06/~全力中年~はいどうも、俺です。いいでしょ? これでいいでしょ?何か色々あってこうなってああなってなぁぁあああん!! てな感じで、今眼下には貨物列車が走っています。ほら、アレじゃん。俺さ、ストライカーズの開始とかよく覚えてなかったからさ、とにかく一番最初の事件、これを目撃すれば間違いなしな訳ですよ。この崖の上で生活し始めて一週間って所です。よかったよ、一週間できてくれて。あんまり長い事こんなところに居ると崖の上が似合うあの人みたいになっちゃうからね。そんなこんなで三角座りしながら、事件発生を待っていると、お? おお? 来た! ヘリキタ! ヴァイスキタ! ……ああ! なのフェイ! 久しぶりに見たよあいつらぁ……。育ってる……、育ってるよあいつら。「おろろろ~ん……妹の……わしの妹の、晴れ姿じゃぁい」『オヤジ・くさい・ですね』「……まぁ、中身的にはそろそろお兄さんを名乗れなくなっては来てるけどさ……へへ」『加齢臭が・します。ファブる・べきかと』「……」『くさい・です』「……」『におい・ます』「……お前、さ」『イエス』「そろそろ、俺さ、怒っても、いいよね?」『だが・断る!』「そのだが断るを断る!」『その・だが断るを・断るを・あえて断りゅ!』「……」『……』「噛んだなテメエ」『たまには・萌え要素を・追加してみましりゃ。……かみまみた・すみません』「……今日も良い感じだな、俺ら」『イエス・マスター』なんて馬鹿みたいな会話をしていると、お、きたきた。新人フォワード。名前はね、えーと、スバルとティアナと……エリオ? エリオットだっけ? まぁとにかく、あとはキャロ。実際よく覚えてないんだよね、その辺。さぁ、皆さん頑張ってください。俺は帰る。ちょっとこの後スカリエッティのアジト探しがあるからさ。え? 当たり前でしょ? わざわざ最後まで残しとくわけないじゃん。見つけ次第デストロイですよ。あんなのがいるからストライカーズとか始まっちゃうんだよ。無し無し。あいつイラン子。ささっと潰して、それで終わり。管理局にはアジト見つけたときか、もう壊したときにでも連絡すりゃいいだろ。スカリエッティ倒したから後ヨロシコ。こんな感じで行こうかと。アジトの場所も、まぁ、大体の目星は付いてるしね。なんと言ってもこっちには超絶頭脳☆ミラクルユーノがいるし。「よぉし、帰るか」『フェイトには・会わないの・ですか?』「アルフみたいに嬉ションしたらどうすんだよ。部下の前でやったら……、さすがにあのアホの子でも傷つくだろ」『……恥ずかしい・ですか?』「べ、別に恥ずかしくねーよッ! は、はは恥ずかしくなんて、ないんだからねっ!」『なんというツンデレ』だってフェイト、俺より大きいんだもん。ちょっと色々事情があってね、俺さ、まだちゃんと歳相応に育ってないんだよね。あとシェルのせいで。いまんトコ……十五、六? まぁそんなもん。するとどうだね。俺の身長、フェイトに届いてないんだよ。いや、小さいころからアイツのほうが大きかったけどさ。だけど、だけど俺には兄としての矜持ってもんがありんす。妹を見上げるお兄ちゃんとか……泣けるわ馬鹿たれ!まぁ、冗談ですが。いや、身長の事は冗談抜きにフェイトのほうが大きいんだけどね。それにほら、今見つかっちゃったらさ、管理局とか色々とウザイのが出てくるだろ? 俺は管理局の脳みそがスカリエッティと繋がってるって知ってるし、あの脳みそが元凶だってのも知ってるし、とにかく単独で行動したほうが都合がいいんだよね。……ユーノにはバリバリお世話になってるけど。しっかし可愛くなってた。ユーノ可愛くなってた。俺の見間違いじゃなければ、明らかに可愛かった。何かおかしい可愛さを放ってた。あの可愛さは絶対におかしかった。ユーノの髪の毛パチパチ切ってるときにもう辛抱たまらんかった。頭おかしくなりそうだった。なんでかなぁ? なんであれで男? アイツ性別偽ってね? いや、本気でなんかおかしいんだって。体形とか……、うん、胸はなかったけど尻の感じとか……、あぁ、そういや俺も人の事いえねぇや。俺さ、クローンなんだよね。何を今さらといわれるかもしれませんがね、クローンなんですよ。骨格がね、フェイトなんですダヨ。アリシアなんですよ。……言わずもがな。この辺で勘弁してくれ。ホルモンバランス狂いまくって、一時期おっぱい膨らんできたからね。アレは焦った。とりあえず揉んではみたけど、アレは焦った。将来イケメンコース間違い無しだと思っていた俺は馬鹿だったんだよ。イケメンどころか、ナヨメンを通り越して、女メン(にょめん)だぜ。誰がどう見ても男の子には見えない罠が張り巡らされてた。ナンパとかされる。男から。何か違うだろそれ。女にモテろよ俺。何やってんだよ俺。「……あがー」『?』「シェル、俺の身体を何とか男らしくはできんのか」『はい? 十二年前から・女らしく・しているのに・何を・今さら』「!」『何か・問題でも?』こ、ここここ! こ い つ ! !「……俺の尻を見てみろっ……」『イエス』「───興奮すんだろがッ! 馬鹿かテメエ! 何してんだテメエ! 鏡見て興奮すんだろが! ムチムチしてきてんだろがッ!! 俺はまたホルモンの問題かと思って病院に行きたかったけど色々と登録抹消されてるから行けなくて不安の日々をすごしてたんだぞテメエ! 馬鹿かテメエ! 戻せ! 男らしくしろ!! ガチムチマッチョにしろ!! 憧れの! ガ☆チ☆ム☆チに!!」『いまさら・無理・です』「アッ───!! アッ───!! アッ───!!!! あぁぁぁああああああああぁぁぁん!!!!」嘆けり。たもれ。おじゃまんぼ。だれかたすけれ。『私も・使うのですから・いいでは・ありませんか』「……でもさでもさ、おれ、このままいったら、ただのお姉さんじゃん。綺麗で美人で可愛くておっぱいは無いけどとんでもなくハイスペックなただのお姉さんじゃん」『なにか・問題が?』「……銭湯とか?」『他には?』「……。……。……あんま無ぇな」銭湯でも股間にぶらぶらちんこぶら下げてきたお姉さんくらいにしか思われないだろ。なんだ、ホント大したことないな。「……はぁ。いいやもう。うん。帰ろう。帰るぞ」『イエス』後は原作通り頑張ってください。なんかエリオは落ちたりとかするはずだけど、頑張ってください。俺は影ながら応援してますよ~。……お、応援して……、「シェ、シェル?」『イエス』「ででで電車、浮いて」ます。誰がどう見ても浮いてます。ふわっと、何か、レールの間に挟まりでもしたのかい? いやいや、いやいやいやいやいや───、「───原作はどこさいっただーッ!!」俺は、その時にはすでに崖から飛び降りてた。エリオとキャロ辺り。 ↓■■■■■■■ ■ ■←先頭車両。電車がこんななってた。後先考えないのは昔からの事だけど、いやさ今回は行かなきゃちょっとまずいだろどう考えても。電車落ちちゃいますよ。前のほうの二両が、もうぶらぶらしてますよー。やばいって、やばいってそれ。そっちのほうスバルとかティアナとか居るじゃん。あの二人、死ぬんじゃね?「セットアップ!」『了解!』あーあー! もう完璧バレた! 何やってんだよホントに! 計画いきなり頓挫かよ! せっかくサーチャーに映らないトコに隠れてたのに!ぶつぶつ文句をたれながらも、仕方ないか。初っ端で死人を出すわけにもいくめえ。ファーストフォームを構成し加速。背中の羽が一枚散り、金の魔力光が噴出する。かっとんでいく景色を横目に見ながら、着地するところは八両目。拳を叩きつけて、爆発を起こして、「あん!? 何だテメエ!!」とりあえず図体のでかいガジェットが居たからぶっ壊しといた。殴って爆発粉々。楽勝すぎる。所詮機械。その下からもぞもぞと、なにやらうごめく物を発見。……エリキャロ見っけた。気を失っているご様子。優しく起こすとかできない。何となく、原作をみていたからなのかは知らないけど、何となくキャロのほうを先に起こした。「おい、おい! さっさとどっか行け! 落ちるぞこの電車!」「……え、あ、……?」「なぁにボケてんだぁ? ホラ、さっさと行けって!」「は、はい」キャロは不思議そうな顔をしながらエリオを揺り動かして……、え、えぇいノロノロしやがって! 分かってんのこの子? 電車・落ちる・崖から!もうその動作がとろとろしてるのがね、ああもう、いいもう、ええいもうッ!!拳を車両の壁に叩きつけ、爆発を起こした。ビクリと跳ね上がるキャロの肩。いや、驚かそうと思ったわけじゃなくて、外がみたかったの。ほら、ちゃんと穴が開いてるでしょ? 僕怖くないよ。んで……、お、居た居た。フェイトさん発見。脱線したのを見て、こっちに文字通り飛んで来てる。うん。おっけい。むんず、とキャロとエリオの襟首を掴み、「え? え?」「はい、いってらっしゃーい」ぽい。さぁ先を急ごう。きゃーとか聞こえない。なんも聞こえない。大丈夫。竜呼べなくてもフェイトが間に合うから。えっさほいさと進めや進め。扉を開いてまた開いて、……レリック見つけたんだが……、うん、一応持っていこうかな。よし、と息継ぎ完了。はいはい進めや進め。小脇にレリック抱えて、ああ、管理局側から見たらどう考えても不審人物なんだろうなぁ。目にはいるガジェットは基本的にシカト。それより先にスバルとティアナ。あの二人優先で行きましょう。脱線の衝撃でゆがんだのか、扉が一々引っかかるので全部壊してます。そしてこの電車、さっきからずるずる動いてる。マジで落ちかけ。ヤバイな。ホントにやばいよ。そろそろ逃げないとヤバイ。ちょっと冷や汗を垂らしながら四つ目の扉を、爆・発!金色の魔力光に視界を奪われて、「───誰!?」「ん?」ティアナ発見。「フェイッ……、……その抱えてるものを下に置きなさい!」「いや、そんな警戒しなくても……」「早くしなさい! 次は撃ちます!」ティアナが構えたクロスミラージュの先に魔力がたまっていくのをみて、こりゃ本気な感じ。「あい分かった。置くから、置くよ? いい?」「……」シェルで覆われた右手をばんざいしたまま、左手だけで床にレリックを置いた。じろじろと動作の一つも見落としません。そんな目で俺を見るんじゃないよ、ティアナさん。てかさっさと逃げないと危ないって分かってる? 「あー、いいか? 俺、敵じゃないから。OK?」「NO!」「いやそんな! この電車落ちかけてるってマジで!」「その顔で俺とか言うなっ!」「そっちかゴメン! 怪しいもんじゃない! 石田門左衛門忠則と申す!」「そのイシダモンザーがなんでフェイト隊長と同じ顔なのよ!」「イシダモンザー違う! 石田・門左衛門・忠則!」「いいから質問に答えなさい!!」だ、駄目だ。捕まえられる前の猫みたいな反応してやがる。フーッ! ってしてやがる。正直面倒臭い。なんでこんな目に会うんだ畜生。善意で助けに来たのに。けっ、けっ。そんな調子でむくれてると、またも車両が『ズレた』。ああ、ちょ、本気でまずい。本当にヤバイ。これ絶対落ちる。「おい、分かったろ今の。マジで落ちるって」「……」「ああクソ、もういい! 選べ! 俺に気絶させられて脱出するか、自分の足で脱出するか!」「ふざけんじゃないわよ!」「ふざけちゃいねぇよ! 銃おろせ! そんなモン向けんな!」「……、……ホントに、敵じゃないのね?」「俺がガジェットに見えるんかお前は?」一瞬考えたようにティアナは俯いて、顔を上げたときには迷いは無くなっていた。「……それなら、スバル運ぶの手伝って」「あん?」「仲間が怪我してるの」とことん原作通りにゃいかねぇな。どっかで見てんじゃねぇの、神様? 俺にそんな試練を与えて楽しいのかね? そろそろ怒るよ?ティアナが後ろを向き、俺はそれについて行って、十歩も進まないうちに列車の崩れてしまった部分、その下敷きになってしまっているスバルが居た。どうやらこっちもいい具合に気を失っているらしく、ぐったりとしたご様子。とりあえず俺の身体強化は、シェルのおかげで通常の魔導師とは比べ物にならないくらいの威力を発揮している。だからこんくらいの瓦礫なら楽勝。うんしょ、と両手で掴み上げて、俺が持ち上げてる間にティアナがスバルを引きずり出した。頭から流れている血をふき取って、そんなにひどい怪我ではないのか、ホッと一息ついたように見える。「んじゃ、さっさと逃げろよ」右手を上げて、なのはとか来る前にさっさと逃げようかと。「待ちなさい」「いやだ」「待ちなさいっ」「断る」「待って!」「んだよチクショウ!」状況分かってるでしょ? 本気でやばいんだってば!「……協力して。しなさい」「何の? もう逃げるだけだろ? 面倒臭いのは嫌いです」「私達の任務は、これの確保と……」ティアナは大事そうにレリックを抱えて、「後は、ガジェットの全機破壊」アホかこいつ。……いや、局員としては正解なのかな? 俺だったらまず一目散に逃げると思うけど。俺の心情を知ってか知らずか、ティアナは申し訳無さそうな顔をしてはいるが、意思は曲げそうにない。本気で面倒だなこの女。なんでそんな頭固いんだよ。もっと楽に考えようぜ、楽に。逃げちゃえばいいじゃない。逃げてその後で壊せばいいじゃない。むしろなのは達に全部任せちゃえばいいじゃない。……あれか? また凡人がどうとかで無理してんのか?そういうのには関わりたくないんだよ。おじさん疲れちゃったんだよ。全力の若者見ると眩しく感じちゃう年頃なんだよ。「えと……スバルはどうすんの?」「私が背負う」「本気で?」「……そうよ」「頑張りすぎはよくないと思うけど……」「このくらいしなきゃ、皆に追いつけないのよっ!」なぜ俺に心情を語るか貴様! そんなの聞きたくないって! 勝手にやっててよもう!「とにかく断る。俺帰るからね?」「待ってよ!」可愛い女の子が待って待って言うんじゃありません。言うこと聞きたくなっちゃうじゃないですか。「待って、お願いよ! ……初めての任務でこんな、一人にしないで……、怖いよ……」だからなんで見ず知らずの俺に!?まさかアレか。お前もしかしてテンパってんのか?確か……初めての任務で、初めてのデバイスで、初めての本物ガジェットで、始めてのアクシデントで……。うん。俺だったら発狂してるね。間違いねえ。間違いなくテンパってるわ、コイツ。ま、まずいな。ちょっと可愛く思えてきたな……。何だこれ罠か? こいつ実は腹の中で黒い笑いを上げてたとしても可愛いぞこれ。「……ガジェット壊したら、逃げる?」罠にかかりました。「うん」「ん。じゃあちょっと後ろに下がってろ」「?」スバルを背負いながら、ティアナは俺の後ろに二、三歩後ずさり。久々だかんなー。ちゃんと決めれるかな。ふぃ、と一つ息をつき、意識下で意識する。なんてちょっと分けわかんない事言ってるみたいだけど、俺の精神感応性物質変換能力(アルター)はそんな感じで発動します。バキィン! と列車内の瓦礫とか天井とか、その辺を塵に変えて、「セカンドフォーム」『イエス・マスター』セカンドフォームを形成。以前みたいな痛みは無くなったけど、圧迫感はそれなりに。ぎゅうぎゅう締め付けられる感覚で、俺の腕は更に大きく。背中からは丸みを帯びた、出来損ないの翼のようなもの。何時も通り。リンカーコアがぎゃんぎゃん騒いで魔力を排出。ばっきんばっきん壊れる周囲は魔力に変換変換。左手を前に突き出して、そこに金色のスフィアを形成。俺は相変わらず射撃やら砲撃やら、そんなんができない。中途半端な、射撃とも砲撃とも付かない、遠距離攻撃。そしてアクセルホイールは回転を始めた。ひゃんひゃんびゅんびゅん。空気を切る音が心地よくて。「俺の腕もってかないでね?」『マスターの・根性・しだいです』「ハッ、それなら失敗のしようがねぇな!」『ええ・そうでしょう!』背中に溜め込んだ魔力を爆発させて、その場で横に一回転、二回転、三回転。形成していたスフィアに目標を定めて、「シェルブリットォ……ッ」回転する力も全部拳に込めて、「バァストォオオオ!!!」『──Extermination──』。。。。。帰りのヘリの中、ティアナは呆けたように天井を見つめていた。スバルの怪我は大した事がなく、それに安心したって言うのもある。エリオとキャロも見た感じでは怪我はないようだし、それについては本当に、一安心だ。初めてのデバイスでの、初めての任務は失敗に終わった。あくまでもティアナ的な失敗で、レリックの確保とガジェットの破壊は完了しているので、管理局的には成功と言っていいのだろう。だが、(なによアレ)窓を覗きこんで、離れていく現場に視線を送った。未だに、もうアレが発動して数十分が経っているのに、そこには薄く金色の残滓が残る。魔力光が輝いていて、幻想的な光景になっていた。見たことのない魔法。というか、本当に魔法なのかどうかが疑わしい。自分の事を俺と呼ぶフェイトの偽者は何かを放った。ぐるぐる回りながら、スフィアに拳を打ち付けて、そこから何か出て行った。眩しすぎて目を閉じて、漸く目を開けたときには何も無かった。なーんにも無かった。ぜーんぶ消えていた。は? と間抜けな声を出して、偽者が消えていることに気が付いて、あたりを見回してもどこにも居ない。残ったのは色濃く残る魔力の残滓と、扇状に抉り取られた絶壁と、手元にあるレリックとスバル。混乱する頭で、そこになのはが来てくれなかったら本当に泣き出していたかもしれない。なのははとにかくティアナの頭を撫でてくれて、よく頑張ったねと褒めてくれた。ちがう、私じゃない。言っても、それでもティアナは頑張ったよと褒めてくれた。ため息をついて、ティアナ以外の全員が寝てしまっているものだから誰かに話を聞くこともできなくて。そしてもう一度窓を覗いたとき、なのはが操縦席のほうから現れた。敬礼は必要だろうかと考えて、何となくだるくって、なのはさんなら許してくれるかな、なんて甘えて。「お疲れ様」「あ、はい、お疲れ様です」「ふふ、皆寝ちゃってるね」「はい、何だか、えぇと、とにかく混乱してて……」「うん。ゴメンね。脱線するなんて……、考えてはいたんだけど、あの列車、理論上じゃあと百キロ出しても脱線なんてすることないから油断してた。アレは私達の責任だよ」「いえ、……その、私ももっと注意しておくべきでした。もらったデバイスも調子がよくて、あんまり簡単に物事が進むから、慢心があったんだと思います」「ティアナは真面目さんだぁ」おどけた様に言う なのはは、珍しく子供のようだった。非常に大人っぽく感じるのだが、なのはも十九なのだ。ティアナとだって余り変わらない。どんな過去があって今のポジションに付いたのか、勝手に調べるのも悪いのでずっと放って置いたが、気になるといえば気になる。そして特別気になるのが、あの偽者である。どう考えても無関係では通らないあの顔。『似ている』ではなくて『同じ』なのだ。「……なのはさん」「うん?」「あの、変な事聞くようですけど……、イシダモンザー・エモン・タダノーリって知ってますか?」「え、何? なんかの呪文?」「ええと、イシーダ・モンザーエモン・タダノリだったかな?」「イシーダ……いしーだ……いしだ……、い、石田?」「あ、そうそう! 石田、石田!」「もしかして、もしかしてっ! い、石田門左衛門忠則!?」「それそれ! それです!」「どこで聞いたの!?」焦ったような、嬉しそうな、困ったような、今にも泣きそうな、そんな表情でなのはが迫ってきた。石田門左衛門忠則とは一体何者なのか。もしかしたらティアナが知らないだけで、有名人なのか。「あの、列車内で鉢合わせて……、協力してもらいました」「その人、と、とと特徴は?」ああ、それならば簡単だ。「フェイト隊長と同じ顔をしてました」瞬間、なのはの膝が崩れてぺたりと床に腰を下ろした。ティアナは混乱気味にあうあう、と呻きながらどうしたもんかと。なんと、なのはの膝が濡れてきているのだ。涙的な意味で。「あはっ、ホント、何やってるんだよ、ディフェクト君……」とにかくティアナはポケットからハンカチを取り出して、優しく優しくなのはの頬をふき取った。笑顔で泣いて、声を震わせながらありがとう。なのはをここまでしてしまうディフェクトという人物に興味がわいてきて、しかし簡単には聞けない雰囲気。まぁ、いつか聞ければいいか、と問題を放り投げて、ティアナはもう一度金の魔力光に視線を預けた。