやてはシグナムとかシャマルとかあの辺に描写も出来ないようなムフフな事をしているのか。それは実に夢あふれる事態じゃないか。俺も混ぜてっていったら混ぜてくれるかな? このえらい美人混ぜてくれるかな?「とにかくそのときに聞いた。こんな事を教えたのは誰かと」「俺か」「そうだ」 そう言うとシグナムは小さく首を振った。寂しげに微笑みながら。「腹が立つのと同時に、悔しかった。主はとても楽しそうにお前の話をした。お前はよくご飯を食べるとか、女に見えるとか、まぁ色々だ。あの少女がフェイトと呼ばれたときにはハッとしたものだ。同じ顔のお前が現れて、さすがに驚いた。そこで確信だ」「それだって はやてが闇の書の主だって知ってることにはならないじゃん。いいのかよ、そんな簡単にばらして」「私の勝手な思い込みだがな、恐らくお前は知っていたのだろう」「……」「主の病院に一人で来たことがその証明だ。そしてお前は……なかなか肝が据わっている」「別に……、居るとは思わなかっただけだって」「いや、違うな。単純に考えて、このタイミングでお前が一人でここに来るのはおかしい」「買いかぶりすぎだ。俺ぁただのビビリなの」「攻撃されるとは思わなかったか?」「だからさぁ、人の言うことを……」 シグナムの目を見ると、相変わらず鋭さは残るが、しかし真摯に眼差しを送りつけてくる。何を考えているのかは分からないけれど、その視線は真剣そのものだった。目を見れば分かる。そういう言葉があるけど、まさしくその通りだと思った。 いや、まぁね、ほら。「……話くれぇなら出来るかなって、思ってたよ」 そんで、事実そうなった。 あの時空気読んで冷静に引いていったシグナムなら、もしかしたらこういう判断をするんじゃないかとか、足りない脳みそフル回転だったよ。はやての様子見たいのもホントだったし、ちょうどいいかなって。 だってほら、なのはじゃねぇけどさ、何の話も無しにお前消えろっつっても、そりゃあんまりだろ。 俺はヴォルケンのことを敵だとは思ってない。いや、まったく無いってこともないけど、でも、はやての家族だ。それにほら、特にシグナムとかめっちゃおっぱいしたいし。冗談抜きにおっぱいしたいし。このおっぱいをしたいとする欲求を満たすためにも、ヴォルケンとは仲良くなっとかなきゃ。 俺がおっぱいを考えていると、実に男らしく、どかりとシグナムは俺の隣に腰を下ろした。プルプルし始めた俺の足を見かねたのか、下ろせと静かに言う。俯き加減で、しかしそれでも良く通る声。「お前は、優しい人間なんだろうな」「んなことねぇけど……。あのさ、俺たちに任せとけって。みんな幸せハッピーエンドにすっから」「出来ない」「一回は消えちまうけど、すぐに元通りだからっ」「無理だ」「なんで! そりゃ皆の前ではああ言ったけどッ、はやての家族と戦いたくねぇよ、俺は!」「……」「お前は『闇の書』しか知らねぇんだろうが! おかしくなってるって、気づかねぇんだろうが! このままリンカーコア集めたって───」「黙れ!」 たぶん、泣いてるんだと思う。声が震えてるのがわかった。「私達は闇の書の一部だ。あれが正常なのは、よく分かる」「ちがっ、そうじゃねぇんだよ……、そういうこっちゃねぇんだよ!」「……もう」 シグナムの頬を一筋、雫が通り過ぎた。「もう、止まれんのだ」 なんだよ、ちくしょう。馬鹿侍が。そういうこっちゃねぇんだって。お前は気づいてないんだよ。お前はどうしたって、闇の書のホントの姿に気づけないんだよ。……言ったところで、無駄なんだろうね。 長い沈黙が続いた。寒い。ふと空も見上げると、ホントに雪が降ってきた。しんしん。音もなく、しん、しん、と。たぶん積もるようなことはないだろう。まばらで、柔らかそうな雪。鼻の頭に降りてきて、すぐに水へと姿を変えた。 シグナムが、ようやくそれに気づいたんだろう。俯けていた顔をゆっくりと上げる。は、と吐き出した白い吐息がやけに綺麗だった。「雪、か」「雪だな」「……なにか、聞きたいことはあるか?」「……。……、……おっぱい何カップだよ」「……それは教えてやれんな」「んじゃこれ、はやてにやっといて」 バッグの中に詰めるだけ詰め込んだお見舞い品。受け取ったシグナムはほんのちょっとだけ微笑みながら立ち上がった。振り向きもせずに歩き出し「では、二日後に」。 おう、と適当に返事をした。決戦はどうやら、二日後になりそうだった。◇◆◇ 撤退。ヴィータにとってそれは、あまりに頭の悪い選択のように思えた。引くと言ったシグナムの事が、とても信じられなかった。 どうして。ザフィーラをやった相手が、いま目の前に居るのに。激情に駆られて怒鳴りつけようとも思った。 しかし、そのときは納得できるものではなかったが、一歩引いた今ならどうだろう。冷静になって考えてみて、それは正解だったと、心底感じた。 あんな状態で戦って勝てるとは思えなかった。仲間をやられても冷静なシグナムには、ほんの少しだけ腹が立ったけれど、彼女がヴォルケンリッターの将でよかった。ああいった場面で止めてくれるから信頼できるのだ。 ヴィータはテーブルに突っ伏していた顔を上げた。涙の跡が目立つが、その瞳にはぎらぎらと輝く光があった。 やったら、やり返される。当然である。 あの流星は、ヴィータが戦って、完全な蒐集をしきれなかった女と同じ顔をしていた。負けるかもしれないと思った、あの女。ザフィーラをやったのはその家族なのだろう。フェイト、と呼ばれていたことを思い出す。 今までやってきた事実がヴィータの背中に重くのしかかった。その重さが、ザフィーラを消滅させた。 戦えるのだろうか。自分に問いかける。心は当然だ、と熱を持って答えた。 敵を討つ。いや、違う。あくまでも目的は蒐集。ザフィーラは敵を討つことなど望んでいない。なぜなら彼は笑ったのだ。満足だ、とヴィータの頭を撫でながら。ヴィータにとって、どこまでも兄のような存在だった。ザフィーラももしかしたらヴィータの事を妹のように感じていたのかもしれない。 ただ、感情がそれを許さないのだ。「……ありがとう、ザフィーラ」 涙は流さなかった。ここ二日ですでに涙腺は枯れ果てた。そして心の水源がなくなると、その奥には熱い輝きが残っていた。どこまでも純粋で、危険な感情。 やったらやり返される。だったら、やり返されたんだから、やっていい。 もちろん、そんなはずがあるものかと頭では考えた。そんな馬鹿なことがあるものか、と。 ただ、今のヴィータを動かすのは考えではなく、想いだった。殺してやる、と思ってしまった。今までのやり方で、プログラム通りに。人間でいたいなど、考えるだけ馬鹿だったのだ。 ぴん、と張り詰めた空気がリビングを覆った。たった一人の少女から出るそれは、あまりに強固な覚悟だった。「ヴィータちゃん……」 シャマルが不安げに言う。「良くないわ、そういうの」「忘れらんねー」「ザフィーラは、笑っていたじゃない」「それでも……諦めきれねー」「私は好きだったな、ザフィーラと遊んでるヴィータちゃん」「だからアタシは戦うんだ」 こうは言っているが、シャマルこそが心中穏やかでないことはわかる。彼女とザフィーラはチームを組んで蒐集していた。その相棒がやられたのだ。ヴィータはシャマルの寂しそうな顔の裏にあるものを感じ取っていた。 ごめんはやて。口の中だけで呟く。 次の蒐集は、はやての為じゃない。結果的にそうなろうと、それは自分の思いを貫き通す、ヴィータだけのわがままだ。 握る拳にさらに力を込め、そのとき、玄関の開く音が聞こえた。静かな足音。それだけでシグナムだということが分かる。「帰った」 彼女はやけに大きなバッグを抱えていた。 「……なんだ、それ?」「お見舞い品だ」「……」 疑問は残るが、大したことではないかとヴィータはそれを意識から消した。 重要なことは、いつどこで活動を再開するか。「シグナム、アタシそろそろ我慢できねーよ」「ああ、分かっている」「それじゃあ……」「二日後にしよう。明日は主のところに行く」「……そうか」「そこらの局員でも襲えば、後は向こうから来てくれる。無駄に人を傷つけるなよ」 ヴィータは強く頷いた。 ここまで警戒されると、この場所がばれるのも恐らく時間の問題だろう。二日後というのは、いいタイミングのように思えた。「……寝るぞ」 いつかのように、ザフィーラの隠すような笑い声は聞こえない。