01/~月刊エース~~月刊☆エース~クロマル・ページ♪こんにちは、●《黒丸》です。この月刊誌で4ページの連載を持つようになって4年、ようやく解放される日が来ました。●は今月でこの月刊☆エースを卒業ということになります。4年というのは私の中では随分長かったように感じます。皆さん知っているでしょうあのエース、高町なのはさんを始め、この雑誌では様々な分野でのエースを取り上げてきました。皆さんの心には一体誰が残ったでしょうか?●は取材を重ね、人と会い、会話をし、様々な『人間』を見てきたつもりです。立ちはだかる者を叩き潰す陸戦のエース。陸戦を援護しつつ最前線で戦闘を行う空戦のエース。救護から障壁、バインドに至るまであらゆる支援を行う援護のエース。わりと変わり者が多かったように思いますが、それでも彼ら、彼女らに我々の日常は守られています。そしてどの方々にも感じたのですが……皆さんはやはりカッコいい! 惚れる! 憧れる! ●は永遠に自慢します。実際にエースたちに会って、お話を伺うことが出来たことを。さて、最後となる今回のクロマルページ。紹介するのは一般の方には余り知られていない方だったりするのです。ですが一方で、管理局では知る人ぞ知る、話題のトップエース。今回はクロマル・ページ♪の最終回ということで、出来るだけ生の声をお贈りしたく、対談をそのまま(というわけにも行かず、幾分修正が入っています)載せました。ご本人様を加えての対談が出来なかったことが非常に残念で、これで最後の●としては非常に心残りですが、それでも●は彼を皆さんに知ってもらいたい。それでは……。。。。。。●・こんにちは、本日はご足労いただき……。元隊長(以下『隊』)・「あーあー、よしてくれそんな挨拶。背中がかゆくなる」●・あ、すみません(笑)。 元隊員1(以下『1』)・「変わりませんね、隊長も」元隊員2(以下『2』)・「当たり前じゃない。隊長がまともになる日なんて絶対来ないわよ」隊・「おお? 随分な事言ってくれるじゃねぇか」2・「事実でしょ?」隊・「てめ……」1・「まぁまぁ、せっかく呼んでもらってるんですから喧嘩はよしましょうよ(笑)」●・さっそく笑わせていただきました(笑)。さて、多少矢継ぎ早ですが本題に入っても?隊・「おう」●・では、皆さんに聞きたいのですが、この隊の元副隊長はどういう人物でしたか? 今回は彼の事に付いて記事を書きたいのですが……、全くといっていいほど資料がなくて正直困っています(笑)。是非、彼の事を教えていただきたくて……。隊・「ん、ん~、まぁ…碌なヤツじゃなかったな」2・「人間としては最低ランクよ!(笑)」1・「そんな事無いよ。分隊の事をよく考えて、しっかり隊長の補佐をしてたじゃないか」●・おや、二極化ですね?(笑) では『隊長』さんからどうぞ。隊・「言ったとおりだよ、碌なヤツじゃなかった。……というかまず俺達の部隊に配属されたのがなんかの間違いなんじゃねぇかと上に問い合わせたくらいだぜ」●・ふむ、それは何故?隊・「……ガキなんだよ、ガキだったんだ。入隊の時はまだ十一って言ってたか。そんなのが俺達の隊に来るんだぜ? 当然どういう事だって聞きたくなるだろ? 俺らが居た■■■■■■部隊(機密に抵触するので伏字にさせていただきます)はンなヤツが入っていいところじゃねぇんだよ」1・「まぁ、確かにびっくりはしたかな(笑)」隊・「ビックリなんてもんじゃねぇよ。 俺は暗に上の連中から教導に移れと言われてるのかと疑ったもんだ!」2・「ありえない(嘲笑)。 隊長に教導なんて出来るわけ無いじゃない」隊・「……てめぇ」1・「まぁまぁ」●・なるほど。確かにその若さで部隊に配属されるというのは聊か驚きですね。ですが、それは寧ろ称えてもいいことでは? 聞く限りでは実力はあったのでしょうし。それが何故、碌なヤツじゃない?隊・「……実力があったからだ」●・……はて?隊・「ちいせぇ頃からあんな風にある程度戦えるやつってのは碌な事にはならねぇんだよ。そして事実、そうなったじゃねぇか」1・「……隊長も若くして管理局に入ったんですよ。ま、そこで色々あったみたいでしてね。隊長にしては珍しく『彼』の事、色々気にかけてたんですよ」2・「まぁ結局無駄になっちゃったけどねぇ」●・……貴重なお話しです。管理局全体の低年齢化がさらに進んでいる今、もう一度考えるべき問題ではありますね。いくら実力はあっても、まだ子供。確かに我々は忘れがちです。隊・「ま、そう言うこって、碌なヤツじゃねぇ。言うこと成すことが一々もっともらしくて、クソ生意気なクソガキだったよ」●・有難うございました。さて、いい話は最後にとっておくことにして、『2』さん。人間として最低ランクとは……コレはまた随分ですね(笑)。2・「事実よ事実」●・たとえばどんな所が?2・「まずね、ガキの癖に■飲む所かなぁ……。こそこそ隠れて■■■も吸ってたし、やたらと■の扱いも上手かったし」(本人の名誉のために伏字にさせてもらいます)隊・「いやいや待て、落ち着け。確かにアイツが■飲んで■■■吸ってたのは知ってる。俺らも結構色んなトコ連れまわしたからな。しかしよ、お前……」1・「■の扱いが上手いって……」2・「あ、いやちがっ……!(汗)」隊・「一回りは違うガキに何してんだよ……」●・……さて、ここは掘り下げて聞いてもいいところなのでしょうか?隊・「クビが大事だったらよしとけ。そんな話載せようものなら絶対キられるぞ」●・実は私、今回が最後でして……。編集部からは『フリーダム』なるお言葉も賜っています(笑)。1・「……だったら?」隊・「行くしかねぇだろ」2・「……発禁になっても知らないからね」●・そのあたりは気合と伏字でカバーということで。さぁ行きます。彼とどんなことがあったんですか?2・「いや、だからその……。ホント……ホントにどうなっても知らないわよ? ぶっちゃけてもいいのね? 親友にすら言ったことのない人生の恥部なのよ?」●・だからこそ意味があるんです。私が知らない彼の事をしるチャンスですから。2・「……まぁ、私もね、いずれは誰かに白状するつもりだったんだけど……。よしっ、行きます! えぇと、確かあの子が来てから一年くらいたったときだったかな。その時に『後味の悪い任務』(機密に触れるので表現を変えさせていただきます)が入ってきてね、私たちが出たわけ。任務自体はそこまで厳しいものじゃなくてね、わりと簡単だった。……でもさ、やっぱり抜けきらないのよ、■■■を■■■記憶なんてね。仕方ない、で済ませられるほど私は強くなかったの。それで、手っ取り早く酒でも飲みに行こうって思って、店の扉を開けたわ。そしたらなんと全員集合。皆いるわけよ、その店に」1・「ああ、あのときか……。僕は隊長に誘われたんだったな」隊・「俺はあのガキに『つれってって~』なんて言われてよ、気持ち悪いったらなかったぜ」2・「そういうやつなの、アイツはね。多分気付いてたのよ、私が気持ち落ちてるって。んでまぁ、それはもうそれこそ浴びる様に酒を飲んだわ。給料が一月分全部飛んでいったもの。そしたらウチのだらしない男連中はすぐにダウンなわけ! 信じられなかったわ。私が、女が覚悟してお持ち帰りOKオーラ全開に出してたのに!」隊・「うげぇ、勘弁しろよ! 誰がお前みたいなマッチョ!」(名誉の為に。2さんはとても綺麗な女性でした)1・「僕、そのとき確か彼女出来たばっかでしたよ……こわっ」2・「うっさいわねこのボンクラ甲斐性なしどもが! ……はぁ、まぁそれで、このボンクラたちと違ってアイツは■はあんまり飲まないで『ジュース的なもの』くらいしか飲んでなかったからさあ、私の愚痴をうんうん、って頷いて聞いてくれるの。それがもう可愛くてねぇ……こう、なんて言うの、分かるでしょ? つい先走ったというか……、普段はそんな事ないのよ? そのときは酔ってたの。それはもう泥酔してたの。そしたらあれよあれよと言う間にね……部屋に連れ込んじゃってた、あはっ☆」隊・「『あはっ☆』じゃねぇよ! 人間として最低ランクはお前じゃねぇか!? 変態かお前!? 変態だお前!」2・「あの時隊長達が酔いつぶれてなかったらこんな自分には目覚めてなかったわよ!! ちょっと慰めてくれればソレで良かったのに!」隊・「俺にはてめぇの億倍は可愛い嫁と子供がいんだよ!!」1・「ま、まぁまぁ……、落ち着きましょうよ」●・……。え、えぇと……。(このとき私はボイスレコーダーのスイッチを切るべきか真剣に悩んでいました。気合と伏字ではカバーしきれないかもと思ってしまったのです)2・「だいたい私はねぇ、そのときは別に何にもする気じゃなかったんだから。添い寝で十分だったの! ……けど問題はそれから先だったのよね。いくら『ジュース的なもの』とは言ってもあいつも結構飲んでたからさ、二人ともふらふらだったの。そのとき何話してたかはよく憶えてないんだけど、げらげら笑いながらベッドにもぐりこんだわ。それであいつをギューってしてたらコロッと寝ちゃったの。もうあいつの収まりがよくてねぇ、熟睡だったわ」1・「……まぁ、それで終わるわけはないよね」隊・「ありえねぇ……。ガキだぞ、そのときアイツ十二だぞ……、俺の息子と同い年だぞ……」2・「やかましいつってんでしょうが!! それで、ああ、なんだったっけ……、そう、寝たのよ。んで、朝方かな。自分のアルコール分解力を見誤って、少しだけ頭痛かったの。そしたらあいつ、自分も頭痛いくせに癖に、私の頭撫でながらこう言うのよ。《女の子なんだからさ、あんまり無茶しないでもっと頼れよ》って。……何よその目は?」隊・「女の『子』ってガラかよ。なんだそれ、冗談か?」1・「……。(怖いものを見る目)」2・「死にたいのあんたら?」●・はははっ。それで?(腹をくくりました。ボイスレコーダで聞いた自分の声はやけにスッキリしていたように感じます)2・「だからそれで……、きゅんと来ちゃったのよ。……ドきゅんと持ってかれちゃったのよ! そうよ、悪い!?ナデポられたのよ!! ええ、ええ、そうですよ、本気になりましたよ! 二人で管理局辞めて白い家に大きな犬飼って住むトコまで脳みそトンじゃいましたよ! でも仕方ないの、嬉しかったんだもん!! ……それで、そ、それで、素面であいつの事……抱きしめたわ。そしたら、なんて言えばいいのかしら、あれよ、アレが……。その、だから、朝だったから、だと思うんだけど……『おしべ的な何か』が『おはようございます』してたの……。お、お腹に、こつんって。そのせいかは分かんないんだけど、私も『雌しべ的な何か』が、な、なな、なんかっ、キュってなって、すっごい『ご用意は出来ております』になっちゃって……、だ、だからあいつの『おしべ的な何か』にぎって、……ごにょごにょごにょ……」隊・(放心状態)1・(放心状)●・(放心)2・「そ、それでね、あいつの『おしべ的な何か』ったら物凄くてね、『お帰りなさいませご主人様』した瞬間に、気分が『ヒャッホー!』ってさ、もう自分で自分が不思議だったわ。今までそんな事一度もなかったのに『あっクジラさんだぁ♪』までしちゃって……。それでもあいつ■を『ギッコン☆バッタン』をやめてくれないの。そのせいで私、泣かされちゃって、わけわかんなくなっちゃって……。 えへへ、結局丸一日『ヤックデカルチャー』してた……。はい、私の懺悔は終わりっ!」●・大変……、参考になる、お話でした……。(本当に参考になりました)……え、ええと、では、最後に『1』さん、お願いします。1・「……あんな話題の後だと何だか話しづらいなぁ……」●・はは……、気にせずにいきましょう。1・「ん、そうですね。じゃあ、僕たちの最後の任務の話をしましょうか。僕たち居た■■■■■■部隊は……まぁ、所謂何でも屋みたいなところがありましてね。管理局が慢性的な人手不足なのは知っているでしょう?」●・ええ、もちろん。そのせいで低年齢化が進んでいるわけですしね。いずれ改善されるべき点だと感じています。隊・「ま、そう簡単にはいくめぇがな」2・「新しく見つかる『世界』も、文化レベルが伸びてくる『世界』も増える一方だしね」1・「そういうわけで、人手不足なんです。だから僕たちには色んな、所謂『お願い任務』が流れ込んでくるわけでして、息をするほど簡単なものもあれば、一つのミスが死に直結するようなシビアなものまで様々でした。そんな部隊でしたからね、まわりは問題があるものや一癖持っているような奴ばかりでしたよ。……実は僕も以前いた部隊からトばされたクチでして……(笑)」●・おや、そのようには見えませんでしたが……?1・「はは、そうですか? 上官に魔力弾を10発ほど叩き込んでやりましてね、『反省部屋』に入ってクビきり間近の所を隊長に拾っていただいたんです(笑)」隊・「俺もアイツは嫌いだったからな。スカッとしたぜ」2・「何それ~、アンタってそんなバイオレンスな奴だったんだ。今知ったわよ(笑)」隊・「……そういやお前はなんでこっちに落ちてきたんだ?」1・「そういえば僕も知らないや」2・「……女の過去をあれこれ詮索するもんじゃ―――」隊・「あーはいはいわかったから、なんでだ?」2・「っこの……! ……ふん、まぁ特別に教えてやるわよ。……恋人がいけなかったの」1・「なんですかそれ? 何か仕出かしたんですか?」2・「……その時の恋人がっ、たまたま隊長のッ、『娘』だったの!! もういいでしょ、これ以上私を追い詰めたらまた語りだすわよ!?」隊・「……」1・「……まぁ、こんな感じの、問題だらけの部隊です」●・そのようで……(笑)1・「ですけど給金はいいですし、危険手当が付く機会も他の部隊とは比べ物になりませんよ(笑)」●・ははぁ、なるほど。ではそれ目当てで集まってくるやからも多いのでは?1・「その通りですよ。得てしてそういう奴から死んでいくものでね、不思議なものです」●・……少し話がそれましたね。そういう部隊で彼は?1・「ああ、そうです。そんな部隊で珍しく、というよりも初めてだったんじゃないかな? ……本局《うみ》からの以来がありましてね」隊・「俺もあれには驚いた。まさか本局が地上本部の、しかも俺たちみたいなのに力を貸してくれなんてよ。……ハナっからおかしな臭いはしてたんだ。俺は断ろうと思ってたんだぜ? テメェらでどうにかしろ、ってな」2・「でもあいつが……、副長がね、どうしても行きたいって。確かに、危険手当ては結構ついてたし、任務内容もそんなにきつそうじゃなかった」1・「結局、副隊長が強く推すのもあって受けることになったんですよ、その任務。僕たちは一旦次元航行艦に乗って、転送の準備に入りました。……あのときの居心地の悪さといったらなかったな(笑)。 ま、それで転送先は辺境も辺境でしてね、文化レベルも0。確認されている生物なんて微生物くらいなもんです。それで、おかしな話なんですが、そんなところに何かの、稼動はしていない研究施設がありました。よく見つけたもんだと本局の仕事っぷりに感心しましたよ。任務内容も映像記録をとってくるだけ。正直きな臭いものも感じはしていたんですが、僕たちも俗物でね、副隊長は《こんなんで金もらえるなんて超ラッキーじゃん!》だって。まったくあの人は……」●・それは緊張などを押し隠す為ではなく、隊の者の事を気遣ってなどではなく……本心だったと思いますか?1・「……それ、なんですよね。僕ね、見ちゃったんですよ。副隊長が艦内のトイレで何かブツブツ言ってるとこ。絶対に~とか、生きて~とか。……あの人にとってそれは何かのジンクスだったのかもしれないし、自信がそのまま皮をかぶって歩いてるような人だったんで特に気にしてなかったんです。現にその後、何言ってるんですかって聞いても、チャックで皮挟んだとかなんとか言って……。 僕はね、いつの間にか忘れてたんですよ。いや、もしかしたらずっと分かってなかったのかもしれない。彼がまだ十三歳だったってこと。一人の、子供だったってこと。 ははっ……、いつも変な人でしてね、あの時本当におかしかったなんて……気が付かなかったよ」2・「そんなの皆同じだよ。あいつ嘘つくのすっごいうまかったもん」隊・「アイツは局員じゃなかったら詐欺師になってた、なんてこともよく話してたな」●・……続けてください。1・「施設はわりと広くて、結構入り組んでいました。隔壁のような扉がいくつもあって、何かの要塞かと思いましたよ。そのなかで副隊長が先頭、僕と『2』さんが両サイドを固めて、隊長が後方に控える。それが僕たちのいつもの陣形でして、いつものようにそうして進んでいました。最後の扉をこじ開けて、いざ記録するべきところに来ました。表ざたにはなってませんが、そこは明らかに■■■■の施設でしたよ。瞬時にああこれはまずいって思いましたね」隊・「あれだけの痕跡を残してなぁ……」2・「簡単に廃棄するわけない。扉開けた瞬間に背筋凍ったっての」1・「当然のようにトラップの発動です。もう、数を数えるのがイヤになるくらいわらわらと、前後左右何処からでも■みたいな形した、やけに鋭利なフォルムの魔道兵器が出てきましてね。これは一歩、踏み越えたと思いました。メメントモリ。まさに死を思っちゃいましたよ。……けどやっぱり、あの人は一味違いましてね」●・まさか、戦ったんですか……?隊・「はっ、まぁ間違っちゃいねぇよ(笑)」2・「戦ったわよ、もちろん(笑)」1・「後方の敵に対して、ね」●・それは、ようするに?1・「彼は、誰よりも早く逃げましたよ。……っぷ、くははは! 信じられないでしょう? 自分が行きたいって言ってたのに、トラップに引っかかったら全力で敵前逃亡! 常識はずれにも程がありますよ!(笑)」●・それはまた……。いいんでしょうか、そんな事を記事に載せても(笑)。1・「いいんですよ。彼の行動は、それは確実に正解なんです。体の固まっていた僕たちも彼の逃亡につられる様にして動いてくれました。結果的に隊列も崩す事無く、彼は先頭に立ってがっつんがっつん魔道兵器を殴り壊してましたよ。それがまた恐ろしいくらい正確に『核』っていう、まぁ、人で言う心臓みたいな部分があるんですけど、それを拳で打ち抜いていくわけです。ほぼ一撃で倒していたから間違いないですよ。おかげで僕たちはほとんど戦闘することもなく、確実に出口に近づいていったんです。 ……思えば、それがよくなかったな。『安心』しちゃったんですよね、少なくとも僕は」2・「あたしなんか、あいつの背中を見れて死ねるんなら本望状態だったわ。緊張感っていう面では足りてなかったかも」隊・「それで切り崩されたわけか。いきなり両サイドから敵が流れ込んでくるからよ……。死ぬかと思ったぜ」1・「……出口付近で、混戦になりました。隊長の言うとおり、死ぬかと思いましたよ。でも、それでもまだ望みはあったんです。出口にさえ出てしまえば、後はひたすら逃げるだけだ。通信妨害のないところまで出て、救援さえ呼べば生き残る可能性はかなり高い。 ―――でも、まだ僕は甘かった。隔壁がね、降りてくるんです。扉が閉まろうとするんです。もうすぐ出口だって言うのに、外の砂丘が見えているのに。そりゃあもう、あらん限りの悪態をつきましたね。クソッタレボケナスが、勝手にしまってんじゃねぇよ!! みたいな感じでしたか」隊・「んなモンじゃなかったっての……。俺の人生の中でお前の悪態がナンバーワンだ」2・「……聞いてないなぁ、私。とにかく敵潰すのにいっぱいいっぱいだったし」●・それでどうなったんです? 副隊長は?1・「……それで、いきなり念話が入りました。《バリアジャケットまだ生きてる?》って、これだけです。もともと彼、得意じゃないんですよね、念話が。受信がダメだって言ってたのを聞いてたから大声で、大丈夫です!って返事をしました。……その瞬間ですよ。背中で爆発が起こりました。訳が分からないままぶっ飛ばされて、接地した地点は既に外だったんです。次に『2』さんが飛んできて、最後が隊長でした。 ……最後が、隊長だったんです。 隔壁が降りきる前に見たのは『本気』の彼でした。初めて見ましたよ。■■や■、■■した魔道兵器が全部、■みたいになって彼の■■に■■していくんです。光の中で、金色の獣を見ました。顔が覆われる前、隔壁が降りきる瞬間、最後に見た副隊長は……、笑ってましたよ」隊・「……そら、クソガキじゃねぇかよ……」2・「ぐずっ」●・助けは……?1・「もちろん呼びました。けどね、十一分ですよ。●さんはどう思いますか? 目の前の、隔壁の、たった4m先に行けば副隊長が戦っているんですよ?」●・……想像もつきません。1・「……そう言ってくれると、まだありがたい。簡単に想像がつくはずもない。お偉方の諍いのせいで現場にとばっちりが来るなんて、あっていい筈が無いんだ。(注・分かっておいででしょうが、管理局本局と地上本部は何かと対立しています) 11分後にきた局員に、僕たちは『保護』されました。僕たちの事はいいから副隊長を何とかしてくれと、助けてやってくれと頼んでも、彼らが優先したのは僕たちだった。僕たちが持っていた、映像記録だったんですよ。 僕たちは転送の間際まで、必死に念話を飛ばしました。絶対に、すぐに迎えに行くからって。それまで死なないでくださいって。……届いていたのかどうかは分からない。だって彼は念話がへたくそで、隔壁だって降りてたし……、僕は……」隊・「……今更なんだよ。結局俺たちは迎えに行けもしなかったじゃねぇか」2・「転送されちゃったわけだしね……。そこまで弱ってた私たちがいけないんだよ」1・「……うん。そう、だね」●・彼のその後は、そのまま……?隊・「いいや、最後まで見届けたぜ。モニター越しだったけどよ」2・「綺麗な、すっごく大きな花火……打ち上げてくれたんだ」●・……花火、ですか?1・「ええ。副隊長らしい、冗談みたいな最後でした。腹が立つことがあるとよく言ってたんですよ、《チリも残さねぇほどに消し去ってやりてぇ》とかね……」●・まさか……。1・「ご想像の通りじゃないですかね。まずモニターが光りました、それこそ直視できないほどに。次に、画面を引いたんですよ、施設を映すのではなく、その場所全体を映すように。……馬鹿みたいな黄金の輝きが観測されましたよ。彼の魔力光で、ホント、質量兵器もかくやというような、大きな、それはもう巨大な金色のきのこ雲が出来ていて、あたりには金色の雨が降っていて、とても綺麗でした。……物理破壊の殺傷設定。彼の事だ、なんの躊躇いもなくカマしてやったんでしょうね。……僕は、しばらく涙が止まりませんでしたよ」2・「そこで終わっとけば、結構いい美談になるんだけどね……」隊・「まったくだ。あそこまで空気を読めねえ奴がいるとは思わなかったぜ」●・……その事件は知っています。『これだから地上部隊は……』ですね?1・「■してやろうと思いましたよ」2・「実際■しそうだったしね」隊・「半分位は■してやったからな」●・当時の艦長が吐いた暴言らしいですね。そしてその陸上部隊の仲間達が暴れに暴れて、次元航行艦が壊れるまでやったとかやってないとか。最後には勘弁してくれと言わせたらしいですが、この手の話は噂が先立って真実が語られることは稀なんですよ。そのあたりは、どうなんでしょう?1・「さぁ、事実はもう闇の中ですよ。ただ、今言えるのは、あのときの僕ならエースオブエースにだって引けを取っていませんよ」隊・「『死神』にだって勝てらぁな」2・「―――けど、副隊長には負けちゃうんだよ。きっとね」。。。。。さて、ここまで読んでくださった方、どう感じましたでしょうか。正直私は、話だけでは分かりませんでした。直に会ってみたかった。その思いが募るばかりです。きっと私は彼の百分の一すら理解していないに違いありません。ただ、想像してみるのも面白いもので、彼だったら、と考えるのが最近の癖のようになっています。一度調べてみると止まらない。次から次へ新しい彼の事を知りたくなります。皆様の心のどこかに、彼の名前を刻んでください。彼の名は───。。。。。。「うわぁ、地上にはすごい人がいたもんだねぇ」「はぁ? 何あんた、そんな嘘か真かわかんないような記事信じてるの?」「え、信じないの?」「だってそんなの捏造しようと思えばいくらでも出来るじゃない。チラッと読んでみたけど、ちょっと信憑性薄すぎ。あんまり無用心に何でもかんでも信じると馬鹿みるわよ」「そんな事ないよ。金の魔力光は良い人の証なんだから」「でた……。また『私の女神様』?」「えへへ~、そう! 綺麗で、カッコよくって、それですっごく強くって!」「あ~はいはい。毎回毎回話すたびに誇張されていって、それこそ何処までが真実か分からないわよ」「全部ホントなんだってば!」「うっさいっ! 大体、良い人ってねぇ……、それなら死神とか呼ばれてる人はどうなるのよ?」「き、聞いた話によると、良い人……みたいだよ?」「……はぁ、もういいわよバカ。ほら、来週は試験なんだから何時までも雑誌読んでないでコンビネーションの確認するわよ」「はぁい」